「ブラックインパクトⅢ(デジタルリマスター)」とは
テレビアニメ『名探偵コナン』の「ブラックインパクトⅢ(デジタルリマスター)」は、2016年4月2日(土)に読売テレビ・日本テレビ系で放送されたエピソードである。2006年1月9日に「放送10周年記念超拡大スペシャル」として2時間半枠で放送された第425話「ブラックインパクト!組織の手が届く瞬間」を、デジタルリマスターとして4部に再編集し、4週連続で放送した連作の第3部にあたる。黒ずくめの組織が衆議院選の立候補者・土門康輝の暗殺を企て、コナンとFBIが阻止へ動く長編の中盤だ。杯戸公園での狙撃阻止と、組織が直後に用意した第二の暗殺計画「ベインB」の判明までを収める。
4部に分かれたデジタルリマスター
初放送の第425話は、通常話の数倍の尺を持つ大スペシャルだった。デジタルリマスターではこれを「ブラックインパクトⅠ」から「Ⅳ」までの4部に分け、2016年3月19日、3月26日、4月2日、4月9日の土曜18時台に連続放送した。通常話の放送枠をそのまま使う再放送であり、読売テレビの公式データでは4部とも話数を持たない記録になっている。直前の通常放送は3月12日の第812話「県警の黒い闇(後編)」、リマスター明けの4月16日には第813話「安室に忍びよる影」が続いた。 第Ⅲ部が受け持つのは、この長編で最も密度の高い区間である。直前のⅡでは、コナンが盗聴で知った「午後1時にエディPでDJを暗殺する」という計画の解読が進み、標的が土門康輝と判明し、エディPの特定に迫るところで終わっていた。Ⅲはそのまま阻止行動に入り、そして同日のうちに組織の次の一手まで描き切る。

Ⅰ・Ⅱまでの経過
発端は小さな事件だった。日売テレビの番組収録にゲスト出演した小五郎は、沖野ヨーコの紹介でアナウンサーの水無怜奈と知り合い、毎週土曜早朝に受けるピンポンダッシュ被害の相談を受ける。コナンは調査のため、ガムに包んだ盗聴器と発信機を怜奈の玄関外に仕掛けた。犯人は、怜奈に亡き母の面影を見た少年だった。事件自体は翌朝に解決している。 問題はそのあとに起きた。怜奈が外出の際、壁から落ちたガムを靴底に踏んだまま出掛けてしまう。集音器越しに怜奈の携帯メールを打つ音を聞いたコナンは凍りつく。その音は、黒ずくめの組織のボスのメールアドレスを呼び出す「七つの子」のメロディーだった。怜奈は組織の一員キールである。盗聴器が見つかれば真っ先に疑われるのは、仕掛けた張本人として組織に名の知れた小五郎だ。コナンは回収を狙い、阿笠博士の車で灰原と共に怜奈を追った。 怜奈はウォッカ、ジン、ベルモットと合流する。そこへ、腕利きスナイパーのキャンティとコルンも加わった。盗聴した計画は「午後1時にエディPでDJを暗殺する」というものだった。コナンの前に現れたのは、FBIのジョディだった。彼女は、怜奈がこの日3人の立候補者を取材することを掴んでいた。帝都大学薬学部教授の常盤栄策、資産家の御曹司で人気俳優の千頭順司、そして元自衛隊幹部の土門康輝である。コナンはDJの意味を解く。「ダイヤのジャック」——トランプの「地」と「兵士」が土門を示す。さらに会話の中の狩り場・歴史・公園という語から、エディPは杯戸公園と特定した。
杯戸公園——傘で塞いだ狙撃線
Ⅲは、杯戸公園へ急ぐコナンとジョディの到着から始まる。園内では怜奈(キール)が土門のインタビューを始めており、キャンティは公園近くのビル屋上、コルンはマンション屋上からライフルを構えていた。怜奈は狙撃位置として定めたベンチへ土門を誘導しようとする。だが直前、土門に気付いた野次馬が集まり、計画は狂い始める。 公衆の面前だ。近づくことも警告することもままならない。コナンが注目したのは、園内に設置されたスプリンクラーだった。サイレンサー付きの拳銃でスプリンクラーの先端を撃ってほしい——コナンはジョディにそう頼む。怜奈が再び土門をベンチへ誘うその瞬間、ジョディの銃弾が先端を次々と外し、一斉に噴き上がった水が空へ霧状に四散する。突然の水しぶきを雨と勘違いした群衆は傘を差し、ボディガードも土門の頭上に傘を開いた。傘越しでは狙撃の命中率が落ちると判断したジンは、キャンティとコルンに中止を命じる。間もなく本物の雨が降り始め、インタビューは園内の東屋で行われることになった。コナンたちは組織に気付かれることなく、狙撃を阻止し切った。
怜奈に見られた回収失敗
阻止に成功しても、コナンの借りは残ったままだった。怜奈の靴底のガムに包まれた盗聴器と発信機は回収できていない。水まみれの混乱で怜奈の靴が脱げた一瞬、コナンはガムを取り戻そうとするが、怜奈本人に気付かれて失敗する。「尾けてきた」と疑われても、コナンは子供らしく取り繕ってその場を切り抜けた。怜奈の靴に付着したままの盗聴器と発信機——この未回収が、のちに最大の危機を招く伏線となる。 このあとコナンとジョディは、FBI捜査官チームを率いるジェイムズ・ブラックと合流し、追跡を継続する。土門は議員になる前から「未来の首相候補」と呼ばれる人物だった。組織が自分たちに抗う若い芽を早いうちに摘もうとしていることは明白である。しかも土門は先日、泥参会の女幹部・毒島桐子が差し向けたヒットマンに命を狙われたばかりだった。ジョディは、組織が土門を殺害し、その罪を毒島に着せるつもりだと推測する。
廃工場の第二計画——「ベインB」
その頃、組織は休んでいなかった。ジン、ウォッカ、キャンティ、コルン、ベルモット、そして怜奈は廃工場に集まり、公園での失敗を見越した次の計画を詰めていた。盗聴器越しに耳を澄ませるコナンへ、次の計画が明らかになる。午後4時、車に乗った土門が通過する橋が、新たな暗殺ポイントだった。 問題は、土門の車が防弾装備を備えていることだった。遠距離からの狙撃は通じない。組織は別の手を用意する。ジンはその橋を「ベインB」と呼んだ。コナンはベインBがどの橋かを特定し、先回りして暗殺を阻止しようと考える——第Ⅲ部はここで幕を閉じる。計画の詳しい手順と、このあとの展開は、記事末のネタバレ節にまとめる。
主な登場人物
水無怜奈は、日売テレビのアナウンサーとして登場する新キャラクターだ。黒ずくめの組織の一員キールとして、初めて本格的に動く回である。第Ⅲ部では、標的へのインタビューを担う表の顔と、計画の中核を担う裏の顔の両方を見せる。声は三石琴乃が担当した。 組織側の指揮はジンだ。傘越しの狙撃を無駄と見切り、中止を判断する合理性を見せる。キャンティ(井上喜久子)とコルン(木下浩之)はこの事件から登場した組織のスナイパーで、ビルとマンションの屋上に分かれてライフルを構えた。ベルモット(小山茉美)は別の役割を任され、ウォッカ(立木文彦)はジンの補佐に回る。 FBI側は、怜奈をマークしていたジョディ・スターリング(一城みゆ希)がコナンと行動を共にする。そこへチームの責任者ジェイムズ・ブラック(家弓家正)が合流し、追跡の指揮を取る。標的の土門康輝(福田信昭)は、犯罪への強硬な発言で支持を集める元自衛隊幹部だ。ヒットマンすら返り討ちにする屈強な人物として描かれる。土門を過去に狙ったのは、泥参会の女幹部・毒島桐子(まるたまり)だ。組織が暗殺の罪を着せようとする相手であり、名前だけでなく計画の構造にも関わる。

原作との対応
原作は「ブラックインパクト! 組織の手が届く瞬間」と題し、小学館の公式事件データベースでは事件No.143にあたる。収録は第48巻のFile9「ピンポンダッシュ」とFile10「新たなる黒の者」、第49巻のFile1「ターゲットを追え!」、File2「新たなる指令」、File3「黒の組織VS.FBI[1]」、File4「黒の組織VS.FBI[2]」の6本で、アニメではさらに第49巻File5「新しい先生」の冒頭まで進む。第Ⅲ部の杯戸公園での阻止と第二計画の提示は、おおむねFile2からFile4にあたる区間である。 初放送の大スペシャルは、本編が「Side.1 暗殺者」から「Side.12 お気に入り…」まで12個のサブタイトルで仕切られる特殊な構成だった。デジタルリマスターはこの2時間半を4部へ分け直した再編集であり、ⅠからⅣの題名はリマスター放送用の呼称である。

スタッフ・キャスト・放送記録
本編のスタッフは初放送時のもので、監督・演出が佐藤真人、脚本が古内一成、絵コンテが佐野隆史、原田奈奈、羽原久美子、作画監督が佐々木恵子、キャラクターデザインが富永真理である。主題歌はオープニングがB'zの「衝動」、エンディングがZARDの「悲しいほど貴方が好き」。初回放送ではオープニング映像が特別仕様で、フランス語による副題が付されていた。 声の出演は高山みなみのほか、土門康輝役の福田信昭、毒島桐子役のまるたまり、赤井秀一役の池田秀一など。冒頭の放送10周年を祝う挨拶シーンでは、円谷光彦を大谷育江の休養にともない折笠愛が代演した。視聴率は初放送が13.1%、デジタルリマスターではⅠが8.2%、Ⅱが6.2%、Ⅲが9.1%、Ⅳが8.2%と記録されている。第Ⅲ部のネクストコナンズヒントは「ジン」だった。
「阻止」では終わらない中盤の構造
この回が単なる犯人当ての事件ではないことは、第Ⅲ部の構造だけでも分かる。午後1時の狙撃を機転で止めても、組織は同日午後4時に第二の計画を用意し、しかも標的殺害の構図を入れ替えてくる。コナン側の勝ち筋が「暗号を先に解くこと」と「相手に気付かれずに動くこと」に限られる以上、盗聴器という小さな不始末が持つ意味はどんどん重くなる。怜奈に気付かれながら誤魔化せた一瞬の緊張と、廃工場で淡々と進む次の暗殺準備が、Ⅲの終わりに重なって提示される構成である。勝負はⅣへ持ち越される。
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第二計画の全容——防弾車への対策
防弾装備の車では遠距離狙撃が通用しないため、組織が立てた計画は接近戦だった。泥参会の女幹部・毒島桐子に変装したベルモットがバイクに乗り、土門の車の前で転倒する。車から出てきた土門を、もう一台のバイクに乗った怜奈(キール)が射殺するという段取りである。公園での狙撃役とは別の、土門へ近づく役割として怜奈が組み込まれていた。暗殺を毒島に見せかける構図とも符合し、ジョディの推測が裏付けられる形となる。
Ⅳへ続く展開
コナンは「ベインB」の綴りに気付く。VAINではなくVANE——風向計や風車の羽根、弓矢の矢羽である。矢羽を暗示する橋は、鳥矢大橋だ。怜奈はベルモットとの合流地点へ向かう途中、ジョディらFBIの車に取り囲まれ、突破を試みて転倒し、病院へ運ばれる。一方でジンは、無線のノイズを不審に思い怜奈の靴を調べ、靴底のガムに包まれた盗聴器と発信機を発見。土門の暗殺を中止し、標的を怜奈と接触していた小五郎へ変更する。キャンティとコルンのライフルは、探偵事務所で競馬中継を聴く小五郎へ向けられた——この続きは「ブラックインパクトⅣ(デジタルリマスター)」で描かれる。
