「デパートジャック事件(デジタルリマスター)」とは

「デパートジャック事件(デジタルリマスター)」は、テレビアニメ『名探偵コナン』第17話「デパートジャック事件」(1996年5月27日放送)をデジタルリマスター化して再放送した回で、2015年10月31日(土)に読売テレビ・日本テレビ系のレギュラー放送枠で放送された。閉店後のデパートに取り残された少年探偵団が、店内に潜む強盗団と夜通しの追いかけっこを繰り広げる、1話完結のアニメオリジナル事件である。

どの放送の記事か

この記事が対象とするのは、1996年放送の第17話をデジタルリマスター化し、2015年10月31日(土)のレギュラー枠で流した再放送である。読売テレビは公式事件ファイルで元の第17話とは別に専用ページを立て、題名に「(デジタルリマスター)」を添えて一つの放送として登録している。新規の回ではないため通し話数は持たず、公式の放送データでも話数の項目は空欄のままだ。 元の第17話は1996年5月27日(月)の放送で、直前が第16話「骨董品コレクター殺人事件」、1週後の6月3日が第18話「6月の花嫁殺人事件」というシリーズ最初期の一画にあった。それから19年と5か月後、2015年秋の枠では前週10月24日に第797話「夢みる乙女の迷推理」、翌週11月7日に第798話「動く標的」が控える谷間へ、このリマスターが差し込まれた。当日はハロウィンそのものでもあり、ヤイバーやジョッカー軍団の着ぐるみを被った強盗が夜のデパートをうろつく本編の内容と、季節が偶然重なる放送となった。

閉店したデパートに取り残された四人

舞台は米花町の丸丹デパートである。コナン、歩美、元太、光彦は屋上で開かれる仮面ヤイバーショーを観に出かけ、ヤイバーとジョッカー軍団の対決に大興奮する。ショーの後はサインをもらい記念撮影まで済ませ、エレベーターガールの涼子に笑顔で見送られて帰途に着くが、途中で元太が色紙を失くしたことに気づく。コナンは色紙を忘れた場所を推理で絞る。四人は閉店間際のデパートへ引き返した。裏手の専用出口から人目を盗んで侵入し、売店で色紙を見つけるが、出口へ向かう寸前にセキュリティシステムが作動し、扉が閉まって電子ロックがかかってしまう。 閉じ込められた四人は、地下2階の警備室へ事情を説明しに向かう。ところが警備室では、ヤイバーとジョッカー軍団に扮した男たちが、縛り上げた警備員や涼子にナイフを向けていた。強盗4人の目的は、宝石や電化製品、骨董品を夜の間に盗み出すことだった。セキュリティシステムの作動中は電話も使えず、窓も電子ロックされている。子供だけで閉鎖された空間に、武器を持つ大人が潜んでいる。本回の緊張はこの構図から生まれる。

警備室で見取り図を確認する強盗団と縛られた警備員・涼子(第17話場面写)
警備室の人質と見取り図を広げる強盗団(Detective Conan Wiki掲載の第17話場面写)

深夜のフロアでの追いかけっこ

コナンたちはレストランのフロアへ移り、ガラス窓にペンキでSOSを書き、窓を叩いて向かいのビルへ助けを求めるが誰も気づかない。宝石売り場にいた強盗2人が物音を確かめに上がってきて、家具売り場に身を潜めていたコナンたちは見つかってしまう。コナンはキャスター付きワゴンに元太たちを乗せて逃げ、反撃して2人の動きを止める。その直後、館内の灯りがすべて消えた。警備室に残った残りの2人に気づかれたとコナンは察する。

エレベーターの罠と動くエスカレーター

開いたエレベーターに思わず乗り込むが、コナンは防犯カメラに気づいて全員を引っ張り出す。強盗たちはエレベーターに閉じ込めるつもりだったのだ。警備室から捕まえに来た2人に追い込まれたコナンは、蝶ネクタイ型変声機で警察の到着を装う。だが動きを止めていた先の2人も合流し、嘘はあっさり見抜かれた。ナイフを投げつけられるが、刺さったのはダミーのマネキンで、四人はその隙に逃げる。続いて停止していたエスカレーターが突然動き出し、上と下に分かれた強盗に挟まれるが、脇の吹き抜けに垂れたロープへ飛び移って切り抜ける。コナンは逃げながらも、何かが引っかかるのを感じていた。

館外の捜索と店内の反撃

一方、帰ってこない子供たちを心配した蘭と小五郎は目暮警部へ相談する。目暮はある重要事件を捜査中だったが、新聞の「デパート強盗団」の記事が強盗の手口を示し、子供たちが事件に巻き込まれた可能性へ二人の意識を向けさせる。店内ではコナンたちがデパートの品を使ったトラップを仕掛け、強盗4人をロープで縛り上げることに成功する。だがコナンは、まだ事件は解決していないと考えていた。公式あらすじはここで途切れ、事件の全容は放送本編に委ねられている。

主な登場人物

事件の中心は少年探偵団の四人である。コナン(声:高山みなみ)は色紙の在りかを推理する段階から先手を打ち、閉鎖空間の中でも現場の道具を使った反撃と脱出を組み立てる。元太(声:高木渉)は色紙紛失の当事者で、空腹の腹の音で隠れ場所を気づかせるなど、トラブルの起点と笑いどころを担う。「殺される前にうな重一杯食いてえ」とこぼす場面は、彼の食いしん坊ぶりを示す初期の代表例として引き合いに出されることが多い。光彦(声:大谷育江)は酒に弱い体質が描かれ、歩美(声:岩井由希子)は店内の食品に手を出すことへの気後れを見せる。四人それぞれに子供らしい振る舞いが割り振られる構成だ。 デパート側の人物として、エレベーターガールの涼子(声:佐々木優子)と警備員(声:千葉一伸)がいる。強盗団は男Aから男Dまでの4人組で、声は中村大樹、松尾銀三、山崎たくみ、巻島直樹が担当した。彼らが被るのは、子供たちのヒーローであるヤイバーと、その宿敵ジョッカー軍団の着ぐるみである。仮面ヤイバーとジョッカーの声は資料上クレジットされていない。事件の外側では蘭(声:山崎和佳奈)、小五郎(声:神谷明)、目暮警部(声:茶風林)が、探偵団の帰りを待つ側の物語を支える。晩御飯になかなかありつけない小五郎の姿が随所に挟まれ、店内の緊張と対比を作っている。

エレベーターガールの涼子(第17話場面写)
エレベーターガールの涼子(Detective Conan Wiki掲載の第17話場面写)

アニメオリジナル3作目の位置づけ

本回に原作漫画の対応はない。アニメオリジナルの事件としてはシリーズ3作目にあたる。仮面ヤイバーは第12話「歩美ちゃん誘拐事件」でグッズとして登場していたが、ショーと演者を伴う本格的な登場は本回が最初である。以降も名前やグッズが繰り返し作品世界へ顔を出すキャラクターとなった。 事件の時期には珍しい裏付けもある。1998年に放送された第107話・第108話「モグラ星人謎の事件」では、探偵団の台詞から本事件がその回の約1か月前の出来事だったと示される。作中時間の言及が残る初期オリジナル回として、放送順とは別の軸でシリーズ内に位置を持つ。なお舞台の丸丹デパートという名は、丸井と伊勢丹を掛け合わせた命名と推測されている。

スタッフ・キャスト・放送記録

スタッフは監督こだま兼嗣、脚本が宮下隼一、絵コンテが風原朽、演出が南康宏、作画監督が須藤昌朋と高谷浩利、キャラクターデザインが須藤昌朋(デザインワークス・森木靖泰)である。宮下隼一は初期のアニメオリジナル回を多く手掛けた脚本家の一人で、本回もその流れに位置する。 音楽については、1996年の初放送当時はオープニングに↑THE HIGH-LOWS↓「胸がドキドキ」、エンディングにZIGGY「STEP BY STEP」が流れ、劇中でもZIGGYの「HAPPY END」が挿入歌として使われた。リマスターが流れた2015年秋のレギュラー枠では、オープニングがLa PomPon「謎」、エンディングがVALSHE「君への嘘」の時期にあたる。視聴率の資料値は、初放送で15.7パーセント、リマスターで9.3パーセントと記録されている。英語版は "The Case of the Hi-Jacked Department Store" として2004年6月22日に放送され、海外版の通し話数では18番目にあたる。 初放送とリマスターとで細部の異なる箇所もある。各話の末尾に添えられるネクストコナンズヒントは、初放送では「エレベーターガール」だったのに対し、リマスターでは「エスカレーター」へ変わっている。放送枠の長さに合わせるため、リマスター版では探偵団の一部のセリフも削られたとされる。

閉店後のデパートという舞台

本回の意匠は、昼間は子供の行事で賑わう場所が、閉店後に一転して閉鎖空間になる点にある。ヤイバーショーの興奮の直後に同じ建物が牢へ変わる転換は早く、フロア案内も手掛かりとして働く。店内の表示板によれば、5階はリニューアルオープンを告げるインテリア・寝具、4階はゴルフ・スポーツ用品と電器・メガネ、3階は婦人服・特選・きものという構成だ。2階は婦人カジュアル、1階は婦人雑貨と貴金属・時計、地下1階は食品のヒックーコストア、地下2階が駐車場と警備室である。強盗団の会話からは6階の宝石売場と7階の骨董品特設会場の存在も分かり、追跡劇はこの積み重なった売場を実際に使って展開される。 劇中には現実の企業や商品をもじった表現も散りばめられている。強盗団のトランシーバーには「KANWOOD」のロゴがある。小五郎が読む写真週刊誌は「FOOUS」、蘭の手元の電話帳は「ハローページ」、地下のスーパーは「ヒックーコストア」と、いずれも実在の名称をずらした作りである。マネキン・キャスター付きワゴン・停止中のエスカレーターといった店内の設備が次々と攻防の道具へ変わる点と合わせて、殺人の起きない事件として本回の軽快さを支えている。

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警備室に残された五人目

コナンが引っかかりを覚えたのは、逃亡劇のさなかに防犯カメラとエスカレーターが動いていたことだった。強盗の男4人は全員が探偵団を追い回していた。にもかかわらず館内の設備は操作され続けた。警備室にはもう一人、動ける仲間が残っていたのである。そこに縛られていたはずの人物——エレベーターガールの涼子こそが、強盗団の5人目のメンバーだった。 涼子の役割は、事前にエレベーターガールとしてデパートに採用され、内部の偵察と手引きをすることだった。人質として警備員と一緒に縛られていれば、誰からも疑われない。コナンは館内を歩き回る涼子を待ち伏せし、「エレベーターのお姉さん。いや、強盗団の5人目のメンバーさんよ」と正体を指摘する。そして彼女は、単なる仲間ではなく、この強盗団のボスだった。

屋上での決着と翌朝

正体を暴かれた涼子は拳銃を取り出し、コナンへ発砲する。屋上へ逃げたコナンはキック力増強シューズでバスケットボールを蹴り、彼女の手から拳銃を弾き飛ばすと、その足を屋上の気球のロープに縛り付けた。女は気球とともに夜空へ吊り上げられた。逃走はここに途絶える。 翌朝、駆けつけた小五郎、蘭、目暮警部らの前には、入口に縛り上げられた強盗団と、疲れ切って眠る四人の姿があった。後日、少年探偵団は強盗団逮捕の功績で表彰される。深夜に食べた食品も、追跡の中で壊した商品も、一切お咎めなしという結末だった。「少年探偵団、大手柄〜!」——事件は子供たちの凱歌で締めくくられる。

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