「図書館殺人事件(デジタルリマスター)」とは
テレビアニメ『名探偵コナン』の「図書館殺人事件(デジタルリマスター)」は、2014年3月15日(土)に読売テレビ・日本テレビ系で放送された再放送エピソードである。1997年3月3日に放送された第50話「図書館殺人事件」にデジタルリマスター処理を施し、17年ぶりに放映したもので、米花図書館で消えた職員をめぐり、閉館後の館内に残ったコナンと少年探偵団の一夜を描く。読売テレビの公式あらすじは、児童図書閲覧室に現れる「何者か」で幕を閉じる。
第50話を17年ぶりに映す再放送
元になった第50話は1997年3月3日(月)の放送で、シーズン2にあたる。デジタルリマスター版は2014年3月15日(土)18時台に流れ、読売テレビの公式データでは話数を持たない再放送として記録されている。直前の通常放送は3月8日の第732話「現場の隣人は元カレ(後編)」、翌週3月22日には第733話「披露宴と二つの銃声」が続いた。 2014年のこの時期、番組はデジタルリマスター版を通常の放送枠へ挟む運用を続けていた。2月15日には「蘭へのラブレター[デジタルリマスター版]」、本話のあと4月5日と12日には映画「異次元の狙撃手」の公開に合わせた「シカゴから来た男」の前後編が同じ形で放送されている。劇場版に直結した企画枠ではなく、初期のエピソードを単発で見返す再放送として置かれた一本である。視聴率はリマスター版が8.8%、初放送が16.8%と記録されている。
感想文の宿題と逆向きの洋書
放送の冒頭には、直前の外交官殺人事件で工藤新一の体へ一時的に戻った余韻が残る。寝込みがちだったコナンは、蘭に促されて歩美、元太、光彦と出かける。一行が米花図書館を訪れたのは、学校で出された読書感想文の本を借りるためだった。派手な依頼ではなく、小学生の日常の用事がそのまま事件の入口になる。 3階の児童図書閲覧室で本を選ぶ最中、コナンは書棚の先の窓際の下に半開きの戸棚を見つける。中にはケースへ逆向きに入れたまま、ビニールで梱包された洋書が収められていた。児童書の棚に置かれた場違いな古い洋書であり、しかも表裏が逆に見える。そこへ米花図書館の館長、津川秀治が現れ、「子供が見る本じゃない」とコナンを諫める。本の乱れは誰かが直せる小さな違和感だが、整理を統べる館長が手をつけず、むしろ子供を遠ざけたことが、この書架を事件の中心へ押し上げる。

定員七人のブザーと消えた職員
続いて図書館にパトカーが到着する。津川は警察への応対のためエレベーターで1階ロビーへ下りようとし、事情を気にするコナンたちも同じかごに乗り込む。ところが、定員7人の表示に対して人数は足りているのに、定員オーバーのブザーが鳴ってしまう。子供たちは仕方なく階段で降り、津川だけがかごに残った。異常ではあるが、その場では故障に近い出来事として流される。 ロビーでは目暮警部が、職員の玉田和男について津川へ尋ねていた。津川は昨日から無断欠勤していると答えるが、目暮によれば玉田は一昨日の夜から行方不明である。最後に一緒に残業していた津川は、自分のほうが先に帰ったので後のことは分からないと証言する。玉田は帰宅前に必ず妻へ電話する几帳面な人物であり、その夜だけ連絡がなかった。目暮は、玉田が残業中に何者かに連れ出されたか、あるいはまだ館内にいて、すでに殺害されている可能性まで危惧する。 警察は倉庫やトイレなど人目につかない場所をすべて調べたが、玉田を見つけることはできなかった。床も戸棚も確認し、それでも手掛かりがなければ、建物の外へ視野を広げるのは不自然な判断ではない。目暮は外で事件に巻き込まれたと判断し、図書館を後にする。
閉館後に残った少年探偵団
閉館時間になり、図書館から人がいなくなる。その時、3階の掃除道具ロッカーの扉が開き、中からコナンたち少年探偵団が姿を見せる。警察は見つけられなかったが、コナンは玉田の遺体がこの館内のどこかにあると推理していた。根拠は二つとも日中の小さな体験にある。逆向きに収められた洋書と、人数が足りているのに鳴ったブザー。どちらも図書館の管理と、津川の近くで起きた出来事だった。 コナンの判断が警察より優れて見えるのは、捜索能力の差というより、体験した違和感を捨てなかったためだ。警察は建物を広く調べて引き上げ、コナンは自分が乗ったかごと触れた本へ戻る。四人が館内の捜索を始めようとした時、誰もいないはずの児童図書閲覧室に何者かが現れる。公式あらすじが描くのはここまでである。このあと明らかになる侵入者の正体、洋書の秘密、遺体の隠し場所と結末は、記事末のネタバレ節にまとめる。
主な登場人物
津川秀治は米花図書館の館長で、57歳。開館中は警察へ礼儀正しく応対する管理者として描かれる。鍵や閉館時刻、資料の配置を決める権限を持つ人物であり、施設の規則そのものに近い立場である。声は永井一郎が担当した。玉田和男は行方不明になった図書館職員で、帰宅前に必ず妻へ電話する几帳面さが、失踪の異常を際立たせる。妻のもとへ届かなかった一本の電話が、捜索の発端そのものになる。 捜査側では目暮警部が指揮を執り、高木刑事らが同行する。少年探偵団はコナン、吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦の四人で、今回は依頼された探偵ではなく、本を借りに来た利用者として現場に居合わせる。冒頭には毛利蘭と阿笠博士も登場し、小学館公式の事件データベースでは両名もメインキャラとして数えられている。ほかに警察官(千葉一伸)、事務員(諸田薫)の出演が記録されている。
原作との対応
原作は第10巻のFile6「熱いからだ」、File7「忍び寄る殺人鬼」、File8「もう一人の乗客」の3本で、小学館の公式事件データベースでは事件No.26にあたる。アニメ側の話数表記ではFile.96後半からFile.98までに対応する。File6の前半には外交官事件の余韻が残り、コナンが少年探偵団と外出するところから新しい事件が動き出す構成は原作どおりだ。「忍び寄る殺人鬼」は閉館後の追跡者へ、「もう一人の乗客」は冒頭から提示されたエレベーターの異常へ、章題そのものが焦点の移り方を示している。

第10巻の収録順が示すもの
収録順にも意味がある。直前の外交官殺人事件では服部平次と工藤新一の東西の高校生探偵が競い、本件では同級生三人を連れた小学生のコナンが単独で危機へ踏み込む。主人公の二つの立場が第10巻の中央で連続して試される。巻の終盤では「雪山山荘殺人事件」が始まり第11巻へ続くため、公共施設の閉館後という密室から吹雪の山荘という密室へ、閉じた空間の事件が並ぶ単行本でもある。
スタッフ・キャスト・放送記録
第50話のスタッフは、監督がこだま兼嗣、絵コンテ・演出が越智浩仁、作画監督が大河原晴男、キャラクターデザインが須藤昌朋である。声の出演は高山みなみのほか、歩美役の岩居由希子、光彦役の大谷育江、元太役の高木渉、蘭役の山崎和佳奈、目暮警部役の茶風林、阿笠博士役の緒方賢一など。津川館長を永井一郎が演じた。 初放送時の主題歌は、オープニングがVELVET GARDENの「Feel Your Heart」(第31話から第52話まで使用)、エンディングがheathの「迷宮のラヴァーズ」(第27話から第51話まで使用)である。リマスター版が流れた2014年3月の時点では、オープニングがVALSHEの「Butterfly Core」(第718話から第743話までの時期)、エンディングがDAIGOの「今会いたくて…」(第722話から第736話までの時期)が使われていた期間にあたる。ネクストコナンズヒントは初放送が「ハードカバーの本」、リマスター版では「エレベーター」に差し替えられた。DVDではPART2のVol.6に収録され、現在は公式YouTubeチャンネルでもシーズン2第50話として配信されている。
昼の公共施設が夜の迷路へ変わる回
この回が今も単独で語られるのは、場所の設計によるところが大きい。米花図書館は子供だけでも入れ、棚の間を自由に歩ける公共施設だ。その開放性が昼間は発見の条件を作り、閉館後には逃げ場を限定する迷路へ変わる。書架は視線を遮る壁になり、エレベーターの作動音だけが人の接近を知らせる。静かにするべき場所という規則が、助けを呼べない状況では四人の動きを縛る圧力になる。 もう一つの核は、機械の正直さである。定員オーバーのブザーは誰の意思にも左右されず、見えない重さを告げ続ける。警察が各階の部屋を横に探したのに対し、コナンは昼間の異常を捨てず、昇降するかごという縦の空間へ考えを伸ばす。漫画ではページをめくるまで追跡者の位置が分からない構成が、アニメでは足音と移動音の連続した時間へ置き換えられた。事件の早い段階で提示された小さな違和感が、夜の捜索の最後に意味を変えて戻ってくる構成は、内容を知らなくても「重さの推理」として記憶に残る回である。
出典と確認の範囲
本記事は、読売テレビ公式サイトの事件ファイル(2014年3月15日のリマスター版ページと第50話ページ、公式放送データ)を基に、小学館WEBサンデー公式の全事件レポート(事件No.26)で原作対応を照合し、公式YouTubeチャンネルの第50話本編、英語版Detective Conan Wiki(話数・スタッフ・キャスト・視聴率・主題歌の話数帯)、ウィキペディアの放送一覧(DVD収録・リマスター放送の位置)を確認して作成した。細部の描写は公式あらすじと確認済み資料の記載範囲に基づく。
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犯人と麻薬を隠す仕掛け
閉館後の児童図書閲覧室に現れたのは、帰宅したはずの津川館長だった。誰も残っていないと思い込んだ津川は、玉田を殺したこと、警察が遺体を見つけられなかったことを自ら口にする。玉田は、洋書に偽装して館内へ持ち込まれた麻薬を発見してしまい、口封じのため絞殺されていた。 洋書の偽装は、背表紙のない箱にあった。両側から本を収める書架では、表側から見れば裏側の本、裏側から見れば表側の本に見える。中央へ挟まれた箱はどちらから手を伸ばしても隣の列に属するように錯覚させられ、初めにコナンが見た「逆向きの洋書」はこの構造が生んだ違和感だった。津川はこの隠し場所で麻薬を保管し、少しずつ売りさばいていた。難しい洋書を子供が開かないという思い込みまで利用した計算である。犯人が明らかになっても緊張が緩まないのは、真相を聞いた子供たち自身が新しい標的になるためだ。
かご上の遺体と本棚の連鎖
コナンが思い出したのは、昼間のエレベーターで鳴った重量超過のブザーだった。津川と子供四人だけなら七人乗りのかごが制限を超えるはずはなく、目に見える乗客のほかに人一人分の重さが一緒に移動していたと考えれば説明がつく。玉田の遺体は、昇降路の中、エレベーターのかごの上に載せられていた。かごが上下すれば遺体も動くため、各階の扉を開けても警察の視界には入らなかった。 正体を知られた津川は鉄パイプを手に四人を追い、靴ひもを直す歩美へ襲いかかる場面もあった。コナンは推理を語って注意を自分へ向け、三人が逃げる時間を作る。最後は四人が並んだ書架を倒し、連鎖する棚の重さで津川を押さえ込んだ。警察が到着し、津川は逮捕され、玉田の遺体は収容され、麻薬は押収される。麻薬を隠すために悪用された書架が、最後は子供たちを守る壁へ役割を変えて幕を閉じる。昼のブザーが遺体の在処を告げ、夜の書架が四人を守る。重さが二度、事件の鍵を握った。
