2024年公開の劇場版第27作

本作はシリーズ第27作として、2024年4月12日に東宝配給で公開された。上映時間は制作会社トムス・エンタテインメントの作品ページが111分と案内し、Apple TVの配信ページでは1時間50分と表記されている。漫画『名探偵コナン』の連載30周年の年に公開された記念作でもある。 監督は永岡智佳、脚本は大倉崇裕、音楽は菅野祐悟、キャラクターデザインと総作画監督は須藤昌朋が務めた。製作は小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント。レギュラー声優に加え、ゲスト声優として北海道出身の大泉洋が北海道警捜査一課の刑事・川添善久を演じた。刀に関わる青年剣士・福城聖を松岡禎丞、回想に登場する土方歳三を津田健次郎が演じている。 原作者の青山剛昌は公式サイトのコメントで、作品の要点を三つ挙げている。舞台が北海道の五稜郭であること。コナン、キッド、平次と悪党たちが土方歳三にまつわる刀を巡って宝探しを繰り広げること。そしてその最中に平次が和葉へある行動を起こすことだ。公開に先立ち、本作では試写会をいっさい行わない異例の措置が取られた。公式には「怪盗キッドの手によって本作のフィルムが盗まれてしまった」という演出で、代わりに4月7日にベルサール渋谷ファーストでシリーズ史上初のファンミーティングが開かれた。4月11日24時からは全国10大都市23劇場で世界最速上映が行われ、チケットは完売している。

函館と五稜郭——史実の足場

物語の舞台となる函館は、幕末の箱館戦争で知られる港町である。函館市の公式観光サイト「はこぶら」が星形の西洋式城郭と紹介する五稜郭は、市の歴史解説によれば、1868年から翌年にかけての箱館戦争で榎本武揚ら旧幕府脱走軍の拠点となった。新選組副長の土方歳三は、弁天岬台場の救援に向かう途中、一本木関門を入った異国橋あたりで銃弾に倒れている。現在の五稜郭は公園として整備され、塔から星形の輪郭を一望できる観光地だ。 映画はこの史実を土台にしながら、独自の創作を重ねる。五稜郭の形、箱館戦争、土方歳三と函館の結び付きは歴史資料で確かめられる事実である。一方、斧江財閥に伝わる刀、複数の刀が作る暗号、戦況を一変させるという宝の噂は、本作固有のミステリー設定である。史実の人物名が出るからといって、刀の来歴まで史料の話ではない。その境界を意識して見るほど、脚本が史実の余白に何を書き込んだかがはっきりする。

題名「100万ドルの五稜星」の読み方

題名の「五稜星」には「みちしるべ」という読みが当てられている。「100万ドル」は函館山から望む夜景の評価額を連想させる言い方で、市街の灯が海岸線に沿ってくびれる函館の景観は、本作では追跡の背景であると同時に、平次が和葉へ思いを伝えたい場所でもある。金額を思わせる語を掲げながら、物語が測るのは宝の価格だけではない。 「五稜星」は五稜郭の星形と、刀の所在を結ぶ図形を一語へ重ねた表現と読める。夜景は遠くから全体を見渡して初めて形を現し、刀の謎も一点だけを見ているうちは解けない。近づいて刃を読み、離れて配置を読む。題名はその往復を予告している。

キッドの予告状——標的は日本刀

物語の発端は、函館の斧江財閥の収蔵庫へ届いた怪盗キッドの予告状である。公式あらすじが強調するのは、標的がいつものビッグジュエルと呼ばれる宝石から外れ、幕末を生きた土方歳三にまつわる日本刀であるという異例さだ。刀には換金価値だけでなく、誰が打ち、誰が持ち、どこを通ったかという来歴が刻まれる。キッドの標的変更は、刀そのものより、その背後の情報を見ている可能性を早い段階で示す。 犯行予告の当日、キッドは変装で収蔵庫へ近づくが、工藤新一と顔が似ているという宿命を持つ彼の顔を、平次が見破る。予告は遂行され、刀の一部はキッドの手に渡る。しかし盗みの完了は事件の始まりにすぎなかった。刀を狙う者はキッドだけにとどまらず、キッド自身にも、なぜこの刀が狙われるのか分からない側面が残っている。

白いシルクハットとマントを着けた怪盗キッドの劇場版第27作公式人物画像
土方歳三ゆかりの刀を狙う怪盗キッド。劇場版公式サイトのキーパーソン画像

平次とキッド——変装看破と因縁

剣道大会への出場のため函館を訪れていた服部平次は、幼なじみの遠山和葉と行動を共にしていた。コナンの正体が新一だと知る数少ない人物であり、推理力と剣道の腕を兼ね備える平次は、本作では探偵役であると同時に、刀を挟んだ対決の当事者になる。犯行予告の夜、変装したキッドを見破って追い詰め、屋根の上での剣の応酬へ踏み込んだ。 二人の間には因縁がある。原作単行本96巻、アニメ第983話・984話の「キッドVS高明 狙われた唇」で、和葉に変装したキッドに平次がキスしかけるという事件があった。本作の平次はキッドへの対抗心をその経験に結び付けており、キッドのほうも平次を、遠くから策を崩すコナンとは違う、すぐ刃先へ届く追跡者として認識する。対決から共闘へ揺れる二人の距離が、本作の剣戟場面の芯になっている。

竹刀を手に構える服部平次の劇場版第27作公式人物画像
剣道大会と和葉への告白を胸に函館へ来た服部平次。劇場版公式サイトのキーパーソン画像

西ふ頭の十文字——盗難事件から殺人へ

盗難騒ぎのさなか、函館の倉庫街・西ふ頭で、胸に十文字の傷を刻まれた遺体が発見される。被害者は久垣澄人、斧江財閥の顧問弁護士を務めていた男性だった。一太刀の痕とは異なり、二つの方向が交差する図形として残された傷は、刀の争奪とは別の殺人事件の存在を示す。 捜査を担当するのは北海道警の西村警部と、その部下の川添善久である。西村はかつてアニメ「上野発北斗星3号」の事件でコナンたちと顔見知りになった人物で、その縁でコナン一行は現場へ立ち入ることを許される。怪盗の予告と無言の遺体。刀が歴史的な収蔵品であると同時に、現在の暴力にも使われる危険なものだと、この殺人が示す。

宝を狙う者たち——カドクラと斧江拓三

殺人事件の捜査線上には、アジア一帯で「死の商人」と呼ばれる日系アメリカ人の武器商人、ブライアン・D・カドクラが浮かぶ。彼が探すのは、戦時中の軍需産業に深く関わっていた斧江家の初代当主・斧江圭三郎が函館のどこかへ隠したとされる宝である。金の鉱脈を掘り当てて財を成したという圭三郎の遺物には、日本の敗色が濃かった当時の戦況を一変させるほどの強力な兵器だという噂が付きまとう。 宝を狙うのはカドクラだけではない。落ち目となった財閥の復興を目論む三代目・斧江拓三もまた刀を追う。さらにキッドの前には、素顔を隠した腕の立つ剣士の影が迫る。怪盗の盗み、殺人の捜査、宝探し。三つの線が、一本の刀を起点に絡まり合っていく。

東窪栄龍の6本——刀が地図になる

争奪の対象は一振りではない。東窪栄龍の作とされる刀は全部で6本あり、土方歳三に心酔していたという圭三郎の収集と結び付いている。刀の柄に開けられた目釘穴は月の形をしており、単体では武器や美術品でしかない刀が、複数そろうことで宝の在り処を示す暗号へ変わる仕掛けだ。 この構造のため、争奪は単純な早い者勝ちにならない。刀を護りたい者、宝を兵器として欲する者、過去の遺志を果たしたい者では、同じ刀へ向かう理由が違う。誰かが暗号を解けば、その答えだけを別の誰かが奪える。剣戟の緊張は刃が当たる瞬間だけでなく、知識を共有するか伏せるかという判断にも宿る。

福城聖と川添善久——事件に近い顔

刀を巡る人間関係の中で、二人の人物が印象に残る。一人は福城聖、居合道の名門・福城家に生まれた青年で、函館の大学医学部に通い、数々の居合道大会で優勝する腕の持ち主である。剣道大会を通じて和葉とも知り合っており、刀と事件の両方へ近い位置に立つ。 もう一人は北海道警の川添善久だ。現場に遅刻し、パトカーで縁石に乗り上げるようなドジな刑事だが、函館にまつわる宝の伝説や、宝を狙う容疑者たちの裏事情に異様なほど詳しい。詳しさの理由が説明されないまま、彼は捜査の傍らを歩き続ける。ほかにも、怪盗キッドの逮捕に執念を燃やす警視庁捜査二課の中森銀三警部、平次と同じ剣道大会に出る京都泉心高校の沖田総司——新選組の天才剣士から数えて六代目の名を持つ高校生剣士——が事件へ関わっていく。

北海道警の刑事である川添善久の劇場版第27作公式人物画像
刀と殺人事件を追う北海道警の刑事、川添善久。劇場版公式サイトのキーパーソン画像

暗号解読——豊玉発句集から「高度」へ

刀の暗号を解く鍵は、思いがけない方向から届く。平次のもとへかかってきた大岡紅葉からの連絡が、句集「豊玉発句集」というキーワードをもたらし、コナンたちは北海道東照宮に宝の手がかりがあると突き止める。しかし東照宮で得られた木箱は争奪の中で破壊され、中身は空だった。宝の探索は一度振り出しへ戻る。 決定的な手がかりは「高度」だった。圭三郎が残した古い写真——ガラス底の熱気球から地上を見下ろす写真——が示したのは、垂直に立てた刀の姿だった。刀を立て、その目釘穴のモチーフを、上空から見た五稜郭の星形と重ね合わせる。正しい高さで初めて配置が一致し、刀の先が指す方向が宝の隠し場所を教える。その地点は函館山だった。

コナン・キッド・平次——同じ刀を別の理由で

ここまでで、三人の追跡者が同じ事件を違う目的で走っている構図が見える。コナンは殺人を止め、証拠から真相へ届くために動く。キッドは予告した刀と、宝石ではない標的の意味を確かめるために動く。平次は事件を解く探偵であり、剣を交える当事者であり、和葉へ思いを伝える場所を探す男でもある。 役割の違いは移動の仕方にも表れる。コナンは証拠から地点を絞り、キッドは空と変装で境界を越え、平次は地面を蹴って正面から間合いへ入る。函館の坂、屋根、港、ロープウェイは、この三種類の速度を同じ画面へ置ける地形である。誰か一人の技能では全局面を解決できないため、物語は推理、奇術、剣術を危機のたびに組み替える。

函館を縦横に使うアクション

本作のアクションは、刀の横方向の斬り合いだけで組まれていない。屋根の高低差、港の開けた地面、函館山へ上がるロープウェイを使い、人物を上下へも動かす。公開記念の舞台挨拶では、コナンの乗るスケートボードがエンジン付きの特殊仕様であることや、ロープウェイを絡めた見せ場が語られた。公開直前のファンミーティングで山崎和佳奈が「ことのほかチャンバラのアクションシーンが多い」と述べた通り、刀を使う場面の多さも特徴である。 終盤、五稜郭にはカドクラ一派との集団戦が待ち、そこへ沖田総司と、同じく剣の達人である鬼丸猛が加勢する。鬼丸と沖田はいずれも青山剛昌の『YAIBA』に由来するキャラクターで、コナンの世界にも同一人物として登場してきた面々だ。小型機上での一騎打ち、パラシュート、ハングライダーの滑空と、空へ移るほどに三者の移動様式が接続されていく。観客が地理を見失わないのは、五稜郭の星、山の稜線、海という大きな目印が、速度の中でも画面に残るからである。

恋の締切——平次の告白計画と紅葉

平次には、宝より個人的で、事件より切実な目的がある。函館の景色を背に、和葉へ告白することだ。剣道大会、キッドの出現、殺人捜査が予定を次々に崩しても、彼は機会を探し続ける。事件の締切は次の被害を防ぐまで、怪盗の締切は予告時刻まで。そこへ、勇気が薄れないうちに言わなければならない恋の締切が加わる。この告白を蘭が「恋の先輩」として応援する構図も、本作の柔らかな脇筋だ。 その恋路へ割り込むのが大岡紅葉と執事の伊織無我である。幼い頃の一言をプロポーズと受け取って以来、平次を「未来の旦那さん」と思い続ける紅葉は、告白の気配を見逃さず、伊織とともにヘリコプターで函館まで追う。二人が入ると、平次と和葉の会話は偶然任せの恋愛場面から、成就させたい側と阻みたい側の作戦へ変わる。宝の争奪と恋の争奪が並走し、どちらにも情報戦と時間差がある。

笑顔で立つ遠山和葉の劇場版第27作公式人物画像
平次の剣道大会を応援するため函館を訪れる遠山和葉。劇場版公式サイトのキーパーソン画像

音楽——菅野祐悟の劇伴とaiko「相思相愛」

劇伴は菅野祐悟、主題歌はaikoの「相思相愛」である。刀、兵器、爆発という硬い語が並ぶ物語に、題名からして相手を思う柔らかな曲が置かれた。aikoは公式コメントで「大切な人を想う一心で書いた」と説明し、工藤新一の「言葉じゃなきゃ伝わらない事もある」という台詞を引きながら、音楽でしか伝えられないことを歌うと述べている。プロデューサー陣も、柔らかさと鋭さを併せ持つaikoの感情が作品に重なると受け止めた。 剣戟の拍と推理の静寂が何度も切り替わる劇中で、音楽は加速と停止の波を支える。舞台挨拶で山崎和佳奈が「これは和葉ちゃんの歌だ」と語ったように、「相思相愛」は平次と和葉の関係へ寄り添う曲として機能する。ただし「相思相愛」という言葉は成就を保証しない。互いに思っていても、言葉が届くとは限らない。

158億円——シリーズの到達点

東宝の決算資料は、本作の最終興行収入を158.0億円と記録している。公開初日の成績は興行収入9.6億円、観客動員63万人で、前作『黒鉄の魚影』対比112%の立ち上がりだった。公開73日の時点で動員1052万人、興収150億円を突破し、最終的にシリーズ歴代最高、2024年公開の日本映画でも年間トップの数字となった。 公開順では第26作『黒鉄の魚影』の次、第28作『隻眼の残像』の前に位置する。前作が海洋施設に黒ずくめの組織と灰原哀の危機を閉じ込めたのに対し、本作は函館の街全体へ人物を散らし、刀と宝の争奪を走らせた。怪盗キッドが主役級を張るのは第23作『紺青の拳』以来、平次と和葉の恋を大きく扱うのは第21作『から紅の恋歌』以来である。キッドの劇場版初登場は第3作『世紀末の魔術師』、平次と和葉を歴史ある街の剣戟の中で描いた第7作『迷宮の十字路』も、本作と系譜がつながる。

メディア展開——コミックと円盤、海外へ

小学館は本作のコミカライズを全2巻で刊行し、第1巻には原作・漫画・脚本・監督の各クレジットが記されている。Blu-rayとDVDは2024年11月27日に発売された。英語圏では『The Million-dollar Pentagram』の題で展開し、2024年9月には英国・アイルランドで英語字幕版が上映、2026年には米国での英語吹替版の公開・配信も行われた。 劇場版シリーズの累計興行収入は本作公開時点で1180億円を超えており、連載30周年とあわせ、シリーズの節目を飾る一本として位置付けられた。

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犯人は福城良衛——十文字の傷が結ぶ親子

久垣澄人を殺害し、仮面を着けてキッドをも襲った剣士は、福城聖の父で刀鍛冶の福城良衛だった。コナンは遺体の十文字を、二方向から重なった斬撃として読み直す。終盤、カドクラの部下を斬り捨てた際の傷口が同じ十文字であったこと、居合を扱う者に特有の手の傷が良衛に残っていたこと——印象に頼らず、傷を作った運動から人物へ戻る推理で、犯行へ迫る。 良衛の目的は金銭ではない。かつて斧江家二代目当主・忠之から、圭三郎の遺した宝の破壊を頼まれていた。隠し場所の見当がつかず、良衛はあえて情報を流して宝を見つける者を待ち、発見されたところを破壊しようとしていた。刀を巡る争いが息子の聖に及ぶのを防ぐ意味もあった。守るという理由は殺人を正当化せず、秘密を抱えた父の行動は、結果として聖を宝の破壊へ駆り立てた。親の保護が、同じ争いを次の世代へ渡してしまう構図である。

宝の正体——暗号機と「寝る子は起こすな」

函館山で眠っていた宝は、金塊でも新型兵器でもなく、古い暗号機と暗号解読機だった。通信が命運を握った時代なら、それは戦況を左右し得る最強の情報兵器である。しかし発見された現代では、スマートフォン一台に及ばない過去の装置にすぎない。命を奪い合ってまで追われた「兵器」は、時間の経過で実用品から歴史資料へ変わっていた。 宝の前には、かつて同じ謎を解いて先に辿り着いていた初代怪盗キッド——黒羽盗一が残した「寝る子は起こすな」のカードが添えられていた。盗一は宝を盗まなかった。価値を失った物を世に出して争いを呼ぶ必要がないと判断したからだ。息子の快斗が刀を追ったのは、亡き父の失敗を埋めるためというより、父が宝を見てなぜ退いたのかを確かめるためだったと、キッドは結末で理解する。この事件の解決は、争奪に勝者を立てることにはなかった。古い力を現在へ持ち出さないことにこそあった。

川添善久の正体——黒羽盗一と工藤家

一行の傍らにいた川添善久は、終幕で別の顔を持っていたと分かる。不敵な笑みでカドクラを狙撃してコナンを救った刑事は、死んだはずの初代怪盗キッド、黒羽盗一の変装だった。盗一は怪盗コルボーとして姿を隠し、生きて息子の探索を見守っていた。逮捕後の現場へ遅れて現れた「本物」の川添が「2泊3日のミステリー旅行」へ行っていたと釈明する場面で、入れ替わりの構造が明示される。 作中には伏線も散りばめられていた。ドジだが遅刻はしないという西村警部の証言、北海道弁「わや」のわずかに違うイントネーション、東照宮で宝の情報を川添へ話そうとした巫女へ、川添のほうから一般人のコナンたちへ話すよう促したこと、そして変装してもトランプ銃しか使わないキッドが、本物の拳銃でカドクラを撃った矛盾。さらに終幕では、工藤優作が有希子へ、自分に双子の兄がいると明かす。幼い頃に両親が離婚し、盗一は父に、優作は母に引き取られた。20年以上会っていない兄弟はメールで連絡を取り合い、盗一が数年前に盗んだ星稜刀は優作へ贈られ、工藤邸に飾られている。この事実により、黒羽快斗と工藤新一は従兄弟——よく似た顔の由来が、父親世代の血縁へ結び直された。

函館山の告白——届かなかった言葉

事件の終盤、平次は函館山で和葉へ思いを告げる。100万ドルの夜景を前に、何度も機会を逃してきた彼が、場面を整えることより今伝えることを選んだ瞬間だった。しかし上空から落下してきた閃光弾——道中の追跡を援護するため紅葉と伊織が使ったスタングレネード——の影響で、平次を庇った和葉は目くらましと一時的な聴力の喪失に見舞われる。平次は言った。和葉はそこにいた。それでも二人の間で告白は成立しない。二人を分かつのは距離ではない。音が最後の一歩を塞ぐ。 この結末は、二人の関係を元へ戻すだけではない。平次の側では、思いを言葉にできないという壁を一度は越えている。勇気を振り絞る段階は彼の中で過ぎている。次に必要なのは、届いたことを確かめる行為だ。和葉は、平次が何かを伝えた気配だけを受け取る。「相思相愛」が流れる作品で、相手を思う気持ちと、相手がそれを知ることは別のまま置かれる。宝の暗号は解けても、恋の伝達だけは未完のまま残る。 エンドロールの中では、退院を待つ中森銀三に付き添う娘の青子、桜を眺めて五稜郭をあとにする沖田と鬼丸、意識を取り戻す拓三といった面々のその後が短く描かれる。そして盗一と優作の往信、次回作『隻眼の残像』へつながる予告と、シリーズの問いは次の作品へ引き継がれた。

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