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ANNA MOVIESハリー・ポッター
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人物

シリウス・ブラック

ハリーの名付け親。親友の死の責任を着せられてアズカバンに収監され、脱獄後は自由を得きれないまま、ハリーへ家族の選択肢を示した。

「裏切り者」として登場する名付け親

シリウス・ブラックは、初登場時にはハリーの両親を死へ導いた脱獄囚として語られる。

アズカバンを破った最初の囚人。マグル十二人を殺したとされる人物。新聞に載った写真を見て逃亡した危険な魔法使い。その評判だけを受け取れば、ハリー・ポッターが恐れるべき相手に見える。

しかし真相が明らかになると、シリウスはハリーの父ジェームズの親友であり、ハリーの名付け親だったことが分かる。彼は両親の死後にハリーを引き取るはずだった。それなのに、ハリーが彼の存在を知るまでには十三年が必要だった。

シリウスの物語は、冤罪を晴らして自由になる英雄譚では終わらない。家族に背を向けた少年時代、親友を失った怒り、アズカバンで奪われた年月、そして大人になりきれないままハリーを守ろうとする姿が重なっている。彼はハリーにとって、失われた両親に最も近い人物であると同時に、親になれなかった大人でもある。

純血主義のブラック家から離れた少年

シリウスは、古くから純血を誇るブラック家に生まれた。家系図には純血主義へ背いた親族の名が焼き消されており、血統と家名を守ることが家の秩序として扱われている。シリウスはその価値観を受け継がなかった。

ホグワーツでは家の伝統に反してグリフィンドール寮へ入り、ジェームズ・ポッター、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリューと親しくなる。のちに「忍びの地図」を作る仲間となる四人は、学校を抜け出すための秘密を共有した。シリウスは父母の屋敷を十六歳ごろに出て、ジェームズの家で過ごすようになる。

この反発は正義感だけでできたものではない。シリウスは、家の圧力へ逆らうことを自分の誇りにする一方、敵と見なした相手をからかう無鉄砲さも持っていた。少年時代の彼には、純血主義を嫌う強さと、他人の痛みを見落とす未熟さが同居している。

それでも、家の期待に従うより自分で選んだ友人を家族とした選択は、後のハリーとの関係を決定づける。ブラック家が血縁を最優先したのに対し、シリウスが頼ったのは友情と約束だった。

動物もどき「パッドフット」と仲間たち

シリウスは、登録せずに犬へ変身できる動物もどきである。犬の姿では大柄な黒犬となり、仲間内では「パッドフット」と呼ばれた。この力は、満月の夜に狼男となるリーマスと一緒に過ごすため、ジェームズとピーターが身につけた変身能力の一つだった。

動物もどきの姿は、後にアズカバン脱獄の手段にもなる。人間として看守の吸魂鬼へ近づけば、絶望や恐怖を吸い取られる。犬としての意識は人間ほど複雑ではなく、痩せた体は牢の格子を抜ける助けにもなった。魔法の才覚が自由を取り戻す武器になる一方、その自由が最初から他者を救うために使われたわけではないことも、彼の人生の複雑さを示している。

ハリーが校庭で黒犬を見かける場面は、当初は不吉な「不死の犬」の予兆として受け取られる。読者とハリーが恐れた影が、実は最も近い味方だったという反転は、第三巻の謎の核である。

秘密の守人をめぐる裏切り

ヴォルデモートの標的になったジェームズとリリーは、居場所を守るため忠誠の術を使った。シリウスは本来、自分が秘密の守人になると誰もが思う位置にいた。ところが彼は、あまりに分かりやすい自分ではなく、目立たないピーターを守人にしようと提案する。

その判断を利用したピーターは、ポッター夫妻の居場所をヴォルデモートへ知らせた。両親は殺され、ハリーだけが生き残る。シリウスは裏切りを知ってピーターを追い詰めるが、ピーターは自ら指を一本切り落とし、通りにいたマグルを爆発で巻き込み、ネズミへ変身して逃げる。残された状況は、シリウスがピーターとマグルを殺したように見えた。

シリウスは裁判を受けないままアズカバンへ送られた。ダンブルドアを含め、彼を信じきれなかった人々がいたことは、戦時下の恐怖がどれほど早く結論を急がせるかを示す。彼は親友を守れなかったという自責と、真犯人が生きているという怒りを抱えたまま十二年を過ごす。

アズカバンからの脱出

転機は、ウィーズリー家の写真に写ったロンのペット、スキャバーズだった。シリウスはその前足に欠けた指を見て、ピーターがネズミの姿で生きていると確信する。写真は偶然のきっかけだが、彼にとっては失われた時間がまだ終わっていない証拠だった。

脱獄後のシリウスは、ハリーを殺すためではなく、ホグワーツにいるピーターへ近づくために城の周辺をさまよう。だがハリーにとっては説明を受けるまで、父母の仇が学校へ侵入したようにしか見えない。ここで物語は、真実を知る者と知らない者の距離を意図的に広げる。

叫びの屋敷で、シリウス、リーマス、ハリー、ロン、ハーマイオニーが同じ説明へたどり着く。シリウスはピーターを殺そうとし、ハリーは父が望むことではないと止める。この場面でハリーは、両親の友人に初めて自分の意思を示す。シリウスは怒りに引かれながらも、ハリーの言葉を受け入れる。

自由になれなかった名付け親

第三巻の結末でピーターは逃げ、シリウスの無実を公に証明する証人は残らない。彼はバックビークに乗って逃亡し、ハリーを引き取るという希望も実現しない。ハリーにとってシリウスは、ダーズリー家を出て暮らせるかもしれないという初めて具体的な未来だった。その未来が一夜で消えることは、ハリーにとって両親の死とは別の喪失になる。

逃亡中でもシリウスは手紙を送り、ハリーへほうきを贈り、炎のなかから様子を尋ねる。距離があるからこそ、彼はハリーを学校の生徒ではなく、亡き親友の息子として見つめる。ハリーもまた、シリウスへ「父に似た人」を求める。

ただし二人の関係は、生活を共にして育つ親子関係ではない。ハリーは長いあいだダーズリー家とホグワーツで生き、シリウスは牢獄と逃亡生活で時間を失った。互いが会える短い時間に大きな期待を置くため、気持ちは強くても関係は安定しない。

グリモールド・プレイス十二番地と閉塞

不死鳥の騎士団が再び動き出すと、シリウスはブラック家の屋敷、グリモールド・プレイス十二番地に身を隠す。家を逃げ出した少年が、皮肉にも家系の呪いと肖像画が残る屋敷へ閉じ込められる。彼にとってそこは安全な基地であると同時に、もっとも戻りたくなかった場所だ。

外で戦えない苛立ちは、ハリーへの接し方にも現れる。シリウスはハリーを、保護すべき十五歳の少年として見るより、ジェームズと同じく危険へ飛び込める仲間として扱いたくなることがある。ハリーはその期待をうれしく思いながらも、親友の父親と自分を重ねられることに戸惑う。

屋敷しもべ妖精クリーチャーへの扱いも、シリウスの弱点を表す。ブラック家を憎む彼は、家が象徴するものをクリーチャーにも見て、侮蔑と怒りで押し返す。その結果、クリーチャーがハリーに関する情報を歪めて伝える余地が生まれる。家の思想から逃れた人物でも、傷つけられた場所への怒りから他者を傷つけうる。

神秘部での死と、残された空白

ハリーがヴォルデモートに操られ、シリウスが拷問されている幻を見ると、彼は助けに向かう。そこで待っていたのは罠だった。神秘部では騎士団の仲間がハリーたちを救援し、シリウスもベラトリックス・レストレンジと戦う。

戦いの最中、シリウスはベラトリックスの呪文を受け、部屋にあるヴェールの向こうへ落ちる。ハリーはすぐには死を理解できない。戻ってくるはずだと思い、声をかけ、幻影のような方法で会おうとする。その否認の時間は、シリウスがハリーにとってようやく得た家族だったことを示している。

シリウスの死は、ハリーを守る大人がまた一人失われる出来事である。同時に、ハリーは大人の代わりに危険を引き受けるのではなく、仲間へ助けを求める必要を学ぶ。孤立した怒りがヴォルデモートに利用されるという構図は、シリウスが残した最も痛い教訓でもある。

原作と映画における見え方

原作では、シリウスの子どもっぽさ、苛立ち、クリーチャーへの冷酷さ、ハリーへ危険な自由を勧めたくなる衝動まで描かれる。そのため彼は理想の名付け親ではなく、奪われた青春を取り戻せないまま戦争へ戻った人物として読める。

映画版では出番が整理され、ハリーを励ます温かな父性的存在という印象が強まる。ブラック家との確執やグリモールド・プレイスでの閉塞、ピーターとの過去にある細部は小説ほど長く扱われない。映像ではハリーとの視線や別れの場面が強く残るため、彼の不安定さより喪失の大きさが前景化される。

どちらの媒体でも、シリウスは血縁ではなく選んだ関係によって家族を作ろうとした人物である。その選択は完全には実らない。それでも彼がハリーへ差し出した「ここではない場所で生きられる」という可能性は、ハリーが自分の人生を選ぶための土台として残り続ける。