本文へ移動
メイドインアビス百科事典ANNA MOVIES

人物

リコ

読み:リコ

『メイドインアビス』の主人公リコについて、出生と母ライザ、探窟家としての知識、白笛、仲間を率いる力、現在の旅を解説する。

ネタバレ範囲:劇場版『深き魂の黎明』、アニメ第2期、原作第15巻までの展開を含みます。

竹書房公式のリコ紹介画像
原作公式サイトのリコ。地上で赤笛として学んだ知識を、帰還不能の旅で使い続ける。

リコとは

リコは『メイドインアビス』の主人公で、アビスの縁にある街オースのベルチェロ孤児院で育った少女である。物語開始時は見習いの赤笛だが、最高位の白笛である母ライザに憧れ、自分も探窟家としてアビスの底へ到達することを望む。人間離れした身体能力は持たず、眼鏡が必要で、負傷すれば仲間の治療を受ける。それでも一行の目的と進路を決める中心である。

リコを無謀な子どもとだけ説明すると、旅が成立する理由を見落とす。彼女は遺物、原生生物、植物、料理、地図、探窟家の規則を学び、未知の状況で仮説を作る。一方、知りたいという欲望が強く、危険を理解しても進むため、判断が常に安全とは限らない。知識と衝動が同じ人物にあることが、作品の冒険性と危うさを支える。

出生と呪い除けの籠

リコはライザが深層探窟中に出産した子どもで、誕生時には命を失っていたとされる。白笛オーゼンは、遺物「呪い除けの籠」へリコを入れ、地上まで運ぶ。籠に入れられた死体が動き出す現象によってリコは生きるが、遺物の名称どおりにアビスの呪いを完全に無効化されたわけではない。実際、旅では上昇負荷を受ける。

オーゼンは、籠から出た生物がアビスの中心へ向かおうとする性質を示すと説明する。リコが底を目指す願いに遺物がどこまで影響しているかは、単純に確定できない。母への憧れ、幼少期からの教育、街の文化、本人の好奇心も明確に存在するからである。出自が動機のすべてを決めるという読み方は、リコが旅の途中で重ねる選択を小さくしてしまう。

ベルチェロ孤児院での生活

孤児院では、子どもたちが探窟の教育を受け、浅層から遺物を持ち帰る。リコは規則を破ってでも珍しいものを観察し、知識を蓄える。ジルオ、ナット、シギー、キユイとの生活は、後に失われる日常であると同時に、旅で使う能力を育てた場所でもある。探窟は個人の夢だけでなく、孤児院の運営や街の経済と結び付いている。

リコはレグを発見すると、遺物として回収され分解されることを避けるため、孤児院で匿う。未知の存在を知りたい好奇心はあるが、彼を物として扱う制度へ渡さない判断をする。ここに、後のボンドルドとの違いが早くも表れる。調べたいという欲望を持ちながら、目の前の相手を自分と同じ意思を持つ存在として扱えるかが、リコの探究を方向付ける。

ライザの白笛と旅立ち

深層からライザの白笛、封書、アビスの生物や遺物を描いた文書が届き、底で待つことを示す言葉が見つかる。文書のすべてをライザ本人が書いたか、誰が地上へ届けたかには謎が残る。それでもリコにとって、母とアビスの底が同じ目的地として結び付く。地上に残って情報を待つのではなく、自分で確かめることを選ぶ。

出発は正式な白笛の遠征ではなく、赤笛の子どもによる規則違反である。深く下れば上昇負荷のため戻れない可能性を知り、友人へ別れを告げる。勢いだけで家出するのではなく、日常を捨てる意味を理解した上で進む。レグが同行することで戦闘と移動の可能性は増えるが、二人だけで全層を攻略できる保証はない。

探窟知識と料理

リコの最大の強みは、知識を未知の環境へ適用する力である。生物の習性、可食部、植物、遺物の用途、笛の制度、既知のルートを記憶し、観察した現象と組み合わせる。知識にない状況では仮説を立て、仲間の能力を前提に手順を考える。完全な正解を知っているのではなく、限られた情報から次の一手を作る。

料理はその能力が分かりやすく表れる場面である。原生生物を倒して終わらず、毒や硬い部位を避け、食べられる形へ変える。食事は体力を戻し、仲間の緊張を解き、土地の生態を理解する。見慣れない材料をおいしい料理へ変えることは、アビスを征服するのではなく、その環境の中で生活可能な時間を作る行為である。

レグとの関係

レグはリコを守る高い戦闘力を持つが、彼女の命令だけで動く遺物ではない。リコは発見当初から彼を少年として扱い、名前を与え、失われた記憶を共に探す。旅の目的は母へ会うことだけでなく、レグの出自を確かめることも含む。二人の関係は探窟家と装備ではなく、異なる弱点を補う仲間である。

一方、レグがリコを守りたい気持ちは、無理な火葬砲の使用や自己犠牲へ向かうことがある。リコも彼の能力を前提に危険な計画を立てるため、対等であれば問題が消えるわけではない。互いの力を必要としつつ、相手の身体と意思をどこまで作戦へ含めてよいかを学び続ける。

負傷とナナチとの出会い

深界四層でリコはタマウガチの攻撃を受け、毒と上昇負荷によって生命の危機に陥る。レグは腕を切断して毒の拡散を止めようとしながら、正しい処置を判断できない。ナナチが現れ、治療と指示によってリコを救う。リコはこの間、行動の中心から治療される身体へ変わり、一行が一人の能力だけで成立しないことが示される。

回復後、リコはナナチとミーティの住処を受け入れ、ナナチへ仲間になるよう求める。ミーティとの別れを終えたから役に立つ人物を勧誘するのではない。悲しみを抱えたまま生きる相手に、一緒に進む未来を提示する。リコの指導力は命令の権限ではなく、異なる目的を持つ者が同じ旅へ参加できる理由を作ることにある。

プルシュカと白笛

深界五層でリコはプルシュカと出会う。外の世界をほとんど知らない彼女へ旅の話をし、短い時間で友人になる。プルシュカは一行と冒険したいと願うが、ボンドルドによってカートリッジへ加工される。戦いの後、彼女の願いは生命を響く石となり、リコの白笛になる。

白笛を得たことでリコは形式上も最高位の探窟家へ近づくが、経験や身体能力が突然白笛級になるわけではない。笛はプルシュカとの関係を物として所持するだけの勲章でもない。使用するたび、彼女が望んだ旅をどう続けるかが問われる。リコの白笛は、他者の犠牲を力へ変える危険と、その願いを忘れず同行させる責任の両方を持つ。

成れ果て村での判断

深界六層の成れ果て村では、価値が身体と物に直接作用する。リコは自分の身体の一部と引き換えにナナチを取り戻す選択肢を示されるが、すぐに支払わず別の方法を探す。村の仕組みを理解し、マジカジャ、ムーギィ、ワズキャン、ヴエコらの情報をつなぎ、ファプタと村の関係を考える。

リコは村を救う英雄にも、ファプタの復讐を裁く裁判官にもならない。自分たちが通過者であり、過去の全責任を理解できないことを抱えながら、仲間を助けるために動く。ワズキャンはリコを新たな中心として利用する可能性を持つが、彼女は他者の願いを自分の目的へ吸収されないよう選び直す。

リーダーとしての資質

リコは最も強い人物ではなく、最も慎重な人物でもない。それでも一行のリーダーと呼べるのは、目的地を示し、各人の能力を結び、判断の責任を引き受けるからである。レグには戦闘、ナナチには医療と力場、ファプタには深層への感覚がある。リコは自分にない能力を認め、誰の知識をどの場面で信頼するかを決める。

同時に、彼女の目的が仲間を危険へ導く事実は消えない。底を目指す願いを全員へ強制しないためには、同行者がそれぞれの理由を持ち、離れる選択も可能である必要がある。リコは仲間を所有せず、旅へ誘う。その開放性が、出自も身体も異なる一行を一つの隊にする。

現在の目的と人物像

現在のリコは、母ライザへ会うという出発時の目的を保ちながら、巫女、獣相、呪詛船団、レグの過去、アビスの魂といった新しい謎へ向き合う。情報が増えるほど、最初の封書をそのまま信じて底へ急ぐだけでは済まない。誰が何を知り、どの言葉が観測事実で、どこからが誘導なのかを見分ける必要がある。

リコの魅力は、苦痛を知らないから明るいのではなく、苦痛と不可逆性を知った後も未知へ価値を感じられることにある。その姿勢は危険であり、周囲へ負担をかける。それでも、他者を道具へ還元せず、一緒に見たいものを言葉にする。アビスへ惹かれる欲望を否定せず、その欲望の持ち方を問い続ける主人公である。

身体的な弱さと継続する代償

リコの負傷は、一話限りの危機として完全に消えない。四層で受けた傷、腕の機能、上昇負荷、飢えは、その後の装備と行動へ影響する。回復したから以前と同じ身体へ戻るのではなく、仲間の治療と工夫を前提に旅を続ける。

この弱さは主人公としての欠点を埋めるための設定ではない。レグやファプタの強い身体だけでは得られない、痛みを受ける人間の視点を隊に残す。何を食べ、どこで休み、どの高さを避けるかを判断することが、戦闘と同じ重さを持つ。

母ライザをどう見るか

リコはライザを英雄として憧れるが、共に暮らした記憶はほとんどない。母の人物像は、白笛の伝説、オーゼンの証言、文書、他者の記憶から組み立てられる。会いたい相手は実在の母であると同時に、届いた断片から作った理想像でもある。

底へ到達したとき、ライザが期待どおりに待つ保証はない。それでも旅が無意味になるわけではない。リコは母を追う過程で仲間を得て、自分自身の白笛と判断を持つ。母の足跡をなぞる旅から、母と異なる探窟家になる旅へ変化している。

公式情報