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遺物・装備

欲望の揺籃

読み:よくぼうのようらん

欲望の揺籃は、触れた者の願いを身体変容とともに実現する等級不明の遺物。ガンジャ隊が発見した三つの使用経緯、イルミューイ、ワズキャン、成れ果て村とファプタへの影響を整理する。

ネタバレ範囲:原作第9巻までの展開とTVアニメ第2期の範囲を含みます。

欲望の揺籃に関わるワズキャンの作中シーン
揺籃の運用を主導した[[characters-wazukyan|ワズキャン]]。隊の存続のため、遺物の力を惜しみなく使った。

欲望の揺籃とは

欲望の揺籃は、卵形の外見を持つ等級不明の遺物である。「願いをかなえる卵」とも呼ばれ、直接触れた原生的な存在の身体へ付着し、その願いを実現する。発見場所は深界六層以深とされ、ガンジャ隊は六層で三つを見つけた。

願いを実現する一方、使い手の身体には大きな変化が起こる。特に成熟した人間のように思考や欲求が複雑な者は、複数の願いを整理できず、身体が崩れて死に至る危険が高い。干渉器は、思考が未成熟で恐怖が根源に近い子どもの方が、願いを実現できる可能性が高いと説明した。

この性質は、病に追い詰められたガンジャ隊がイルミューイを使い手に選ぶ理由になった。揺籃は成れ果て村の成立、ファプタの誕生、ワズキャンの身体変化へ連なる。単発の奇跡ではなく、六層の歴史そのものを変えた遺物である。

願いをかなえる仕組み

発動の入口は素手での接触である。揺籃は触れた対象へ取り付き、内側にある願いを身体の変化として実現する。使用者が明確な文章で命令し、その文面だけが実行される装置ではない。本人が抱える欲求や恐れが絡むため、使い手自身にも結果を完全には選べない。

干渉器の説明では、成熟した人間の心は複雑で、願いが散らばりやすい。ガンジャ隊の大人たちが見つけた揺籃へ触れた際には、身体がいびつに変わり、やがて死んだ。これは願いの大きさに応じて一定の代償が請求されるという単純な交換ではなく、複雑な思考を一つの形へまとめられない危険を示す。

イルミューイは子どもであったため、揺籃が願いを形にできる可能性が高いと判断された。しかし彼女の中にも、子どもを産みたい願い、ヴエコへの思い、病から逃れたい願いが重なっていた。結果は治療だけに収まらず、身体の変容と出産を繰り返すものになった。使い手が幼いことは成功の保証ではない。

揺籃の働きを「願いと引き換えに身体を奪う」とだけ要約すると、イルミューイの複数の願いが同時に現れた点を落としてしまう。どの願いがどの変化へ対応したのかは、作中人物にも完全には理解されていない。確実なのは、願いの実現と身体変化を切り離せないことである。

ガンジャ隊が見つけた三つの揺籃

ガンジャ隊の採集班は深界六層で同型の揺籃を三つ発見した。一つ目は、擬水による病が隊内へ広がった際、ワズキャンの判断でイルミューイへ使われる。彼女は病を乗り越えるが、身体は子どもを産み続ける形へ変わり、生まれた子どもは長く生きられなかった。隊はその子どもを食料として病をしのぐことになる。

二つ目もイルミューイへ用いられた。一つ目の揺籃が壊れたのに対し、二つ目は壊れず力を保ったと作者の補足で説明されている。二つの作用が重なり、イルミューイの身体は人々を内側へ受け入れる巨大な存在へ変わっていく。どの変化をどちらの揺籃だけに帰せるかは明確ではない。

三つ目はワズキャン自身が使い、使用後に壊れた。壊れた揺籃は彼の人間の身体とともにイルミューイへ取り込まれ、ワズキャンは村の成れ果てとして存在するようになる。三つの揺籃は同型でも、使い手と状況によって異なる帰結を生んだ。

発見や使用の判断を、ワズキャン、ベラフ、ヴエコの三賢が同じ方針で進めたわけではない。特にヴエコはイルミューイの身近な存在として、彼女が手段にされる過程へ苦しむ。隊を救う決断と、一人の子どもを守る感情が対立する点まで含めて、揺籃の使用経緯を考える必要がある。

成れ果て村との関係

変容したイルミューイは、のちの成れ果て村イルぶるの母体になる。ガンジャ隊の人々は彼女の内側へ入り、人間の身体を失う代わりに六層で生き続ける形を得た。欲望の揺籃が村の規則を直接設計したわけではないが、村という場所が成立する身体を生んだ原因である。

村の価値は、住民の望みと身体を結び付ける。欲しい姿、交換したい物、傷つけた分の精算が、村の力によって具体的な形になる。この制度を揺籃と完全に同一視することはできない。一方、内側の欲望が身体や環境へ現れるという点では、イルミューイに起きた変化の延長として読むことができる。

ファプタはイルミューイの最後の子として、きょうだいたちの価値と村を終わらせる望みを託される。彼女が三つの揺籃を無傷の品として携帯しているわけではない。揺籃の作用を受けた母から生まれ、その力と価値を継承した存在と表現する方が正確である。

成立の経緯を現在の住民全員が知っているわけではない。ヴエコの記憶は、村の外観からは見えないイルミューイの苦痛とガンジャ隊の選択を伝える。揺籃を解説する際は、村が残ったという結果だけでなく、その結果へ至る過程を記録した人物の視点が欠かせない。

ファプタが村の外で生きられたことも、母体となったイルミューイとの違いを示す。村の住民は内部の価値に守られる代わりに外へ出られず、ファプタは外から村を終わらせる使命を負う。同じ揺籃の帰結から、閉じた共同体と外を動く子が生まれた。

原作とアニメでの登場

原作での初出は第49話、第8巻である。ガンジャ隊の過去と成れ果て村の成立が明かされる回想の中で、卵形の遺物として登場する。その後の話で干渉器による説明、イルミューイへの使用、三つの揺籃の行方が段階的に示される。

TVアニメ『烈日の黄金郷』では第7話から扱われる。イルミューイの身体へ揺籃が付着し、願いの結果が少しずつ変容として現れる過程を、声、時間経過、動きによって描く。原作と映像で基本設定は共通するが、画面上の印象を新たな能力説明として付け足すべきではない。

欲望の揺籃は回想時代の遺物であり、現在のリコ一行が道具として使う場面はない。しかし、現在の村、住民、ファプタがその作用の帰結であるため、登場場面だけを追うより影響は大きい。過去の一度の選択が、長い時間を隔てて現在の事件を決めている。

複数存在する遺物という特徴

同型が三つ見つかっている点は、欲望の揺籃の大きな特徴である。遺物には同種が複数確認される例もあるが、願いを実現するほど強い作用を持つ品が同じ場所でまとまって得られたことは、ガンジャ隊の運命を大きく変えた。三つを順に使えたからこそ、結果が一回で終わらず積み重なった。

同じ外見と基本作用を持っていても、使用後の状態は一致しない。一つ目と三つ目は壊れ、二つ目は力を保った。差が個体差なのか、使用者、願い、残っていた力によるのかは断定できない。三つを完全に同じ性能の消耗品として数えるのは避けたい。

分布は深界六層とそれより深い領域とされる。現時点で製作者、製造時期、残存総数は不明である。ガンジャ隊が三つ見つけた事実から、他にも必ず多数あると結論づけることはできない。既知の三つと、存在するかもしれない未知の個体を区別する必要がある。

三つという数は確認済み個体の数であり、現存する無傷の遺物が三つという意味ではない。使用後に壊れた個体とイルミューイへ残った作用を区別すると、過去の発見数、使用数、現在の状態は別々に整理する必要がある。

判明していることと未解明点

判明しているのは、接触した存在へ付着して願いを実現すること、成熟した人間では思考の複雑さが危険を増すこと、ガンジャ隊が三つを発見したことである。イルミューイとワズキャンへの使用後、身体と共同体に大きな変化が生じたことも作中で確認できる。

一方、願いを読み取る原理、複数の願いをどの順番で実現するか、同じ人物へ複数個を使った際の干渉は説明されていない。一つ目と二つ目がイルミューイへ与えた影響も、完全に分解して対応づけることはできない。

三つ以外の現存数も不明である。六層以深で見つかるという情報は、どこでも容易に採集できるという意味ではない。願いをかなえるという強い言葉から万能な道具へ広げず、作中で起きた使用例と干渉器の説明を基準にする必要がある。

呼称の由来と表記

「揺籃」は、ゆりかごを意味する語である。生まれるものを育て、包み込む器。そこに欲望という語を組み合わせた呼称は、願いを孕み、かなえる遺物としての性質を端的に示している。英語表記のCradle of Desireも、揺籃と欲望をそのまま結んでおり、和名と英語名が直接対応している。

作中で命名の意図が説明される場面はない。しかし、揺籃の効果が「生む」ことと深く結びつく以上、揺籃の名は機能の比喩としてほとんど説明書きに近い。欲望が生まれる、という読み方もできる。卵形の姿と合わせて、誕生のイメージで統一された名前である。表記は記事名の欲望の揺籃で統一されており、検索でもこの表記が主に使われる。

外見は装飾された卵を思わせ、内部から何かを生み出す形と、願いによって身体を作り変える作用が重なる。ただし、一般的な卵のように殻を割って内容物を取り出す道具ではない。触れた者へ付着し、その身体を結果の場にする点が大きく異なる。

物語における意味

欲望の揺籃は、願いが一つの言葉へ整理できないことを身体で示す遺物である。イルミューイは病から救われることだけを望んだのではなく、子どもを産みたい思いと、愛されたい思いも抱えていた。遺物は都合のよい一つだけを選ばず、絡み合った願いを同じ身体へ表した。

ガンジャ隊にとって使用は生存の手段だった。何もしなければ病で全滅する状況で、子どもへ未知の遺物を使い、その結果を食料として利用した。隊が救われたという事実と、イルミューイが受けた苦痛は相殺されない。正解のない局面で誰の命を手段にしたかが残る。

村とファプタは、揺籃の効果が使用時点で終わらないことを示す。変容した身体が住居になり、そこから生まれた子が使命を持ち、過去を知らない住民まで結末へ巻き込まれる。願いはかなった瞬間だけで評価できず、その後に生きる者へどのような世界を残したかまで見なければならない。

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