海軍第153支部は、東の海のシェルズタウンに置かれた海軍の地方支部である。 原作第3話で、ロロノア・ゾロが拘束されている海軍基地として登場した。 当時の支部長は「斧手のモーガン」こと海軍大佐モーガンであり、基地だけでなく町全体を恐怖で支配していた。
ルフィとゾロがモーガンを倒した後、支部の海兵たちは圧政から解放される。 リッパー中佐が指揮を引き継ぎ、コビーとヘルメッポを雑用係として受け入れた。 物語の最初期に、海軍という巨大組織の中にも権力を私物化する者と、それへ疑問を持ちながら従わされる者、規律と義理を自分で選び直す者がいると示した拠点である。
基本情報
- 正式名:海軍第153支部
- 英語表記:Marine 153rd Branch
- 所属:海軍
- 所在地:東の海、シェルズタウン
- 初登場:原作第3話、TVアニメ第2話
- 旧支部長:モーガン大佐
- モーガン失脚後の指揮官:リッパー中佐
- 主な所属者:リッパー、ロッカク、ウッカリー、コビー、ヘルメッポ
「第153支部」という語は、シェルズタウンを管轄する部隊と、その部隊が駐留する海軍基地の双方を指して使われる。 組織として説明するときは所属海兵と指揮系統、場所として説明するときは営舎、訓練場、処刑場、港との関係が中心になる。 本記事では両者を分断せず、支部組織が基地を通じて町へ及ぼした影響まで扱う。
東の海の支部と海軍本部
海軍の地方支部は、それぞれの海域で治安維持、海賊の逮捕、拘束、船舶の運用などを担う。 偉大なる航路に置かれるGナンバーの支部とは表記体系が異なり、第153支部は東の海の番号付き支部である。 「153」という数字はTVアニメ第153話や海軍G-5を意味しない。
支部の将校は同じ階級名でも海軍本部所属者と扱いが異なることがあり、モーガンの「大佐」は東の海支部の基地司令官としての地位である。 一方、モンキー・D・ガープは海軍本部中将として第153支部へ来航し、拘束中のモーガンを引き取る。 その後、ガープは支部の雑用係だったコビーとヘルメッポを自分の部下として本部へ連れていく。
この上下関係から、第153支部が独立した軍隊ではなく、海軍全体の地方機関であることが分かる。 支部長は管轄地で大きな権限を持つが、本部の監督や人事から完全に切り離されてはいない。
モーガンによる支配
モーガンは、海賊クロを捕らえた功績によって昇進したとされた人物である。 実際にはクロの策略で替え玉を捕らえただけだったが、本人はその名声と階級へ執着し、やがて第153支部の大佐・基地司令官となる。
モーガンは海軍の「正義」を共同体の安全ではなく、自分への服従へ置き換えた。 町へ自分の像を建てさせ、命令に逆らう者を海兵であっても処刑しようとし、息子ヘルメッポの横暴も放置する。 住民は海賊より海軍大佐の名を恐れ、支部の制服は保護ではなく威圧の印になっていた。
支配が続いた理由は、全海兵がモーガンへ心から忠誠を誓っていたからではない。 命令への反対が死へ直結するため、部下は疑問を持っても従わざるを得なかった。 ロッカク中尉が少女リカの処刑命令を拒否した際、モーガンは味方である彼を斬りつける。 この場面は、支部内の規律が軍務ではなく一人の恐怖政治へ変質していたことを端的に示す。
ゾロの拘束
ロロノア・ゾロは、ヘルメッポの飼う狼から少女リカを守ったことで基地へ拘束される。 ヘルメッポは一か月耐えれば解放すると約束するが、実際には処刑するつもりだった。 ゾロは約束を信じたというより、少女と町へ報復が向かないよう、自分が罰を引き受ける。
拘束場所は基地の中庭であり、柱へ縛られ、食事も与えられない。 リカが差し入れたおにぎりをヘルメッポが踏みつける場面によって、支部内では法的手続きより司令官の息子の気分が優先されていると分かる。
ここへモンキー・D・ルフィとコビーが訪れる。 ルフィはゾロが恐れられる賞金稼ぎであることより、少女を助け、泥に落ちたおにぎりを食べる人物であることを見る。 第153支部は、ルフィが最初の仲間を選ぶ場所であると同時に、コビーが憧れてきた海軍の現実と向き合う場所になる。
モーガン敗北と海兵たちの反応
ルフィはゾロの刀を取り戻し、ゾロは処刑される前に解放される。 二人はモーガンと支部の海兵たちを相手に戦うが、海兵の大半は自分たちの意思で町を苦しめる敵として描かれない。 モーガンの命令で攻撃し、敗北を恐れ、さらに「敗北主義者」として自害を命じられる側である。
ルフィがモーガンを退け、ゾロが最後の攻撃を止めると、支部の海兵たちは両腕を上げて喜ぶ。 海賊が海軍基地を倒したのに、海兵が解放を祝う逆転が重要である。 制服や所属だけでは誰が町を守っているかは決まらず、命令の正当性を判断できるかが「正義」を分ける。
モーガンは拘束され、支部長の地位を失う。 公式キャラクター情報では、その後リッパー中佐が後任に収まったと案内されている。 支部自体は廃止されず、指揮官を替えて本来の海軍機関へ戻る。
リッパー中佐と送別の判断
リッパーは、モーガン失脚後の第153支部を代表する人物である。 ルフィとゾロがレストランで食事を取っているところへ海兵を率いて現れ、海賊である二人へ町から出るよう求める。 表面だけ見れば追放だが、リッパーは二人が支部を救った事実を理解している。
コビーは海軍への入隊を望むものの、アルビダ海賊団で雑用をしていた過去が問題になる。 ルフィはコビーが自分と親しいままでは入隊できないと考え、わざと彼を怒らせて殴り合い、仲間ではないように見せる。 リッパーはその意図を見抜きながら深追いせず、コビーを受け入れる。
出航するルフィとゾロへ海兵たちが敬礼すると、リッパーは海賊への敬礼は規律違反だとして全員へ食事抜きを命じる。 しかし敬礼そのものを止めるのではない。 感謝を示す行為と、組織の規律に対する責任を同時に引き受ける判断であり、恐怖だけで命令したモーガンとの違いが表れる。
主な所属者
### リッパー中佐
モーガン失脚後に支部を指揮する将校である。 規則を知りながら状況と義理を判断し、コビーの入隊を許可する。 支部が同じ制服のまま性格を変えられたのは、命令の出し方と責任の取り方が変わったからである。
### ロッカク中尉
ロッカクは、リカを処刑せよというモーガンの命令へ公然と反対した。 斬られて気絶するが、海軍の規律が非道な命令への無条件服従ではないことを、モーガン政権下で最初に行動で示す。
### ウッカリー三等兵
ウッカリーは第153支部の三等兵である。 名前通り不注意な一面を担う人物だが、支部の構成員が大佐や中佐だけではなく、現場の下士官・兵卒から成ることを可視化する。
### コビーとヘルメッポ
コビーとヘルメッポは、モーガン失脚後に第153支部へ雑用係として入る。 一人は海賊に使役されていた少年、もう一人は支部長の息子として権力を乱用していた少年であり、どちらも過去だけを理由に将来を閉ざされない。 床磨きや炊事から始め、後にガープのもとで本部海兵として鍛えられる。
「コビメッポ奮闘日記」と支部のその後
扉絵連載「コビメッポ奮闘日記」では、拘束されたモーガンをガープ中将へ引き渡す場面が描かれる。 モーガンは移送中にガープを斬り、ヘルメッポを人質にして逃走する。 ヘルメッポは父と行動せず海へ飛び込み、コビーとともにガープの船へ戻る。
ガープは二人を直属の部下として引き取り、第153支部から海軍本部へ移す。 この転属によって、支部はコビーとヘルメッポの最終所属ではなく、二人が海兵として出発した場所になる。 モーガンの息子という立場に依存していたヘルメッポが、自分で海軍へ残る選択をした点でも転換点である。
後の扉絵連載「世界の甲板から」では、成長したリカが第153支部の食堂で働く姿とリッパーが描かれる。 かつて処刑命令を受けた少女が海兵へ食事を提供する光景は、基地と町の関係が回復したことを一枚で示す。 支部はモーガンの像ではなく、住民が日常的に出入りできる場所へ変わった。
原作・TVアニメ・実写版の区分
原作漫画では第153支部は第3話から登場し、ゾロ拘束、モーガン敗北、コビー入隊を担う。 TVアニメは第2話から基地を描き、クロの替え玉処刑など後のエピソードで原作にない回想も追加する。 アニメ独自場面をモーガン昇進の原作描写と完全に同一視しないほうがよい。
Netflix実写版にもシェルズタウンの海軍基地、モーガン、ヘルメッポ、コビー、ゾロは登場するが、ガープが物語の早い段階から基地へ来るなど構成が異なる。 実写版の基地で起きる事件は、原作第153支部の正史上の出来事を上書きしない。
海軍第153支部の意義は、海軍を単純な敵組織として登場させなかった点にある。 同じ基地にモーガン、ロッカク、リッパー、コビーが所属し、それぞれが異なる正義を選ぶ。 ルフィが海賊でありながら町と海兵を救い、海兵が規律違反を承知で敬礼する場面は、『ONE PIECE』における所属と人格のずれを最初に示した例である。


