人造悪魔の実は、人為的な研究と生産によって悪魔の実の能力を再現しようとした果実の総称である。原作で確認されている主要系統は、Dr.ベガパンクがカイドウの血統因子から作った実と、シーザー・クラウンがSADを用いて量産した人造動物系悪魔の実「SMILE」である。
二つは見た目が似る場合があっても、材料、精度、製法、成功率、能力の現れ方が異なる。さらに、エッグヘッド編で明かされたグリーンブラッドは超人系能力を再現する技術だが、食べる果実ではない。人造悪魔の実の記事では、果実そのものと、能力だけを兵器・血液へ応用した技術を分けて扱う必要がある。
分類
| 系統 | 開発者 | 基礎材料 | 再現対象 | 確認された使用者・用途 | 主な問題 | |---|---|---|---|---|---| | ベガパンク製の試作果実 | Dr.ベガパンク | カイドウから採取した血統因子 | 動物系・幻獣種の龍 | 光月モモの助 | ベガパンクは色の違いを理由に失敗作と判定 | | SMILE | シーザー・クラウン、ドンキホーテ・ドフラミンゴの生産網 | 多数の動物の血統因子を混ぜたSAD、栽培果実 | 通常動物に由来する動物系能力 | 百獣海賊団のギフターズなど | 成功率約10%。失敗者にも泳力喪失と表情の副作用 | | グリーンブラッド | Dr.ベガパンク | 超人系能力者の血統因子を合成した液体 | 超人系能力 | セラフィム | 果実ではなく、体内を循環させる人工血液 |
この表で「失敗」と呼ばれる意味も同じではない。モモの助の実は能力を発現し、龍への変身と炎雲まで再現したが、変身後の色が元のカイドウと異なるため、完璧主義のベガパンクが失敗作とした。SMILEの失敗は、能力を得られない大多数の消費者へ深刻な副作用だけが残るという、機能上・倫理上の失敗である。
ベガパンク製の試作果実
ベガパンクは、ウオウオの実 幻獣種 モデル“青龍”の能力者カイドウから血統因子を採取し、それを基に人工の果実を作った。世界政府は成果へ関心を示したが、ベガパンクは実を失敗作と報告する。パンクハザードの研究所に保管されたまま、島の事故で失われたものと考えられていた。
パンクハザードへ連れてこられた幼いモモの助は、空腹の中で保管室にあった実を食べる。身体は桃色の龍へ変化し、最初は恐怖や感情に反応して制御できなかった。成長後は巨大な龍になり、空中に炎雲を生み、鬼ヶ島を支え、龍の攻撃能力を使うまでに至る。
当初、読者が知るのは「ベガパンクが失敗作とした」という評価だけだった。エッグヘッド編で本人が語った理由は、カイドウの龍が青いのに対し、モモの助の龍が桃色だったことにある。能力が働かなかったからではない。政府側の感覚では十分に成功した軍事技術でも、ベガパンクにとっては外見まで一致しなければ完成ではなかった。
この果実が幻獣種まで再現できたのは、現存する能力者カイドウの血統因子を材料にしたためである。自然界の動物を材料にするSMILEとは出発点が違う。人工である以上、正式な「ウオウオの実 モデル青龍」が二個同時に存在したわけではなく、元の能力を複製した別の果実として管理する。
血統因子と複製
血統因子は、生命の設計情報に相当する作中の科学概念である。悪魔の実を食べた者の血統因子には能力の影響が現れ、ベガパンクはそれを解析して複製技術へつなげた。
動物系は生物への変身を扱うため、血統因子から果実を作る方法が成立した。ただし、幻獣種の再現には莫大な時間と費用がかかる。モモの助の実が一個だけ確認され、同じ規模で量産されていないのは、色の問題だけでなく製造負担の大きさも関係する。
超人系は、能力者の血統因子を合成したグリーンブラッドを対象の身体へ循環させることで再現できる。自然系について、ベガパンクはさまざまな手段を試したが、容易には複製できないと説明した。したがって、「人造悪魔の実が完成したので三系統すべてを果実として量産できる」という理解は誤りである。
SMILEの生産網
SMILEは、シーザーが開発した薬品SADを基礎にする。SADは多数の動物から抽出した血統因子を混合して作られ、パンクハザードの製造設備からドレスローザへ運ばれた。
ドレスローザのSMILE工場では、ドンキホーテ海賊団がトンタッタ族を欺き、果樹の栽培と収穫へ従事させた。完成したSMILEはドフラミンゴからカイドウへ渡り、武器取引と結びつく。科学者一人の研究ではなく、原料、輸送、強制労働、闇取引、軍隊への投与から成る国際的な生産網だった。
ローと麦わらの一味は、カイドウの戦力を減らすため、パンクハザードのSAD製造装置とドレスローザの工場を破壊する。シーザーの拘束とドフラミンゴの敗北により、既存の供給線は断たれた。残ったSMILEや能力者が直ちに消えるわけではないが、新規の大量生産は停止した。
成功者ギフターズ
SMILEを食べて動物の力を得られるのは、およそ十人に一人である。成功者は百獣海賊団でギフターズと呼ばれる。能力は哺乳類、鳥、爬虫類、昆虫、甲殻類など広い動物へ及ぶ。
自然の動物系悪魔の実では、人型、獣型、人獣型を使い分けるのが基本だが、SMILEの現れ方は不規則である。手や腹から動物が生える、下半身全体が動物になる、身体の一部と動物側の意思が別々に動くなど、使用者が望む形へ変身・解除できない例が多い。同じ動物のSMILEが複数存在し、発現部位も異なりうる。
動物の感覚や運動能力を得る一方、使用者との相性が良いとは限らない。動物側に噛まれる、身体構造が日常動作を妨げる、特技を使うと本人の体力が追いつかない例もある。人造だから一律に弱いと決めつけるのではなく、能力者ごとの発現形態と実戦結果を記録する必要がある。
ギフターズは動物の要素を持つため、キビキビの実で作られたきびだんごの影響を受ける。お玉の力によって多数のギフターズが味方へ転じたことは、人工的に動物の血統因子を組み込んだ能力が、別の悪魔の実との相互作用まで引き起こす例である。
失敗したSMILEとプレジャーズ
残る約九割の消費者は動物能力を得られない。それでも海に嫌われて泳げなくなり、悲しみや怒りを表情へ出せず、どのような状況でも笑顔と笑い声しか表せない副作用を負う。百獣海賊団では、この失敗者がプレジャーズと呼ばれる。
通常の悪魔の実は、最初の一口を誰かが食べた後、残りがただの不味い果実になる。失敗したSMILEは、かじられた残りにも表情を奪う作用が残る。黒炭オロチはその残飯をワノ国の貧しい人々へ流し、えびす町の住民たちは空腹のため口にした。
トコたちが肉親の死を前に笑うのは、悲しんでいないからではない。表情と声が笑いへ固定され、内面の感情を外へ出せないためである。「SMILE」という名は幸福を与える商品名ではなく、失敗者の苦しみを笑いとして見せる残酷な構造を表す。
食べる前の構成員はウェイターズと呼ばれ、配給される機会を待つ。ギフターズ、プレジャーズ、ウェイターズという階層は、能力獲得を賭けにした百獣海賊団の人員制度でもある。
自然の悪魔の実との違い
人造悪魔の実を自然の実と比較する際は、少なくとも次の点を分ける。
第一に、同一性である。自然の悪魔の実は同じ能力が同時期に二つ存在しないとされるが、SMILEでは同じ動物を基にした複数の実が作られる。ベガパンクの試作果実も、カイドウが生存する間に類似した龍の力をモモの助へ与えた。
第二に、変身の制御である。自然の動物系は段階的な形態を持つのに対し、SMILEは動物部位が常在し、使用者と別の意思を示す場合がある。モモの助の試作果実は、訓練後には通常の龍型へ近い操作が可能になった。
第三に、成功率である。自然の実は食べた者へ固有能力を与えるが、SMILEは大多数が能力を得られない。副作用だけは成功・失敗の双方へ及ぶ。
第四に、死後の扱いである。自然の悪魔の実の力は能力者の死後、別の果実へ宿り直す。単行本第111巻SBSでは、人造悪魔の実は能力者が死んでも再び実として復活しないと説明された。モモの助の実、個々のSMILE、グリーンブラッドを同じ循環へ入れない。
グリーンブラッドは果実ではない
セラフィムに使われるグリーンブラッドは、超人系能力者の血統因子を合成した人工血液である。S-シャークのスイスイの実、S-スネークのメロメロの実、S-ホークのスパスパの実、S-ベアのニキュニキュの実に相当する能力が確認されている。
同じ能力の自然な実をもう一個作り、セラフィムへ食べさせたわけではない。身体を循環する液体が能力を発現させる。海のエネルギーを利用したバブルが能力者へ効くように、複製能力にも悪魔の実に由来する弱点が現れる。
また、パシフィスタのレーザーは黄猿のピカピカの実を研究して兵器化したものだが、自然系の果実を複製した例とはされていない。無機物へ悪魔の実を食べさせる技術も、既存の自然な果実の摂取方法であり、人造果実の製造とは別である。
研究史と倫理
ベガパンクとシーザーは、どちらも血統因子研究を利用したが、成果への基準と運用が異なる。ベガパンクは色の差だけでも失敗と判定するほど再現精度を重視した。一方のシーザーは、九割が失敗し重大な副作用を負う製品を、ドフラミンゴとカイドウの軍事需要へ結びつけた。
ただし、ベガパンク製だから倫理上無条件に安全という意味ではない。カイドウからの血統因子採取、政府の兵器需要、セラフィムへの能力実装はいずれも、本人の同意、複製された力の所有、人工生命の扱いという問題を含む。記事では技術的成功と、利用の正当性を別に評価する。
人造悪魔の実は、希少な一個の能力を大量生産可能な軍事資源へ変えようとする試みである。モモの助の成功は複製の精度を、SMILEの犠牲者は量産の代償を、グリーンブラッドは果実という形すら不要になりうる次の段階を示している。
関連項目
- 悪魔の実
- Dr.ベガパンク
- 光月モモの助
- ウオウオの実 幻獣種 モデル“青龍”
- SMILE
- シーザー・クラウン
- パンクハザード
- ドレスローザ
- SMILE工場
- ドンキホーテ・ドフラミンゴ
- 百獣海賊団
- ギフターズ
- ウェイターズ
- グリーンブラッド
- セラフィム


