ベザン・ブラック号は、クロネコ海賊団が使用する海賊船である。
黒猫の頭部をかたどった船首像と、赤と黒を基調にした船体を持ち、シロップ村襲撃のため島の沖へ現れた。
原作本編では船名を呼ぶ場面がなく、名称は後年の公式ガイドブック『ONE PIECE YELLOW GRAND ELEMENTS』で明かされた。
基本情報
- 名称:ベザン・ブラック号
- 読み:べざん・ぶらっくごう
- 所属:クロネコ海賊団
- 歴代の指揮者:クロ、ジャンゴ
- 主な登場編:シロップ村編
- 原作初登場:第26話
- TVアニメ初登場:第10話
- 特徴:黒猫の船首像、猫の爪を思わせる側面装飾、赤黒い上部構造
船種、全長、建造者、建造地、正式な砲門数は明かされていない。
外観と作中での運用から確認できる範囲を超えて、性能表を補うことはできない。
船名の扱い
ベザン・ブラック号は物語の初期から画面に登場するが、シロップ村編の台詞では固有名が示されない。
そのため、初読時には「クロネコ海賊団の船」として認識される。
公式ガイドブックで名称が補われたことにより、後の船一覧やゲーム資料で他の海賊船と区別できるようになった。
「作中人物が船名を呼んだ時点」と「読者向け資料で名称が確定した時点」は同じではない。
記事上では、原作第26話を船の初登場、ガイドブックを名称の確認元として分けて記録する。
船体デザイン
最も目立つ意匠は、船首に据えられた黒猫の頭部である。
丸い目、耳、歯を見せた口を持つ船首像が、クロネコ海賊団の名を遠くからでも示す。
船首の左右には、大きな猫の爪を思わせる飾りが張り出している。
甲板上の構造物は赤と黒を中心に塗り分けられ、船体下部には緑色が見える。
動物の意匠を旗だけでなく船そのものへ拡張したデザインであり、海賊団の象徴として機能する。
一方、猫の船首像に可動機構や特殊兵器があるとは描かれていない。
少なくともシロップ村編では、装飾としての役割が中心である。
クロネコ海賊団の旗艦
クロネコ海賊団は、かつて「百計のクロ」ことクロが率いた東の海の海賊団である。
クロは海軍と賞金稼ぎから追われ続ける生活に疲れ、自分が捕まって処刑されたように見せる偽装計画を実行した。
その際、船の整備係ヌギレ・ヤイヌを自分に見せかけ、ジャンゴの催眠でクロ本人だと思い込ませる。
海軍へ引き渡されたヤイヌがクロとして処刑されたことで、本物のクロは死亡扱いとなった。
クロが船を離れた後はジャンゴが船長を務め、ベザン・ブラック号と残った船員を指揮する。
船の所有関係が正式に移転したという契約があるわけではないが、シロップ村襲撃時の実務上の指揮官はジャンゴである。
シロップ村へ来た目的
クロは偽装死後、クラハドールと名乗って資産家カヤの屋敷へ入り、三年間にわたって執事として信用を得る。
最終段階ではクロネコ海賊団をシロップ村へ呼び寄せ、村を襲わせ、カヤに遺言状を書かせたうえで殺害する計画だった。
ベザン・ブラック号は、単なる略奪航海のためではなく、クロが表向き被害者側に見える筋書きを完成させるため島へ到着する。
海賊団が予定どおり村を襲えば、クラハドールは主人を失った忠実な執事として財産を受け取れる。
船は計画の実行部隊を運ぶ一方、クロ自身の正体と海賊団とのつながりを露呈させる証拠にもなり得る。
上陸地点の混乱
ウソップはクロとジャンゴの会話を聞き、村人へ海賊襲撃を知らせようとする。
しかし、日頃から海賊が来たと嘘をついていたため信用されない。
ルフィたちは海賊団が上陸する坂道を取り違え、迎撃地点への到着が遅れる。
ベザン・ブラック号は村の海岸へ船員を送り出す拠点となるが、戦いの中心は船上ではなく上陸路と屋敷へ続く坂で展開する。
したがって、この船を「ルフィたちが乗り込んで制圧した敵艦」と説明するのは正確ではない。
麦わらの一味の目的は船の拿捕ではなく、村とカヤを守ることだった。
船首像の破壊
戦闘の途中、ジャンゴの催眠で強化されたルフィは、ベザン・ブラック号の大きな船首像を引きちぎる。
強化された怪力の誇張であると同時に、クロネコ海賊団の象徴を物理的に壊す場面である。
船首側の構造が大きく損傷しても、船体全体がその場で沈没したわけではない。
戦いに敗れた船員たちは負傷した仲間を運び、損傷した船で島から逃走する。
このため、原作におけるベザン・ブラック号の最終状態は「破壊されて沈んだ船」ではなく、「船首を失いながら航行して撤退した船」である。
ニャーバン・ブラザーズと船の守り
シャムとブチのニャーバン・ブラザーズは、クロネコ海賊団の船番として紹介される。
一見すると臆病で頼りなく振る舞うが、相手の油断を誘って武器を奪い、二人で連携して攻撃する。
船番という役割は、ベザン・ブラック号が戦闘員の移動手段であるだけでなく、海賊団の物資と帰還経路を保持する拠点であることを示す。
もっとも、シロップ村の戦いでは二人も上陸してゾロと戦うため、船に守備兵が残り続けたかは明らかでない。
クロの帰還と敗北
計画が予定どおり進まないことに苛立ったクロは、執事の姿を捨てて戦場へ現れる。
クロにとってクロネコ海賊団は財産を得るために利用し、最後には口封じする対象だった。
船員が再びクロを迎えたからといって、旧船長が海賊生活へ戻る意思を持っていたわけではない。
ルフィに敗れたクロは、海賊団員によってベザン・ブラック号へ運ばれる。
ジャンゴは島へ残り、のちに海軍へ入るため、撤退時の船内指揮が誰に移ったかは明示されていない。
船長と船員の関係を映す船
ベザン・ブラック号には、クロネコ海賊団の結束を象徴する場面より、船長と船員の断絶が強く刻まれている。
クロは二年間海賊団を離れた後も、ジャンゴへ計画を命じ、予定に遅れた部下を処分しようとする。
船員たちはクロの速すぎる移動「杓死」に巻き込まれ、敵と区別なく斬られる。
彼らがクロを恐れて従う関係は、ルフィが仲間を守るため前へ出る姿と正反対である。
最終的に船員が倒れたクロを船へ運ぶ行動にも、忠誠だけでなく、恐怖、長年の習慣、島から逃げる必要が重なる。
同じ船へ乗っていても、互いを仲間として扱うとは限らないことを示す海賊団である。
海賊旗と識別
クロネコ海賊団の海賊旗は、猫の頭部を中心にした意匠を持つ。
ベザン・ブラック号の船首像も同じ動物モチーフを用いるため、旗が見えにくい距離でも所属を識別しやすい。
これは海賊船としては威嚇と名乗りの役割を果たすが、クロが身分を隠す計画とは相性が悪い。
だからこそ、船は村の正面でクラハドールを迎えるのではなく、海賊団の襲撃部隊を運ぶ側に置かれる。
クロの新しい身分と旧海賊団の象徴は、最後まで一つに統合されない。
TVアニメ第45話の後日談
TVアニメ第45話では、原作にないクロネコ海賊団の後日談が描かれる。
ベザン・ブラック号には代わりの船首が取り付けられており、もとの黒猫の意匠とは異なる未塗装の状態で航行している。
さらに、クロが船上にいることを示すカットが加えられる。
これはTVアニメ版の補足であり、原作漫画に同じ修理場面やその後のクロの航海は描かれていない。
原作正史の船歴へ無条件に組み込まず、映像版独自の後日談として区分する必要がある。
ゴーイング・メリー号との対照
シロップ村編の終盤では、カヤからルフィたちへゴーイング・メリー号が贈られる。
猫を象徴にしたベザン・ブラック号が村を襲う敵船であるのに対し、羊を象徴にしたメリー号は村を守った者たちの新しい旅を始める船になる。
両船は動物の船首像を持つが、物語上の役割は反対である。
ベザン・ブラック号は過去の船長が部下を道具として扱う関係を運び、メリー号はウソップを含む新しい仲間を乗せる。
船の外観だけでなく、誰とどのような関係を運ぶかによって印象が分かれる。
性能と武装
ベザン・ブラック号は東の海を航行し、シロップ村まで多数の船員を運べる海賊船である。
しかし、速度、積載量、耐波性能、砲撃戦の実績は詳しく示されない。
クロネコ海賊団が大砲を所持する場面があっても、船体に固定された砲門の正確な数までは確認できない。
ルフィに船首を破壊された後も撤退できたため、船首像の喪失だけで航行不能にはならなかった。
それ以上の耐久値をゲームの数値や外観から設定することはできない。
その後
原作漫画では、シロップ村から撤退した後のベザン・ブラック号が主要な航海へ再登場することはない。
クロネコ海賊団の一部は表紙連載やジャンゴの経歴を通じて語られるが、船そのものの現在地と所有者は不明である。
沈没したとも廃船になったとも確定していないため、状態は「消息不明」と整理するのが妥当である。
関連項目
- クロネコ海賊団
- クロ
- ジャンゴ
- ニャーバン・ブラザーズ
- シロップ村
- シロップ村編
- ウソップ
- カヤ
- ゴーイング・メリー号
- 東の海編


