ブリキング号は、ワポルが率いるブリキング海賊団の潜水攻撃船である。 原作第131話、TVアニメ第79話で初登場し、海中からゴーイングメリー号の前へ浮上した。 王国から逃げ出した一団が海賊として移動するための船であり、ドラム王国へ戻る侵攻拠点でもある。
丸い船体を金属製の外板で覆い、外輪、複数の帆柱、王冠をかぶったホワイトウォーキーの船首像を持つ。 外板を閉じると大部分を海中へ沈められ、帆船と潜水艦の機能を切り替える。
基本情報
所有者はワポルとブリキング海賊団。 初登場時の船長は、かつてドラム王国を支配した国王ワポルである。 黒ひげ海賊団の襲撃から逃げた後、チェス、クロマーリモらを伴って海賊として海をさまよっていた。
船名の「ブリキング」は、日本語の「ブリキ」と英語のkingを組み合わせた語と考えられる。 金属板で覆われた外観と、王位へ執着するワポルを同時に表す。
英語版では翻訳によってBliking、Tin Tyrantなどの表記があるが、日本語の主見出しは「ブリキング号」である。
外観
船体は一般的な帆船より丸く、喫水下へ大きく膨らんだ形をしている。 周囲を星模様の金属板が取り囲み、左右には大きな外輪が付く。
船首像は王冠をかぶったホワイトウォーキーで、開いた口が出入口になる。 口から階段を下ろし、船員が上陸できる。 ドラム島の動物と王冠を一体化した意匠は、ワポルが国を離れても王を名乗り続けることを示す。
上部には二本の帆柱と白い帆がある。 潜航時は金属外板を索で引き上げ、船体を覆う。 最も高い帆柱の一部だけを水面へ残す姿は、通常の潜水艦とも完全な密閉艇とも異なる。
潜水機構
ブリキング号の最大の特徴は、帆船の外形を保ちながら潜水できることである。 海中に身を隠して接近し、必要な地点で浮上すれば、相手の見張りを突破して奇襲できる。
左右の外輪は、帆の使えない水中で推進力を得る装置として働くと考えられる。 ただし作中で機関室、動力源、最大深度、潜航時間は説明されていない。 現実の潜水艦と同じ圧力構造を持つと断定はできない。
原作で最初に明確に潜水機能を見せた船であり、後に登場する潜水艇やサウザンド・サニー号の小型メカとは設計思想が異なる。 船全体が海賊団の移動拠点で、そのまま水面下へ隠れる点が特徴である。
ゴーイングメリー号への奇襲
麦わらの一味が高熱を出したナミを救うため医者を探していた時、ブリキング号は海中から浮上して進路を塞ぐ。 ワポルはドラム島へ戻るため、ログポースまたはエターナルポースを奪おうとした。
しかし麦わらの一味はドラム島への指針を持っていない。 交渉ではなく略奪を前提に乗り込んだワポルは、ゴーイングメリー号の一部をバクバクの実で食べ、さらにルフィまで口へ入れようとする。
ルフィはワポルを海へ殴り飛ばす。 能力者の船長が溺れるため、ブリキング海賊団は戦闘を続けず、船へ戻って救助を優先する。 この場面では潜水艦の奇襲力より、船長へ依存する組織の弱さが表れる。
ワポル救出
ブリキング海賊団はワポルを海から回収する。 悪魔の実の能力者にとって、海中へ落ちることは致命的であり、船は攻撃装置だけでなく救命拠点として機能する。
ルフィに遠くまで飛ばされた船長を見失わず、再び航路へ戻れた点から、一定の捜索能力と乗組員の統率はあったと分かる。 もっとも、救助後のワポルは反省せず、麦わらの一味への復讐と王位奪還を続ける。
この一連の行動によって、ブリキング号は単なる登場用の乗り物ではなく、ワポルをドラム島編へ運び直す役割を担う。
ドラム島への帰還
ワポル一行はやがてドラム島へ到着し、ブリキング号を海岸へ停泊させる。 上陸した船員は、旧国王の帰還を拒む住民たちを武力で押しのける。
ワポルにとって船は亡命生活の住居であると同時に、失った王国へ軍勢を運ぶ上陸艇だった。 王宮そのものはドラムロッキーの城に残っているため、島へ着いた後の戦闘は陸上へ移る。
ルフィがワポルを島の外へ吹き飛ばし、ドルトンが新しいサクラ王国の指導者になると、ブリキング海賊団は崩壊する。 船がその後どこへ渡ったか、破壊されたか、住民に接収されたかは明かされていない。
武装と攻撃船としての性格
ブリキング号は「潜水攻撃船」として紹介される。 金属外板は潜水のための覆いであると同時に、通常の木造船より防御的な印象を与える。
ただし、船体から大砲を撃つ場面や、外輪を武器として使う場面は詳しく描かれない。 ワポル本人のバクバクの実、チェスの弓、クロマーリモの戦闘術が主な攻撃力である。
「攻撃船」という呼称だけから、見えない魚雷や特殊砲を追加して説明することはできない。 確認できる強みは、潜航による接近、巨大な船体、金属外板、団員を運ぶ能力までである。
船首像が示すもの
ホワイトウォーキーはドラム島に生息する雪山の動物で、ワポルの支配した土地を象徴する。 その頭へ王冠を載せることで、船首像は「ドラムの王」を自称するワポル自身の紋章になる。
国を捨てて逃げた後も、彼は王位を失ったとは考えていない。 海賊船へ王冠を掲げ、帰国すれば住民が従うと信じる。 ブリキング号の外観は、亡命者と海賊と国王を同時に名乗る矛盾を視覚化している。
口が乗降口になっている点も、あらゆる物を食べて加工するワポルの能力を連想させる。 船全体が船長の性格と出身国を反映したデザインである。
ほかの潜水船との比較
アミーゴ海賊団の潜水艦、ハートの海賊団のポーラータング号など、後の物語には水中航行を得意とする船が登場する。 ブリキング号はそれらより早く、船全体が沈んで接近する驚きを見せた。
ポーラータング号は密閉された近代的な潜水艦の外形を持ち、海底での救助や追跡へ使われる。 ブリキング号は帆柱や船首像を残し、童話的な帆船と金属潜水艇を混ぜた造形である。
サウザンド・サニー号は船自体が常時潜水するのではなく、コーティングや小型潜水艇シャークサブマージ3を活用する。 同じ「水中へ進む船」でも、技術と用途は別々である。
正史上の位置
ブリキング号は原作第131話で登場するため、アニメオリジナル船ではない。 ドラム島編の正史に含まれ、ワポルが黒ひげから逃れた後の移動手段として確認できる。
劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』にはブリキング海賊団の姿があるが、映画での登場は原作航海とは区分する必要がある。 船のその後が不明であることを、映画独自描写だけで補完してはいけない。
船と海賊団名の関係
ワポルの一団は「ブリキング海賊団」と名乗り、船もブリキング号と呼ばれる。 一般に海賊団が船長名や海賊旗を組織名へ使う例は多いが、ここでは船名と団名が一体化している。
国を失ったワポルにとって、固定した領土の代わりに船が集団の看板となった。 金属外板を閉じれば外界から隔離され、船内へ旧臣を抱えたまま移動できる。 小さな王国を海上へ持ち出したような構造である。
その一方、団員の目的は海賊として新しい土地を探すことではなく、ワポルを王座へ戻すことに集中する。 ドラム島へ着けば船上共同体の役目は終わり、戦力は城へ向かう。 海賊団名を持ちながら、実態は亡命政権の移動部隊に近い。
ゴーイングメリー号との対照
ブリキング号とゴーイングメリー号は、同じ海域で対面するが船が支える関係は対照的である。 メリー号では、病気のナミを救うため仲間全員が航路を変え、船長ルフィも戦闘を避ける判断を求められる。
ブリキング号では、船員が海へ落ちたワポルを救うものの、その後も船長の復讐と王位奪還へ従う。 救助行動はあるが、組織の方針を見直す契機にはならない。
二隻の遭遇は潜水艦の珍しさだけでなく、「船が誰の意思で進むか」を比べる場面でもある。 仲間の命を優先して医者を探す船と、支配者一人の欲望を故郷へ運ぶ船がすれ違う。
不明点
船の建造者、建造地、費用、ワポルが国王時代から所有していたかは明示されていない。 ドラム王国には高度な医療があるが、その技術だけで潜水機構が作られたと結論づける資料もない。
黒ひげ海賊団襲撃の際にブリキング号で逃げたか、別の船を経て入手したかも描写が限られる。 外見がワポル向けに特注されていることと、製造経緯が確定していることは別である。
行方についても、ドラム島の海岸へ残された後の描写がない。 現在も保管されている、解体された、別人が使用したといういずれも推測の域を出ない。
まとめ
ブリキング号は、ワポルとブリキング海賊団が使用した潜水攻撃船である。 丸い船体、星模様の金属外板、外輪、王冠をかぶったホワイトウォーキーの船首像を持つ。
海中からゴーイングメリー号を奇襲し、海へ落ちたワポルを救助した後、ドラム島へ旧王の一団を運んだ。 しかし上陸後に海賊団が敗れ、船の行方は明かされていない。
帆船と潜水艇を組み合わせた機構だけでなく、王冠、故郷の動物、金属の名を通じてワポルの執着を表す船である。 未確認の武装を補うより、潜航機能と物語上の運搬役を押さえることで特徴が明確になる。


