「バギー一味冒険記」は、『ONE PIECE』で最初に展開された短期集中扉絵連載である。原作第35話から第75話までのうち、通常の章扉を使った全30回で、オレンジの町から吹き飛ばされたバギーと、船長を失ったバギー海賊団が再会するまでを描く。このうち本筋は28回で、第62・63話の扉は一時的に船長となったリッチー一味の外伝として挟まる。
一枚ずつの扉絵には長い台詞やコマ割りがない。それでも、バギーが小さな身体で漂流する旅、モージとカバジの跡目争い、アルビダとの同盟、クマテ族に捕らえられた一味の救出が順番に進む。ローグタウンでバギーとアルビダが突然そろって現れる理由を、本編の外側でつないだ正史の物語である。
基本情報
- 正式題:バギー一味冒険記
- 形式:短期集中扉絵連載
- 掲載範囲:原作第35話〜第75話の扉絵
- 収録巻:第4巻〜第9巻
- 回数:全30回(本編28回+リッチー一味の外伝2回)
- 発表期間:1998年〜1999年
- 主な人物:バギー、アルビダ、モージ、カバジ、リッチー、ガイモン
- アニメ化:第46話、第47話
- 前提となる本編:オレンジの町編
- 接続先:ローグタウン編
第35話から第75話までの全ての章に連載があるわけではない。通常の一枚絵や別の扉を挟みながら、35、36、37、39、40、42、43、46、47、48、50、51、53、54、55、57、58、59、60、62、63、65、66、67、68、71、72、73、74、75話の扉で進む。「第35〜75話」と「41回」は同じではなく、実際の掲載扉は30点である。
オレンジの町で分断されたバギー
オレンジの町の戦いで、ナミはバギーの胴体を含む多数のバラバラパーツを縛り、ルフィは残った頭、手、足だけの小さなバギーを遠くへ吹き飛ばした。バラバラの実の能力そのものが消えたのではないが、一定距離の外へ離れた身体をすぐ回収できないため、バギーは不完全な姿で漂流する。
第35話の扉から、バギーは小さないかだで海へ出る。魚に追われるだけでも命懸けであり、普段の火力や部下の数に頼れない。船長として大きな態度を取っていた人物が、食料や移動手段を一人で確保しなければならない状況へ落とされる。
一方、モージとカバジら残存メンバーはオレンジの町からビッグトップ号で逃げる。彼らはバギーの身体の大部分を回収しているが、頭部を含む本人の所在を知らない。バギー側と一味側は、互いに相手が生きているか確認できないまま、別々の冒険を始める。
小さなバギーの漂流
バギーは食料にしようと鳥を狙うが、より大きな鳥に襲われ、空へ運ばれる。罠を仕掛けても思い通りにならず、最後には吐き出されて別の島へ落ちる。自分より弱そうな相手へ手を出して失敗する流れは喜劇だが、身体を欠いた状態では海や野生生物が現実の脅威になる。
着いた先は珍獣の島である。島を守るガイモンは、バギーを密猟者と疑って追う。しかし、箱に身体がはまったガイモンと、頭・手・足だけで動くバギーは、互いを奇妙な姿の仲間として認識する。敵対が解けると酒を酌み交わし、一夜だけ交流する。
ガイモンとの場面は、本編第22話でルフィたちと会った人物が、その後も珍獣を守りながら暮らしていることを示す。同時に、バギーが相手の財宝を奪うだけの存在ではなく、条件が合えば他者と意気投合できる性格であることも見せる。別れの後、バギーは再び自分の一味を探す海へ出る。
アルビダとの出会い
出航したバギーは海上で蟹に襲われる。そこへ女性海賊が現れて蟹を倒し、バギーを救う。彼女は、物語の冒頭でルフィに敗れたアルビダである。容姿はスベスベの実を食べた後の姿へ変わっているため、最初の登場だけでは同一人物と分かりにくい。
二人には、ルフィを追うという共通の目的がある。バギーは身体と一味を取り戻して復讐したい。アルビダも、自分を倒したルフィを探している。目的が一致したため海賊同盟を結び、バギーの船を捜す。
この同盟は、扉絵連載の中だけで完結する小話ではない。ローグタウン編でアルビダとバギー一味が共同してルフィを捕らえようとする前提になる。アルビダの外見変化と同行理由を知らなくても本編は読めるが、扉絵を読むことで再登場までの空白が埋まる。
船長を失ったバギー海賊団
ビッグトップ号では、部下たちがバギーを死んだものと考え、葬儀を行う。船長を悼む姿は忠誠の表れである一方、すぐに次期船長を決める必要が生じる。副船長のモージと参謀長のカバジが後継者の座を争う。
二人の決闘は12時間に及ぶ。実力が拮抗して決着しないのではなく、長引くうちに双方が疲弊する。そこで、眠ったまま歩いてきた猛獣使いモージのライオン、リッチーが二人をまとめて倒してしまう。一味は、その結果を勝利と解釈し、リッチーを船長に選ぶ。
「リッチー海賊団」の誕生は、厳格な継承制度の結果ではない。強そうな者が偶然最後に立っていたという、バギー一味らしい成り行きである。船長になったリッチー自身も状況を理解して統率しているわけではなく、次の危機へ一味ごと巻き込まれる。
クマテ族と二回の外伝
第62・63話の扉は、リッチー一味冒険記に相当する二回の外伝である。新体制になった一味は、島のクマテ族に捕らえられ、鍋の材料にされかける。バギーがいない間の船員たちが自力で順調に再建したのではなく、船長交代の直後に全滅寸前まで追い込まれる。
二回を本編28回とは別に数える資料があるため、「全28回」と「全30回」の表記が併存しやすい。バギー一味冒険記という掲載範囲全体では、リッチー側の二回を含めて30点である。バギー本人を中心とする連載だけを数える場合に28回となる。
クマテ族の鍋は、後の再会場面で重要になる。バギーとアルビダが船影を見つけても、そこにいる一味は自由に航海しているのではなく、まさに食べられようとしている。救出が再結成と同時に行われる構造である。
身体のパーツと一味の再会
バギーはアルビダとともにビッグトップ号を発見する。船には、ナミに奪われたまま一味が回収していたバラバラパーツがある。本人が近づくと身体の各部が動き出し、頭・手・足だけだった小さな姿から元の体格へ戻る。
クマテ族に煮込まれかけたリッチーたちも救われる。一味から見れば、死んだと思って葬式まで済ませた船長が、謎の女性海賊を伴い、失われた身体をまとって戻ってきたことになる。跡目争いはそこで終わり、リッチーの船長時代も短期間で終了する。
最終盤の扉では、復活したバギーを中心に一味が行進し、部下たちが再び船長を迎える。目的はルフィへの復讐である。物語は平穏な帰還で終わらず、ローグタウンで麦わらの一味を襲う次の本編へ向かう。
扉絵だけで進む物語の読み方
通常の扉絵は、その章の本文と直接つながらない一枚絵である。しかし短期集中扉絵連載では、一枚ごとに前回から状態が変わり、複数号を通して物語が進む。第35話本文の出来事と、第35話扉のバギーの出来事は同じ場所で同時に起きるとは限らない。
各回の題名、登場人物、前後の変化を追う必要がある。台詞が少ないため、表情や位置関係から読み取れることは多いが、描かれていない移動日数や島名を推測で補わない。掲載話数は扉の出典を示す番号であり、本編の場面へバギーが登場したことを意味しない。
「バギー一味冒険記」は、扉絵連載が単なる後日談ではなく、本編へ人物を戻す経路になり得ることを最初に示した。後のコビメッポ、ジャンゴ、はっちゃん、ワポルらの扉絵連載も、別地点の人物を追い、再登場の前提を作る形式を引き継ぐ。
アニメ第46・47話との関係
TVアニメでは、第46話「麦わらを追え!小さなバギーの大冒険」と第47話「お待ちかね!あぁ復活のバギー船長!」の二話にまとめて映像化された。第46話は小さなバギーの漂流、珍獣の島のガイモン、アルビダとの出会いを中心とする。第47話は一味の跡目争い、リッチー船長、クマテ族、身体の回収と再会を扱う。
アニメは一枚の扉絵同士をつなぐため、移動、会話、対決の過程を追加している。原作扉に描かれた結果と、アニメが補った台詞・時間を区別する必要がある。人物記事で初出を記録するときも、原作の扉絵掲載話と、TVアニメの放送話を別々に示す。
第46・47話は、原作の扉絵連載を正式にアニメ化した早い例である。これにより、ローグタウン直前の視聴者も、バギー復活とアルビダ加入の経緯を連続した映像として確認できる。
物語上の影響
本連載で確定する大きな変化は三つある。第一に、バギーが失った身体と海賊団を取り戻したこと。第二に、アルビダと同盟を結んだこと。第三に、一味がルフィを追ってローグタウンへ向かう状態になったことである。
ガイモンとの交流やリッチーの一時的な船長就任は、その後の世界情勢を直接動かす出来事ではない。しかし、バギーが窮地でも偶然と他者を利用して生き残り、部下が混乱しながらも彼のもとへ戻る性質を早い段階で示す。この「本人の意図以上に状況が肩書を作る」傾向は、後の七武海や四皇への上昇にも通じる。
ただし、後年の地位をこの扉絵時点の計画として読むことはできない。この時点のバギーの明確な目的は、身体と一味の回収、ルフィへの復讐である。未来の出来事は人物像を比較する材料にはなるが、当時の動機へ逆算して混ぜない。
関連項目
- 扉絵連載一覧
- 短期集中扉絵連載
- バギー
- アルビダ
- バギー海賊団
- モージ
- カバジ
- リッチー
- ガイモン
- アニメ第46話
- アニメ第47話
- ローグタウン編


