「カリブーの新世界でケヒヒヒヒ」は、原作第674話から第731話の扉絵に全46回で掲載された短期集中表紙連載第20弾である。単行本第68巻から第73巻に収録され、魚人島でジンベエに捕らえられたカリブーが、海軍G-5支部、冬島の武器工場を経て、X・ドレークに連行されるまでを描く。
本編の外側に置かれた一枚絵の連続だが、内容は原作正史とつながっている。カリブーが後にワノ国の兎丼でルフィと再会する理由、カイドウ配下が新世界で武器工場を管理していること、ドレークが百獣海賊団へ潜入していた時期の行動が補われる。単なる人物の近況イラストではなく、魚人島編とワノ国編を接続する物語である。
基本情報
- 正式題:カリブーの新世界でケヒヒヒヒ
- 形式:短期集中表紙連載
- シリーズ順:第20弾
- 掲載範囲:原作第674話〜第731話のうち46回
- 収録巻:単行本第68巻〜第73巻
- 主人公:カリブー
- 主な登場人物:コリブー、ジンベエ、ヤリスギ准将、バブル、ガブル、スコッチ、X・ドレーク
- 前の扉絵連載:「世界の甲板から」
- 次の扉絵連載:「ジンベエの海侠一人旅」
- アニメでの扱い:第921話で一部を回想として映像化
題の「ケヒヒヒヒ」はカリブー固有の笑い方に由来する。英語版の表記には版元や媒体による差があるため、日本語記事名は単行本の正式表記を優先する。
全46回の掲載話対応
扉絵連載は本編が休載でなくても、巻頭カラー、読者リクエスト、別企画の扉になる回には掲載されない。そのため、第674話から第731話まで毎話連続で46枚あるわけではない。掲載された本編話数は次の通りである。
| 扉絵回 | 原作話数 | |---|---| | 第1〜10回 | 674、675、677、678、679、680、681、682、683、684 | | 第11〜20回 | 686、687、688、689、690、694、695、696、697、698 | | 第21〜30回 | 700、701、702、704、705、706、708、709、711、712 | | 第31〜40回 | 713、714、715、716、718、719、720、721、722、723 | | 第41〜46回 | 725、727、728、729、730、731 |
一枚ごとに短い題が付き、前の絵から時間や場所が進む。個別回を参照する時は「扉絵連載第何回」と「掲載された原作第何話」を併記する。本編第674〜731話の出来事と、扉絵側のカリブーの出来事を混ぜないためである。
魚人島で再び人魚を狙うカリブー
魚人島編の後、カリブーは懲りずに人魚をさらおうとする。ヌマヌマの実の沼へ相手を取り込み、外から見えない状態にする手口である。しかしジンベエに見つかり、短時間で制圧される。
ジンベエはカリブーを樽へ拘束し、コーティング船で海上へ運ぶ。弟のコリブーとカリブー海賊団は船を用意して追うが、海中でジンベエの遊泳速度に追いつけない。救出劇のように始まりながら、兄のカリブーは樽に入れられたまま遠ざかる。
この序盤は、魚人島本編でカリブーが行った犯罪を帳消しにしない。後半で他者を救う行動を取っても、最初は再犯者として捕らえられる。扉絵連載全体を「実は最初から善人だった話」と要約すると、変化の幅が失われる。
G-5支部から仲間を置き去りにするまで
ジンベエは海上へ出ると、損壊した海軍G-5支部の近くでカリブーを引き渡す。現場のヤリスギ准将たちは、カリブーを捕縛し、処分しようとする。そこへコリブーと一味が到着し、兄を救うため海兵へ攻撃を仕掛ける。
部下たちはカリブーの拘束を解くことに成功する。ところがカリブーは、彼らが戦っている間に船を奪い、一人で逃走する。自分を助けに来た弟と部下を置き去りにし、捕まる危険を避ける。船長として仲間を守る行動とは正反対であり、本連載前半のカリブーの利己性が最も明確に出る場面である。
逃走した船は嵐で壊れ、カリブーは小舟で漂流する。本人はこれを仲間を捨てたことへの罰のように受け取る。超自然的な裁きが確定したわけではないが、直前の裏切りと遭難を隣り合わせることで、読者に因果を意識させる。
冬島の老婆バブル
流れ着いたのは、金属のような木や岩がある冬島だった。意識を失ったカリブーを助けたのが、老婆バブルである。彼女はカリブーを自宅へ運び、服と食事を与える。カリブーは目を覚ますと、恩人のミートパイや装飾品を盗もうとする。
バブルは盗みに気づいても激しく責めず、港の方向を教え、弁当まで持たせる。カリブーにはその親切の理由が分からない。島の兵士たちは、彼の顔と上着を見て、革命軍の指揮官ガブルが帰還したと誤認する。
ガブルはバブルの亡くなった孫であり、島の労働者を率いて支配者へ抵抗していた。カリブーと顔立ちが似ているため、住民は英雄が戻ったと期待する。バブルが真実を知らず孫と間違えているのか、別人と知って受け入れているのかは、最終回まで読者に保留される。
武器工場とスコッチの支配
港へ向かったはずのカリブーは、島の状況へ興味を持って町へ戻る。能力で工場へ忍び込み、そこが武器を生産する施設であることを知る。労働者たちはガブルの帰還を信じ、再び反乱へ立ち上がる。
島を管理しているのは、カイドウ配下のスコッチである。スコッチは機械化された巨体と火器を持ち、反乱を鎮圧して町と旗を焼く。ここで武器工場が百獣海賊団の勢力圏にあることが分かり、扉絵の局地的な事件が新世界の兵器供給網へつながる。
カリブーは燃えるバブルの家へ戻り、ガブルとバブルが写る写真を見る。バブルが孫を失ったことを知るが、スコッチが現れると一度は逃走を選ぶ。老婆を助けるため即座に英雄へ変わったのではなく、危険を前に従来の自己保身が先に出る。
コリブーたちとの再会
港へたどり着いたカリブーの前へ、海軍の軍艦を奪ったコリブーたちが現れる。置き去りにされた部下から報復されると恐れるカリブーに対し、コリブーは兄を抱きしめる。亡くなった祖母が兄弟は仲良くするよう教えていたことを理由に、弟は裏切りを許す。
この再会がカリブーの転換点になる。バブルは孫ガブルを思って自分を助け、コリブーは祖母の言葉を守って自分を許す。二人の「家族の記憶」による行動を受けながら、カリブーだけが家族と仲間を道具として捨てた事実が突きつけられる。
カリブーはすぐに聖人になるわけではない。顔が似ていることを利用し、ガブル本人として振る舞う。それでも、逃げ切れる船を得た後に島へ戻る点は以前と違う。偽名と能力を、今度はバブルと労働者の救出に使う。
「ガブル」としての反乱
スコッチはバブルを見せしめに処刑しようとする。そこへカリブー海賊団が軍艦で戻り、カリブーは革命家ガブルの帰還を演じる。部下が兵士を抑える間、カリブーはスコッチと対峙する。
銃撃は自然系能力者のカリブーを捉えられず、カリブーは沼でスコッチと兵士を拘束する。さらに工場全体を沈め、労働者を解放する。ヌマヌマの実は人をさらい、武器を隠すために使われてきたが、ここでは支配の設備を無力化するために使われる。
住民はカリブーを「ガブル」として英雄視する。ただし、彼が過去の犯罪を告白し償ったわけではない。扉絵連載が描くのは全面的な改心の完了ではなく、利己的な人物にも、受けた恩と家族の記憶によって他者を守る選択が一度生まれたことまでである。
X・ドレークによる連行
祝勝の直後、アロサウルスの姿となったX・ドレークが現れる。ドレークは当時カイドウの配下として行動しており、工場とスコッチを倒した一団を制圧する。カリブーも覇気を伴う攻撃で倒され、百獣海賊団の拠点へ連行される。
バブルは、連れて行かれるカリブーへ最後のミートパイを渡す。コリブーたちと住民は、カリブーをガブルのような英雄として見送る。カリブーは島に定着せず、本人の意思とは違う形でワノ国へ向かうことになる。
最終回でバブルはガブルの墓を訪れ、カリブーの手配書を添える。彼女はカリブーが孫本人ではないと最初から理解していた。それでも助け、最後には孫と同じ優しさを見せた者として感謝する。誤認だけで成立した美談ではなく、別人と知った上で向けた厚意がカリブーの行動を変えたと確定する。
本編への影響
本連載の終了時点で、カリブーはドレークによってカイドウの勢力圏へ運ばれる。この経路があるため、ワノ国編で兎丼の囚人採掘場にいるカリブーが突然現れたことにはならない。扉絵を読まない場合に省略される移動過程を補う役割を持つ。
武器工場の存在も、カイドウの支配がワノ国の内側だけに限定されないことを早い段階で示す。スコッチとドレークは別々に工場の支配を維持し、反乱を鎮圧する。新世界の島々に生産拠点と配下が配置されていることが、一枚絵の積み重ねから分かる。
TVアニメ第921話では、ルフィと再会したカリブーの説明に合わせて扉絵連載の一部が回想として映像化された。ただし全46回を同じ密度でアニメ化した独立編ではない。アニメ版の記事では映像に採用された範囲と、省略された回を区別する。


