智略天然丸は、バロックワークスのオフィサーエージェントだったMr.3とミス・ゴールデンウィークが使用した小型船である。 原作ではアラバスタ到着時と、後の扉絵連載に登場する。
巨大な海賊船や長距離航海用の主力船とは役割が異なり、少人数で移動し、組織の任務から逃走へ切り替えられる機動用の船として描かれる。 船首の「3」、側面の名前、貝殻型の船室までMr.3の意匠で統一され、秘密犯罪会社の船でありながら所有者の自己演出が隠れていない。
基本情報
- 名称:智略天然丸
- 読み:ちりゃくてんねんまる
- 使用者:Mr.3、ミス・ゴールデンウィーク
- 所属:バロックワークス
- 初登場:原作第158話、TVアニメ第93話
- 船種:少人数用の小型外輪船
- 推進:Mr.3のドルドルの実の力を利用
- 再登場:扉絵連載「ミスG・Wの作戦名“ミーツバロック”」
船名は本編の台詞で呼ばれたものではなく、後に公式キャラクター資料VIVRE CARDで判明した。 したがって初登場時点の読者には「Mr.3の船」として認識され、資料公開後に固有名が補われた情報である。
外観とMr.3の意匠
船体は紫から青系の色でまとめられ、船首には大きな数字の「3」が置かれる。 これはMr.3のコードネームだけでなく、頭頂部が数字の3に見える髪型とも対応する。
側面には円形の枠とMr.3の名が大きく入り、左右に砲門が二つずつ設けられている。 船室は二枚貝を閉じたような形で、帆は青と白の縞模様、上部にはバロックワークスの印が掲げられる。 小型でも武装と屋根付きの空間を備え、単なる手こぎボートではない。
外見上の面白さは、秘密結社の工作員が使う船なのに匿名性が低い点にある。 Mr.3は罠や偽装を使う知略型の人物だが、船には自分の番号を繰り返し掲げる。 人目を避ける道具というより、自分の完成した作戦と能力を誇示する舞台として設計されている。
一方、ミス・ゴールデンウィークを示す記号は前面へ出ない。 二人一組の任務船であっても、造形の中心はMr.3である。 この偏りは、相棒が言葉少なに行動し、Mr.3が計画と説明を主導する二人の関係にも重なる。
ドルドルの実を使う推進
ビビは、智略天然丸がMr.3のドルドルの実の力で動くと説明する。 船体の側面には外輪があり、能力で作ったロウを利用して回転力を得る仕組みだと読み取れる。
ただし、ロウがどの部品へ流れ、どのように外輪を連続回転させるのかは作中で図解されていない。 能力者本人が常時操作するのか、固めたロウの機構が一定時間動くのかも確定していない。 スモーカーのビローアバイクに似た能力応用を連想できても、同一原理と断定はできない。
重要なのは、ドルドルの実が戦闘用の拘束や武器だけに使われていないことである。 Mr.3はロウを鍵、壁、複製、建造物へ変えられる。 智略天然丸では、その造形力が移動手段へ接続される。 悪魔の実の能力が使用者の身体だけで完結せず、既存の機械を補助する例になっている。
海上で能力を使う点には危険もある。 能力者は海へ落ちれば力を失い、自力で泳げない。 小型船は大型船より波や攻撃の影響を受けやすく、動力担当がMr.3一人なら、彼が行動不能になることは推進の停止につながりうる。 作中では長期航海性能や荒天時の安全性が示されていないため、任務圏内の移動に適した船と見るのが妥当である。
側面の四つの砲門は、逃走専用ではなく交戦も想定した装備に見える。 しかし本編では智略天然丸から砲撃する戦闘が詳しく描かれず、砲の口径、弾種、担当者は不明である。 見えている装備と、実際に確認された戦果を分けなければならない。
帆と外輪の両方を持つため、風力と能力推進を状況に応じて使い分ける可能性はある。 それでも、帆だけでどの程度航行できるかは説明されていない。 能力を使う船という特徴から、風が止まった海域でも動ける利点を想像できるが、公式に無風航行の実績が示されたわけではない。
アラバスタへの到着
Mr.3はリトルガーデンで麦わらの一味を処刑しようとするが、作戦は失敗する。 それでもクロコダイルへ虚偽の報告を行い、任務を達成したように装う。 智略天然丸は、その後Mr.3とミス・ゴールデンウィークがアラバスタへ現れる際に使われた。
ビビは船を見てMr.3のものだと判断し、能力を動力にしていることも把握していた。 元バロックワークス社員であるビビの知識により、読者は船と使用者の関係をすぐ理解できる。
しかしMr.3はアラバスタで組織へ復帰できない。 リトルガーデンの失敗をクロコダイルに知られ、ボン・クレーにも正体を見抜かれる。 船が目的地へ到達しても、組織内での立場は回復せず、移動の成功が任務の成功にはならない。
バロックワークス崩壊後
智略天然丸は、扉絵連載「ミスG・Wの作戦名“ミーツバロック”」で再び使われる。 アラバスタで組織が崩壊した後、かつてのエージェントたちはキューカ島に集まるが、海軍のヒナが追跡する。
Mr.3は海岸に船を隠し、自分だけ逃げようとする。 扉絵第382話では、覆いをかけた智略天然丸を使って脱出の準備を進める姿が描かれる。 小型で隠しやすい船体は、ここでは組織の任務ではなく、単独逃亡に利用される。
ところがMr.2・ボン・クレーが計画を止め、Mr.3はミス・バレンタイン救出へ協力させられる。 船の持ち主が「知略」で自分だけ生き延びようとしたところへ、元同僚を見捨てない人物が介入する構図である。
その後Mr.3は捕まり、インペルダウンへ送られる。 智略天然丸が海軍に押収されたのか、キューカ島へ残されたのか、別の人物が使用したのかは明示されていない。 したがって現在地は不明であり、破壊や沈没を確定事項として扱うこともできない。
船名の読み方と意味
「智略」は、状況を読み、計画によって目的を達成する知恵を指す。 罠と造形物を組み合わせて相手を追い詰めるMr.3の自己評価に合う言葉である。
「天然」は、意図せず周囲の予想から外れる性質や、生まれつきの気質を表す場合がある。 ミス・ゴールデンウィークの飄々とした態度との対比にも見えるが、船名の各語が二人へ一対一で対応すると公式に説明されたわけではない。 また「丸」は日本の船名で広く使われる接尾語である。
語全体を特定の商品名や慣用句と結びつける解釈も可能だが、作中で由来は語られていない。 名称から読み取れる性格と、公式に確定した設定は分ける必要がある。
実写版での扱い
実写ドラマ版では、Mr.3のロウの隠れ家に智略天然丸の模型を思わせる造形が置かれている。 原作の船が同じ経歴で実際に航行したと確認された場面ではなく、原作設定を背景美術へ取り込んだ要素として見るべきである。
原作、TVアニメ、実写版は同じ意匠を共有しても、出来事の連続性は別である。 実写版の小道具が存在することから、原作の船が実写版世界でも同じ任務に使われたと断定はできない。
物語上の役割
智略天然丸は、物語の中心となる船ではない。 しかしMr.3という人物を、戦闘能力以外から理解させる情報が詰まっている。 自分の番号を誇示する装飾、能力を機械へ応用する発想、失敗後にも手元へ残る逃走手段が、彼の見栄、工夫、生存への執着を同時に示す。
また、同じ船が組織の業務から個人の逃走へ用途を変えることで、バロックワークス崩壊後の変化が目に見える。 会社の命令を運ぶ船だったものが、元社員がばらばらに生き延びるための私物になる。
Mr.3は後にインペルダウンと頂上戦争で能力を別の形へ使い、他者を助ける局面を持つ。 智略天然丸の扉絵場面は、その変化より前、まだ自分だけ逃げようとしていた段階を記録している。
バロックワークスの移動手段として
バロックワークスのエージェントは、全員が同じ本部船へ集まって移動するわけではない。 アンラッキーズのように連絡を運ぶ動物、ボン・クレーの快速船、Mr.1たちが使う船など、任務と役職に応じた移動手段を持つ。 組織の支部と標的が各地へ分散しているため、小さなチームが独立して航海できることは重要である。
智略天然丸は、その中でも能力者本人の力を推進へ組み込む。 燃料や風だけに依存しない可能性がある反面、Mr.3が不在なら同じ性能を維持できるか分からない。 組織の標準装備というより、ペアの能力と任務へ合わせた専用機に近い。
また、船体に所属を示す印があるため、潜入そのものには不向きである。 Mr.3の任務は敵へ身分を偽って港へ入るより、島へ到着した後にロウの罠を組み、標的を動けなくすることに重心がある。 船は目的地までの足であり、作戦の秘密は上陸後の配置に置かれる。
こうした船の個別性は、バロックワークスが番号とコードネームで人間性を消す組織でありながら、実際の構成員は強い癖と私物を持つという矛盾を見せる。
関連項目
- Mr.3/ギャルディーノ
- ミス・ゴールデンウィーク
- バロックワークス
- ドルドルの実
- ミスG・Wの作戦名“ミーツバロック”


