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ONE PIECE百科事典ANNA MOVIES

ドラム島編

ドラム島編は、原作第130話から第154話、TVアニメ第78話から第91話に相当する物語である。アラバスタ王国へ急ぐ麦わらの一味が、重い病気にかかったナミを治療するため冬島へ上陸し、医者トニートニー・チョッパーと出会う。

ドラム島編は、原作第130話から第154話、TVアニメ第78話から第91話に相当する物語である。アラバスタ王国へ急ぐ麦わらの一味が、重い病気にかかったナミを治療するため冬島へ上陸し、医者トニートニー・チョッパーと出会う。元国王ワポルの帰還、ヒルルクの遺した桜、チョッパーの旅立ちを通じて、「病気を治すこと」と「国を治すこと」が重ねられる。

日本公式サイトではアラバスタ編の導入過程に含めて紹介される一方、映像商品などでは「チョッパー登場・冬島編」と呼ばれることもある。本記事では島内の出来事を「ドラム島編」として整理し、原作を大きく再構成した劇場版第9作『エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』は別の連続性として扱う。

基本情報

  • 原作範囲:第130話〜第154話(全25話)
  • 単行本:第15巻〜第17巻
  • TVアニメ:第78話〜第91話(全14話)
  • 主な舞台:ドラム島、ビッグホーン、ドラム城、ドラムロッキー
  • 主な対立:麦わらの一味・島民対ワポル一派
  • 初登場する主要人物:チョッパー、Dr.くれは、Dr.ヒルルク、ワポル、ドルトン
  • 一味への加入:トニートニー・チョッパー
  • 前の物語:リトルガーデン編
  • 次の物語:アラバスタ編
  • 正史区分:原作漫画の正史。TVアニメと劇場版第9作には媒体固有の追加・変更がある

上陸の目的は冒険や敵討ちではなく、ナミを救える医者を探すことだった。アラバスタの内戦を止めたいネフェルタリ・ビビにとって一刻の遅れも重いが、病人を放置して航海を続けることはできない。ビビが感情を抑えて治療を優先する判断は、王女としての資質も示す。

医者を失った冬島

ドラム島は一年を通じて雪に覆われ、中央には細長い山々「ドラムロッキー」がそびえる。かつてドラム王国は医療大国として知られ、多くの医者が暮らしていた。しかし国王ワポルは、国中の医者を追放し、優秀な二十人だけを「イッシー20」として城へ囲い込んだ。

病気になった国民は王へ従わなければ治療を受けられない。医療を公共の技術ではなく支配の道具に変えた政策である。その後、黒ひげ海賊団が国を襲撃すると、ワポルは国民を守らず海へ逃げた。王が不在になっても医師不足は残り、島民が頼れるのは山頂の城に住むDr.くれはだけだった。

一味が到着した時、島民は海賊を警戒して発砲する。ビビは負傷しても反撃を止め、頭を下げて医者の場所を尋ねる。敵意へ敵意で返せばナミの治療が遠のくと理解していたからである。ドルトンはその態度を見て一行を受け入れ、国の事情と山頂への道を説明する。

ルフィの雪山登攀

Dr.くれはが住むドラム城は、切り立ったドラムロッキーの頂上にある。ロープウェーは利用できず、モンキー・D・ルフィは意識を失ったナミと傷ついたサンジを背負い、素手で凍った崖を登る。

極寒の風、雪崩、野生のラパーン、垂直に近い岩壁が行く手を阻む。ルフィ自身も指先を傷つけ、何度も落ちかけるが、二人を手放さない。戦闘で敵を倒す強さではなく、仲間を生きたまま医者へ届けるための持久力と判断が試される場面である。

山頂に着いたルフィは力尽きる。くれはとチョッパーは三人を城へ運び、ナミの病気を治療する。航海上の知識だけでは対処できない感染症と、船に常勤医がいない危険が明確になる。一味がチョッパーを必要とする理由は、可愛らしさや戦闘力ではなく、この失敗を繰り返さないための医療にある。

トニートニー・チョッパー

トニートニー・チョッパーは、ヒトヒトの実を食べた青い鼻のトナカイである。群れから異形として拒絶され、人間へ近づいても怪物として追われた。人の言葉と姿を得ても、どちらの社会にも居場所を持てなかった。

そんなチョッパーを受け入れたのが、やぶ医者を名乗るDr.ヒルルクだった。ヒルルクは名前を与え、帽子を渡し、医者としての生き方を教える。医術の正確さではくれはに及ばないが、人がいつ死ぬのか、国の心をどう治すかという問いをチョッパーへ残す。

チョッパーは人前へ出ることを恐れ、褒められても素直に喜べない。ルフィは過去や種族を条件にせず、変形を見た瞬間から面白い仲間として誘う。チョッパーが医者だからだけでなく、「一緒に海へ出たい」と思った本人を必要とする勧誘である。

ヒルルクと万能薬の夢

ヒルルクはかつて重い病に冒され、ある国で満開の桜を見たことで生きる力を取り戻した経験を持つ。その体験から、人の心と国そのものを救う桜を冬島に咲かせようと研究を続けた。雪を桜色に見せる粉の完成まで、長い年月を費やす。

自分の死期を悟ったヒルルクは、チョッパーを突き放して独り立ちさせようとする。事情を知らないチョッパーは、病気を治すと誤解した毒キノコのアミウダケを命懸けで持ち帰る。ヒルルクはそれが毒だと知りながら、チョッパーの思いを受け取ってスープを飲む。

ワポルはイッシー20が病気だという偽情報を流し、残った医者を城へ誘い出す。ヒルルクは罠と知らず、医者を救うため一人で向かう。全員が無事だと知ると国民に病人がいなかったことへ安堵し、自ら爆薬を起動する。「人はいつ死ぬのか」という言葉は、肉体の死ではなく、誰からも忘れられた時に人が本当に死ぬという信念を示す。

ヒルルクの死後、くれははチョッパーを弟子に取り、基礎から医術を教える。チョッパーはヒルルクの願いを精神として受け継ぎつつ、実際に病気と傷を治せる医者へ成長する。夢だけでも技術だけでもなく、両方を持つことが必要になる。

ワポルの帰還

国を捨てて逃げたワポルは、黒ひげ海賊団が去ったと知ると、自分の王位を取り戻すため島へ帰還する。側近のチェスとクロマーリモ、兵士を伴い、住民の意志とは無関係に城を再占拠しようとする。

ワポルはバクバクの実の能力で、食べた物を取り込み、身体や武器へ変える。大砲、家屋、部下まで材料として扱い、チェスとクロマーリモを合体させてチェスマーリモを作る。人も国も自分の所有物として消費する姿勢が、医療を独占した政治とつながっている。

ドルトンはかつてワポルへ仕えていたが、ヒルルクの死と国民の苦しみを前に反旗を翻した。帰還したワポルと戦おうとするものの負傷し、雪崩へ巻き込まれる。島民は危険を承知でドルトンを救い、王の命令ではなく自分たちが信じる人物を選ぶ。

ドラム城の戦い

ワポル一派は山頂の城へ到着し、海賊旗を撃ち落とそうとする。その旗はヒルルクが掲げた信念の象徴であり、チョッパーにとって恩人が生きた証だった。ルフィは「海賊旗は命を誓う旗」であるとして、攻撃を受けても倒さず守る。

チョッパーはランブルボールを使い、悪魔の実による三段変形を超えた複数の形態を使い分ける。毛皮強化で攻撃を受け、重量強化で力を出し、頭脳強化で相手の弱点を探す。クロマーリモとチェスの合体攻撃を分析し、自分の判断で勝利する。

ルフィはワポルの能力と兵器を正面から破り、最後は島の外へ吹き飛ばす。王を倒す目的は城や王冠を奪うことではない。仲間、医者、旗を物として食い尽くそうとする支配を終わらせるためである。

冬に咲く桜

戦いが終わると、くれははヒルルクが完成させた粉を使う。ドラムロッキーから上がる煙と雪が反応し、空と山々が桜色に染まる。植物の桜が寒冷地で一斉に開花したのではなく、雪景色を桜のように見せる大規模な演出である。

チョッパーは当初、海賊になることを拒む。自分は怪物で、人間の仲間にはなれないと思い込んでいた。ルフィは細かな理由を聞かず「うるせェ!!! いこう!!!!」と叫び、拒絶され続けた自己認識を断ち切る。くれはも武器を撃ちながら追い出す形で背中を押す。

桜はヒルルクの研究成果であると同時に、チョッパーへ向けた餞別になる。死んだ人物の夢が、くれはの実行とチョッパーの旅立ちによって完成する。医者を一人得た麦わらの一味も、チョッパーを患者だけでなく仲間として迎える。

サクラ王国への変化

ワポル追放後、島民はドルトンを中心に新しい国を作る。国名はサクラ王国となり、医療を独占していた旧体制からの再出発を示す。ドルトンは国民の近くで働き、くれはとイッシー20は医療を担う。

後の世界会議では、ドルトンとくれはがサクラ王国の代表として登場する。ワポルも表紙連載で新素材ワポメタルを生み、別の国家の王として復帰するが、ドラム島の王位へ戻ったわけではない。旧ドラム王国、サクラ王国、ワポルが建てた悪ブラックドラム王国は別の政治体として区別する。

劇場版第9作との違い

『エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』は、ドラム島編を長編映画として再構成した作品である。フランキーとニコ・ロビンが一味に加わった後の構成、サウザンドサニー号、映画独自人物ムッシュールなど、原作の同時期には存在しない要素が加わる。

物語の核であるナミの病気、チョッパーとヒルルク、ワポル、冬に咲く桜は受け継ぐが、人物編成、戦闘、敵の能力、事件順は異なる。映画の場面画像を原作第130〜154話の出来事として説明せず、「劇場版再構成」の節へ限定する。

物語上の意味

ドラム島編は、船医加入の物語であると同時に、統治と医療を結びつけた政治劇である。ワポルは医者を減らして国民を従わせ、ヒルルクは国の心を治そうとし、くれはは技術で患者を救い、チョッパーはその二つを受け継ぐ。

また、見た目で「怪物」と決めつける視線を覆す。ヒトヒトの実を食べたチョッパーはトナカイにも人間にも恐れられるが、仲間を救うために医術と戦闘を使う。反対に、人間の王であるワポルは国民を食い物にする。誰が人間らしいかは外形や肩書ではなく、他者をどう扱うかで示される。

アラバスタへ急ぐ本筋から見れば寄り道だが、ナミの命、ビビの判断、ルフィの登攀、チョッパーの加入がなければ航海は続かない。目的地へ早く着くことより、仲間を生きて連れて行くことを優先する一味の原則が固まる編である。

関連項目