ユースタス・キッドは、キッド海賊団を率いる船長であり、「最悪の世代」に数えられる海賊である。 南の海の出身で、通称はユースタス・“キャプテン”キッド。 磁力を操る超人系悪魔の実「ジキジキの実」の能力者で、周囲の金属を集めて巨大な腕や兵器を組み上げる。
初登場時のキッドは、麦わらの一味と同じ時期にシャボンディ諸島へ到達した競争相手だった。 その後は四皇へ挑み続け、ワノ国ではモンキー・D・ルフィ、トラファルガー・ローと同じ戦場に立つ。 ただし、キッドはルフィの傘下に入ったわけではない。 目的が一致した局面で共闘しても、海賊王を目指す船長としての対抗心を手放さない点に、この人物の立場がある。
基本情報
- 所属:キッド海賊団
- 役職:船長
- 通称:ユースタス・“キャプテン”キッド
- 出身:南の海
- 年齢:23歳
- 誕生日:1月10日
- 身長:205cm
- 悪魔の実:ジキジキの実
- 覇気:覇王色、武装色、見聞色
- 懸賞金:30億ベリー
- 声優:浪川大輔
ONE PIECE.comのキャラクター紹介では、キッド海賊団の船長、最悪の世代の一人、ジキジキの実の能力者として掲載されている。 現在の懸賞金欄は30億ベリーであり、これは鬼ヶ島でビッグ・マムを破った功績を受けて更新された金額である。
シャボンディ諸島での初登場
キッドは、原作第498話でシャボンディ諸島に集まったルーキーの一人として本格的に登場する。 当時の懸賞金は3億1500万ベリーで、同じ島にいた11人の超新星のうち最高額だった。 政府機関へ直接打撃を与えてきたルフィより高額だった理由には、キッド海賊団が航海の過程で民間人にも被害を出していたことが挙げられている。
人間オークション会場では、世界貴族の振る舞いを冷ややかに眺めていた。 キッドは海賊の悪行を美化しない一方、権力を盾に人を売買する支配者のほうが海賊より始末が悪いと捉えている。 ルフィがチャルロス聖を殴り飛ばした事件は、キッドにとって無謀な騒動であると同時に、世界政府の秩序へ正面から反抗する行為でもあった。
会場を包囲した海兵に対しては、キッド、ルフィ、ローの三船長が並んで戦う。 三人は協力関係を結んでいないが、互いに譲らず前へ出ようとする。 この短い共闘は、のちの鬼ヶ島で再び三人が並ぶ展開の先触れになっている。
新世界で四皇へ挑んだ航路
新世界へ入ったキッドは、四皇の勢力圏を避けるのではなく、自ら衝突を選んだ。 赤髪海賊団との戦いではベン・ベックマンを相手に左腕を失う。 それでも撤退によって野心を捨てることはなく、ビッグ・マムの勢力圏へ侵入して将星の一人を負傷させ、ロードポーネグリフの写しを手に入れた。
やがてキッド海賊団は、オンエア海賊団、ホーキンス海賊団と同盟を組み、シャンクスを狙う計画を立てる。 しかしスクラッチメン・アプーは、すでにカイドウの配下として動いていた。 空島から落下してきたカイドウに襲われると、アプーは予定どおり百獣海賊団側に立ち、バジル・ホーキンスも生存のため服従を選ぶ。 キッドとキラーは最後まで抵抗したものの敗れ、キッドはワノ国の兎丼に収監された。
この敗北は、キッドが単に力の差を理解していなかったという話では終わらない。 同盟相手の裏切りによって船長と仲間が分断されたため、彼は他の海賊を以前より強く警戒するようになる。 その後にルフィから共闘を持ちかけられても、すぐには受け入れなかった。
キラーを救うための再捕縛
兎丼から一度逃れたキッドは、自由を得たまま島を離れず、行方不明になった仲間を捜した。 やがてキラーが「人斬り鎌ぞう」として利用され、失敗作のSMILEを食べさせられていた事実を知る。 笑うことしかできなくなった幼なじみの姿を目の当たりにし、キッドは怒りを隠さなかった。
キッドとキラーは捕らえられ、クイーンの処刑遊戯に利用される。 ここで表れるのは、キッドの行動原理が名声だけではないことだ。 他人との同盟には疑い深いが、自分の海賊団、とりわけ長い時間を共にしたキラーを見捨てる選択はしない。 無謀さが仲間を危険へ巻き込む場面がある一方、仲間のためなら自分の自由も賭ける。
鬼ヶ島での共闘
鬼ヶ島討ち入りでは、キッド海賊団も百獣海賊団との戦いに参加する。 キッドの目的はワノ国を救うことだけではなく、自分と仲間を踏みにじったカイドウへの報復にあった。 ルフィやローと同じ作戦へ加わっても、三船長は互いを部下のように扱われることを嫌い、誰が先に攻撃するかを競い続ける。
屋上では、ルフィ、ゾロ、ロー、キッド、キラーがカイドウとビッグ・マムに挑む。 キッドは大量の金属を集めた「磁気魔人」を組み上げ、巨体と圧力で四皇へ攻撃した。 覇気で内部から傷つけるルフィとは戦い方が異なり、キッドは金属の質量、加速、拘束を組み合わせて相手の防御を崩そうとする。
戦場が分かれた後は、ローと二人でシャーロット・リンリンと対峙する。 キッドは覚醒したジキジキの実によってビッグ・マム自身へ磁力を付与し、周囲の構造物を引き寄せて拘束した。 さらに巨大な電磁砲「電磁砲(ダムド・パンク)」を撃ち込み、ローの能力と連携して彼女を鬼ヶ島の地下へ落とす。
勝利はキッド一人の戦果ではない。 ローが内部へ与えた損傷、キッドが加えた連続攻撃、地下の爆薬、落下地点の条件が重なって決着した。 それでも、四皇の一角を戦場から退けた二人の功績は大きく、キッドとローの懸賞金はルフィと同じ30億ベリーへ引き上げられた。
エルバフ沖での敗北
ワノ国を出たキッド海賊団は、次の航路でエルバフへ到達し、赤髪海賊団と再び向き合う。 キッドは相手の傘下にいる海賊船までまとめて攻撃しようとし、電磁砲を構えた。 しかしシャンクスは見聞色の覇気で攻撃後の被害を先に捉え、自らキッドの船へ踏み込む。 「神避」による一撃でキッドとキラーは倒れ、ドリーとブロギーの攻撃によって船ヴィクトリアパンクも破壊された。
作中の語りは、この戦いでキッド海賊団が「壊滅」したと伝える。 ただし、キッド本人の死亡は確定していない。 船とロードポーネグリフの写しを失い、海賊王を争う航路から大きく後退したことまでは確定しているが、その後を死亡と断定するのは早い。
この敗北には、キッドの長所と欠点が同時に出ている。 一度負けた相手へ再挑戦する意志は、四皇に屈服しなかった強さの延長にある。 一方で、相手の戦力と傘下の関係を読み切る前に大規模攻撃を選んだ判断は、船員全員を危険にさらした。 退かない意志だけでは、新世界の勢力戦を勝ち残れないのである。
性格と海賊観
キッドは短気で、侮辱や挑発へ暴力で応じることが多い。 海賊王になる夢を笑った相手を容赦せず、弱い海賊を見下す言動もある。 目的のために民間人の犠牲を避けない点は、同じ最悪の世代でもルフィと明確に異なる。
その一方で、権威へ従うことを嫌い、四皇を前にしても服従を選ばない。 カイドウに敗れて投獄されても百獣海賊団へ入らず、ビッグ・マムの能力が恐怖を利用しようとしても屈しなかった。 キッドにとって海賊王を目指すことは名乗りだけではなく、自分の意志を誰にも曲げさせないという生き方と結び付いている。
ルフィとローに対しては、協力者である前に競争相手として接する。 命令されたと感じれば反発し、同じ攻撃を避けるために不利な選択さえする。 それでも相手の実力は認めており、鬼ヶ島では二人が役割を果たすことを前提に戦い続けた。 尊敬を口に出さず、競争の形で表す人物である。
キッド海賊団とキラー
キッド海賊団の中心には、船長キッドと戦闘員キラーの関係がある。 二人は幼い頃からの友人で、海賊団結成以前から行動を共にしてきた。 キラーは激情に走りやすい船長を制止し、作戦や情報を補う役割を担う。 キッドもキラーを単なる部下ではなく「相棒」と呼ぶ。
ヒート、ワイヤーをはじめとする船員も、鬼ヶ島で倒れた船長を守ろうとした。 エルバフ沖ではキッドが敗れると、船員たちはロードポーネグリフの写しを差し出して助命を求める。 キッドの強引な航路は船員を危険へ連れていくが、船員側の忠誠も恐怖だけで成り立ってはいない。
ジキジキの実
ジキジキの実は、磁力を発生させて金属を引き寄せ、反発させる超人系悪魔の実である。 キッドは周囲の武器や鉄くずを集め、失った左腕を補う巨大な金属腕を形成する。 金属を一つずつ精密に操るだけでなく、大量の部品を短時間で兵器の形へ組み替えられる点が特徴だ。
代表的な戦い方には、巨大な腕で殴る「磁気弦」、金属の巨体を作る「磁気魔人」、相手を挟み込む「付与」と「磁気激突」、電磁力を利用した「電磁砲」がある。 周囲に利用できる金属が多いほど攻撃の規模を拡大しやすく、武器を持つ集団に対しては相手の装備そのものを奪える。
反面、集めた金属は覇気そのものではなく、強敵には破壊される。 大技は準備と大量の材料を必要とし、電磁砲の照準中に先手を取られれば発射できない。 エルバフ沖の戦いは、最大火力へ移る時間がそのまま隙になることを示した。
悪魔の実の覚醒
覚醒後のキッドは、自分以外の人物や物体へ磁力を与えられる。 ビッグ・マムへ「S」を付与し、建造物へ引き寄せる「N」を設定した攻撃では、本人の腕力だけでは外しにくい拘束を作った。 磁力の中心を敵へ移せるため、金属を自分の周囲へ集める従来の戦い方より攻撃位置の自由度が高い。
ただし覚醒技は体力の消耗が大きい。 ローとの戦いでは、二人とも切り札を何度も使える状態ではないと話しながら、ビッグ・マムを倒すため限界を越えて能力を重ねた。 覚醒は無制限の強化ではなく、勝負所を選ぶ必要がある。
覇気と身体能力
キッドは覇王色の覇気を持つことがカイドウの発言で示されている。 武装色と見聞色も使用できるが、原作の戦闘では悪魔の実による攻撃が前面に出る。 覇王色を武器や身体へまとわせる高度な使い方は確認されていないため、ルフィやシャンクスと同じ段階へ到達したと断定はできない。
身体能力も高く、海楼石の手錠を付けられた兎丼で、片腕のままルフィと同量の石を運んだ。 鬼ヶ島では四皇の攻撃やホーキンスから転送された損傷を受けながら戦闘を続けている。 ジキジキの実の大規模な操作は、こうした持久力を土台にしている。
ルフィ、ローとの違い
キッド、ルフィ、ローは同じ30億ベリーの懸賞金となったが、戦い方も組織の作り方も異なる。 ルフィは人を引き付け、現地の協力者と目的を共有する。 ローは情報と能力を組み合わせ、敵の支配構造を崩す作戦を立てる。 キッドは正面から圧力をかけ、自分と海賊団の力で道を開こうとする。
鬼ヶ島では三つの違いがかみ合った。 しかし単独航路へ戻った後、キッドはシャンクスの未来視と即応に対抗できなかった。 懸賞金の一致は三人の実力、勢力、判断力が完全に同じであることを意味しない。 キッドの物語は、敗北しても挑む野心の強さと、その野心を船長の判断へ変える難しさを併せて描いている。


