Mr.9は、秘密犯罪会社バロックワークスの元フロンティアエージェントである。 王冠を思わせる装いと二本の金属バットを持ち、ミス・ウェンズデーと組んでウイスキーピーク周辺の任務に従事した。
初登場時は、麦わらの一味が双子岬で出会った巨大クジラ・ラブーンを食料として狙う敵である。 その後、相棒のミス・ウェンズデーがアラバスタ王女ネフェルタリ・ビビだと判明すると、事情を十分に知らないまま彼女を逃がす側へ回り、アラバスタサガへの導線を作る。
出番は長くないが、組織のコードネームだけで動いていた人物が、任務より一緒に過ごした相手を選ぶ変化を見せる。 扉絵ではミス・マンデーと家庭を築いた後日談も描かれ、ウイスキーピークが犯罪会社の拠点から生活の場所へ変わったことを伝える人物である。
基本情報
本名は作中で明かされておらず、「Mr.9」はバロックワークスで使うコードネームである。 数字は組織内の序列と担当を示すもので、王族の称号ではない。
頭に王冠を載せ、衣装や言葉遣いも王を意識させるが、実際の国王や王子だという設定はない。 この外見はコードネーム「9」と組み合わせた人物デザイン上の特徴として見るべきである。
所属階級はフロンティアエージェント。 グランドライン入口付近で活動する下位の実働要員で、番号の小さいオフィサーエージェントほどの戦闘力や組織上の権限は持たない。
最初の相棒はミス・ウェンズデー。 後にウイスキーピークへ残ったミス・マンデーと結婚し、子供をもうける。
バロックワークスのコードネーム制度
バロックワークスでは、男性エージェントが「Mr.」と数字、女性エージェントが曜日や祝日の名を使う。 構成員は互いの本名や社長の正体を知らず、必要な情報だけを渡される。
Mr.9とミス・ウェンズデーの組み合わせも、この制度によって作られた仕事上のペアである。 数字が男女共通の隊番号になっているわけではなく、男性の順位と女性のコードネームを組み合わせて活動する。
Mr.9は社長Mr.0が王下七武海クロコダイルであることや、ミス・ウェンズデーが王女ビビとして潜入していることを知らない。 情報を知らされない構造だからこそ、後の離反は政治的な計画ではなく、目の前の相棒との関係から生まれる。
双子岬での登場
Mr.9とミス・ウェンズデーは、リヴァース・マウンテンを越えた先の双子岬で登場する。 二人はラブーンの体内へ入り、巨大な身体を食料として利用しようとする。
ラブーンを守るクロッカス、事情を知るルフィたちから見れば明確な敵対行為である。 Mr.9たちはウイスキーピークの食料事情を理由にするが、生きたクジラを住民の資源としてしか見ていない。
作戦は失敗し、二人はルフィたちに捕らえられる。 それでもウイスキーピークへ帰る手段を求め、麦わらの一味の船へ同乗する流れになる。
この登場は、彼らを大規模組織の幹部としてではなく、食料確保に追われる末端構成員として見せる。 後にバロックワークスの全貌が明かされた時、巨大な犯罪計画の最下層にいる人物だったと分かる。
ウイスキーピークでの役割
ウイスキーピークは、海賊を歓迎する町に見せかけた賞金稼ぎの拠点である。 住民とバロックワークス構成員は宴で海賊を油断させ、眠ったところを捕らえて賞金を得る。
Mr.9も歓迎役と襲撃側の一人として麦わらの一味を狙う。 しかしロロノア・ゾロに作戦を見抜かれ、ミリオンズや他のフロンティアエージェントと共に戦うことになる。
町の戦闘では、Mr.9とミス・マンデーを含む多数の構成員がロロノア・ゾロ一人に翻弄される。 個々の技が弱いだけでなく、人数と奇襲へ依存した集団戦術が、相手の実力を誤認したことで崩れる。
この敗北後、Mr.5とミス・バレンタインが現れる。 二人の目的は麦わらの一味ではなく、組織へ潜入していたビビとイガラムの処刑だった。
ミス・ウェンズデーを守る選択
ミス・ウェンズデーの正体がビビだと明かされ、Mr.9は自分が任務の全体を知らされていなかったと気づく。 それでも、上位エージェントの命令に従って彼女を攻撃することは選ばない。
Mr.9は事情を理解できていないと認めたうえで、長く組んできた相棒を逃がす時間を作ろうとする。 これは、彼が最初からアラバスタ王国の潜入協力者だったという意味ではない。
ビビとイガラムは、バロックワークスの計画を調べるために身分を偽っていた。 Mr.9はその作戦の一員ではなく、正体を知った瞬間に個人的な関係を優先した。
ミス・マンデーも同様に、ビビを逃がすためMr.5たちへ立ち向かう。 二人は敵わず倒されるが、末端エージェントにも会社の命令では消せない友情があったことを示す。
戦闘能力
Mr.9は二本の金属バットを武器にする。 体操のような跳躍、回転、宙返りで勢いをつけ、打撃の威力を高める戦い方を得意とする。
バットには金属製のロープを仕込んでおり、相手を拘束する用途にも使う。 単純な棍棒二本ではなく、移動、打撃、捕縛を一組の道具で行う仕掛けである。
一方、Mr.9は悪魔の実の能力者ではなく、覇気の使用も確認されていない。 動きは派手だが、ゾロには通用せず、オフィサーエージェントのMr.5にも抵抗できない。
これは無力という意味ではない。 グランドライン入口で賞金稼ぎとして活動し、一般的な海賊を捕らえるだけの経験はある。 ただし麦わらの一味や上位エージェントと比べると、明確な戦力差がある。
性格
初登場時のMr.9は、芝居がかった口調と大きな身振りを使う。 王冠の外見に合わせ、自分を堂々と見せようとするが、足を滑らせるなど間の抜けた面もある。
任務ではラブーンを狙い、ウイスキーピークで海賊を騙すため、善良な人物として登場するわけではない。 それでも相棒が処刑されようとした時には、自分が損をする選択を取る。
彼の倫理は完成された正義ではなく、身近な相手への情として表れる。 国家の危機を理解してビビを救ったのではなく、理由が分からなくても長年の相棒を見捨てなかった。
この限界を含む善意が、短い登場で人物を単なる雑兵から区別する。
ミス・マンデーとの関係
ウイスキーピーク時点で、Mr.9の仕事上の相棒はミス・ウェンズデー、ミス・マンデーの相棒はMr.8である。 したがってMr.9とミス・マンデーは最初から男女ペアとして設定されていたわけではない。
二人はビビを守ろうとしてMr.5とミス・バレンタインに敗れる。 バロックワークス崩壊後もウイスキーピークに残り、やがて夫婦になる。
扉絵連載「世界の甲板から」では、二年後の二人と子供が「賞金稼ぎ一家」として描かれる。 生存、結婚、子供の存在はこの扉絵で確認できる。
本編の長い再登場ではなく一枚の後日談だが、組織解体後の人生が具体的に示される意味は大きい。 コードネームで呼ばれた構成員が、会社を離れて家族を持ち、町で暮らし続けている。
ビビとの関係
Mr.9はミス・ウェンズデーを組織上の相棒として知り、本名も王女の立場も知らなかった。 ビビから見れば、潜入中に利用した組織の構成員でもある。
それでも正体が露見した時、Mr.9はビビを売り渡すより守る側へ回る。 ビビが国へ向かう時間を直接大きく稼いだわけではないが、その選択は彼女にとって予想外の援護だった。
後のアラバスタ編で二人が再会する場面は描かれない。 そのため、ビビがMr.9の生存や家庭を知っているか、彼へどのような感情を持ち続けたかは不明である。
描かれていない再会を補うより、ウイスキーピークの一瞬に成立した信頼をそのまま評価するほうが正確である。
原作・アニメ・実写版の区分
原作漫画とTVアニメでは、Mr.9は双子岬からウイスキーピークへ続く人物として登場する。 演出や台詞の細部に差はあっても、ラブーンを狙い、ゾロと戦い、ビビを守ろうとしてMr.5に敗れる骨格は共通する。
英語圏向けの一部吹替版では、ビビを守る動機が潜入協力者だったかのように変更された例がある。 しかし原作では、Mr.9は事情を知らず、相棒だった時間を理由に加勢する。
実写ドラマ版では、人物の登場範囲や結末が原作と異なる場合がある。 媒体別の出来事をまとめる際は、実写版の結果を原作漫画のMr.9へ上書きしないことが必要である。
物語上の役割
Mr.9は、バロックワークスを最初に見せる案内役の一人である。 彼の任務から始まり、ウイスキーピーク、オフィサーエージェント、Mr.0へと組織の階層が開かれていく。
同時に、秘密主義の組織が完全には人間関係を消せないことを示す。 コードネームで本名を隠し、目的を知らせず、失敗者を処刑しても、長く組んだ相手への情は残る。
後日談では、犯罪会社の構成員という役割から離れ、夫と父という生活者の側面を得る。 大事件を動かす人物ではないが、世界が主要人物の戦い以外でも続いていることを伝える脇役である。
まとめ
Mr.9は、バロックワークスの元フロンティアエージェントで、ミス・ウェンズデーの相棒だった。 王冠風の衣装と二本の金属バット、体操を組み合わせて戦うが、王族でも悪魔の実の能力者でもない。
双子岬ではラブーンを狙い、ウイスキーピークでは麦わらの一味を罠にかける敵として行動した。 しかしビビの正体が明かされると、組織の命令より相棒だった時間を選び、Mr.5へ立ち向かう。
バロックワークス崩壊後はミス・マンデーと結婚し、子供と共にウイスキーピークで暮らす。 短い登場の中で、末端構成員がコードネームの役割から離れ、自分で人間関係を選び直したことがMr.9の特徴である。


