本文へ移動
ONE PIECE百科事典ANNA MOVIES

映画

『ONE PIECE』巻千〝Z〟

『ONE PIECE』巻千〝Z〟は、劇場版『ONE PIECE FILM Z』の公開日である2012年12月15日から、映画館の入場者へ配布された特典冊子である。

『ONE PIECE』巻千〝Z〟は、劇場版『ONE PIECE FILM Z』の公開日である2012年12月15日から、映画館の入場者へ配布された特典冊子である。通常のジャンプ・コミックス第1000巻ではなく、映画の設定、人物デザイン、製作資料をコミックス風の判型へまとめた特別巻に当たる。

表紙には映画用衣装を着た麦わらの一味が描かれ、中央のモンキー・D・ルフィを中心に戦闘へ向かう構図が取られている。題名の「千」は本編の巻数ではなく、映画の中心人物ゼットの名に含まれる「Z」と、先行する特典「巻零」から続く記念的な番号付けを組み合わせたものと理解できる。

書誌情報

  • 正式題名:ONE PIECE 巻千〝Z〟
  • 著者表記:尾田栄一郎
  • 配布開始:2012年12月15日
  • 配布形態:『ONE PIECE FILM Z』劇場入場者特典
  • 判型:ジャンプ・コミックスに準じる小冊子
  • 言語:日本語
  • 主題:映画設定、人物デザイン、製作資料、ゼットの経歴

国立国会図書館系の書誌では、東映による2012年12月刊、80ページ、18センチの資料として記録されている。一方、表紙などを含めて84ページと数える資料もある。ページ数を示す際は、資料本体の書誌上のページ数と、表紙・見返しを含む物理的な枚数を混同しないことが必要である。

また、巻千には通常巻のようなISBNと定価で一般流通した新刊という位置付けはない。図書館や古書市場では図書として扱われる場合があるが、入手経路の起点は映画の来場特典である。「単行本第1000巻」「原作1000話収録巻」と呼ぶと、2021年に到達した原作第1000話や通常コミックス第100巻との混同を招く。

「海賊の宝袋」と配布の仕組み

映画公開時、先着200万人へ「海賊の宝袋」が用意され、その中心的な内容物が巻千だった。袋には冊子のほか、データカードダス用カードやポストカードなどの関連品が組み合わされた。劇場や配布時期によって宝袋全体の在庫状況と巻千単体の扱いが異なったため、「巻千」と「海賊の宝袋」は同義ではない。

『ONE PIECE FILM Z』は公開初週から多数の観客を集め、特典の不足を受けて巻千の増刷も報じられた。限定品でありながら、当初の200万部だけで完全に終了した資料ではない点に注意したい。先着200万人という数字は海賊の宝袋の準備数を指し、後から追加配布された巻千を含む最終的な冊数と同じとは限らない。

公開直後に決まった追加分は巻千のみ200万部で、「海賊の宝袋」自体は当初の200万セットで終了した。 したがって後期の配布物を調べる際は、冊子が存在することだけを理由に、カードやポストカードなど袋内の特典も同時に渡されたと判断できない。

この仕組みは、映画を見た観客へ完成作の背景資料を同時に渡す方法でもあった。冊子には映画の重大な内容へ触れる箇所があるため、袋には鑑賞後の開封を促す注意が付された。宣伝用の予告冊子ではなく、見終えた後に人物の動機やデザインを読み直す副読本として設計されている。

巻千に収録された領域

巻千は一編の長い漫画を収録した巻ではない。中心となるのは、映画の世界、人物相関、設定画、制作の過程を複数の章へ分けた資料である。大きく見ると、映画の物語と舞台を案内する部分、尾田栄一郎によるデザインワーク、映画と連動する映像作品の人物資料、ゼットの過去を整理する部分から構成される。

映画世界の案内では、NEO海軍と麦わらの一味、海軍本部の関係を読み取れる。映画本編は複数の勢力が同じ標的を追うため、相関図や人物紹介は、誰が海賊を憎み、誰がゼットを追跡し、誰がルフィたちと衝突するかを整理する役割を持つ。

デザインワークには、映画用に用意された麦わらの一味の衣装や、ゼット、アイン、ビンズなどの映画人物の案が含まれる。完成画だけでなく、装備や服装の発想を追える点が重要である。映画本編では数秒しか映らない衣装も、設定画では正面・背面、素材、装飾の意図を確認できる。

さらに、映画公開前後に放送された「Zの野望編」や「エピソード・オブ・ルフィ」と関係する人物・衣装も扱われる。巻千は映画一本だけを切り離した本ではなく、2012年末に展開された複数の連動作品をつなぐ資料集である。

ゼットの経歴を読む資料

映画の中心人物ゼットは、かつて海軍大将を務め、後に海賊を根絶するためNEO海軍を率いた人物である。映画本編では現在の行動とルフィとの衝突が中心となるため、過去の時間をすべて映像で説明することは難しい。巻千に掲載された経歴や設定は、彼が単純な破壊者ではなく、長い海軍生活と喪失を経て現在の思想へ至った人物であることを補う。

ただし、冊子へ掲載された設定と原作漫画の正史を同一視してはならない。ゼット、アイン、ビンズ、NEO海軍、ダイナ岩は映画世界の物語を構成する。海軍の制度や既存人物との接点があっても、映画内の事件が原作本編で同じ形で発生したと確定するわけではない。

巻千の価値は、正史か非正史かを一語で振り分けることより、どの設定が尾田栄一郎のデザイン作業に由来し、どの出来事が映画の脚本上で起きたかを区別できる点にある。作者による設定画が存在することと、その人物が原作漫画の時間軸へ登場済みであることは別である。

麦わらの一味の映画衣装

表紙と誌面で目を引くのが麦わらの一味の衣装である。『FILM Z』では航海時の服だけでなく、敵地へ乗り込む戦闘服や場面に応じた装いが用意された。衣装は単なる商品展開用の変更ではなく、映画の軍事的な意匠、雪や火山を含む島の環境、終盤の決戦へ向かう気分を視覚化する。

ルフィの赤を基調とする衣装、ゾロの武装、ナミやロビンの複数の装いなどは、TVアニメの通常衣装と区別しやすい。巻千では一枚の集合絵だけでは分からない細部を確認でき、映画版フィギュアやゲーム内衣装の出典を追う手掛かりにもなる。

一方で、映画衣装を原作の時系列上で恒常的に着用した装備として扱うことはできない。人物記事へ画像を引用する場合も、「新世界編の標準衣装」ではなく「『FILM Z』用デザイン」と明記する必要がある。

巻零との違い

『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』では、入場特典として「巻零」が配布された。巻零には原作第0話「STRONG WORLD」が収録され、後に映像化もされた。これに対し巻千は、映画本編の前日譚を一つの漫画作品として収録した巻ではなく、デザイン・相関・経歴を中心とする設定資料集である。

両方ともコミックス風の表紙と番号を持つため、同じ形式の特別漫画と誤解されやすい。しかし読者が得られる情報の形は異なる。巻零では物語を読み、巻千では完成した映画の背景にある設計を読む。この違いは、引用する際の扱いにも影響する。巻千の図版を「原作漫画のコマ」と説明せず、映画設定画または冊子掲載資料として示さなければならない。

その後の映画でも、「巻七七七」「巻壱萬八拾九」「巻四十億」など、数字を用いた入場特典冊子が作られた。巻千は、巻零で始まったコミックス型特典を、映画設定資料集という形式へ展開した早い例に位置付けられる。

原作第1000話・コミックス100巻との区別

検索上で最も注意が必要なのは、巻千、原作第1000話、コミックス第100巻の三つである。巻千は2012年の『FILM Z』入場特典で、表記は漢数字の「千」。原作第1000話「麦わらのルフィ」は2021年に掲載され、通常コミックス第99巻へ収録された。コミックス第100巻は同じ2021年に発売された通常巻であり、収録話は第1005話から第1015話である。

したがって巻千に原作第1000話は収録されておらず、通常巻が1000冊まで刊行されたことも意味しない。数字を作品内の話数や巻数と対応させるのではなく、映画特典の固有名として扱うのが正確である。

資料としての価値

巻千は、映画本編だけでは確認しにくい制作段階の情報を、公開と同じ時期に観客へ渡した資料である。ゼットの思想を経歴から読み直し、麦わらの一味の衣装を設定画で比較し、TV連動編と映画の接続を一冊で確認できる。

百科事典で参照する際は、映画の劇中事実、冊子が示す設定、原作漫画の正史を分ける必要がある。巻千に掲載されたというだけで原作上の出来事になるわけではないが、映画人物の公式デザインや制作意図を調べる一次資料としての価値は高い。

一般販売の単行本ではなく、鑑賞体験と結び付いた配布資料であることも重要である。映画館で作品を見た直後に設定を読むという順序まで含めて、『FILM Z』の受け取り方を設計した一冊だった。

関連項目

  • ONE PIECE FILM Z
  • ゼット
  • NEO海軍
  • アイン
  • ビンズ
  • ダイナ岩
  • 麦わらの一味
  • Zの野望編
  • エピソード・オブ・ルフィ