「雪女の計」とは
「雪女の計」(ゆきおんなのけい)は、青山剛昌の漫画『名探偵コナン』の単行本50巻に収録されたFile9の題名である。週刊少年サンデー連載時の通し番号ではFILE.519にあたり、2005年20号(2005年4月13日発売)に掲載された。小学館の公式事件データベースでは事件番号148(公式DBのepisode IDは12052)「服部平次VS工藤新一 ゲレンデの推理対決!」に属し、その事件を構成する5本のFileの2番目に位置する章である。題名はこの章内で撮影が進む作中映画の3作目「雪女の計」と同じであり、File題と劇中作品題が重なる仕掛けになっている。
収録位置と掲載
50巻にはFile1からFile11までが収録され、「雪女の計」は9番目に置かれる。直前はFile8「平次の思い出」、直後はFile10「謎のリフト」である。事件番号12052は50巻のFile8から51巻のFile1までの5本にまたがるため、本章は事件の導入から発生へと転じる境界にあたる。事件の前後関係では、公式順の直前の事件は「探偵団に注目取材」、直後は「お魚メールの追跡」にあたる。 本章を含む一連のFileは、工藤新一に関する特集単行本でも再録されたとConanWikiは記す。舞台の山形県のスキー場は、蔵王温泉スキー場として資料に記されることが多い。 50巻にはサンデー連載のFILE.511からFILE.521までが収められ、掲載号は2005年11号から14号および16号から22・23合併号にまたがる。表紙はスキーウェア姿のコナンとスキー場のリフトを背景にしたもので、巻末の名探偵図鑑では火村英生が取り上げられた。ドイツ語版では本章は「Die Rache der Schneefee」の題で2007年6月18日に刊行されている。

アニメ第490話「服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決」
テレビアニメでは第490話「服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決」(2007年12月3日放送)がFile518からFile522までを1話で映像化しており、本章の内容はその中盤に相当する。なお、テレビアニメ第94話「雪女伝説殺人事件」は本作とは無関係のアニメオリジナル事件であり、題名の似通いに注意が必要である。 第490話は1時間スペシャルとして放送され、シーズン12の第31話にあたり、国際版では536・537話として扱われる。視聴率は8.8%と記録されている。監督は佐藤真人で、オープニング曲は「Glorious Mind」、エンディング曲は「世界はまわると言うけれど」、次回のコナンのヒントは「スキーリフト」だった。Detective Conan Wikiは本事件がテレビスペシャル「Black History 2」で再構成されたとも記す。
電話の続きと「中坊」との推理合戦
冒頭は現代の電話の続きから始まる。服部平次は毛利探偵事務所のコナンへ、3年前に山形県のスキー場で出会った「どっかの中坊」との推理合戦を語り続ける。きっかけは互いにその月に解決した事件数を報告し合ったことである。解決数で上回ったコナンが「1番」と勝ち誇ると、平次は自分を「2番」と述べ、自分より頭が切れる探偵がいたことを明かす。その探偵こそ思い出の中の中坊であり、コナンはそれが縮小前の自分、つまり工藤新一だったと気付いているが、明かさずに平次の話を聞き流している。
吹雪の中で同じ手がかりを追う二人
回想の中の3年前。吹雪のスキー場で、平次は事件現場となったリフトを調べに行こうとするが、和葉にも止められ、天候のために後へ回す。その平次を、変装した母親の服部静華がこっそりビデオで撮影していた。平次は撮影を続ける変装した静華に気づき、声をかけている。同じ頃、工藤新一と毛利蘭はリフトの調査から戻り、居合わせた鈴木園子に二人の仲を茶化される。新一と蘭は続けて徒歩でリフトの経路を確かめに出かけ、その後ろ姿を今度は工藤有希子が撮影していた。吹雪の中で、二人の少年は互いの存在を知らないまま、同じ事件の手がかりを追い始めている。
ホテルに残る水上の死への疑問
一方、ホテルに残った映画スタッフの間では、4年前に亡くなったスタントマン水上二朗の話が続く。彼らが撮る3作目はその実事件を題材にしており、水上が死んだ日も同じように吹雪いていたこと、将来を楽観し俳優への転身まで決めていた人物が自殺するはずがないことへの疑念が語られる。元刑事の探偵・片品陸人は、この場で大山守蔵監督へ新作映画の脚本で犯人役にあたるのは誰かと尋ねるが、大山はその問いをはぐらかす。
リフトに届いた遺体
吹雪が止むと撮影が再開され、ファンにせがまれた主演俳優の箕輪奨兵がゲレンデで滑走を披露する。その頃、新一と蘭はリフトがゲレンデの雪面へ3メートルほどまで近づく地点がコース上に2カ所あることを確認していた。遅くなった撮影隊は山頂へ向かうためリフトに乗り込み、スタントマンの三俣耕介とメイクの立石雫が先に乗る。立石は上の降り口で降り損ね、そのまま下へ戻ることになる。直後、パンという音が響き、徒歩で頂上へたどり着いた新一と蘭がリフト駅へ駆けつけると、箕輪の遺体がリフトに乗ったまま到着する。その様子は4年前の水上の死と同じ結末であり、本章はこの発見で幕を閉じる。死因や現場の詳細が検証されるのはFile10以降である。
「雪女の計」という題名
本章の題名は二重の意味を持つ。一つは作中映画の題名そのものである。撮影隊が制作しているのは、山に伝わる「雪女の銀衣伝説」に準えた雪女3部作の3作目で、その題名が「雪女の計」である。1作目の「雪女の怪」、2作目の「雪女の恋」に続くシリーズの最新作として、劇中で繰り返し言及される。 もう一つは、この章で起きる出来事そのものへの言及と読める点である。伝説では吹雪の夜に雪女が男へ近づき、銀の衣と大切な物の交換を持ち掛ける。応じた男は心臓を奪われ、遺品の風呂敷には銀の衣ではなく雪の塊が残されていたという。リフトの上で起きた死はこの伝説をなぞる形で演出され、「雪女の仕業」を装う人為的な計略が敷かれている。題名の「計」が劇中映画の題名を指すと同時に、誰かが張り巡らせた策略をも示唆するという二重の読みは、編集上の解釈である。
File9の登場人物
現代の場面に登場するのは電話の両端、江戸川コナンと服部平次である。コナンは毛利探偵事務所、平次は大阪の服部家におり、事件の公式資料が示す舞台のうち現在側の二箇所がここで使われる。回想では中学時代の工藤新一と服部平次が中心となり、それぞれ毛利蘭、遠山和葉が行動をともにする。鈴木園子は新一らと同じスキー場に来ていて、二人の様子を茶化す役割で顔を出す。少年たちの背後では母親たちも動いており、服部静華は変装して平次をビデオに収め、工藤有希子は新一の調査姿を撮影する。 事件の関係者として、主演俳優の箕輪奨兵、映画監督の大山守蔵、スタントマンの三俣耕介、メイク担当の立石雫、そして水上の事件を追う元刑事で探偵の片品陸人が揃う。4年前に亡くなったスタントマン水上二朗は、本章では故人として回想と証言の中に置かれる。資料がFile単位で整理する本章の登場人物は、工藤新一を主役格に、服部平次、江戸川コナン、毛利蘭、遠山和葉、鈴木園子、工藤有希子、服部静華、服部平蔵と並ぶ。 回想時点の年齢は資料では、箕輪32歳、大山56歳、三俣27歳、立石31歳、片品35歳と記される。人物の関係では、水上は箕輪と大山の友人で立石の婚約者であり、三俣は水上の死後に後釜へ収まった後輩、片品は水上の幼なじみで、管轄外の水上の事件を追って刑事を辞めた過去を持つと語られる。Detective Conan Wikiは、箕輪・大山・水上・三俣・立石・片品という容疑者の姓が、日本のスキー場(箕輪・大山・水上高原・三俣・雫石・かたしな高原)に由来すると記す。

事件の中での位置づけ
事件番号148は5本のFileで構成され、「平次の思い出」で語りの枠組みと4年前の死が提示され、本章「雪女の計」で現在の殺人が起きる。続く「謎のリフト」では遺体発見後の検証とリフトをめぐる謎が深められ、「雪女の銀衣伝説」で伝説の照合と両探偵の推理が収束し、51巻File1「吹雪の中の復讐」で解決へ至る。 この並びの中で本章が担うのは「事件が目の前で現実に起きる」転換点である。4年前の死が伝説まがいの語りだったものが、同じ状況のまま目の前で再現され、雪女の仕業か殺人事件かという争点が、読者の前で確定的な事件へと変わる。新一と平次が同じ場に居合わせながら顔を合わせない構図も、この章の時点で成立している。

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箕輪の滑走に隠されたトリック
本章で披露される箕輪の滑走は、後のFileで判明する通り、すでに入れ替わった三俣耕介によるものだった。本物の箕輪は三俣が抱えたバッグの中に隠され、リフト上で射殺されている。リフトが地面へ近づく二箇所のうち一方には、雪を詰めて持ち手を凍らせ立てた長い持ち手のバッグが用意され、リフトに乗ったままストックで持ち手を引っかけて回収する細工があった。もう一方の低空地点で三俣は飛び降り、あらかじめ置いた自分のスキーウェアで滑り降りる。その途中で立石とすれ違い、三俣自身が発生させた破裂音が鳴っている間は彼女と言葉を交わしていたことになり、アリバイが形成されていた。バッグはスキー場の売店で複数のサイズが販売されている長い持ち手のもので、三俣は上着の下に箕輪の服を着込んでいた。また前作映画のスキー場面には箕輪のアップの直後に繋がらない描写の綻びがあり、吹き替えがあったことの証拠とされた。
静華のビデオに残った手がかり
なお、本章で静華が撮っていた何げないビデオには、箕輪らがリフトへ乗った順番が記録されており、後のFileで新一が搭乗順を確認する手がかりになる。こうした日常の記録が証拠へ転じるのも本章の仕掛けである。
動機と同時の解決
動機は4年前の水上二朗の死への復讐だった。水上は箕輪のスキー場面の吹き替えを務めており、箕輪はその事実が公開されることを恐れて、同じ手口で水上を殺害していた。三俣はその真相を見抜き、箕輪が用いたのと同じ手口で命を奪った。新一と平次はそれぞれ工藤優作、服部平蔵という父親のヒントを得て、互いに顔を合わせることなく同時に真相へたどり着く。平次は今も、対決相手が新一本人だったとは気付いていない。凶器はトカレフTT-33だったと資料は記す。解決の後、両者は相手がヒントなしに事件を解いたように見える点をそれぞれ引っかけつつ、互いを探偵と認め合い再会を期した。和葉は足を捻挫し、平次に背負われて下山した。
出典
- 名探偵コナン 全事件レポート編纂室
- 服部平次VS工藤新一 ゲレンデの推理対決!
- 名探偵コナン 50巻 事件一覧
- 服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決
- 名探偵コナン 事件ファイル
- Kapitel 519「雪女の計」の章項目
- Kapitel 521「雪女の銀衣伝説」の章項目
- Kapitel 522「吹雪の中の復讐」の章項目
- 第490話「服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決」の話数項目
- Volume 50の巻別項目
- 名探偵コナン原作コミックス50巻の巻別データ
- 第490話「服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決」のあらすじ・スタッフキャスト項目
- 週刊少年サンデー掲載リスト(FILE.518〜522の号数・発売日・読者記録)
