ファニー・ヴァレンタイン
ふぁにーヴぁれんたいん
ネタバレ範囲: Part 7完結まで
# ファニー・ヴァレンタインファニー・ヴァレンタインは、第7部『スティール・ボール・ラン』の主要な敵であり、作中の第23代アメリカ合衆国大統領である。北米大陸横断レースを支援する国家指導者として表に立ちながら、真の目的として大陸各地に散らばる聖なる遺体を回収する。遺体の加護をアメリカへ集中させ、国を世界の頂点へ導くことを正義と信じる。
大統領としての立場
ヴァレンタインは43歳でアメリカ合衆国大統領を務め、国民から厚い支持を得ている。公式アニメ人物紹介は、SBRレースを支援する一方、その関与には隠された思惑がある人物として紹介する。レース主催者として公に名前が出るのはスティーブン・スティールだが、ヴァレンタインは国家権力と資金を背景に組織へ入り込む。大統領専用の移動拠点から進行を監視し、報告役、暗殺者、スタンド使いを参加者や沿道へ配置する。
スティーブンには催事を成功させる役割を続けさせながら、遺体の存在と殺人を伴う回収計画の全容を知らせない。競技の規模、参加者の移動、報道の注目を利用し、他国に先んじて遺体を探索する仕組みを作る。
外見と背中の傷
初登場時のヴァレンタインは小柄で太った体格に見え、後には長身で筋肉質な姿として描かれる。変化は遺体の一部を得る時期と重なるが、作中で身体変化の医学的な原因が詳細に説明されるわけではない。長い髪の毛先は輪のように巻き、上着、フリルのある衣服、手袋を着用する。背中には星条旗を思わせる深い傷痕が広がる。
この傷は軍務中に受けた拷問の痕であり、単なる衣装模様ではない。カラー版、ゲーム、アニメで衣服や髪の色が異なる可能性があるため、色より髪形、傷、服の輪郭を識別要素にする。
父の死と愛国心
ヴァレンタインが7歳の時、戦地へ行った実父の死を知らせる兵士が家を訪れる。父は敵に捕らえられ、部隊の情報を吐かせるため拷問を受けても口を割らなかった。兵士は、幼いヴァレンタインの誕生日を縫い込んだハンカチが父の支えだったと伝える。父が家族と国を守るために沈黙した物語は、少年へ愛国心を生涯の判断基準として刻む。
知らせを持ってきた兵士は後に母と結婚し、ヴァレンタイン姓を受け継いだ継父と示唆される。本人が後に掲げる国家への献身は、選挙向けに突然作った標語ではなく、父の犠牲を自分の人生へ重ねた信念である。同時に、父一人の犠牲を国全体の優越へ拡張し、他国の人々へ不幸を負わせる論理にもつながる。
軍歴と聖なる遺体の心臓
若いヴァレンタインは軍へ入り、捕虜となって拷問を受けた経験を持つ。背中の傷は、父が耐えた苦痛を自分も身体で反復した証しになる。サンディエゴの砂漠で部隊が悪魔の手のひらへ迷い込み、仲間が全滅するなか、彼だけが聖なる遺体の心臓と出会う。心臓は胸へ取り込まれ、ヴァレンタインは生還する。
遺体の一部が存在するなら、地図上の別の地点にも残りがあると考え、国家規模の探索を始める。この出来事の説明には連載初期の補足と後の回想で差があるため、議員時代の探索隊という説明と軍隊での遭難を無理に一つの行程へ合成しない。最終的に確かな因果は、砂漠で心臓を得た生存者が政治的に台頭し、全遺体をアメリカへ集めようとしたことである。
政治的上昇とレースの利用
遺体の心臓を得た後、ヴァレンタインは政治の世界で急速に地位を高める。1889年に第23代大統領へ就任し、翌年に始まるSBRレースの後援へ関わる。大陸横断の経路は、遺体の位置を示す地図と重なるよう設計されている。参加者が悪魔の手のひらを通過し、能力へ目覚め、遺体を見つければ、配下が後から奪える。
各国の探検隊を直接派遣すれば目的が知られるが、世界的な競馬大会なら多数の人間が自然に大陸を横断する。ヴァレンタインはスポーツ、報道、賞金、民間主催という外形を、秘密の国家事業を覆う装置に変える。
遺体をアメリカへ集める目的
聖なる遺体を完全な形へ戻し、アメリカに安置すれば、国へ千年の繁栄と安全がもたらされるとヴァレンタインは考える。世界全体へ幸福を均等に分けるのではなく、国境の内側へ幸運を集める計画である。一国へ幸運が偏れば、その反対側で生じる不幸を誰かが引き受ける。ヴァレンタインは全員の願いが同時にかなうことはないと理解し、自国民の利益を他国民より先に置く。
問題は、守ると称するアメリカ人さえ回収計画の過程で犠牲にすることである。配下を使い捨て、証拠を知る者を殺し、ルーシーやスティーブンへ危害を加えても、国家目的のための必要経費として扱う。国への献身と自分の権力欲が重なり、どこまでが公共の利益で、どこからが大統領個人の支配かを本人は分けなくなる。
「ナプキンを最初に取る者」
ヴァレンタインは、食卓で誰が最初にナプキンを取るかという比喩を用いて権威を説明する。最初の一人が右側から取れば全員が右、左側から取れば全員が左へ従う。選択の内容そのものより、最初の基準を決める地位に力があるという考え方である。遺体をアメリカが先に確保すれば、将来の世界秩序もアメリカの決定へ従うと見る。
この理屈は規則が自然に成立したように見せながら、最初の選択権を誰が得るかを力で奪う行為を正当化する。ヴァレンタインにとって正義は対等な合意ではなく、国家が基準を握り、その秩序へ他者を従わせることに近い。
D4Cの並行世界移動
D4Cは、人や物が二つの物体の間に挟まれる状態を入口として、並行世界へ移動させる。旗と地面、扉と壁、車体と床、水面と底など、周囲の物を利用して移動条件を作る。各世界にはよく似た人物や物体が存在するが、遺体だけは基本世界に属する特別な存在として扱われる。異なる世界の同一人物や同一物体が接触すると、双方が崩壊して消滅する。
ヴァレンタインはこの規則を罠に使い、標的の別世界個体を接近させる。自分が致命傷を負った場合は、別世界のヴァレンタインへD4Cと記憶を渡し、活動する身体を交代できる。見た目が同じ大統領が復帰しても、負傷した肉体が治癒したのではなく、別個体へ能力の主体が移った場合がある。
D4Cを使った情報戦
並行世界は逃走と身代わりだけでなく、敵を混乱させる情報源になる。似た人物を別方向へ配置し、誰が基本世界の個体かを分からなくさせる。同一人物同士を接触させる規則を知らない相手は、助けを求めて近づいた自分自身によって消滅する危険がある。ヴァレンタインは能力の全体像を隠し、目撃者ごとに異なる断片だけを見せる。
ジョニィ、ジャイロ、ディエゴ、ウェカピポは複数の矛盾する位置関係から規則を推理しなければならない。大統領という公的な信頼とD4Cの複数性が合わさり、本人の証言や生死さえ確認しにくくなる。
ルーシー・スティールとの対立
ルーシーは夫スティーブンを守るため、ヴァレンタインの列車へ忍び込み、遺体探索の計画を知る。後には大統領夫人スカーレットへ変装して接近するが、正体を見抜かれて追い詰められる。ヴァレンタインはルーシーを一人の市民として守らず、遺体を完成させるための器として扱う。遺体の各部が彼女の体内へ集まり始めると、その身体を中心に特別な空間の隙間が形成される。
ルーシーが自発的に大統領へ能力を与えたのではなく、捕らえられた状態で遺体の現象へ組み込まれる。ラブトレインをヴァレンタイン単独の進化能力とだけ書くと、この犠牲と発生条件を見落とす。
D4Cラブトレイン
完成した遺体とルーシーを中心に、光の壁のような次元の隙間が伸びる。ヴァレンタインはその隙間へ入り、自分へ向かう攻撃や不運を世界の別の場所へ流す。逸らされた傷害は消滅するのではなく、遠い土地の無関係な人や物へ災害として現れる。アメリカへ幸運を集め、外部へ不幸を押し出す政治思想が、戦闘能力として可視化された形である。
隙間の内部からD4Cの一部を出して攻撃し、守られたまま相手へ接近できる。通常の銃撃や爪弾は壁に阻まれるが、黄金長方形に基づく回転は次元の防御へ干渉する。
ジャイロとの戦い
ジャイロはヴァルキリーの走行から黄金の回転を作り、鉄球へボール・ブレイカーを発現させる。その力はラブトレインの隙間を越え、ヴァレンタインの肉体を老化させるところまで届く。しかし馬の負傷と鉄球の形状によるわずかな誤差で、無限の回転は完全な決着へ至らない。ヴァレンタインは回転の危険を見抜き、ジャイロへ致命傷を与える。
防御の絶対性だけに頼らず、相手の技術を観察し、成立条件の乱れを利用できる戦闘判断を持つ。同時に、あと一歩で防壁を破られた経験が、ジョニィの騎馬による回転を強く警戒させる。
タスクACT4と無限の回転
ジョニィはジャイロの教えを引き継ぎ、スローダンサーの走行から完全な黄金の回転を爪弾へ込める。タスクACT4はラブトレインを越えてヴァレンタインへ到達し、肉体と別世界の個体へまで無限の回転を追跡させる。ヴァレンタインが身体を交換しても回転は消えず、立つことも逃げることもできない状態が続く。大統領はジョニィへ取引を持ちかけ、回転を解除すれば別世界のジャイロを連れてくると提案する。
国家のためという説明と、失った相棒を取り戻したいジョニィの願いを結びつけ、攻撃を止めさせようとする。
最後の取引と破綻
ジョニィは提案を完全には信じず、ヴァレンタインが隠し持つ拳銃を使って誠実さを試す。大統領は安全な交渉を装いながら、隙があればジョニィを撃つ準備をしていた。別世界から持ち込んだ同一の拳銃が接触する状況によって企みが露見する。ヴァレンタインは自分の行動を曇りのない正義と主張するが、約束を守るより勝利と遺体の確保を選ぶ。
ジョニィは取引を拒み、爪弾で大統領を撃つ。並行世界の身体を使う逃走経路も無限の回転に封じられ、ヴァレンタインは死亡する。
死後に残した並行世界のディエゴ
ヴァレンタインは自分が敗れた場合に備え、並行世界のディエゴへ遺体の奪取を託していた。このディエゴはTHE WORLDで時間を止め、最終ステージのジョニィを襲う。基本世界でスケアリー・モンスターズを使ったディエゴとは別個体である。ヴァレンタインが死んでも遺体を国家の保管庫へ収める計画が続くよう、次の実行者を用意したことになる。
個人の生存より国家目標を優先した準備である一方、遺体を狙う野心家へ力を預ける危うさも残す。
正義と犠牲の評価
ヴァレンタインは私益だけを求める小悪党ではなく、自国の未来へ命を懸ける覚悟を持つ。だからこそ演説には説得力があり、ジョニィも一時は取引を考える。しかしラブトレインが示す繁栄は、不幸を消す仕組みではなく、境界の外へ押しつける仕組みである。自国民を守る目的でも、手段の過程で国民や配下を選別し、殺害し、秘密の器として利用する。
公的な使命と個人の権力を同一化した結果、反対者を国家の敵として排除できる論理になる。ヴァレンタインの魅力と危険は、信念が偽物だからではなく、一貫した信念が他者の生命を数として扱うところにある。
アニメ版での扱い
アニメ公式サイトでは、圧倒的な支持を集めるアメリカ合衆国大統領として紹介される。レース支援の裏に目的があるという記述は、原作の遺体回収計画へつながる。日本語版の声は杉田智和が担当する。ゲーム版では加瀬康之が担当した媒体もあるため、配役は作品ごとに分ける。
人物記事を公開する際は、D4C、ラブトレイン、死後の並行世界ディエゴまで含むため、Part 7完結までの先行情報を明示する。