JOJOジョジョの奇妙な冒険 百科事典
Part 7 / スタンド

D4C(いともたやすく行われるえげつない行為)

でぃーふぉーしー いともたやすくおこなわれるえげつないこうい

第二世界線main_manga

ネタバレ範囲: Part 7「D4C」から最終決戦まで

# D4C(いともたやすく行われるえげつない行為)D4Cは、第7部『スティール・ボール・ラン』に登場するファニー・ヴァレンタインスタンドである。名称の正式な展開はDirty Deeds Done Dirt Cheapで、日本語では「いともたやすく行われるえげつない行為」と併記される。使用者や対象を二つの物体の間へ挟むことで、無数に存在する平行世界を行き来し、別世界の人物や物体を基準世界へ連れて来る。

同一人物の別個体同士が接触すると双方が崩壊して消滅する一方、ヴァレンタインだけは複数の自分と安全に共存できる。致命傷を負った時にはD4Cと記憶を別世界の自分へ渡せるため、単なる空間移動を越えた継戦能力を持つ。

名称と表記

原語名はDirty Deeds Done Dirt Cheapで、頭文字のDを三つとCheapのCを合わせてD4Cと略す。日本語版では長い英語名と「いともたやすく行われるえげつない行為」という訳語が同時に示され、作中では主にD4Cと呼ばれる。読みは「ディー・フォー・シー」である。英語圏の一部ゲームや翻訳では権利上の事情からFilthy Acts at a Reasonable Priceなどの改名が使われる。

海外版名は別能力を示すものではなく、同一スタンドの地域別表記として扱う。D4C -ラブトレイン-は聖なる遺体の完成後に加わる現象なので、通常のD4Cとは記事上で関係を結びつつ能力条件を分ける。

外見

D4Cは人間に近い体格を持つ近距離型のスタンドである。頭部からはウサギの耳を思わせる二本の長い突起が伸び、顔と身体には縫い合わせた布や板の境目のような線が走る。肩、腰、胸部には硬い装甲を思わせる立体的な構造があり、目は表情を読み取りにくい。初期の描写と後期の描写では頭部や体格の意匠が変化している。

この変化をヴァレンタインの肉体交換ごとに別スタンドへ進化した設定と断定する説明はない。漫画のモノクロ、デジタルカラー版、ゲーム、立体商品で配色が異なるため、特定の色だけを本編内の絶対設定にしない。

基本性能

D4Cは次元移動だけでなく、近距離で殴打や防御を行える人型スタンドである。成人男性を吹き飛ばす力を持ち、恐竜化したディエゴ・ブランドーの動きへ対応できる速度も示す。本体から遠く離れて自律追跡する型ではなく、ヴァレンタインの周囲で能力と格闘を組み合わせる。高い破壊力があっても、勝利の中心は拳の威力より平行世界の規則を利用した位置取りと交換にある。

相手が能力条件を理解できない序盤ほど、同じ出来事について矛盾する証言を作り、攻撃者の場所を隠せる。

平行世界

第7部の世界には、細部の異なる無数の隣り合う世界が存在する。それぞれでスティール・ボール・ランに似た出来事が進むが、人物の選択、地理、争奪対象には差がある。聖なる遺体が存在する世界は一つだけで、物語の主要舞台は基準世界と呼ばれる。別世界には遺体の代わりに大量のダイヤモンドが争われる例もある。

D4Cは通常なら交わらない世界を同じ場所と時間へ重ね、人物と物を相互に運ぶ。第6部の宇宙一巡や第7部以降の新しい世界設定を、D4Cが作った平行世界と同一の出来事にまとめない。

移動の発動条件

ヴァレンタインまたは運びたい対象は、二つの物質の間へ挟まれることで世界を移動する。扉と壁、椅子と床、旗と地面のような固体だけでなく、水面と水底、落ちた水滴、砂や蒸気も条件に使える。全身を完全に押し潰す必要はなく、身体の一部が二つの側から挟まれれば入口を作れる。空気だけを二つの物体として数えることはできないが、周囲には布、床、衣服、液体が多く、実戦では発動機会が非常に多い。

移動先から見ると、ヴァレンタインが旗の下、地面、他者の背後など不意な場所から現れる。単なる瞬間移動とは違い、移動中には別世界を通り、そこで人物や物を選んで持ち帰れる。

他者を運ぶ

D4Cはヴァレンタイン自身だけでなく、触れた人物や物体を平行世界へ押し込める。対象を完全に移すほか、身体の一部だけを境界へ残して壁や旗の中へ固定する使い方もある。ディエゴは旗の中へ引き込まれ、別世界の自分が存在する場所へ運ばれる。能力を知らない人物には、どの物体が入口となり、どこへ出るかを予測しにくい。

一方で、同じ挟み込み条件を利用できれば、閉じ込められた側が移動を起こして脱出する余地もある。D4Cは転送した対象の思考を支配せず、別世界へ移された後も本人の意思と能力は残る。

同一人物が接触する法則

ヴァレンタイン以外の人物や物体は、同じ世界に別個体が二つ存在すると互いへ引き寄せられる。接近した部分は立方体を反復したメンガーのスポンジ状に崩れ、最後には双方が完全に消滅する。別世界の同じ拳銃、同じ人物などを標的の近くへ置けば、接触そのものを攻撃にできる。崩壊を止めるには、接触前に一方を元の世界へ戻す必要がある。

別人同士、同じ名前を持つだけの人物、同一世界における年齢の違う同一人物が自動的に消えるという規則ではない。世界をまたいだ同一存在であることが条件になる。

ヴァレンタインだけの例外

ファニー・ヴァレンタインは別世界の自分と接触しても崩壊しない。複数の大統領を同じ場所へ呼び、会話、共同攻撃、情報共有を行える。別個体の死体を残せば、外部からは本人が死んだように見せられる。ただし、全てのヴァレンタインが最初からD4Cを持つわけではない。

基準世界に由来する一つのD4Cが所有者を移り、能力を受け取った個体が次の本体となる。例外は「大統領という役職の人物なら誰でも安全」という意味ではなく、D4Cと結び付いたヴァレンタインに固有の規則である。

D4Cと記憶の継承

ヴァレンタインが致命傷を負うと、別世界の健康な自分へD4Cを譲渡できる。受け取る個体は元の自分の意識を持ちながら、能力と先代の記憶を引き継ぐ。負傷した肉体を治癒するのではなく、任務を続けられる別の身体へ役割と情報を渡す仕組みである。このため外見上の大統領が入れ替わっても、聖なる遺体を集める目的と敵への知識は継続する。

不死身に近い効果を持つが、D4Cを渡す前に能力の発動を封じられる、引き継ぎ先へ届かない作用を受ける場合は逃げ切れない。タスクACT4の無限の回転は次元を越えて新しい身体まで追うため、交換による継続を破る。

ジョニィ銃撃事件

フィラデルフィアでジョニィが撃たれた事件は、D4Cの能力を推理する中心となる。ディエゴ、ウェカピポ、周囲の目撃者は、互いに両立しない位置関係と発砲者を記憶する。誰か一人が嘘をついただけではなく、ヴァレンタインが複数の平行世界を重ね、各世界で似た銃撃を成立させたためである。見る角度と属する世界によって、同じ時間に別の人物が引き金を引いたように見える。

ヴァレンタインは混乱の中でジョニィ、ディエゴ、ウェカピポを互いに敵だと思わせ、まとめて排除しようとする。事件の謎を解くことが、見えない大統領のスタンド能力へ到達する道になる。

ディエゴとウェカピポとの戦い

ディエゴとウェカピポは証言の矛盾を比較し、第三者が世界を重ねている可能性へ近づく。ウェカピポのレッキング・ボールが大統領の左半身失調を起こし、ディエゴが接近戦を仕掛ける。ヴァレンタインは壁、床、旗を入口にして攻撃位置を変え、損傷を受けた身体も別世界の自分へ交換する。ディエゴを別世界の同一人物へ接近させ、接触崩壊を狙う。

ウェカピポは最終的に別世界の自分と接触させられ、D4Cの法則によって消滅する。大統領は能力の規則そのものを処刑装置として使い、自分は例外の立場から安全に操作する。

物体を利用した攻撃と防御

D4Cは別世界の銃、旗、人物を運び、現世界の配置を入れ替える。飛来する攻撃の瞬間に身体の一部を世界の境界へ逃がし、直撃を避けることもできる。敵と同じ物体を持ち込めば接触崩壊を狙えるため、日用品さえ即死条件になり得る。複数のヴァレンタインを呼べば、同じ顔の射手が別方向から攻撃する数的優位も作れる。

ただし移動の前提として挟まれる物質が必要で、開けた場所でも何らかの布、地面、水などへ到達しなければならない。ジョニィのタスクACT3が作る移動する穴は簡単に別世界へ押し出せず、D4Cの処理から外れる例となる。

聖なる遺体との関係

D4Cの平行世界移動と、聖なる遺体の収集目的は同じものではない。能力はヴァレンタインが遺体を全て完成させる前から使用している。無数の世界の中で遺体が基準世界にしか存在しないため、D4Cを持つ大統領にとっても代替品を別世界から持ち込めない。この唯一性が、遺体を巡る争奪と基準世界の価値を高める。

完成した遺体がルーシーと融合するとラブトレインが発現し、D4Cには不幸を遠方へそらす防御が加わる。通常D4Cとラブトレインの成立時期を分けることで、次元移動と因果の偏向を混同せず理解できる。

ラブトレインとの違い

D4Cは二つの物体に挟まれて世界を移動し、別世界の個体を運ぶ。ラブトレインはルーシーを中心とした光の隙間へ大統領を隠し、向かう不幸を世界の別の場所へ転送する。前者はヴァレンタイン固有のスタンド能力で、後者は完成した遺体という外部条件を必要とする。D4Cの身体が強化形態に変わっただけではなく、遺体由来の空間現象を同時利用する状態である。

ラブトレインを失っても通常のD4Cによる移動と身体交換が直ちに消えるわけではない。

無限の回転との決着

ジョニィが黄金長方形を描く馬の走行からタスクACT4を発現させると、爪弾はラブトレインを越えて大統領へ命中する。無限の回転はヴァレンタインの肉体へ留まらず、D4Cが移る先の次元と別個体まで追跡する。大統領が何度身体を交換しても回転は消えず、元の場所へ引き戻される。ヴァレンタインは別世界のジャイロを連れてくる取引を持ちかけるが、隠し持った拳銃によって信頼を失う。

最後の攻撃もジョニィに見抜かれ、D4Cと使用者は無限の回転から逃れられないまま敗北する。

並行世界ディエゴへの継承ではない点

ヴァレンタインは死後の計画として、別世界からTHE WORLDを持つディエゴを基準世界へ連れて来る。このディエゴはD4Cの新しい使用者ではない。大統領から聖なる遺体を確保する任務と情報を与えられ、独自のスタンドでジョニィと戦う。並行世界ディエゴの登場を「D4Cがディエゴへ継承された」と説明すると、能力と任務の継承を混同する。

D4Cの所有者交換はヴァレンタインの別個体間で行われ、別人へ渡った描写はない。

ゲーム版での扱い

対戦ゲームでは旗から別世界のヴァレンタインを呼ぶ技、同一人物の接触崩壊、身体交換などが攻撃演出へ変換される。原作通りに無制限の本体交換を許せば対戦が終わらないため、ゲージ、回数、演出時間などゲーム独自の制限が付く。別世界のキャラクターが同じチームで共存できる処理も、ゲームシステム上の都合を含む。ゲームの技性能を漫画本編における距離、威力、発動条件の根拠として使わない。

物語上の意味

D4Cは、ファニー・ヴァレンタインの「個人より国家と目的を継続させる」という思想を能力の構造へ変える。一つの肉体が倒れても、別世界の自分へ記憶と役割を渡し、同じ政策を続けられる。敵の同一人物同士は接触によって消えるのに、大統領だけが例外として増え、交換できる。世界の多様な可能性を開く力でありながら、ヴァレンタインはそれを他者の代替と排除へ用いる。

ジョニィの無限の回転は、どの世界へ逃げても本人の選択と結果が追い続ける作用としてD4Cへ対抗する。平行世界、国家、自己同一性、責任の回避を一つの戦闘規則にまとめた、第7部の中心的なスタンドである。