12ストーリー解説
ワルプルギスの夜との死闘に敗れて傷つき倒れたほむらは、もはや何度時間を繰り返しても勝てないと絶望し、自らのソウルジェムを濁らせて魔女になろうとしていた。そこへ駆けつけたまどかは、ついに契約を決意する。キュウべえは、ほむらが時間遡行を繰り返したことで因果が一点に集中したまどかの潜在能力が、宇宙すら左右するほど膨大であることに歓喜する。
まどかが告げた願いは「すべての魔女を、生まれる前にこの手で消し去りたい。過去と未来の、すべての魔女を」というものだった。それは魔法少女が魔女へと堕ちる仕組みそのものを否定し、宇宙の始まりから終わりまで、あらゆる時空に存在する魔女を消滅させるという、世界の法則そのものを書き換える途方もない祈りだった。

願いは叶い、まどかのソウルジェムは星のように巨大化していく。キュウべえは「魔法少女が魔女にならない世界」という願いが因果律を超えた矛盾であることに戦慄しつつ、まどか自身が一個の人間ではなく、宇宙を貫く一つの「概念」へと作り変えられていく様を目撃する。まどかは時間も空間も超えた存在になっていった。
概念となったまどかは、あらゆる時代・あらゆる世界線で絶望する魔法少女たちのもとへ次々と現れる。最初の魔女化に苦しむマミ、孤独に戦い続けたキョウコ、そしてほむらが繰り返してきた無数のループの中で散っていった魔法少女たち——その一人ひとりを、彼女は魔女になる寸前で優しく救い上げ、抱きしめて浄化していく。

その中には、オクタヴィアと化したさやかの姿もあった。まどかに導かれて魂を解き放たれたさやかは、恭介がヴァイオリンを奏でる姿を見届ける。「あいつの演奏をもう一度聴けた。それだけで十分」と未練を断ち切り、さやかはまどかと共に静かに消えゆくことを受け入れるのだった。
やがてほむらは、白い光に満ちた静謐な空間でまどかと再会する。そこでほむらは、まどかがもう人間ではなく、これから世界中の誰の記憶からも消え、最初から存在しなかったことになってしまうのだと悟る。たった一人の親友が、自分を救うために宇宙そのものへ溶けて消えていくという現実を、ほむらは突きつけられる。

「行かないで」とすがるほむらに、まどかは自分のことを覚えていてくれる人がいるだけで幸せだと微笑む。そして髪を結んでいた赤いリボンを外し、形見としてほむらの手に託す。ほむらはそのリボンを受け取り、涙をこらえながら自分の髪に結ぶ。これ以降、その赤いリボンはほむらの新たな象徴となっていく。
まどかの祈りによって、世界は根本から書き換えられた。魔法少女はもう魔女にはならず、絶望の極限でまどか=新たな法則の手によって回収され、安らかに消えていく。魔女のいなくなったこの世界では、代わりに「魔獣」と呼ばれる存在が人々の負の感情から生まれ、魔法少女たちはそれと戦う宿命を負うことになった。

新しい世界では、死んだはずのマミとキョウコが共に魔獣と戦い、生きている。まどかの家族——母の詢子、父の知久、弟のたつやも変わらぬ日常を送るが、まどかという娘・姉が存在したことは誰一人として知らない。ただほむらだけが、まどかの記憶と、彼女が実在した証であるリボンと弓を抱えて、この世界に取り残されていた。
最終盤、荒野で魔獣の群れに立ち向かうほむらは、まどかが遺した弓を手に取り、背に漆黒の翼を広げて戦いへと身を投じる。キュウべえに「いつかまた彼女に会える日まで戦い続ける」と告げ、たとえこの宇宙のすべての理を敵に回そうとも、まどかと交わした約束を守り抜くと誓うのだった。


