『アナイアレーション』は、2006〜2007年に刊行されたマーベル宇宙圏の大型クロスオーバーです。ネガティブ・ゾーンの支配者アナイアラスがアナイアレーション・ウェーブを率い、ザンダー、スクラル領域、クリー社会を短期間で崩壊させます。地球では同時期に『Civil War』が進んでいましたが、本作の中心は地球の著名ヒーローではありません。ノヴァ、シルバーサーファー、ロナン、スーパー・スクラル、ドラックス、ピーター・クイルら、当時それぞれ別の位置にいた宇宙系人物が、生存者と敵対勢力をまとめる戦争です。前日譚、4本のタイイン・ミニシリーズ、全6号の本編という構造を整理すると、後の『Annihilation: Conquest』と2008年版ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが生まれる因果も見通せます。
- 中心シリーズ
- 『Annihilation』(2006)#1〜6
- 刊行
- 2006年8月〜2007年1月(前日譚は同年3月開始)
- 本編脚本
- キース・ギフェン
- 本編作画
- アンドレア・ディ・ヴィト
- 主要勢力
- アナイアレーション・ウェーブ、統一戦線、ノヴァ軍団、クリー、スクラル
- 前日譚
- Annihilation Prologue、Nova、Silver Surfer、Super-Skrull、Ronan
- 次のイベント
- Annihilation: Conquest(2007)
01本編の前に読むべき前日譚
入口は『Drax the Destroyer』#1〜4の後、『Annihilation Prologue』へ進む順序です。プロローグでウェーブがザンダーを急襲し、ノヴァ軍団はほぼ壊滅します。その後、『Nova』『Silver Surfer』『Super-Skrull』『Ronan』の各4号ミニシリーズが同じ侵攻を別地域から描き、全6号の本編へ合流します。
すべてのタイインを読まなくても本編の戦争は追えますが、ノヴァがなぜワールドマインドを抱える唯一の中心になったか、スーパー・スクラルが自国に背いてまで動く理由、失脚したロナンがクリーへ戻る経緯は前日譚で厚く描かれます。本編第1号は各主人公の敗北後から始まるため、前日譚を読むと集結の重さが変わります。

刊行順と物語内の時間は完全には一致しません。まずプロローグ、次に4本のミニシリーズをそれぞれまとめて読み、本編へ進む方法が理解しやすい。細かな交差を追う場合はMarvel公式のリーディングリストを使い、同名の『Annihilation: Conquest』や2019年の『Annihilation: Scourge』と混同しないよう刊行年を確認します。
02ザンダー陥落とノヴァの変化
アナイアレーション・ウェーブは、宣戦布告や交渉を経ずザンダーへ殺到します。リチャード・ライダーは現場にいたノヴァ軍団員として辛うじて生き残り、軍団の知識と人格を収めるワールドマインドを自分へ統合します。生存によって突然、最後の兵士、記録保管庫、指揮官を一人で担うことになります。
ワールドマインドは膨大な計算と戦術を提供しますが、リチャードの身体と精神への負担も増やします。彼は以前の若い地球人ヒーローから、難民、艦隊、複数帝国の生存を判断する戦時指導者へ変わる。強化された能力より、誰を救い、どの戦線を捨てるかを決めなければならない責任が変化の中心です。

ピーター・クイルはノヴァの補佐として実務と作戦を担います。この時期の彼は映画で知られる軽快な冒険者だけではなく、過去の失敗を抱えた兵士です。ドラックス、ガモーラ、クエーサーらも同じ戦線へ入り、後のガーディアンズにつながる人間関係が、理想的なチーム結成ではなく敗戦処理の現場で作られます。
03アナイアラスの侵攻論理とサノスの協力
アナイアラスはネガティブ・ゾーンの生命が有限であるという恐怖と、正物質宇宙が自領域を圧迫しているという認識から侵攻を正当化します。しかし実際の行動は防衛線を越え、全生命を自分の生存へ従属させる絶滅戦争です。宇宙制御ロッドと量子バンドを求め、ウェーブの物量を個人の恐怖へ結びつけます。
サノスはアナイアラスの単純な部下ではなく、自分の知的関心と死への執着から協力します。テネブラスとイージスを解放し、ガラクタスとシルバーサーファーを拘束する計画へ関与する。双方は同じ未来を望んでおらず、アナイアラスがサノスを信頼しているわけでもありません。利害の一致が宇宙規模の兵器を生みます。

地球側の『Civil War』と違い、この戦争に法的な中立地帯はほとんどありません。スクラル帝国は短期間で崩れ、クリーも指導部の混乱を抱えます。長く敵対してきた種族や人物が、共同の絶滅を避けるため連携せざるを得ない。敵味方の歴史を消さず、いま生き残るための最小限の協力を作ることが統一戦線の課題です。
04シルバーサーファー、ガラクタス、ドラックスの役割
シルバーサーファーは、アナイアラス配下がパワー・コズミックの担い手を狙っていると知り、元ヘラルドたちを集めます。テネブラスとイージスに対抗するため、再びガラクタスのヘラルドになる選択をする。過去の支配へ単純に戻るのではなく、より大きな被害を止めるため関係を再設定する決断です。
ガラクタスが捕らえられると、サノスとアナイアラスは彼を宇宙規模の爆弾として利用します。惑星を食べる存在を被害者と呼ぶことには矛盾がありますが、拘束と兵器化が許されるわけではありません。ドラックスとムーンドラゴンが母艦へ侵入し、解放の条件を作ることで、侵略側の最大兵器は制御不能な反撃へ変わります。

ドラックスはサノスを殺すという自分の目的を果たし、その行動がガラクタス解放へ道を開きます。個人的な復讐と戦争全体の必要が偶然重なる局面です。解放されたガラクタスの攻撃はウェーブを壊滅させる一方、進路上の生命を区別しません。シルバーサーファーが警告に走ることで、勝利にも避難と損失が伴う現実が残ります。
05ノヴァ対アナイアラスと戦争の終結
最終局面では、統一戦線が軍事的に完全優位へ立ったわけではありません。ガラクタスの反撃でウェーブの大半が失われ、アナイアラスの防御が崩れた短い機会を利用します。ノヴァは正面からアナイアラスへ突入し、クエーサーことフィラ・ヴェルの助力も得て宇宙制御ロッドを奪います。
リチャードはアナイアラスを肉体的に打ち破り、長い侵攻を終わらせます。この決着は一騎打ちの名誉ではなく、ザンダーから続く大量死へ終止符を打つ非常手段です。主人公が以前より苛烈になったことも隠されません。戦争を生き延びたノヴァは勝者であると同時に、軍団の死者と判断の負担を抱えた帰還者です。

終戦後も宇宙は元へ戻りません。ノヴァ軍団、スクラル領域、クリー政治、複数の星系が損耗し、空白へ新しい勢力が入り込みます。アナイアラス自身も後の作品で再生しますが、事件が無効になったわけではありません。死者、難民、制度の崩壊が次の『Conquest』を可能にする条件になります。
06マーベル宇宙圏とガーディアンズへの影響
本作は1970年代以来の宇宙系人物を一つの戦争へ集め、2000年代のマーベル宇宙路線を再始動させました。続編『Annihilation: Conquest』ではクリー領域がファランクスに侵食され、ピーター・クイルがロケット、グルート、マンティスらを率います。その経験から2008年版ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが成立します。
映画版ガーディアンズの人物構成へ間接的な影響はありますが、映画の結成物語が『アナイアレーション』を再現しているわけではありません。ノヴァはリチャード・ライダー、クエーサーはフィラ・ヴェルで、MCUのザンダーやノヴァ軍団と同じ経歴を共有しません。名前の一致より媒体と刊行年を確認する必要があります。

読む範囲を広げるなら、まずプロローグとノヴァ編、本編6号を軸にし、シルバーサーファー、スーパー・スクラル、ロナン編を関心に応じて加える方法が有効です。その後に『Conquest』と2008年版『Guardians of the Galaxy』へ進むと、寄せ集めの生存者が常設チームへ変わる過程を因果で追えます。