8.4/10IMDb 79位 ・ 1984
『アマデウス』のあらすじ
神に忠実を誓ったサリエリは、不道徳ながら神がかり的な才能を持つモーツァルトに直面し、自身の限界を悟って神に復讐するため彼の人生を狂わせようとする。18世紀ウィーンの音楽界を舞台にした嫉妬の物語。
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『アマデウス』のあらすじ【ネタバレなし】
1823年、老いたアントニオ・サリエリは精神病院で自らをモーツァルト殺害の犯人と名乗り、訪れた司祭に過去を語り始める。少年時代に音楽への情熱を抱いたサリエリは父の反対を乗り越え、神に対してモーツァルトのような才能を与えるなら忠誠を捧げると誓う。父の死を神の承認と信じ、ウィーン宮廷の作曲家として地位を築いた彼の前に、神童として名高いヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが現れる。下品で放蕩な性格のモーツァルトだったが、その音楽の才能は圧倒的でサリエリに自身の限界を強く意識させる。
モーツァルトの作品は時代を先取りしすぎて宮廷では十分に評価されず、妻コンスタンツェは夫の浪費に悩まされる。サリエリはモーツァルトが一稿で作曲を完成させる様子や即興演奏の才に触れ、神が不道徳な彼を選んだことに強い怒りを抱くようになる。二人は宮廷で顔を合わせる機会が増えるが、サリエリは表面上理解者として振る舞いつつ、モーツァルトの成功を阻もうとする画策を始める。才能の差が生む嫉妬と対立が静かに深まっていく。
ネタバレあり
詳しいあらすじ【ネタバレあり】
サリエリの誓いと二人の出会い
少年サリエリは音楽に強く惹かれていたが商人である父から勉強を禁じられていた。彼は神に、モーツァルトのような素晴らしい音楽家にしてくれるなら忠誠と純潔と勤勉を捧げると誓う。父が死ぬとこれを神が誓いを受け入れた証と解釈し、やがて1774年に皇帝ヨーゼフ2世の宮廷作曲家となる。しかし皇帝に音楽のセンスがないことを悟り、自分の作品が後世に残らないと考えるようになる。ある音楽会でモーツァルト本人と対面するが、彼は将来の妻となる女性を追い回す下品な振る舞いを見せ、サリエリを失望させる。サリエリが作曲した歓迎のマーチをモーツァルトが即興で優れた変奏に変えるのを聞き、さらに教え子との関係を知ったサリエリは、神が不道徳なモーツァルトを道具として選んだことに激しい怒りを覚え、神を否定してモーツァルトを破壊することで神に復讐すると誓う。
嫉妬の深まりと妨害の始まり
コンスタンツェと結婚したモーツァルトはウィーンで暮らすが、作品が先進的すぎて仕事を得るのに苦労する。ヨーゼフ2世が彼を娘の音楽教師に迎えようとした際、サリエリらは審査を提言し、モーツァルトはこれを拒否する。コンスタンツェは夫の楽譜をサリエリに持ち込み職の斡旋を求めるが、修正の跡がない一稿完成の才能を見せつけられたサリエリは彼女を冷たく追い返す。父レオポルトが訪れた際の酒場での騒ぎでサリエリを侮辱したことも憎しみを強める。サリエリは匿名の使用人を派遣してモーツァルトの様子を探らせ、『フィガロの結婚』をオペラ化する計画を皇帝に阻止しようとするが、モーツァルトは皇帝を説得して上演を勝ち取る。しかし皇帝の好みには合わず短期間で打ち切られる。父の死後モーツァルトは暗い調子の作品を創作し、サリエリはその全てを観劇して唯一その価値を理解する人物だった。
仮面の依頼と創作の極限
サリエリはモーツァルトの作品に父への劣等感を見出し、父が着用した仮面で変装して匿名のパトロンとしてレクイエムの作曲を依頼する。モーツァルトは大衆劇場向けの作品とレクイエムの両方を抱え、過労から精神の平衡を失っていく。妻コンスタンツェは夫の様子を心配して息子を連れて離れ、使用人も辞意を伝える。『魔笛』の公演後に倒れたモーツァルトの病床でサリエリは依頼主を装って口述を書き取り始める。死に瀕したモーツァルトの創作力に圧倒されながら、サリエリは初めてその才能を素直に受け入れ、互いに本音の言葉を交わすことになる。
結末まで解説
結末を解説【ネタバレ】
病床のモーツァルトはサリエリに友情への感謝を述べ、サリエリも彼を自分が知る最高の作曲家だと称賛する。しかし早朝に戻ったコンスタンツェはサリエリが家にいることに憤慨し、レクイエムの楽譜を奪って戸棚にしまう。サリエリが抗議する間にモーツァルトは息絶え、土砂降りの雨の中、家族やわずかな仲間たちに見送られて貧民墓地に埋葬される。老サリエリは神がモーツァルトを破壊することで自分にその栄光を分け与えなかったのだと結論づける。
精神病院で告白を終えたサリエリは、自分を凡庸な人々の守護聖人と名乗り、病院の患者たちの不完全さを赦すと大声で触れ回る。モーツァルトの下品な笑い声が響く中、車椅子で運ばれていく姿で物語は終わる。この信頼できない語り手の回想は、才能の不条理さと嫉妬の果てを描き出す。
物語を深く知る
人物の選択と物語の仕組み
老人サリエリが語る告白
老いたサリエリは自殺未遂後に施設へ運ばれ、訪れた司祭へモーツァルトを殺したと告白する。司祭が彼の曲を知らなくても、モーツァルトの旋律はすぐ口ずさめる。その差を笑いながら、過去の記憶へ入る。
語り手は罪悪感と嫉妬を持つ本人であり、出来事は彼の視点から再構成される。自分を凡庸、相手を神の器と定めた解釈が、妨害と殺意を正当化する。告白は事実の記録であると同時に、神へ向けた長い訴訟になる。
少年時代の誓いと父の死
少年サリエリは音楽家になることを望むが、商人の父は反対する。彼は貞節、勤勉、信仰を捧げる代わりに才能を与えてほしいと神へ祈る。父が食事中に急死すると、祈りが受け入れられたと解釈し、ウィーンへ進む。
宮廷作曲家として地位と評判を得た彼は、契約が成立したと考える。後にモーツァルトの音楽を聞くと、自分の奉仕ではなく放埒な若者へ圧倒的な才能が与えられたと感じる。嫉妬は同僚間の競争より、神が約束を破ったという信仰の危機になる。
下品な笑い声と完成された音楽
モーツァルトへ初めて近づいたサリエリは、彼が床で女性とふざけ、下品な言葉を使う姿を見る。直後に演奏された曲は精緻で、楽譜の一音も動かせないと感じる。人物への軽蔑と作品への畏敬が同時に生まれる。
才能が人格への褒美であるというサリエリの前提は崩れる。音楽を否定できないため、その作者を神が自分を嘲るため選んだ存在と考える。以後の妨害は、モーツァルト個人への復讐であると同時に、彼を通じて語る神への反抗になる。
皇帝の歓迎曲を書き換える即興
宮廷へ招かれたモーツァルトのため、サリエリは歓迎行進曲を作る。モーツァルトは一度聞いただけで暗譜し、演奏しながら和声と旋律を改良してしまう。皇帝たちは新しい形を喜び、原作者の面前で曲が上書きされる。
モーツァルトに悪意はなく、より良く聞こえる形を即座に示しただけである。その無邪気さが、長時間かけたサリエリの努力をいっそう無価値に感じさせる。公の場で礼を保ちながら、彼は賞賛と屈辱を同時に飲み込む。
修正のない原稿を読むコンスタンツェ
生活に困った妻コンスタンツェは、夫に内緒で宮廷職を求め、作品の原稿をサリエリへ見せる。ページには下書きや修正がなく、モーツァルトの頭の中で完成した音楽がそのまま書かれている。
サリエリは声部を読みながら実際の響きを想像し、楽譜を床へ落とす。努力の痕跡がないことは、神の声を写しているという確信を強める。コンスタンツェへ性的な取引を示唆して辱め、翌日に来させながら追い返すことで、夫婦の窮状を妨害へ使う。
レオポルトの仮面と息子の恐れ
父レオポルトは、宮廷の職を得ず浪費する息子を叱り、ウィーンの家へ滞在する。仮装舞踏会では黒い仮面と衣装を着け、遊びへ加わりながらも厳しい父の視線を保つ。
モーツァルトは父の承認を求め、反発しても恐れから離れられない。レオポルトの死後、黒い仮面の像は罪悪感と結びつき、オペラ『ドン・ジョヴァンニ』の裁きへ現れる。サリエリはその心理を見抜き、後に同じ仮面で依頼を持ち込む。
フィガロ上演をめぐる舞踏禁止令
モーツァルトは身分秩序を風刺する『フィガロの結婚』を選び、皇帝の劇場で上演しようとする。宮廷人は政治的な危険と、皇帝が舞踏を禁じている規則を使って稽古を止める。
彼は舞踏部分から音楽を外し、無音で動きを見せる。現場へ来た皇帝が理由を尋ね、規則の使われ方を知ると音楽を戻す許可を出す。禁止令へ正面から反抗するより、欠けた舞台を権力者自身に見せることで、妨害の不自然さを露出させる。
成功しない上演と増える借金
『フィガロ』は完成度を認められても、宮廷内の妨害で上演回数を減らされる。モーツァルトは収入を得られず、弟子を取ることも嫌い、住居費と酒代が重なる。人気と経済的安定は同じではない。
サリエリは職の推薦を止め、遠回りに依頼を奪う。自分で作品を作る力には勝てないため、上演機会と報酬の入口を操作する。モーツァルトは敵の存在を知らず、才能があれば評価されるはずだという期待を保ったまま疲弊する。
ドン・ジョヴァンニに置かれる父の亡霊
レオポルトの死後、モーツァルトは『ドン・ジョヴァンニ』を作り、罪人を石像が裁く場面へ父への恐れを重ねる。観客の反応が冷たくても、サリエリには作品の内側にある告白が聞こえる。
彼はモーツァルトの弱点が金銭だけでなく、父へ許されなかった罪悪感だと理解する。才能を攻撃するのではなく、創作を促しながら身体を使い切らせる計画を考える。崇拝する作品を生ませる欲望と作者を殺す意図が一つになる。
黒い仮面が依頼する鎮魂曲
サリエリはレオポルトと同じ仮面を着け、使者を装って高額の鎮魂曲を依頼する。依頼主の名を伏せ、完成を急がせることで、モーツァルトには死者の世界から父が命じているように感じさせる。
計画では作品を手に入れた後に本人を殺し、自分の曲として葬儀で演奏する。神の作品を盗んで神へ返すという復讐である。しかし作曲過程へ近づくほど、サリエリは再び音楽の力へ圧倒され、単純な盗作者ではいられなくなる。
舞台興行と鎮魂曲の二重労働
家計のため、モーツァルトは大衆劇場の『魔笛』を作り、夜には鎮魂曲を書く。友人シカネーダーは娯楽としての成功を求め、仮面の依頼人は暗い曲を催促する。異なる作品が同時に身体を消耗させる。
コンスタンツェは夫を休ませようと鎮魂曲の楽譜を持って療養へ出るが、不在中に彼は舞台で倒れる。成功した公演の拍手を聞く体力もなく、サリエリが家へ運ぶ。名声、収入、創作の速度が身体の限界を越えて進む。
病床で続く鎮魂曲の口述
動けないモーツァルトは、サリエリへ鎮魂曲を口述する。各声部を一つずつ歌い、楽器の入り方を説明し、サリエリが楽譜へ書く。理解が追いつかず止められても、頭の中では全体が同時に鳴っている。
サリエリは初めて創作の直近へ入り、嫉妬を忘れて音を追う。自分が殺そうとした人物を生かすためではなく、作品を完成させるため徹夜させる矛盾も続く。神の声を所有したい欲望が、作者の最後の体力を奪う。
未完成の楽譜と共同墓地
コンスタンツェが戻り、サリエリを追い出して楽譜をしまう。直後にモーツァルトは死亡し、鎮魂曲は未完成のまま残る。豪華な葬儀は行われず、雨の中で遺体は共同墓地の穴へ落とされる。
サリエリの計画は作品の完成にも名声の奪取にも届かない。それでも彼は自分がモーツァルトを死へ追いやったと信じ、長寿という罰を受けたと解釈する。最後に施設の患者たちを凡庸の仲間として赦し、自分をその守護者と名乗る。
匿名の依頼人が父の姿へ変わる瞬間
黒衣の使者から死者のためのミサ曲を依頼されたモーツァルトは、亡父が戻って自分を裁いていると感じる。実際の依頼は別の貴族が作品を自作として演奏するためだが、衰弱した彼には確かめる余裕がない。私的な罪悪感が仕事の期限へ重なり、休む判断を奪う。
サリエリはその恐怖を利用し、完成後に曲を奪って自分の葬儀で発表する計画を立てる。しかし口述を書き取る夜、音が各声部へ分かれて組み上がる過程に圧倒される。殺意を持つ者が最も近くで才能の誕生を助けるという矛盾が、二人の関係を頂点へ運ぶ。
楽譜の束だけで理解するサリエリ
コンスタンツェは生活費に困り、夫に内緒でモーツァルトの楽譜をサリエリへ見せる。下書きや修正跡がほとんどなく、頭の中で完成した音楽がそのまま記されていると分かる。
サリエリは紙をめくるだけで各曲の音を聞き取り、神が自分ではなく下品だと見下す青年を選んだと確信する。作品を理解できる能力があるからこそ、自分には同じものを生み出せない差を正確に知ってしまう。
読み解き
物語が描くもの
神の選択と才能の不条理
サリエリは神への忠誠を貫き努力を続けたが、限定的な才能しか与えられなかった。一方、幼稚で道徳に欠けるモーツァルトには神がかり的な作曲力が授けられている。この不公平がサリエリの激しい嫉妬を生み、神への復讐という行動へとつながる。努力と結果が一致しない芸術の理不尽さが、具体的な因果関係を通じて描かれている。
理解者としての孤独と対立
モーツァルトの真の価値を理解できたのは皮肉にもサリエリだけだった。彼は妨害を繰り返しながらも作品の全てを観てその才能を認めざるを得ない。時代を先取りする作品が受け入れられにくい現実や、競争相手ですら圧倒される天才の大きさが、二人の関係性の中で具体的に示される。
この映画の見どころ
- モーツァルトがサリエリのマーチを即興で華麗に変奏する演奏
- 歴史的劇場で再現されたオペラの劇中上演シーン
- トム・ハルスが吹き替えなしで演じた本格的なピアノ演奏
- プラハの現存する古い町並みと建造物を活かした美術
こんな人におすすめ
- クラシック音楽とオペラに親しみがある人
- 芸術家同士の心理的なライバル関係に関心がある人
- 歴史的な衣装と精緻な美術が魅力のドラマを好む人
『アマデウス』のよくある質問
この映画は史実に基づいていますか?
基本的な時代設定と人物は史実を基にしていますが、サリエリの復讐劇やモーツァルトの極端な性格描写は脚色されたフィクションです。原作舞台劇を基にした想像上の物語として位置づけられています。
ディレクターズ・カット版と劇場版の違いは?
2002年に公開されたバージョンで、約20分の削除シーンが復元されデジタル音声も改善されています。物語の流れがより詳細になり、完全な形で楽しめます。
サリエリは実際にモーツァルトを殺害したのですか?
史実ではサリエリはモーツァルトの死に関与していません。映画は彼の告白を軸にした信頼できない語り手の物語であり、史実を基にしたファンタジアです。





