原作第1179話〝ネロナ・イム降臨〟は、聖地マリージョアにいたイム本人がアビスを通じてエルバフへ到達し、長く影に隠れていた姿と地位が正面から示される回である。 神の騎士団を制圧した現地側の優勢を、世界政府の頂点が直接覆しに来る転換点となる。
この回は「強敵が次の戦場へ現れた」だけではない。 革命軍の兵糧攻め、マザーフレイムの再生産、過去のDの名を持つ者たち、エルバフの現在が一つの意思決定へ集まり、イムが八百年続けた秘匿を破って地上へ出る理由を作る。
基本情報
- 話数:第1179話
- 日本語題:〝ネロナ・イム降臨〟
- 英語題:Nerona Imu Descends
- 上位区分:エルバフ編
- 主な舞台:聖地マリージョア、エルバフ、アウルスト城、フクロウの図書館、セイウチの学校
- 中心人物:ネロナ・イム、五老星、フィガーランド・ガーリング、麦わらの一味、ロキ
- 公式配信:MANGA Plus、VIZ Shonen Jumpで第1179話を確認可能
扉絵リクエストでは、エース、お玉、ヤマトが子イノシシを連れて湿地を進む様子が描かれる。 本編の緊迫とは別の時間を持ち、ワノ国で交わらなかった人物を一枚の想像場面へ置く。
マリージョアの窮状
五老星は、イムが自ら地上へ向かう決定に動揺する。 これまでイムは存在を世界から隠し、五老星や神の騎士団を通じて命令を実行してきた。 本人の移動は統治の方式そのものを変える例外である。
最近のマリージョアは、革命軍が補給路を断ったことで食料不足に陥っている。 神の騎士団最高司令官となったフィガーランド・ガーリングは、聖地が安全であり続けるという前提を捨てるべきだと五老星へ迫る。
シャムロックの帰還で状況の一部は安定しても、兵糧攻めは続く。 世界政府の中心が軍事力を持っていても、生活物資を運べなければ長期的な統治は維持できない。 革命軍の作戦は、聖地の権威を正面攻撃ではなく物流から削っている。
ヨークとマザーフレイム
ヨークはマリージョアの研究環境にいながら、食料不足への不満をガーリングへ訴える。 ガーリングは、事態を終わらせたいならマザーフレイムの再生産を急ぐよう返す。
ヨークはベガパンクの「欲」を担う存在であり、世界政府側へついた後も欲求そのものを失っていない。 天竜人になるという目標へ近づいたはずが、聖地の不足によって日常的な満足を得られない。
マザーフレイムは巨大兵器を動かすエネルギー源として扱われ、再生産の成否が政府の反撃力に関わる。 食料と兵器用エネルギーが同じ会話に並ぶことで、聖地が抱える二つの不足が見える。 住民の生活を維持する資源と、支配を回復する資源のどちらを優先するかという問題でもある。
イムが振り返る歴史
五老星は海軍大将や自分たちを派遣する案を出すが、イムは退ける。 現在の危機を一時的な失敗ではなく、過去から積み重なった流れとして捉えているからである。
イムの意識には、ロックスの言葉、ロジャーの処刑、シャンクスによる悪魔の実の奪取、しらほしの誕生、ロキの能力、ルフィと黒ひげの存在が並ぶ。 出来事の年代と場所は異なっても、イムから見れば、かつて封じたはずの系譜が別の形で戻ってくる兆候である。
ジョイボーイとデイビー・ジョーンズの名を、現代のルフィや黒ひげへ重ねていることも示唆される。 ただし、二人がそれぞれ歴史上の人物の生まれ変わりだと確定したわけではない。 イムが継承された意思や系譜をどう見ているかを表す認識として読む必要がある。
また、イムはビビへの執着を口にする。 ネフェルタリ家、リリィ、Dの名をめぐる過去が、政治上の抹消対象だけでなく個人的な欲求と結びついている可能性を強めるが、その感情の由来は第1179話だけでは説明されない。
エルバフ側の戦況
エルバフでは、神の騎士団のソマーズとキリンガムが捕らえられている。 ゲルズは切断されても身体がつながろうとするソマーズを運び、ゴールドバーグは鋼鉄のような心臓を確保する。
ゾロは、その心臓を壊せば再生を止められるかと考える。 ソマーズが恐れを見せるため、少なくとも本人が無視できない弱点候補だと分かる。 ただし実際に破壊した結果は描かれておらず、契約者全員に同じ方法が通じると確定もしていない。
キリンガムはサンジによって身体の各部を木から吊られた状態にある。 名前を覚えろと怒る相手に、サンジが取り合わないやり取りは、直前まで脅威だった騎士が現地では制圧されたことを示す。
フクロウの図書館ではフランキーが気絶したウソップとブルックを見守り、ジンベエがチョッパーを探す。 一味は勝利後の回復と所在確認に入り、次の大攻勢を予想していない。
ロキ、ルフィ、ラグニル
ロキとルフィ、ラグニルはセイウチの学校で食料を探す。 リリスの発明によって保存された食べ物は凍っており、ロキは味へ不満を言いながらも食べる。
ギア5の消耗でしぼんだルフィは、自分が回復する前にウソップとブルックへ食料を持っていこうとする。 直前の戦闘で助けられなかった仲間を優先し、勝利を宴へ変えるより状態を確かめる。
氷に閉じ込められた軍子について、ロキは生きており、ラグニルだけが氷を解かせると説明する。 倒した敵を即座に殺すのではなく拘束しているため、後の判断と情報を得る余地が残る。
アウルスト城上空のアビス
ナミが異変へ気づくと、アウルスト城の上空へ黒い力の柱が立ち、巨大なアビスの円が形成される。 周囲の建物や木々は顔のようなものを現し、不気味な声を上げる。
既に神の騎士団が使った転移の円より規模が大きく、到着する存在の力を町全体が先に受ける。 移動経路であると同時に、周囲の物質を変質させる現象として描かれる。
五本に続いて中央へ六本目の黒い柱が落ち、覇王色の覇気が広がる。 エルバフの住民の一部は意識を失い、拘束中の騎士たちも何が来たかを察する。
イムは城内の召喚地点へ現れるが、到着直後に膝をつき、血を吐く。 圧倒的な力を持つ一方、自分の身体で聖地の外へ出ることには負担がある。 五老星が派遣を止めようとした理由の一つが、権威への配慮だけでなく、この身体的な危険にあると分かる。
ネロナ・イムの公開
イムは苦痛の中で姿を変え、城の屋根を突き破って上部へ現れる。 長く影や輪郭で隠されてきた顔が示され、「ネロナ・イム聖」「世界の王」「最初の二十人の一人」という位置づけが提示される。
これまで「空の玉座」は世界にただ一人の王がいないという建前を表していた。 イムの存在は、その建前の下で単独の支配者が八百年にわたり頂点へいたことを意味する。 第1179話では、読者だけが知る影の存在から、エルバフの戦場へ姿を晒す当事者へ変わる。
能力は「悪魔の実」と同じ字を持つアクマの実として紹介され、悪魔の姿へ変身する。 ただし一般的な悪魔の実全体との関係、正式な分類、能力の限界はこの回だけでは確定しない。 名称の類似から全悪魔の実の起源と断定するのは早い。
確定事項と未確定事項
第1179話で確定したのは、イムがネロナ家の人物で、世界政府創設に関わった最初の二十人の一人であり、現在も世界の王として君臨していること、本人がアビスでエルバフへ来たことである。
一方、八百年以上同じ肉体で生きている仕組み、アクマの実の分類、ビビを求める理由、外界で身体が弱る原因は説明途中である。 過去の人物との同一性や恋愛関係などを、顔の公開だけから確定することはできない。
また、周囲の建物や木が生き物のように変化した現象が、イムの能力そのものか、アビスの副作用か、別の力との組み合わせかも整理が必要である。 同じ場面に複数の現象が起きたことと、一つの能力で全てを行ったことは同義ではない。
第1179話の意味
エルバフ側は神の騎士団を拘束し、短い休息へ入っていた。 その局面で組織の頂点が本人として現れるため、戦力差だけでなく勝利条件が変わる。 騎士を倒して侵攻を止める戦いから、世界の支配者と八百年の歴史へ向き合う戦いになる。
マリージョアの食料不足とイムの出陣が同じ回に置かれる点も重要である。 世界政府は無傷の絶対権力ではなく、革命軍の作戦によって時間を失い、隠してきた王を前線へ出さざるを得ない。 強大さを示す降臨は、同時に従来の統治方法が限界へ達した証拠でもある。
第1179話は、謎の答えをすべて開示する回ではない。 イムの姿と地位を確定しながら、新しい疑問を能力、身体、欲求の三方向へ広げる。 次話以降の戦闘だけでなく、空白の百年を現在の人物関係として読む入口になる。


