ゲッコー・モリアは、『ONE PIECE』に登場するスリラーバーク海賊団の船長で、元王下七武海の一人。悪魔の実「カゲカゲの実」の能力者で、巨大なハサミで人の影を切り取り、死体に埋め込んでゾンビの兵士を量産する。かつては四皇カイドウと互角に渡り合ったとされる実力者だったが、23年前の決戦で部下を全滅させられて以来、「二度と仲間を失わない」ための不死の軍団づくりに半生を費やしてきた。その軍団はスリラーバーク編でモンキー・D・ルフィに粉砕され、戦後は世界政府にまで切り捨てられたが、彼は生き延びた。黒ひげの島での投獄を経て、原作の最新局面では脱出を遂げている。
初登場は原作第449話、TVアニメ第343話。西の海の生まれだが、若い頃にワノ国へ漂着し、鈴後(リンゴ)の人々に育てられて「光月もりあ」の名を与えられたという来歴が、SBS第114巻で明かされた。海へ出て率いたゲッコー海賊団は世界に名を馳せたが、ワノ国を支配下に置いた百獣海賊団を討とうとしてカイドウに敗れ、仲間をすべて失った。この敗北が、死なない兵士を集める男の原点である。
ホラー映画の悪役めいた外見の裏に置かれているのは、仲間の死を二度と見たくないという歪んだ情の深さだ。頂上戦争では七武海制度の冷徹さを一身に引き受ける役回りとなり、黒ひげ編では仲間を救いに乗り込む側へ回る。出番のたびに立ち位置が変わる、長い余韻を持つ大物である。
基本情報
- 名前:ゲッコー・モリア。ワノ国では「光月もりあ」と呼ばれた
- 所属:スリラーバーク海賊団船長(四怪人の一人)。元ゲッコー海賊団船長、元王下七武海
- 悪魔の実:カゲカゲの実(パラミシア系)
- 懸賞金:3億2000万ベリー(七武海加盟で凍結、除名で復活)
- 年齢:48歳(初登場時)/50歳(2年後)
- 誕生日:9月6日
- 身長:692cm(歴代七武海で最高身長)
- 血液型:X
- 出身:西の海。若い頃にワノ国・鈴後で育つ
- 武器:影を切り取る巨大なハサミ。関節で外せば二本の逆刃刀にもなる
- 声優:宝亀克寿(アニメ)
額の両側に二本の角、顔の中央から首へ縦に走る縫い跡、尖った耳とギザ歯。身長692cmの巨体で、長い首と細い上半身に対し下半身が太く短いという異形の体格を持つ。「キシシシ」と笑う独特の笑い方があり、モットーは「他力本願」、口癖は「お前がやれ」(第455話)。本人が動かず部下と影に働かせる姿勢は性格そのままに能力へも現れ、「海賊王」は強力な部下の力で成ると公言している(第463話)。ゲッコー海賊団とスリラーバーク海賊団という二つの海賊団の船長を歴任した、作中で唯一の人物でもある。
ワノ国で「光月」の名を得た少年
モリアの出自が明らかになったのは、近年の原作とSBSにおいてである。西の海に生まれた彼は、若い頃にワノ国へ漂着し、雪国・鈴後の人々に引き取られて育った。異国の者でありながら、その強さを買われ、ワノ国で最高の名誉とされる光月家の名を冠することを許された。「光月もりあ」の呼び名が初めて示されたのは第1158話の扉絵で、SBS第114巻で生い立ちが詳述されている。ちなみに「光月」の字を逆に読めば「月光(ゲッコー)」となる。
成人して海へ出たモリアはゲッコー海賊団を率い、世界に名を馳せる海賊となった。24年前にはローグタウンでのゴル・D・ロジャーの処刑に立ち会っている(第0話)。その翌年にあたる23年前、当時すでに懸賞金3億2000万ベリーだった彼は、ワノ国を支配下に置いたカイドウと百獣海賊団を討つべく、ゲッコー海賊団を率いて帰国した。育ての里を蝕む敵への敵討ちだったが、結果は惨敗である。部下は全員殺され、彼一人だけが生き残った(第481話・SBS第114巻)。
敗北の恥のあまり、モリアは誰にも告げずにワノ国を去り、鈴後の人々は彼が死んだものと思い込んだ。里では今もカイドウに立ち向かった英雄として慕われており、彼のものとされる墓まで建てられている。鈴後のヤクザの頭目・蝶々(チョー)がヤマトにその墓参りをさせる場面が、第1154話の扉絵に描かれた。
一方でモリアは、去り際に霜月リューマの墓を暴き、「伝説の剣豪」の遺体と名刀「秋水」を持ち去っている(第969話)。ワノ国では犯人不明の墓暴き事件として語り継がれ、国を守ろうとして敗れた男と、英雄の亡骸を盗んだ男が同一人物であることは知られていない。盗んだ遺体は後にスリラーバークのゾンビ剣士となる。恩人の里を裏切る所業さえ、彼は「死なない軍団」の材料に変えた。
「死なない仲間」を求めた航路
全滅の記憶はモリアの海賊観を根底から変えた。仲間が死ぬのを二度と見たくない。そのためには、仲間が死ねない存在でなければならない。西の海へ戻った彼は世界最大の船・スリラーバークを建造し、魔の三角海域(フロリアン・トライアングル)を本拠に据えた。その後、王下七武海に加盟して懸賞金は凍結される。カイドウへの復讐に向けて、約10年をかけてゾンビ軍団を作り上げていった(第481話・ビブルカード)。
ゾンビの素体となる死体は世界中から集められた。氷の国で凍え死んだ「魔人」オーズ、ワノ国のリューマ、キャプテン・ジョンやギル・バスター、ガンズイらの亡骸がスリラーバークへ運ばれ、天才外科医ドクトル・ホグバックの手で改造・保存された(SBS・ビブルカード)。ゾンビは番号で管理され、兵士ゾンビ、動物ゾンビ、将軍ゾンビの序列の頂点に、「特別ゾンビ」として伝説の巨人オーズの死体が据えられている。
生きた幹部は、モリアと合わせ「四怪人」と呼ばれる三人である。死体に命を吹き込むことを使命と語るホグバック、「透明人間」アブサロム、そして幽霊を操る少女ペローナ。ペローナは幼い頃からモリアに育てられ、彼を父親のように慕っている(第925話)。冷淡な支配者の顔とは別に、モリアにもペローナへの愛情は本物だった。なお、影を奪われた被害者の一人であるブルックは、壊れた舵輪を直す手段を求めてスリラーバークへ立ち寄り、捕らえられて影をリューマの亡骸へ入れられた(第455話)。ブルックはその後何度も船へ戻ってゾンビを浄化したが、自分の影を持つリューマに敗れている(第458話)。
カゲカゲの実とゾンビの掟
カゲカゲの実はパラミシア系の悪魔の実で、影を実体のあるものとして操る。モリア自身の影は分身「ドッペルマン」となって彼の代わりに戦い、無数のコウモリ状に分かれて敵を襲い(「ブリック・バット」)、本体と位置を瞬時に入れ替わることもできる。ドッペルマンは崩されても再生するため、破壊できない。
能力の本領は他人の影の略奪にある。巨大なハサミで切り離された影の主は約二日間昏睡し、鏡にも写真にも写らなくなり、日光を浴びれば体ごと消滅する(第443・456話)。切り取った影を死体に埋め込めば、その死体はゾンビとして動き出し、影の主の人格と技術を引き継ぐ。サンジの影を入れられたゾンビは女性を蹴れない性分を残し、ロロノア・ゾロの影を入れられたゾンビは「背中の傷は剣士の恥」の矜持と三刀流の腕を見せた。ゾンビの最大の弱点は海である。塩は海の力を含むゆえに、浴びせられたゾンビは浄化され、影は主のもとへ帰る。
生きた人間に影を入れることもできる。力と技術を借りられる反面、肉体にはすでに魂が宿るため、影は約10分で離脱する。応用技の幅も広く、影の形を変えて体を変形させる「影革命(カゲカクメイ)」、切り取った影を大量に体内へ取り込み巨神と化す「影の集合地(シャドウズ・アスガルド)」、影を巨大なトカゲ状の槍に変えて敵を貫く「角刀影(ツノトカゲ)」を持つ。どの影をどの死体へ入れるかの配置設計に長け、ニコ・ロビンを翻弄して影を奪うなど、怠惰な外見に反して戦術眼は本物である(第477話)。
スリラーバークの決戦
スリラーバーク編でモリアは麦わらの一味の影を次々と奪った。サンジの影は犬ッペというペンギン型のゾンビへ、ゾロの影は将軍ゾンビのジゴロウへ埋め込まれ(第451・452話)、ルフィの影は切り札であるオーズの死体へ入れられた(第457話)。交戦の最中にはロビンの影までもが切断されている(第477話)。ルフィの戦い方をそのまま再現する巨人は一味を圧倒し、モリアはオーズの腹に設えた操縦席から戦況を眺めた。
形勢を変えたのは、同じく影を奪われた女海賊ローラ率いるローリング海賊団の知恵だった。生身への影封入を伝授されたルフィは100人分の影を取り込んだ「ナイトメア・ルフィ」と化し、オーズを打ち倒す(第478〜481話)。モリアは残った全ての影、千人分を体内へ吸収するシャドウズ・アスガルドで応戦したが、制御しきれない力を抱えたまま、ギア2とギア3を重ねた「ゴムゴムの巨人の砲弾(ギガント・ジェット・シェル)」に沈められた(第481〜482話)。影を集めて強くなろうとした男が、影の蓄積で生まれた怪物に敗れる構図である。
戦いの最中、世界政府はバーソロミュー・クマを船へ寄こしていた。クロコダイルに続いて七武海が敗れれば面目が保てないという判断で、政府はモリアの敗北が露見する前に、クマへ生き残り全員の抹殺を命じた(第483話)。気絶したモリアはアブサロムとホグバックに運ばれ、別の船でスリラーバークを離れた(第486話)。一方ペローナはクマの能力で遠くへ飛ばされ、一味は四散した。
頂上戦争と政府の粛清
マリンフォードの頂上戦争では七武海として動員され、開戦前の招集にも応じた。エースがロジャーの息子と知って驚き(第551話)、白ひげ海賊団麾下の巨人リトルオーズJr.の死体を軍団の戦力に欲しがった。右脚を切り落としたドンキホーテ・ドフラミンゴに「綺麗な死体が台無しだ」と怒りを見せ、自ら角刀影で巨体を貫いて仕留めた(第554〜555話)。
戦場に降りてきたルフィの影を再び狙い、海兵や海賊から集めたゾンビを差し向けたが、ゾンビの弱点を知るジンベに海水で浄化された。ルフィが革命家ドラゴンの息子と知って驚愕し(第558話)、正面からジンベへ挑んで影を吸収して力を増したものの、鮫瓦正拳の一撃に沈む。「他者の力に頼りすぎて衰えた」との評を受けた(第559話)。その後も白ひげ海賊団十番隊隊長キュリエルを挑発して交戦し、ジンベの一打を除けば傷一つ負わず戦線に残った(第562話)。白ひげがスクアードに刺されたときも、その死を見届けたときも、モリアは愉しげに笑っていた(第563・577話)。
終戦後、モリアはマリンフォードの裏通りでドフラミンゴとパシフィスタの部隊に襲撃された。「王下七武海でいるには弱すぎる」という理由で、政府が抹殺を命じたのである。センゴクの差し金かと問うモリアに、ドフラミンゴは「もっと上だ」とだけ答えた(第581話)。
原作が直接描くのはここまでである。後日、政府の役人に対してドフラミンゴは、致命打を加える前にモリアが姿を消したと報告し、モリア自身の能力によるものかもしれないと推測を述べている(第595話)。公式の記録は「戦死」となり、新聞も彼の死を報じた。この時点で原作が示す事実は、モリアが消えて生死不明となったところまでだ。救出の経緯を補うのは設定資料集で、ビブルカードはアブサロムとホグバックがドフラミンゴの襲撃からモリアを救出したと記している。消え方がアブサロムのスケスケの実を思わせるものだったことは、ドフラミンゴの推測とも整合する。
訃報を信じなかった者もいる。ジュラキュール・ミホークは終戦時にモリアの生存を見届けていたため記事の信憑性を疑い、クマに飛ばされてミホークの居城に身を寄せていたペローナは、戦死報道の新聞を読んで涙を流した(第592話)。その後、新世界でモリアを見たという目撃談が新聞に報じられている。
ハチノスの投獄とペローナの手
二年後、モリアは消息を絶ったアブサロムを探してゾンビの軍を率い、海賊島ハチノスへ乗り込んだ(第925話)。待っていたのは残酷な真実である。無事に見えたアブサロムはカタリーナ・デボンの九尾の狐の能力による変装で、本人はスケスケの実を奪うために黒ひげ海賊団に殺されていた。気づかぬ一瞬の安堵の隙を、能力を得たシリュウの不可視の一撃が突く。怒りに燃えるモリアへ、スピーカー越しのマーシャル・D・ティーチは嘲笑まじりに仲間入りを持ちかけたが、モリアは断って囚われた(第1080話)。
救い手はペローナだった。海軍がハチノスを襲撃する直前、彼女は島の監獄に潜り込み、捕らえられていたコビーを解放し、引き換えにモリアの解放を手伝わせた(第1080話)。海軍襲撃の混乱の中でモリアは脱獄し、ピサロがティーチへその事実を確認させられている(第1126話)。仲間を失うことを何度もなぞってきた男を、最後まで見捨てなかったのが、娘のように育てたペローナだった。
なお、七武海制度の廃止後、モリアはベガパンクの手で複製され、旧七武海に代わる政府の兵器「セラフィム」の一体として、その能力を持つ個体が登場している(第1086話)。
アニメでの描かれ方
TVアニメでは宝亀克寿が声を担当する。低く粘る「キシシシ」の笑い声と、のらりくらりとして底の見えない語り口が、怠惰と不気味さの同居するモリアの声を形作った。スリラーバーク編はホラー映画への目配せに満ちた編であり、巨体と影の演出は映像ならではの見どころになっている。原作とアニメの差異として、ジンベがモリアの強さについて「他人の影を取り込んでも本当の強さにはならない」と断じる台詞は、アニメ独自の追加である(アニメ第468話)。
表記の揺れとして、書籍『ONE PIECE GREEN』や展覧会資料、映画『STAMPEDE』では「Gekko Moriah」と綴られ、原作第925話では「Gecko Moria」と表記された。日本語でも「ゲッコー」を「月光」に掛ける由来推測が以前からあったが、SBS第114巻で「光月もりあ」の名が判明し、裏返しの名づけだったことが分かっている。初期設定画には二重人格の牧師という没案も残っており(『ONE PIECE GREEN』)、キャラクター人気投票では第4回44位、第5回72位、第6回111位、第7回74位と、固定の支持を持ち続けている。


