ベガパンクは、『ONE PIECE』に登場する世界政府お抱えの科学者であり、「世界一の頭脳を持つ男」の異名を持つ人物である。 悪魔の実「ノミノミの実」によって学んだ情報をすべて記憶し、科学のあらゆる分野で同時代より数百年先を行く発明を重ねてきた。パシフィスタやセラフィムといった海軍の新戦力から、血管因子の解明まで、現代の科学の大半が彼の手を通っている。
晩年には自らを六人の「サテライト」と呼ぶ分身に分け、エッグヘッドの研究所で研究を続けていたが、エッグヘッド編の事件で政府の抹殺の標的となり、本体は事件の最中に命を落とす。死後も事前録画の放送が世界中へ届けられ、空白の100年の真相の一部を世界に明かした。
初登場は原作第684話のTVアニメ第610話で、この時点では名前だけの存在。姿を見せたのは原作第1061話のサテライト、本体は第1066話からである。
基本情報
- 名前:ドクター・ベガパンク
- 異名:世界一の頭脳を持つ男
- 本体の通称:ステラ
- 所属:元MADS、元海軍科学部隊(SSG)
- 職業:科学者
- 出身:偉大なる航路・カラクリ島
- 拠点:エッグヘッド、元パンクハザード、元カラクリ島
- 誕生日:8月9日
- 年齢:65歳
- 身長:314cm
- 血液型:S
- 悪魔の実:ノミノミの実(超人系)
- 声優:多田野曜平(第610話は安原義人)
本体の外見は、リンゴの芯のような独特な頭形と、伸びきった長い舌が特徴の老人である。頭部は脳を巨大化させる悪魔の実の副作用と、脳を頸から切り離して保管するという本人の処置によって特殊な形になっている。
世界一の頭脳とノミノミの実
ベガパンクの科学力は、生まれつきの天才と悪魔の実の掛け算でできている。超人系のノミノミの実は、脳に学んだ情報を無限に保存し、一度覚えたことを完全に思い出せる能力である。元々天才だった彼の知性は、この能力によって同時代の科学者を桁違いに引き離した。作中では、科学技術が同時代より500年先に達していると評される。
能力の副作用として脳が際限なく巨大化する問題に対し、彼は巨大化した脳を頭から切り離した。脳はエッグヘッドの「パンクレコーズ」へ格納され、本体は頭部のアンテナを通じて接続する。この構成により、記憶の蓄積は切り離した後も続いている。
その知識は技術として形を残す。故郷のカラクリ島には若い頃の設計図が多数残されており、フランキーはこれを頼りに自前のレーザー兵器を組み上げた。レーザー兵器というもの自体が世界ではほぼ彼の専売特許であることを思えば、島に残した紙切れだけでも世界の技術水準を押し上げている。
六人のサテライトという分身
研究と発想が追いつかなくなったベガパンクは、約2年前に自らを六人の分身へ分割した。分身は「サテライト」と呼ばれ、それぞれ独立した意志と人格を持つ。各自が得た経験と知識は、毎日パンクレコーズへ同期する仕組みである。
サテライトには、良識と正義を体現するシャカ、悪と私欲を担うリリス、発明を司るエジソン、計算を司るピタゴラス、力と感情のアトラス、食欲と欲望のヨークが名を連ねる。六人は皆自分を「ベガパンク」と名乗るが、実際には一人の人格を六等分した別人の集団である。本体のステラが全体の意見を調整する構想だった。
事件の当日も、六人はそれぞれの役割で動いた。シャカは研究所の防衛判断を指揮し、CP0の侵攻に際してセラフィムのうち三体を戦桃丸へ託した。リリスは好戦的な性格のまま敵迎撃に回り、アトラスは巨体の怪力でルフィたちの運搬と戦線を支えた。エジソンとピタゴラスは設備の掌握と封鎖を担う。研究の分業そのものが、そのまま戦闘の分業になった形である。
このシステムの破綻をもたらしたのは、ヨークの裏切りである。世界貴族の地位を望んだヨークは、仲間の抹殺と本体の研究中止を政府側へ取引に持ち込んだ。母なる炎の流出も、彼女の関与が絡む事件である。裏切り自体は、監視システムの異常を突き止めた本体が一週間で突きとめている。自分を騙せるのは自分だけ、という彼の評はここでも裏切らなかった。
MADSから海軍へ、科学者の経歴
ベガパンクの来歴は、違法研究チーム「MADS」のリーダーとして始まる。血管因子という生命の設計図の発見は、この時代の成果である。生命の記録と複製を可能にしたこの発見は、クローン技術、サイボーグ化、能力の移植まで、後の彼の発明のほぼすべての土台になっている。危険な研究が原因で世界政府に逮捕された経歴を持つが、その頭脳を惜しんだ政府は逆に彼を首席科学官として迎え入れた。以後、海軍の科学部隊SSGを率い、パシフィスタ、セラフィムをはじめとする新兵器を次々と生み出していく。
MADSには、後の宿敵シーザー・クラウンのほか、ジェルマ66を作ったジャッジ、百獣海賊団の大看板となるクイーン、ミス・バッキンガム・ステューシーの名が並ぶ。後の新世界を賑わせる技術者の原点が、このチームである。二人の関係は研究の方向性と倫理観をめぐって決裂し、シーザーは解雇された。シーザーが常に「二番目」と呼ばれ続けた恨みは、パンクハザード編の人体実験の底流にも流れている。ベガパンク自身は、シーザーの作った人造悪魔の実を認めていない。
MADSの遺産は他にもある。チームが作り上げた世界初の成功したクローンが、後にCP0のスパイとして二十年越しにベガパンクのために働くステューシーである。彼女はエッグヘッドの危機で政府側を裏切り、最後まで彼に忠誠を貫いた。
オハラの学問を引き継いだ男
ベガパンクの学問は、科学と歴史学の両方に及ぶ。彼はポーネグリフの解読ができ、オハラの学者たちが残した研究を全集読破した。空白の100年について、彼は政府の禁じる知識を持ち続けた一人である。
きっかけは考古学者クローバー博士との交友である。ベガパンクは彼の真名を知る数少ない人物であり、オハラのバスターコールと焚書には深い慟哭を覚えた。故人の志を無駄にしないため、彼はエルバフへ渡り、巨人の海賊たちが救い出したオハラの書物の続きを読み、研究の継承を引き受けた。世界政府という組織の頭脳でありながら、その組織が滅ぼした学問を次の世代へ渡そうとした点に、彼という人物の矛盾と誠実さが凝縮されている。
クマとボニーとの約束
ジュエリー・ボニーの父バーソロミュー・クマがエッグヘッドを訪れたのは、娘の不治の病の治療を求めてのことだった。ベガパンクはバッカニア族であるクマに目を付け、治療と引き換えにクローニング研究への協力を求める。取引は成立し、ボニーの病は治った。
しかし政府の五老星ジャイガルシア・サターンは、クマの自由意志と記憶を完全に消し去れと命じる。命令にベガパンクは怒りをあらわにした。クマの改造は引き受けても、取り決めの外で人間性を削る行為には屈しなかったのである。この一件の真相はボニーには届かず、彼女は長らくベガパンクを父の改造者として恨んだ。エッグヘッドで真相を知ったボニーは、彼を許す。長年の誤解の解消が、事件の中で数少ない救いとして描かれる。
クマの意志が残っていた期間、ベガパンクはサニー号を守る護衛としての機能を組み込んだ。麦わらの一味への好意は、クマから聞いた「ルフィはドラゴンの息子でありニカに似ている」という情報と、クマ自身の最後の人間としての願いに由来する。
ドラゴンと革命軍との関係
モンキー・D・ドラゴン率いる革命軍とは、奇妙な友好的関係にある。世界政府の腐敗への嫌悪はドラゴンと共有していたが、革命軍への参加の誘いは「金がない」という理由で断っている。それでも二人の連絡は途絶えず、クマの治療の紹介もドラゴンを通じて行われた。
また二人は、オハラのクローバー博士への共通の敬意を持ち、彼の死を無駄にしないための協力を続けた。科学者と革命家という異なる立場が、一つの学問の存続を介して結ばれている形である。
エッグヘッド事件と世界への放送
ベガパンクの最期の舞台は、エッグヘッドでのエッグヘッド事件である。空白の100年を知りすぎた彼に対し、世界政府は抹殺を決め、CP0を送り込んだ。パシフィスタとセラフィムの生みの親を、政府自らが処分しようとしたのである。
事件の中では、サターンとの対立が正面から描かれる。かつてマリージョアの名誉の席に招かれた際から、政府の上層への疑念は消えていなかった。少年時代に救った戦桃丸は海軍士官となった後も彼を守り、セラフィムの指揮を託される。かつての後見者の一人ボルサリーノは大将として海兵を率いて島へ来た。二人の関係は、この島で完全に壊れる。
本体のステラは事件の最中に命を落とす。しかし彼は自らの死を織り込み済みだった。事前録画の放送は電伝虫を通じて世界中へ配信され、大戦争の存在、ジョイボーイの名、古代兵器によって沈んだ世界の姿が明かされた。空白の100年の全てではない。本人も理解は不完全だと認めていた。それでも世界の海を一斉に揺るがした事実の開示は、その後の物語全体の起爆剤である。
放送の内容も手段も、政府の想定を超えていた。島から遠く離れた海でも、海賊も海軍も民間人も同じ言葉を聞いた。真実の開示という最強の武器を、科学者は自分の死後に残した。研究の成果を兵器に変え続けてきた彼が、最後に選んだのは記録を残すことだった。
アニメでの描かれ方
TVアニメでは、第610話のパンクハザード編で名前と影のみが登場し、声は安原義人が務めた。サテライトたちが姿を見せるのは第1090話以降で、本体は第1096話の過去編から登場する。以後は多田野曜平が一人で、六人の分身の声の使い分けと本体の老獪さを担っている。


