『ONE PIECE』第110巻は、2024年11月1日に集英社から発売されたコミックスである。
巻題は「時代のうねり」。
原作第1111話から第1121話までの11話を収録し、エッグヘッドからの脱出戦とベガパンクの世界放送が同時に進む。
五老星が全員エッグヘッドへ集結し、巨兵海賊団が麦わらの一味を援護し、鉄の巨人エメトが再起動する。
局地戦だったエッグヘッド事件が、空白の100年と世界沈没を全海域へ告げる歴史的事件へ変わる一冊である。
書誌情報
- 巻数:第110巻
- 巻題:時代のうねり
- 著者:尾田栄一郎
- 出版社:集英社
- 発売日:2024年11月1日
- 収録話:第1111話〜第1121話
- 収録話数:11話
- 主な編:エッグヘッド編
- 前巻:第109巻「きみの味方」
- 次巻:第111巻「エルバフの冒険」
表紙の構成
表紙中央にはギア5のモンキー・D・ルフィとジュエリー・ボニーが配置され、その背後に獣型のジェイガルシア・サターン聖が立つ。
左右にはドリーとブロギー、下方には残る四人の五老星が描かれる。
ルフィたちと五老星の対立だけでなく、100年以上前から名を知られる巨兵海賊団が現在の戦いへ戻ったことを一枚で示す構図である。
第15巻表紙のルフィ、ドリー、ブロギーを思わせる配置もあり、リトルガーデンで結ばれた関係が長い時間を越えてエッグヘッドへ接続する。
収録話一覧
1. 第1111話「太陽の盾」 2. 第1112話「ハードアスペクト」 3. 第1113話「STALEMATE」 4. 第1114話「イカロスの翼」 5. 第1115話「大陸の断片」 6. 第1116話「葛藤」 7. 第1117話「も」 8. 第1118話「自由になる」 9. 第1119話「エメト」 10. 第1120話「暴(アトラス)」 11. 第1121話「時代のうねり」
巻題は最終収録話と同じであり、個別の戦闘より世界全体へ広がる変化を強調する。
巨兵海賊団の援軍
ドリーとブロギーはルフィのもとへ到達し、五老星の攻撃から彼を守る。
彼らは単なる救助船の乗員ではない。
ウォーキュリー聖やサターン聖の異形と正面から渡り合い、麦わらの一味が港へ向かう時間を作る。
リトルガーデンで決闘を続けていた二人が、世界政府最高権力とされる存在へ斧と剣を向けることで、物語の規模が一段広がる。
五老星の集結
第109巻までにエッグヘッドへ来ていたサターン聖に加え、他の五老星が召喚される。
彼らはそれぞれ異なる巨大な姿となり、ベガパンクの放送を止めること、研究層の設備を破壊すること、脱出者を逃がさないことへ分かれる。
最高権力者が会議室から命令するだけでなく、自ら戦場へ現れた点が重要である。
通常の攻撃を受けても再生するため、ルフィたちは敵を倒して終える戦いではなく、押し戻して脱出する戦いを強いられる。
ベガパンクの放送開始
ベガパンクは自分の死を条件に世界放送が始まる仕組みを用意していた。
彼は自らが犯した二つの罪に触れ、これから世界へ真実の一部を伝えると宣言する。
五老星は配信元を探し、研究層やパンクレコーズへ攻撃を加える。
視聴者へ映像を届ける準備時間が必要だったため、世界各地の人々が電伝虫の前へ集まる様子も描かれる。
一つの島の逃走劇と、全世界が同じ言葉を待つ時間が並行する。
世界は海へ沈む
ベガパンクは、自分の予測が正しければ世界が海へ沈むと告げる。
ルルシア王国消滅後に起きた海面上昇は、偶然の自然災害ではなく、人為的な力の使用と結び付く。
世界の住民にとって、空白の100年は学者だけが追う過去ではなく、自分たちの土地が失われる未来の問題へ変わる。
放送は政府への告発だけでなく、現在進行中の災害予測でもある。
ジョイボーイと最初の海賊
ベガパンクは、900年前の高度な文明に生まれ、伸縮する身体で戦ったジョイボーイを「この海で初めて海賊と呼ばれた男」と説明する。
彼と現在のルフィには、ニカを思わせる力と解放の笑いが共通する。
ただし、ルフィがジョイボーイ本人の転生であると確定したわけではない。
歴史上の人物、受け継がれる力、現代の選択を同一人物として単純化しないことが必要である。
200メートルの海面上昇
空白の100年に行われた戦争で、古代兵器が使われ、海面が200メートル上昇したと語られる。
現在の島々は、かつて存在した大陸の高所が残ったものかもしれない。
ウォーターセブンの沈下、ワノ国の水没した旧市街、海底遺跡など、各編で見てきた地形が一つの歴史へ結び付く。
第110巻は、新情報を突然置くだけでなく、過去の島々の姿を読み替える巻である。
マザーフレイムと古代兵器
ベガパンクは無限に近いエネルギーを求め、マザーフレイムを開発した。
その一部が盗まれ、ルルシアを消した兵器の動力に使われた可能性を語る。
マザーフレイム自体が古代兵器なのではない。
古代兵器級の装置を再び動かせるエネルギー源として悪用されたことが、彼の罪の一つになる。
科学者の発明と使用者の責任をどこまで分けられるかという問題が、放送の「葛藤」に表れる。
鉄の巨人エメト
研究層の下で眠っていた鉄の巨人は、ルフィの解放のドラムに反応して動き出す。
ベガパンクの放送を止めるため五老星が巨人へ攻撃を集中させると、配信電伝虫がその内部に隠されていたと分かる。
エメトは過去にマリージョアを襲った存在であり、ジョイボーイへ謝罪する言葉を発する。
巨大な機械が単なる兵器ではなく、800年前の記憶と約束を持つ人物のように描かれる。
ボニーの「自由」
ジュエリー・ボニーは、自分が最も自由になった未来を想像し、ニカに近い姿へ変身する。
父くまが信じた解放の戦士を知り、ルフィの姿を直接見たことで、彼女が思い描ける未来の幅が広がった。
ルフィの力を複製したのではなく、トシトシの実が可能性として描ける未来を選んだ結果である。
サターン聖へ向ける拳は、くまの人生を壊した相手へ娘自身が答える場面になる。
アトラスの決断
サニー号を飛ばして脱出させるため、アトラスは自分の命を使ってナス寿郎聖を妨害する。
リリスを逃がすため、パンクレコーズとの同期も切断する。
ベガパンクの分身たちは同じ頭脳へ接続していても、最後の選択は同一ではない。
ヨークが五老星側へ立ち、アトラスが仲間を逃がすという対照によって、「ベガパンク」という一人の科学者の矛盾が複数の人格へ分かれて表れる。
第1121話「時代のうねり」
巻末でベガパンクは、ロジャー海賊団が世界の歴史を知ったと語る。
そして、ひとつなぎの大秘宝を手にした者が世界の運命を握ると示す。
海軍、海賊、革命軍、世界政府、各国の人物が放送を聞く姿が並び、最終局面の競争者が一斉に可視化される。
巻題は、誰か一人の勝利ではなく、世界全体が同時に動き始めた状態を指す。
SBSで明かされた情報
第110巻のSBSでは、SWORD所属者の年齢と身長、エッグヘッドの海軍中将たちの悪魔の実や戦法、ジンベエの未来像などが扱われる。
藤虎と緑牛の幼少期や海軍加入前を補う絵も掲載された。
また、サターン聖に動きを封じられたルフィへ食料を届けた人物について、黄猿を示唆する回答がある。
本編で明言されなかった補足であり、SBS情報として区分して読む必要がある。
単行本での修正
週刊連載版から単行本化する際、作画や台詞が複数修正された。
ギア5の身体表現、効果音、S-スネークの髪、エメトの台詞書体など、視覚的な調整が含まれる。
第1121話ではロジャーの死からの年数も訂正された。
ストーリーの大筋は同じでも、厳密な引用や年表を作る場合は単行本を最終版として確認する必要がある。
第110巻の位置づけ
第109巻はくまの過去とサターン聖への反撃へ重点を置いた。
第110巻では人物の感情を受け継ぎながら、焦点が世界史と海面上昇へ拡大する。
次の第111巻はエッグヘッド脱出の完了からエルバフへの到着へ進む。
その間にある第110巻は、未来島の事件を最終章全体の問題へ変換する転換点である。
世界各地の反応
放送を聞くのはエッグヘッドの当事者だけではない。
海賊、海兵、各国の王族、市民、革命軍が同じ時間にベガパンクの言葉を受け取る。
人物ごとに知識量が異なるため、ジョイボーイや海面上昇という情報の意味も同じではない。
読者は過去の編で会った人物の反応を通じて、放送が世界のどこまで届いたかを確認できる。
長期連載で広がった舞台を一冊へ再集合させ、エッグヘッド脱出後も情報が消えない状況を作る。
「止められないもの」の巻題
「時代のうねり」は、ロジャーが語った「受け継がれる意志」「人の夢」「時代のうねり」に由来する。
前二つは過去に第16巻「受け継がれる意志」、第24巻「人の夢」の巻題となった。
第110巻で三つ目が使われたことにより、初期から示されていた言葉が最終章の世界放送へ戻る。
五老星が通信を物理的に止めようとしても、すでに聞いた人々の意識までは消せない。
巻題は歴史情報だけでなく、情報を受け取った世界が元の状態へ戻らないことを表す。


