『ONE PIECE』第112巻「神典(ハーレイ)」は、原作第1134話から第1144話までの11話を収録したジャンプ・コミックスである。2025年7月4日に紙版、同年8月4日にデジタル版が発売された。エルバフへ到着した麦わらの一味が巨人族の友人たちと再会し、島の学校・図書館・宝樹アダムを巡る一方、神の騎士団がロキと子どもたちを狙って動き始める。
巻題の「神典」は、エルバフに伝わる文書「ハーレイ」を指す。太陽の神と世界の破壊・再生を語る伝承が、古代の壁画とともに提示される。歓待と再会を描く前半から、侵入者、ロキ勧誘、子どもの誘拐、火災へ進む後半まで、エルバフ編の探索段階が組織的な襲撃へ変わる巻である。
書誌情報
- 正式題:ONE PIECE 112
- 巻題:神典(ハーレイ)
- 著者:尾田栄一郎
- 出版社:集英社
- レーベル:ジャンプコミックス
- 紙版発売日:2025年7月4日
- デジタル版発売日:2025年8月4日
- 判型・ページ数:新書判・216ページ
- 紙版定価:572円(税込・発売時)
- ISBN:978-4-08-884563-0
- 収録話:第1134話〜第1144話
- 該当ストーリー:エルバフ編
- 前巻:第111巻「エルバフの冒険」
- 次巻:第113巻「ロキ誕生」
単行本は週刊連載の本文をまとめるだけでなく、表紙、扉絵連載、SBS、ウソップギャラリー海賊団、雑誌掲載版からの修正を含む。第112巻の記事では、11話の物語と単行本固有要素を分けて扱う。
表紙
通常版の表紙は青い背景に、黄色から白へ変化する巻題が置かれる。中央のモンキー・D・ルフィを囲むように、新巨兵海賊団のハイルディン、スタンセン、ゴールドバーグ、ロード、ゲルズが並ぶ。ニコ・ロビンはハグワール・D・サウロの顔に抱きつき、長い別離の後の再会を表す。
収録話ではロキ、スコッパー・ギャバン、神の騎士団も大きな役割を持つが、完成した表紙は巨人族の友人と再会の明るさを中心に選んでいる。物語後半の敵対者を一覧化した表紙ではない。
表紙見返し、背表紙、カバー下にも別の図版があり、表紙だけを「第112巻の全イラスト」としない。スタンセンの顔の傷など、本文設定画とカバー図版の細部に差がある箇所は、印刷版を確認して注記する。
収録話一覧
| 話数 | 日本語題 | |---:|---| | 第1134話 | フクロウの図書館 | | 第1135話 | 友の盃 | | 第1136話 | 太陽を待つ国 | | 第1137話 | シャムロック登場 | | 第1138話 | 神典(ハーレイ) | | 第1139話 | 山喰らい | | 第1140話 | スコッパー・ギャバン | | 第1141話 | 歳上の女 | | 第1142話 | わたしのこわいもの | | 第1143話 | 神の騎士団 | | 第1144話 | 戦士の時間 |
第111巻は第1133話までを収録し、ロビンとサウロが互いの生存を確かめる再会で一区切りとなった。第112巻は再会後の会話と島の案内から始まり、第1144話の火災・怪物・誘拐への対応で終わる。次巻へ続くため、神の騎士団との対立は本巻内で決着しない。
第1134話「フクロウの図書館」
ロビンはオハラから運び出された文献が収められたフクロウの図書館を訪れる。小さな人間用の本は、図書館の仕組みによって巨人が読める大きさへ変わる。焼失したオハラの知識が、サウロと巨人たちの手で海を越え保存されたことが具体的な施設として示される。
一方、エルバフの城内には魔法陣のような経路から二人の侵入者が現れる。島の住民が麦わらの一味を歓迎する表側と、気づかれないまま侵入が始まる裏側が並行する。再会の余韻だけでは終わらず、世界政府側の行動へ切り替わる起点である。
第1135話「友の盃」
麦わらの一味はドリー、ブロギー、新巨兵海賊団をはじめ、過去に出会った巨人たちから歓迎を受ける。盃と宴は、リトルガーデン、エニエス・ロビー、ドレスローザなど別々の物語で結ばれた縁がエルバフで集まったことを示す。
同時に、巨人族の子どもたちが戦いだけを価値としない教育を受けていること、かつての戦士文化と現在の生活の間に変化があることも見える。エルバフを「戦闘好きの巨人だけが暮らす島」と単純化できなくなる。
第1136話「太陽を待つ国」
エルバフで語られる太陽の神は、話者や時代によって像が一致しない。解放をもたらす神、破壊を伴う存在、戦士が待つ象徴など、複数の伝承が重なる。ルフィの能力と「ニカ」を知る読者にとっても、巨人族がどこまで同じ存在を語っているかは確定していない。
冥界で拘束されたロキは、自分こそ太陽の神だと名乗る。王殺しの罪、伝説の悪魔の実、シャンクスとの因縁が語られる一方、本人の主張と島民の証言には隔たりが残る。本巻は答えを一度に示さず、後の回想へ疑問を渡す。
第1137話「シャムロック登場」
侵入者の一人はフィガーランド・シャムロックであり、神の騎士団の立場からロキへ接触する。赤い髪とシャンクスに似た顔を持つが、同一人物の変装ではない。フィガーランド家との関係を含め、シャンクスの出生へ新しい情報を加える人物である。
シャムロックはエルバフを世界政府の側へ従わせるため、強大なロキを神の騎士団へ勧誘する。ロキは拘束されていても力と影響力を失っておらず、敵側に加われば島の内部から状況を変えられる存在として見られている。
第1138話「神典(ハーレイ)」
巻題となった第1138話では、エルバフの「神典(ハーレイ)」と古い壁画が示される。そこでは世界が複数の段階を経て破壊され、人々が太陽を求める歴史・予言のような言葉が語られる。
文章と壁画は情報量が多いが、現代の人物や事件へ一対一で対応する答え合わせは作中で提示されない。「第一世界」「第二世界」「第三世界」に相当する記述が、空白の100年、古代兵器、ニカ、現在の世界のどれを指すかは考察段階である。単行本記事では全文の意味を確定させず、確認できる図像・語句と解釈を分ける。
第1139話「山喰らい」
巨人族の歴史と強者の逸話が語られる中、エルバフに長く暮らす人物の存在が前面へ出る。「山喰らい」という題は、島の規模にふさわしい戦闘・伝説の大きさを示し、次話で正体が明示される人物への導入になる。
ルフィはロキを解放する鍵を探し、仲間の宴から離れて行動する。ロキがシャンクスの居場所を知るかもしれないという期待が、危険を承知で鍵へ近づく理由になる。
第1140話「スコッパー・ギャバン」
古城でルフィの前に現れたのは、元ロジャー海賊団のスコッパー・ギャバンだった。海賊王の船でゴール・D・ロジャー、シルバーズ・レイリーと並んだ古参が、エルバフで生活していたことが判明する。
ロキの錠を開ける鍵はギャバンが持つ。ルフィが四皇になったことだけでは無条件に渡さず、力と判断を試す。ロジャー時代を知る人物が、過去の説明役だけでなく、現在のエルバフの安全に責任を持つ立場で登場する。
第1141話「歳上の女」
ギャバンと巨人族のリプリー、二人の子コロンの家族関係が示される。人間と巨人では寿命も成長の尺度も大きく異なるため、年齢差を単純な外見で判断できない。巻題の「歳上の女」は、その種族差を踏まえた関係へ焦点を当てる。
ギャバンの戦歴だけでなく、海賊団解散後にどこで誰と暮らしたかが初めて具体化する。エルバフはロジャー海賊団の過去と麦わらの一味の現在を結ぶ場所にもなる。
第1142話〜第1144話――子どもを狙う作戦
神の騎士団は、正面から巨人の戦士全員を倒すだけでなく、子どもたちの恐怖を利用して島を屈服させようとする。能力によって子どもが恐れるものが具現化し、学校と周辺は怪物、混乱、火災に襲われる。敵の目的は戦闘の勝利だけでなく、次世代を人質としてエルバフ全体へ服従を迫ることにある。
第1143話では神の騎士団の編成と行動がさらに明らかになり、第1144話では巨人たちが怪物への反撃と救助へ動く。フランキー、リプリー、リリス、ボニーらがいる科学施設側にも攻撃が及び、島内の複数地点が同時に危機へ入る。
第1144話「戦士の時間」は、平和的な教育を受ける子どもと、戦士として島を守る大人を対置する。戦う文化をやめるか続けるかという二択ではなく、誰を守るために力を使うかが問われる。戦闘は次巻へ続き、本巻内では子どもの救出も侵入者の排除も完了しない。
表紙連載
収録話の扉では、「鬼の子ヤマトの金稲荷代参」が継続する。ヤマトがワノ国各地を巡り、誘拐事件や各地の変化を追う表紙連載である。エルバフ本編とは別の場所・時間で進むため、本編コマとして連続させない。
単行本では週刊掲載時の扉絵をまとめて読めるが、第112巻だけで表紙連載全体は完結しない。各回番号、登場人物、場所を記録し、前巻・次巻の扉絵へ接続する必要がある。
SBSで明かされた情報
第112巻のSBSでは、読者の質問に答える形で本編外の設定が追加された。主な項目には、ロジャー海賊団の主要船員の役職、ギル・バスターとロックス海賊団の関係、ドスンダダ族に関する説明などがある。
ロジャー海賊団では、船長ロジャー、副船長レイリーに続き、ギャバンの役職を含む複数の船員情報が整理される。本編の短い登場だけでは判断できなかった役割を、公式回答として補う資料である。
ただし、SBSの遊びの質問、擬人化、読者投稿と、物語世界の確定設定は表示を分ける。転載された非公式翻訳では固有名詞や役職が揺れるため、日本語版第112巻の誌面を正本にする。
単行本での修正と付録ページ
週刊少年ジャンプ掲載版から単行本化する際、台詞の誤字、衣装の模様、背景や人物の細部が修正されている。第1134話ではサウロの台詞表記と、子どもの衣装模様などに修正が確認される。意味が変わる修正と作画上の統一を分け、ページ単位で比較する。
巻末には「ウソップギャラリー海賊団」が収録され、読者投稿イラストが掲載される。公式サイトの112巻ギャラリーでは、印刷版に掲載された作品の一部をカラーで閲覧できる。これも原作本編の図版ではなく、読者参加企画として区分する。
第112巻の位置づけ
第111巻がエルバフ到着と再会を描いた巻なら、第112巻は島の知識と危機を同時に開く巻である。フクロウの図書館はオハラの記憶を保存し、神典と壁画は世界の過去を示し、ギャバンはロジャー時代を現在へつなぐ。一方、神の騎士団はその知識と自由を守る島へ、子どもを狙う形で侵入する。
題名の「神典」は、巻の全事件を説明する答えではない。太陽の神を待つ巨人族、太陽の神を名乗るロキ、ニカの力を持つルフィ、世界政府の「神」を名乗る側の騎士団が同じ巻に置かれ、「神」という言葉の意味が複数へ分かれる。
再会の喜びを描いた表紙と、後半の誘拐・火災の落差も重要である。エルバフを長年待ち望んだ冒険の目的地として見せた直後、その歴史と子どもを標的にする敵を入れることで、観光的な島紹介から物語の主要対立へ移行する。
関連項目
- 第111巻「エルバフの冒険」
- 第113巻「ロキ誕生」
- エルバフ編
- エルバフ
- 神典(ハーレイ)
- フクロウの図書館
- ハグワール・D・サウロ
- ニコ・ロビン
- ロキ
- 神の騎士団
- フィガーランド・シャムロック
- マンマイヤー・軍子
- スコッパー・ギャバン
- 新巨兵海賊団
- 宝樹アダム
- リプリー
- コロン
- ベガパンク「悪」リリス
- ジュエリー・ボニー
- ロジャー海賊団
- オハラ


