04ストーリー解説
第4使徒シャムシエルとの激闘の後、碇シンジは誰にも告げずミサトの部屋を出て行方をくらます。学校にも姿を見せず、ただSDATで25番と26番の曲を繰り返し聴きながら、第3新東京市の電車を乗り継ぎ、あてもなく街をさまよい続ける。戦いに友人を巻き込み傷つけてしまった罪悪感と、エヴァに乗ることへの強い拒絶感が、彼を逃避へと駆り立てていた。
ネルフ本部では、特務機関の監視員(セクション2)がシンジの居場所を逐一報告し、画面には逃亡からの経過時間が刻々と表示されていく。ミサトとリツコは彼を強制的に連れ戻すか議論するが、ミサトは「今は本人に考えさせる」として手を出さず泳がせる方針をとる。ここでリツコは、近づきたいのに傷つけ合う人間関係を「ヤマアラシのジレンマ」に喩えてみせる。

シンジは映画館に紛れ込んで眠り、夜の街でカップルや家族連れを遠目に眺め、始発が動くまで駅のベンチで時間を潰す。耳元では戦闘中に浴びせられた言葉や父ゲンドウへの思いが何度もよみがえる。誰とも深く関われない自分の孤独を噛みしめながら、彼は二日以上にわたって都市の片隅を漂い続けるのだった。
やがて郊外の山あいへ足を向けたシンジは、ひとりでキャンプをしていたクラスメイトの相田ケンスケと偶然出くわす。ミリタリーマニアのケンスケはテントや装備を広げて本格的に野営しており、行き場をなくして立ち尽くすシンジを「泊まってけよ」と気さくに自分の野営地へ招き入れる。

焚き火を囲んだ夜、ケンスケは戦争や兵器への憧れを熱く語り、エヴァのパイロットであるシンジを心底うらやむ。「男なら戦わなきゃ」「傷ついてでも俺は乗りたい」と無邪気に言い放つケンスケの言葉は、戦いを厭うシンジの胸に複雑に突き刺さる。シンジはほとんど何も語らず、ただ黙って夜を明かす。
翌朝、黒いスーツ姿のセクション2の男たちが野営地を取り囲み、シンジを無言で確保する。突然の事態にケンスケは状況をのみ込めぬまま見送り、シンジは抵抗することもなく連行されていく。誰にも告げずに始まった短い逃避行は、こうしてあっけなく終わりを迎えるのだった。

連れ戻されたシンジに、ミサトは叱責ではなく選択を迫る。エヴァに乗り続けるのか、それとも降りて街を去るのか——自分で決めろと突きつけるのだ。互いに逆方向へと動く駅のエスカレーターですれ違う二人の構図が、近づきたいのに距離を測りかねる、ぎこちない関係を象徴的に映し出す。
一度はパイロットをやめて第3新東京市を去る決意を固めたシンジは、荷物を手に駅のホームへ立ち、電車の発車を待つ。長い待ち時間の中で、彼はミサトやエヴァ、そして自分の居場所について改めて思いをめぐらせ、本当にこの街を出ていくのか、最後の決断を下そうとする。

結局シンジは街を去らず、ミサトの待つ部屋へと戻ってくる。彼が小さく「ただいま」と口にすると、ミサトは「おかえりなさい」と静かに迎える。逃げ出した少年が、自分自身の意思で帰る場所を選び、再びエヴァに乗ることを受け入れる——その小さな一歩を描いて、物語は幕を閉じる。


