『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995年10月から1996年3月にかけてテレビ東京系列で全26話が放送された、GAINAX 制作・庵野秀明総監督によるオリジナルテレビアニメーションである。「使徒」と呼ばれる謎の生命体に対抗するため作られた汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンに、14歳の少年少女がパイロットとして搭乗するという基本骨格を持ちつつ、シリーズ後半に向けて主人公・碇シンジの内面と他者との関係性、そして「人類補完計画」をめぐる形而上学的なテーマへ深く踏み込んでいく。後にここから旧劇場版2作 (1997) と新劇場版4部作 (2007〜2021) という二つの完結が枝分かれする、エヴァンゲリオン・シリーズの原点である。
あらすじ
西暦2000年9月13日、南極で発生した大災害「セカンドインパクト」によって人類の半数が失われた世界。それから15年後の2015年。中学生・碇シンジは、3年ぶりに父・碇ゲンドウから呼び出され、第3新東京市にやって来る。そこは特務機関 NERV (ネルフ) の本拠地であり、ゲンドウは NERV 総司令として、襲来する謎の敵「使徒」に対抗する汎用人型決戦兵器・エヴァンゲリオン初号機の起動実験を進めていた。第3使徒サキエルが迫る中、シンジは父から「エヴァに乗れ」と告げられる。同年代の少女・綾波レイが負傷した状態で運び込まれてくるのを見たシンジは、半ば追い詰められるように初号機のパイロット (チルドレン) となる。
第3新東京市での生活の中で、シンジは作戦部長・葛城ミサトの保護のもと、レイ、そして後にドイツから来日する惣流・アスカ・ラングレーと共に、次々と襲来する使徒を撃退していく。だが物語が後半に入ると、使徒との戦いは単なる怪獣バトルではなく、NERV の上部組織 SEELE (ゼーレ) が推進する「人類補完計画」の駒であったことが徐々に明らかになっていく。第24話で渚カヲルという第17の使徒=最後の使徒との出会いと別離を経て、第25話・第26話では使徒戦の物語表面を一旦離れ、登場人物たちの内面と「他者と関わるとは何か」「自己とは何か」という問いへと舞台を移し、TV版独自の結末を迎える。
全26話 サブタイトル一覧
『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズは、第壱話「使徒、襲来」から最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」まで、漢数字 (壱・弐・参…) で表記される独特の話数表記を用いる。各話には日本語のサブタイトルとは別に英語サブタイトルが付されており、英語タイトルは精神医学・哲学・聖書・既存作品からの引用を含む二重構造になっている。
| 話数 | 日本語サブタイトル | 英語サブタイトル |
|---|---|---|
| 第壱話 | 使徒、襲来 | ANGEL ATTACK |
| 第弐話 | 見知らぬ、天井 | THE BEAST |
| 第参話 | 鳴らない、電話 | A transfer |
| 第四話 | 雨、逃げ出した後 | Hedgehog's Dilemma |
| 第伍話 | レイ、心のむこうに | Rei I |
| 第六話 | 決戦、第3新東京市 | Rei II |
| 第七話 | 人の造りしもの | A HUMAN WORK |
| 第八話 | アスカ、来日 | ASUKA STRIKES! |
| 第九話 | 瞬間、心、重ねて | Both of You, Dance Like You Want to Win! |
| 第拾話 | マグマダイバー | MAGMADIVER |
| 第拾壱話 | 静止した闇の中で | The Day Tokyo-3 Stood Still |
| 第拾弐話 | 奇跡の価値は | She said, "Don't make others suffer for your personal hatred." |
| 第拾参話 | 使徒、侵入 | LILLIPUTIAN HITCHER |
| 第拾四話 | ゼーレ、魂の座 | WEAVING A STORY |
| 第拾伍話 | 嘘と沈黙 | Those women longed for the touch of others' lips, and thus invited their kisses. |
| 第拾六話 | 死に至る病、そして | Splitting of the Breast |
| 第拾七話 | 四人目の適格者 | FOURTH CHILDREN |
| 第拾八話 | 命の選択を | AMBIVALENCE |
| 第拾九話 | 男の戰い | INTROJECTION |
| 第弐拾話 | 心のかたち 人のかたち | WEAVING A STORY 2: oral stage |
| 第弐拾壱話 | ネルフ、誕生 | He was aware that he was still a child. |
| 第弐拾弐話 | せめて、人間らしく | Don't Be. |
| 第弐拾参話 | 涙 | Rei III |
| 第弐拾四話 | 最後のシ者 | The Beginning and the End, or "Knockin' on Heaven's Door" |
| 第弐拾伍話 | 終わる世界 | Do you love me? |
| 第弐拾六話 | 世界の中心でアイを叫んだけもの | Take care of yourself. |
出典: テレビ東京系放映時データ / Wikipedia「新世紀エヴァンゲリオン」/ Evangelion Wiki。サブタイトル表記は当時の TV テロップに準拠。
制作背景 — GAINAX とタツノコプロの共同制作
『新世紀エヴァンゲリオン』の企画は、『ふしぎの海のナディア』(1990-91, NHK) を完成させた後の GAINAX が、自社オリジナルの長編 TV シリーズを再び手掛けるべく1994年から本格化させた。1994年4月の段階で外部企画書 (通称「企画書 第一稿」) が完成し、同年6月には GAINAX のファン会報および GAINAX-NET 上で新作アニメーションの存在が告知されている。制作は GAINAX 単独ではなく、タツノコプロが共同制作スタジオとして加わる体制で行われた。これは作画ローテーションと予算規模を確保するための判断であり、結果として『エヴァ』は GAINAX 作品でありながらタツノコプロのクレジットも併記されるという、当時としても珍しい形になった。
当初の構想と最終的な放送内容との間には大きな差異がある。企画段階では「明るく前向きな少年少女がロボットに乗って使徒を倒す物語」というスーパーロボットアニメの王道に近い形が想定されていたが、放送が進むにつれ庵野秀明の作家的関心が前面に出る形でテーマがシフトしていき、後半は主人公シンジの内省と「他者を恐れる心」の解剖に重心が移った。終盤2話、第25話「終わる世界」と第26話「世界の中心でアイを叫んだけもの」は、予算と時間の制約、そして庵野自身の作劇方針の双方が原因となり、過去映像と静止画・モノローグを多用した実験的な構成となった。この終盤の手法こそが直後の旧劇場版2作 (1997) の制作動機につながっていく。
主題歌・音楽
オープニング主題歌「残酷な天使のテーゼ」は、高橋洋子の11枚目のシングルとして1995年10月25日にスターチャイルド (キングレコード) から発売された。作詞は及川眠子、作曲は佐藤英敏、編曲は大森俊之。第壱話の放送開始とほぼ同時にリリースされ、放送終了後も長期にわたってカラオケランキングの上位を占め続け、JASRAC が発表した「平成全期間の著作物使用料分配ランキング」でも全楽曲中の上位に位置する、平成日本を代表するアニメ主題歌となった。
エンディングテーマは「FLY ME TO THE MOON」。Bart Howard 作曲のジャズスタンダードを、各話ごとに異なる歌手・異なるアレンジで使用するという当時のアニメとしては異例の形が採られた (CLAIRE 版を中心に複数のヴォーカリスト・複数のアレンジバリエーションが存在する)。本編劇伴は鷺巣詩郎が担当し、「THE BEAST」「ANGEL OF DOOM」「DECISIVE BATTLE」など多数のサウンドトラック楽曲は、後の旧劇場版・新劇場版にも再編・再録の形で受け継がれていく。
放送と反響 — 低視聴率から社会現象へ
関東地区の平均視聴率は約7.1%、最高視聴率は約10.3% (ビデオリサーチ調べ) と、ゴールデンタイムの作品としては決して高い数字ではなかった。しかし放送と並行してパソコン通信 (NIFTY-Serve・PC-VAN) を中心としたファンコミュニティで本作の解釈と議論が爆発的に拡散し、放送終了直後から関連商品の売上、再放送視聴率、ビデオ・LD の販売本数が急上昇していく。1990年代中盤の日本における第3次アニメブームの中心的作品として位置づけられ、テレビアニメが社会現象として一般メディアに大きく取り上げられる契機となった。
終盤2話で描かれた抽象的・内省的な結末については、放送当時から賛否が大きく分かれた。「これは制作上の苦肉の策に過ぎないのではないか」という声と、「TV シリーズ全体のテーマからすればこの結末こそが正解だ」という声が並走し、その議論自体が次なる劇場版『シト新生』『THE END OF EVANGELION』(共に1997) の存在意義を生み出すことになる。
テーマ — 他者を恐れる心と「補完」
シリーズを貫くテーマは大きく分けて二つある。一つは「自我境界 (A.T.フィールド) を持つ個と個が、いかにして他者と関わるか」という極めて心理学的なテーマであり、ヤマアラシのジレンマ (第4話タイトル「Hedgehog's Dilemma」) として早い段階で明示される。シンジ、レイ、アスカ、ミサト、リツコ、ゲンドウら主要登場人物はそれぞれ別種の対人不安と欠落を抱えており、物語はその欠落が癒される/抉られるサイクルとして進む。
もう一つはより形而上学的なテーマで、SEELE と碇ゲンドウが推進する「人類補完計画」をめぐるものだ。A.T.フィールドを失った人類全体を単一の生命体として「補完」しようとするこの計画は、表面的には進化論的な飛躍を装いつつ、その実態は登場人物たちの個人的願望 (とくに碇ゲンドウの) の投影でもある。第25話・第26話は、使徒戦という表層を一度剥がしてこのテーマだけを集中的に描いた回であり、後の旧劇場版・新劇場版すべてがここで提示された問いへの異なる回答として読み直せる構造になっている。
評価と後年への影響
放送終了直後から現在に至るまで、本作は日本のテレビアニメ史を語る上で外すことのできない作品として位置づけられている。文化庁メディア芸術祭、アニメ雑誌『ニュータイプ』のアニメオブザイヤー、各種ファン投票で軒並み上位を獲得し、2010年代以降の各種「歴代アニメ ベスト」企画でも常連となっている。海外でも、2019年に Netflix が世界190か国で本作 TV シリーズおよび旧劇場版 EoE の配信を開始したことで、改めて新たな観客層を獲得した。
後続作品への影響も計り知れない。「世界を救うために巨大ロボットに乗らされる少年少女」「内省を主軸に置くロボットアニメ」「セカイ系」と総称される作劇傾向のひな型として、2000年代以降のテレビアニメ・ライトノベル・ゲームに広く受け継がれた。庵野秀明はその後、株式会社カラーを設立して新劇場版4部作 (2007〜2021) を作り直し、2021年の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で自身の手でシリーズを完結させている。
主要登場人物 — チルドレン、NERV、SEELE
本作の登場人物は大きく三つのグループに分かれる。第一に「チルドレン」と呼ばれるエヴァパイロット世代。第3チルドレン碇シンジ (CV: 緒方恵美) は本作の主人公で、内向的だが他者からの承認に過敏に反応する14歳の少年。第1チルドレン綾波レイ (CV: 林原めぐみ) はゼロ号機パイロットで、感情の起伏に乏しく自我境界が希薄なまま物語に登場し、その出自そのものが大きな伏線となる。第2チルドレン惣流・アスカ・ラングレー (CV: 宮村優子) は弐号機パイロット。ドイツ支部から来日した自尊心の高い少女で、第8話「アスカ、来日」から本格的に物語に加わる。
第二に NERV (ネルフ) の大人たち。作戦部長葛城ミサト (CV: 三石琴乃)、技術開発局技術部一課課長赤木リツコ (CV: 山口由里子)、特殊監査部からの調査官加持リョウジ (CV: 山寺宏一)、そして NERV 総司令にしてシンジの実父碇ゲンドウ (CV: 立木文彦) と副司令冬月コウゾウ (CV: 清川元夢)。第三に NERV の上部組織として人類補完計画を推進するSEELE (ゼーレ) の老人たちと、第24話で第17の使徒として登場する渚カヲル (CV: 石田彰) — 各人物の詳細は エヴァンゲリオン登場人物 から順次掘り下げていく。
配信状況 (2026年5月時点)
2026年5月時点で確認できる主な配信状況は以下の通り (各サービスの配信権は随時変動するため、視聴前に公式情報の再確認を推奨)。
- Netflix — TVシリーズ全26話 + 旧劇場版 (DEATH(true)² / Air・まごころを、君に) を見放題で配信。2019年の世界配信開始以降の継続配信。
- Amazon Prime Video — 主に新劇場版4部作 (序・破・Q・シン・エヴァ) を見放題で配信。TVシリーズの単話購入も提供。
- U-NEXT / DMM TV / dアニメストア / Hulu / バンダイチャンネル / FOD プレミアム / Lemino — TVシリーズおよび関連劇場版を見放題または都度課金で配信。
4K リマスター版の単独配信については、2026年5月時点で公式からの一般向けアナウンスは確認できていない。最新の劇場上映・配信告知は エヴァンゲリオン公式ポータルおよび株式会社カラー公式 (khara.co.jp) の確認を推奨する。
関連作品 — TVシリーズから先へ
TV シリーズを観終わった後の進路は大きく二本に分かれる。一本は 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』 (1997) と 『THE END OF EVANGELION』 (1997) の旧劇場版2作で TV 版の続きを観るルート。もう一本は 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 (2007) から始まり、『破』 (2009)、『Q』 (2012)、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 (2021) と続く新劇場版4部作ルートである。観る順番の詳細は エヴァンゲリオン観る順番ハブ で整理している。
本ページの主な参考資料
本ページに記載した事実は、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を WebSearch / WebFetch で参照して記述している。記述の現状は2026年5月時点であり、配信状況等は随時更新する。