『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』は、2007年9月1日に公開されたアニメ映画で、新劇場版4部作の第1作である。汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンに搭乗する少年少女が、次々と襲来する使徒との戦いに臨む姿を描く。テレビ版の序盤を再構築した内容で、庵野秀明が設立した株式会社カラーによる新たなエヴァンゲリオン・プロジェクトの起点に位置づけられる作品である。
00序
2007年9月1日に公開された新劇場版4部作の第1作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を、Wookieepedia 級の密度で解説する。TV版冒頭の使徒戦からどこが変わったのか、株式会社カラー設立に至る経緯、ver.1.0 と ver.1.11 の違い、主題歌「Beautiful World」、興行成績、受賞歴、配信状況、そして続編『破』への接続まで——その全貌を一本にまとめる。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』は、2007年9月1日に公開された新劇場版4部作 (Rebuild of Evangelion) の第1作である。庵野秀明が GAINAX から独立し、2006年5月に新たに立ち上げた株式会社カラーが制作を手がけ、シリーズを一から組み直す Rebuild 計画の入口を担った。本編はTV版第壱話「使徒、襲来」から第六話「決戦、第3新東京市」までの使徒戦を下敷きに、新規カットを大量に加え、フルデジタル工程で作画を全面的に磨き直している。上映時間は劇場公開版 ver.1.0 が98分、再編集の ver.1.11 が101分。総監督・原作・脚本を庵野秀明、監督を摩砂雪と鶴巻和哉、キャラクターデザインを貞本義行、メカニックデザインを山下いくと、音楽を鷺巣詩郎が担い、主題歌には宇多田ヒカル「Beautiful World」(2007-08-29 リリース) が起用された。配給はクロックワークスとカラー、宣伝協力は日活。興行収入20.0億円、公開105館・観客動員150万人を記録し、第31回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞、第13回アニメーション神戸 作品賞、2008年東京アニメアワードと、アニメーション映画の主要賞を立て続けに射止めた。
あらすじ
セカンドインパクトから15年後の西暦2015年。国連直属の特務機関NERVが拠点を置く第3新東京市に、父・碇ゲンドウから一方的に呼び出された14歳の少年・碇シンジが降り立つ。彼を待っていたのは、巨大人型兵器エヴァンゲリオン初号機への搭乗命令だった。同じころ、第4の使徒(TV版第3の使徒「サキエル」に相当)が市街地に侵攻しており、シンジは父との確執と恐怖を抱えながら初号機に乗り込む。本作が描くのは、この初出撃と、続く第5の使徒(シャムシエル相当)、第6の使徒(ラミエル相当)との戦いまでだ。クライマックスは陽電子砲を用いた『ヤシマ作戦』。TV版第六話「決戦、第3新東京市」をフルデジタル工程で全面リメイクした、本作を代表する戦闘シーンである。
TV版冒頭6話との差分
新劇場版の1作目という性格から、本作はしばしば「TV版冒頭をそのまま作り直した作品」と誤解される。だが、その内容には意図的な差分がいくつも組み込まれている。まず視覚面。第3新東京市の都市デザインはTV版より高密度で近未来的に拡張され、エヴァと使徒の戦闘シーンも全面的にフルデジタルのCG合成へと一新された。物語面でも違いは大きい。TV版ではやや散漫だった話数の情報が圧縮され、シンジとゲンドウの確執、ミサトとシンジの関係づくり、レイの「人形めいた在りよう」が、冒頭6話ぶんのテンポでより明快に提示される。使徒の通し番号も新劇場版独自の体系へ置き換えられ(TV版の第3使徒サキエルが、新劇場版では第4の使徒となる)、観客には「これは同じ話の再放送ではない」というシグナルが繰り返し送られている。
細部の差分として、ja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」が指摘するものを2点挙げたい。第一に、TV版第壱話で第3使徒サキエルの攻撃を受け、NERV本部が損傷する場面。無人状態の初号機がシンジを落下物から自発的に庇う、あの有名な描写が、本作では削除されている。第二に、リリスの位置づけが大きく変更された点だ。TV版や旧劇場版では、NERV本部地下のリリスは長らく秘匿された存在として描かれていた。ところが本作では、葛城ミサトたちがヤシマ作戦の前段階で既に「あの磔刑のものは使徒リリスである」と把握しており、シンジにも比較的早い段階で明かされる。これらは単なる演出変更ではない。新劇場版独自の世界線では、情報の流れも組織内の力学も旧シリーズとは異なる——そう示すための布石として機能している。
劇場公開版(ver.1.0、98分)は2007年9月1日に公開された。その後、新作カットの追加、台詞修正、CG修正を加えた ver.1.11(101分)が、2009年5月27日にDVD・Blu-ray化されている。続編『破』へとつながる「予告編」(ver.1.11 末尾の次回予告)も、この段階で追加された。以後の配信版・地上波放送版でも、基本的に ver.1.11 が採用されている。
ver.1.0
本作には公式に3つのバージョンが存在し、ファンの間でしばしば混同される。ここでは一次情報であるja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」に基づき、それぞれの位置づけを整理しておきたい。
つまり「劇場で観た98分」「DVDで観た98分」「BD・配信で観る101分」の3種が併存しており、観た媒体によってシーン構成が微妙に異なる。これが本作の特徴である。新劇場版の他の3作、『破』のver.2.22、『Q』のver.3.33およびver.3.333、そして『シン・エヴァ』も同じくバージョン管理されている。公開後も改訂を重ねるというシリーズ全体を貫く制作姿勢は、まさに本作を起点に生まれたものだといえる。
制作背景
庵野秀明は2006年5月、自身の名義で新たなアニメーション制作スタジオ、株式会社カラー(khara)を設立した。設立の主目的のひとつが、エヴァンゲリオン・シリーズを一から作り直す「Rebuild」計画の遂行である。当初は4部作のうち1作目から3作目までを比較的短い間隔で公開し、最終作のみ遅れて世に出す構想だったが、ふたを開けてみれば『序』(2007)、『破』(2009)、『Q』(2012)、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)と、14年に及ぶ長期プロジェクトへと姿を変えていく。1作目『序』はカラーにとって初の長編劇場作品であり、フルデジタル制作に社外スタッフも加えた大規模な布陣(作画監督に松原秀典・黄瀬和哉・奥田淳・森山雄治・貞本義行)で臨んだ。この一作が、その後のRebuild計画全体を支える技術的・組織的な雛形を築き上げる役割を担ったのである。
主要スタッフ詳細
本作には作画監督陣のほかにも、のちのエヴァ新劇場版や庵野作品を語るうえで欠かせないスタッフが数多く参加している。一次情報(ja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のスタッフ欄)をもとに、主要な担当者を整理しておきたい。
なかでも樋口真嗣は、同期世代の盟友として庵野作品に足繁く参加するスタッフであり、本作以降も『シン・ゴジラ』(2016)、『シン・ウルトラマン』(2022)と庵野チームに帯同していく。京田知己も『交響詩篇エウレカセブン』(2005-06)の監督として知られるアニメ監督で、新作カットのコンテとして合流した。色彩設計の菊地和子、撮影監督の福士享、編集の奥田浩史は、以後の新劇場版4部作、そして『シン・エヴァ』(2021)に至るまで、Rebuild シリーズの映像クオリティを支え続けるコアスタッフとなっていく。
主題歌・音楽
主題歌は宇多田ヒカルの書き下ろし楽曲「Beautiful World」。本作の公開直前、2007年8月29日に配信限定シングルとして先行リリースされ、同年11月にはカップリングの「Kiss & Cry」と組んだ両A面シングル『Beautiful World/Kiss & Cry』としてフィジカル発売された。劇中音楽はTVシリーズ・旧劇場版に続いて鷺巣詩郎が手がけている。TV版で印象的だった「DECISIVE BATTLE」「EM20」「Angel Attack」といった劇伴をそのまま生かしつつ、新劇場版用に再録・拡張された大編成オーケストラ曲を新たに加えた。後の『シン・エヴァ』(2021)では「Beautiful World (Da Capo Version)」がもうひとつのテーマ・ソングとして改めて使われており、宇多田ヒカルと新劇場版の協業は本作で始まり、シリーズ完結まで続いていくことになる。
興行成績と受賞
本作は2007年9月1日、全国105館で公開され、最終的に興行収入20.0億円・観客動員150万人を記録した。1990年代のTVシリーズと旧劇場版の人気が、そのまま劇場アニメへと受け継がれたことを示す数字である。ここで築かれた興行的基盤の上に、続編『破』(2009、興行40億円)、『Q』(2012)、『シン・エヴァ』(2021、興行102.8億円) と続く新劇場版4部作が成立していった。封切り当初の上映規模は85館だったが、公開後にメイン劇場が新宿ミラノ1 (1024席) へと変更され、最終的に105館まで拡大した経緯がある。公開後最初の週末2日間で観客動員23万6,158人・興行収入2億8,000万円を記録し、初登場1位を獲得。その後もロングラン上映が続き、150万人・20.0億円に到達した。受賞歴の正確な内訳は以下の通りである。
商業面・批評面のいずれにおいても、新劇場版1作目として成功裏に着地した作品である。
海外公開とソフト展開
本作は日本国内で公開された後、複数の国際市場へと展開された。一次情報(ja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」海外公開節)に基づき確認できる主な公開状況は、以下の通りである。
北米のソフトおよび配信権はファニメーション(FUNimation Entertainment)が取得し、ver.1.01を2009年11月17日、ver.1.11を2010年3月9日にそれぞれソフト発売した。北米市場ではこのver.1.11が長らく流通版となり、2010年代後半以降のストリーミング配信(北米Amazon Prime VideoやNetflixなどへの権利移動を含む)も、このver.1.11マスターを基準に展開されている。新劇場版4部作の北米英語吹替版が、単一の配給ライン(まずはファニメーション、後年はAmazonが新劇場版の独占配信権を取得)で一貫して提供された。このことが、後年のシリーズの海外でのプレゼンス確立に大きく寄与している。
登場使徒の詳細
本作には、新劇場版独自の通し番号体系にもとづく計4体の使徒が登場する(TV版・旧劇場版とは番号が1ずつズレている点に注意したい)。各使徒のデザイン継承元、特徴、そして撃破手段は以下の通りである。
使徒の通し番号は新劇場版独自のもので、TV版・旧劇場版で「第n使徒」と呼ばれていた個体は、本作以降「第n+1の使徒」と呼ばれるのが基本ルールだ。サキエル、シャムシエル、ラミエルといった固有名は本作以降の劇中で明示的に呼ばれることはなく、もっぱら「第nの使徒」という通し番号で扱われる。各使徒の位置づけや神話的由来については、用語ページ「使徒」も参照されたい。
リバイバル上映
本作は劇場公開後も、節目ごとにリバイバル上映が重ねられてきた。確認できる主なリバイバル上映は以下の通りである。
2026年現在も、新劇場版4部作はこうした節目の上映企画に加え、Amazon Prime Video での見放題配信、地上波放送、各種BDボックスを通じて繰り返し親しまれている。なかでも本作 ver.1.11 はその出発点であり、いまなお現役の劇場体験コンテンツとして輝きを失っていない。
主要登場人物
新劇場版の第1作にあたる本作は、TV版以来12年ぶりに主要キャラクターを劇場のスクリーンへと帰還させる。碇シンジ (CV: 緒方恵美) は、冒頭の第3新東京市到着から初号機初出撃に至るまでを通じ、シリーズを象徴する14歳の少年として改めて描かれる。綾波レイ (CV: 林原めぐみ) は、包帯姿の痛々しい描写からゲンドウとの関係まで、第六話 (ヤシマ作戦) を経てシンジとの距離が変わっていく一連の流れが凝縮して描かれる。葛城ミサト (CV: 三石琴乃) はシンジを引き取り作戦の指揮を執る NERV 作戦部長として、碇ゲンドウ (CV: 立木文彦) は司令としての姿で登場する。渚カヲル (CV: 石田彰) はラストの月面シーンに短く姿を見せ、続編『破』へと物語を繋ぐ。赤木リツコ (CV: 山口由里子) と冬月コウゾウ (CV: 清川元夢) も、TV版から引き続き同じ役で出演している。各キャラクターの詳細は エヴァンゲリオン登場人物 から順に掘り下げていきたい。
配信状況
2026年5月時点で確認できる主な配信状況は以下の通り(配信権は随時変動するため、視聴前に公式情報を改めて確認することをすすめたい)。なお、Netflixで見放題となるのはTVシリーズと旧劇場版であり、新劇場版4部作についてはNetflixでの見放題提供は2026年5月時点で確認されていない。
関連作品
本作の前日譚にあたるのは、内容的にはTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96)、そして旧劇場版2作『シト新生』(1997-03)と『THE END OF EVANGELION』(1997-07)である。新劇場版は旧シリーズの直接の続編ではなく、株式会社カラーが別ルートで再構築したものだ。本作以降は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)、『:Q』(2012)、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)と続き、完結を迎える。観る順番の整理はエヴァンゲリオン観る順番ハブを参照されたい。
本ページの主な参考資料
本ページに記載した事実は、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を WebSearch / WebFetch で参照して記述している。記述の現状は2026年5月時点。
追加参照: ja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(2026-05-23 WebFetch: 公開館85→105拡張、初動2.8億・観客23.6万、ver.1.0/1.01 (2008-04-25 DVD特装)/1.11 (2009-05-27) 差分、スタッフ詳細色彩設計・撮影監督・編集・新作画コンテ、海外公開 韓国2008-01-24・香港2008-04-03・仏2009-03-04・北米2009-07-03、FUNimation ver.1.01 (2009-11-17)・ver.1.11 (2010-03-09) 発売、2020-12 4D版373館、2025-11-14〜20 30周年「月1エヴァ」発声可能上映、使徒第4=サキエル系・第5=シャムシエル系腹半透明脚追加・第6=ラミエル系3DCG八面体陽電子砲2射目、第31回日本アカデミー賞・東京アニメアワード作品&監督・アニメーション神戸劇場作品・ゴールデングロス話題賞) / ja.wikipedia「Beautiful World/Kiss & Cry」/ eiga.com 映画情報「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」/ animatetimes / cinematoday / King Records 公式 / Filmarks / Amazon Prime Video / U-NEXT。
Key terms in this work
15本作で重要な用語
本作を理解するうえで押さえておきたいエヴァンゲリオン用語へのショートカット。各リンク先は本サイトの用語集ページに接続し、設定・劇中での扱い・新旧シリーズでの差分・関連用語をまとめている。
Main characters in this work
本作の主要登場人物
本作で重要な役割を担う人物のページへのショートカットだ。各リンクは本サイトの登場人物事典につながっており、プロフィールや来歴、人物どうしの関係、名場面、担当声優までを一通り整理している。