『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(Evangelion: 3.0+1.0 Thrice Upon a Time) は、2021年3月8日に公開された新劇場版4部作の完結編 (第4作) である。総監督・原作・脚本に庵野秀明、監督に鶴巻和哉・中山勝一・前田真宏 (前作『Q』の摩砂雪に替わって中山勝一が加わり、3人体制を維持)、副監督に小松田大全、キャラクターデザインに貞本義行、メカニックデザインに山下いくと、音楽に鷺巣詩郎、主題歌に宇多田ヒカル「One Last Kiss」、もうひとつのテーマソングとして「Beautiful World (Da Capo Version)」(『序』(2007) 主題歌のリアレンジ)。配給は東宝・東映・カラーの3社共同配給という、日本映画でも極めて珍しい体制が組まれた (庵野秀明の長年の念願だったと公表されている)。上映時間は155分 (2時間35分) で、劇場公開当初版 ver.3.0+1.0 → 2021年6月12日より一部シーン修正版 ver.3.0+1.01 を上映する形を取った。当初2020年6月27日公開予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により2021年1月23日へ延期、さらに2021年1月7日に4都県へ発出された緊急事態宣言を受けて公開直前に2021年3月8日へ再延期された。終映時 (2021年7月21日) 時点で観客動員 669万人・興行収入102.2億円、日本映画製作者連盟が発表した2021年全国映画概況においては興行収入102.8億円で年間1位邦画を獲得。翌2022年には第45回日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞 (2022-03-11 授賞式) と話題賞 作品部門 (2022-02 オールナイトニッポンリスナー投票) の2冠を獲得し、商業面・批評面・人気面の三拍子でシリーズ史上最大のヒット作・完結編となった。

あらすじ — 第3村・ヴンダー艦隊戦・ネオン・ジェネシス

物語は前作『Q』終盤のフォースインパクト中断直後から始まる。冒頭、パリのネルフ・ユーロ支部跡で真希波・マリと WILLE 部隊がエヴァ8号機を駆使して L 結界除染作業を行い、エッフェル塔をマーカーに失われた都市の一部を回復させる「パリ封印作業」シークエンスが描かれる。場面は変わり、ニア・サードインパクト後の生存域である「第3村」(冬月コウゾウが所有していた旧黒木家の山村が原型) で、シンジ・綾波レイ (Q号、便宜上「そっくりさん」と呼ばれる) ・アスカが村に滞在する。村ではトウジ・ケンスケ・ヒカリ・委員長 (TV版の同級生たち) が農業と乳児を育てる平和な生活を送っており、レイ (Q) は村人達と関わりながらも L 結界除染域外へ出られない肉体の限界から消滅する。シンジは長い沈黙の末に立ち直り、ヴィレに合流する決意を固める。物語後半はネオ第3東京市跡 (旧ネルフ本部) を舞台に、ヴンダー対ヴンダー型8隻艦隊の艦隊戦、改2号機γ(ベスト) 対 第13号機の戦闘、続いて場面は「マイナス宇宙」へと移行。シンジは父・碇ゲンドウとの直接対話の末、エヴァのない世界 (ネオン・ジェネシス) を選び取る。ヤマト作戦としての槍(ガイウスの槍・新たに作られた槍) によりエヴァ・使徒・インパクトのループそのものが「描き直され」、最終的にシンジは大人になり、宇多田ヒカル「One Last Kiss」が流れる中で、宇部新川駅で実写の街並みを駆け抜けて完結する。

第3村 — シリーズで初めて描かれた「日常」

本作前半 (約60分) は、ニア・サードインパクト後の数少ない L 結界除染済み生存域である第3村を舞台に進む。第3村のモデルは庵野秀明監督の故郷である山口県宇部市の山間部および冬月コウゾウの実家設定で、本作のために実地ロケハンと写真資料を大量に撮影した上で背景画が起こされた。村にはシリーズ既出のキャラクターである 鈴原トウジ (CV: 関智一、医師として勤務)・相田ケンスケ (CV: 岩永哲哉、便利屋として村を守る)・洞木ヒカリ (CV: 岩男潤子、トウジの妻) が居住しており、TV版冒頭からの彼らの「14年後」が初めて描かれる。物語的にはシンジが Q 終盤の喪失から立ち直るための「日常パート」として機能し、レイ(Q) が農作業を通じてリリンの感情を学ぶシーン、アスカが第3村で初めて自身を労る姿が映されるなど、新劇場版4部作で最も穏やかで温かいパートとなる。本作公開直後から「第3村パートだけでもう一作観たい」「ジブリ的な田園描写」とSNSや評論で語られる象徴シーンとなり、シリーズの締めくくりとして「日常への帰還」というテーマを観客に明示する役割を担っている。

艦隊戦と第13号機決戦 — シリーズ最大規模の戦闘

物語後半はネオ第3東京市 (旧第3新東京市・旧ネルフ本部) を舞台に、シリーズで最大規模の戦闘シーンが展開される。ネルフ側はヴンダー型量産艦8隻 (ヴンダー型2号機〜9号機) で旗艦ヴンダーを迎撃。葛城ミサト指揮下のヴンダーは、改2号機γ (ベスト) (アスカ) と8号機 (マリ → 8号機 β に換装) を主戦力に、対艦戦と対エヴァ戦を同時にこなす。クライマックスでは、第13号機 (碇ゲンドウが搭乗) とアスカの改2号機γの一騎打ち → アスカが内部のエヴァ・インフィニティを呼び覚まそうとして第9の使徒の力に飲まれかける → マリ8号機が割って入る → 最終的にシンジが「自分が乗る」と決意して8号機 β +新型仮設4号機の連結装備で第13号機に乗り込み、ゲンドウと直接対話するという展開を経る。父子の対話シーンは Q までの「シンジが何も語らない」から逆転し、ゲンドウ自身も母・ユイへの執着とリリン化への恐怖を語る、シリーズ史上もっとも長尺の親子対話となる。最後にシンジは「エヴァのない世界」(ネオン・ジェネシス) を作るため、ガイウスの槍を新たに自ら作り直し、これを使ってエヴァのループそのものを「ネオン・ジェネシス」へと書き換える。

制作背景 — 9年越しの完結とコロナによる2度の延期

『シン・エヴァ』は前作『Q』(2012年11月) から実に8年4か月を経た2021年3月8日に公開された。制作元は引き続き株式会社カラー。前作『Q』の摩砂雪・鶴巻和哉・前田真宏の3監督体制から、鶴巻和哉・中山勝一・前田真宏の3監督体制 (中山勝一は『Q』の絵コンテ/演出を経て本作で監督昇格) +副監督 小松田大全という陣容に再編。配給は東宝・東映・カラーの3社共同配給という、日本映画でも極めて珍しい体制が組まれた。これは2007年『序』以来の配給会社の変遷 (序・破=クロックワークス/カラー、Q=T・ジョイ/カラー) を経て、シリーズ完結編にふさわしい劇場流通網を確保するために、庵野秀明の長年の念願で実現したものと公表されている。公開延期は2回。当初2020年6月27日公開予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により2021年1月23日へ延期、さらに2021年1月7日に1都3県 (東京・神奈川・千葉・埼玉) へ発出された緊急事態宣言を受けて、公開予定日 (1月23日) のわずか2週間前に、2021年3月8日へ再延期。なお、2021年6月12日より一部シーン修正版 ver.3.0+1.01 が劇場上映 (修正は描写の微調整・対話シーンの細部) で、現在の配信版・地上波放送版は ver.3.0+1.01 が中心になっている。

主題歌・音楽 — 宇多田ヒカル「One Last Kiss」+ 「Beautiful World (Da Capo Version)」

主題歌は宇多田ヒカル「One Last Kiss」。庵野秀明監督直々の依頼による書き下ろし楽曲で、本作のためだけに制作された。同時に、もうひとつのテーマソングとして「Beautiful World (Da Capo Version)」(『序』(2007) の主題歌「Beautiful World」の Da Capo = 全面リアレンジ版) が用いられており、新劇場版1作目の主題歌が完結編で「もう一度最初から始まる」感覚で回帰するという、4部作通して宇多田ヒカルが主題歌を担当した上で初めて可能になった象徴的な演出になっている。両曲は EP/LP『One Last Kiss』として2021年3月10日にリリースされ、表題曲のミュージックビデオは庵野秀明自身が監督した。劇中音楽は引き続き鷺巣詩郎が担当し、ヴンダー艦隊戦のオーケストラ楽曲、第3村の弦楽五重奏、マイナス宇宙のミニマル楽曲など、ジャンル横断的な大編成劇伴がシリーズの音楽的到達点として聴かれる。本作は第45回日本アカデミー賞での最優秀アニメーション作品賞・話題賞 2冠に加え、音楽面でも各種年間ベスト・ベストアルバムに挙げられた。

興行成績と受賞 — 興行102.8億・2021年邦画1位・日本アカデミー賞 2冠

本作は2021年3月8日の公開後、観客動員500万人 (2021年4月19日時点)、興行収入100億円突破 (2021年7月13日)、最終的に終映時 (2021年7月21日) 時点で観客動員 669万人・興行収入102.2億円を記録。日本映画製作者連盟が発表した2021年全国映画概況においては興行収入102.8億円で2021年の邦画1位を獲得 (新型コロナウイルス禍で公開作品が制約される中、邦画洋画通じての年間ヒット作の一つ)。これはエヴァンゲリオン・シリーズ史上最大の興行成績で、新劇場版1作目『序』(20.0億円) の約5倍、前作『Q』(52.6億円) の約2倍に相当する。翌2022年には第45回日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞 (2022-03-11 グランドプリンスホテル新高輪での授賞式) と、話題賞 作品部門 (2022-02 オールナイトニッポンリスナー投票で発表) を受賞し、シリーズ初の日本アカデミー賞最優秀賞 (アニメ部門) 獲得作品となった。シリーズの完結編という性格に加え、観客評価でも新劇場版4作の中で最も支持を集め、Filmarks・映画.com・X (旧 Twitter) などでもシリーズ随一の高評価で推移している。

主要登場人物 — 全員にエンディングを与える完結編

本作は新劇場版4部作の完結編として、これまで登場した主要キャラクターのほぼ全員に明確な決着を与える構造を取っている。碇シンジ (CV: 緒方恵美) は第3村パートで再起を果たし、後半で初めて自ら第13号機に乗ってゲンドウと対話、ネオン・ジェネシスを選び取る主人公として完結する。綾波レイ (CV: 林原めぐみ) は「そっくりさん」(レイ Q) として第3村で農作業を学ぶシーンを与えられた後、L 結界除染域外で消滅、ラストでは黒き月のレイとして再生・大人化された姿が示唆される。式波・アスカ・ラングレー (CV: 宮村優子) は改2号機γ(ベスト) で量産機艦隊と戦い、自身の正体が「アスカのオリジナル人格を持ったクローン搭乗者」(式波シリーズ) であることを受容、ラストでケンスケと自然な関係を結んでいることが示唆される。真希波・マリ・イラストリアス (CV: 坂本真綾) は8号機 β に乗って最後まで戦い、ラストでシンジを宇部新川駅で迎える「次の」パートナーとして提示される。葛城ミサト (CV: 三石琴乃) はヴンダー艦長として最後の作戦を指揮し、シンジに第13号機への発進を許可、自身は艦と運命を共にする。碇ゲンドウ (CV: 立木文彦) はシンジとの長尺対話を経てユイの元へ還る。渚カヲル (CV: 石田彰)・赤木リツコ (CV: 山口由里子)・冬月コウゾウ (CV: 清川元夢)・鈴原トウジ (CV: 関智一)・相田ケンスケ (CV: 岩永哲哉)・洞木ヒカリ (CV: 岩男潤子) も第3村および完結部で重要な役割を担う。各キャラクターの詳細は エヴァンゲリオン登場人物 から順次掘り下げていく。

配信状況 (2026年5月時点)

2026年5月時点で確認できる主な配信状況は以下の通り (配信権は随時変動するため、視聴前に公式情報の再確認を推奨)。配信されているのは ver.3.0+1.01 (2021-06-12〜の修正版) が中心である。本作は2024年2月にテレビ朝日系列で地上波初放送 (EVANGELION:30+; アフターパート付き) も実施され、その後の配信版にもアフターパートが反映されている版がある。

  • Amazon Prime Video — 新劇場版4部作 (『序』『破』『Q』『シン・エヴァ』) を見放題で提供。Prime 会員は追加料金なしで4作通し視聴が可能。本作の世界配信は2021年8月13日 Amazon Prime Video 独占で開始された経緯がある。
  • U-NEXT — 単体作品としての都度課金 (税込509円前後) で配信。31日間無料トライアル中のポイント利用も可能。
  • dアニメストア / Hulu / FOD / DMM TV / バンダイチャンネル / Lemino / TELASA — 見放題または都度課金で配信。
  • Netflix — 新劇場版4部作の見放題提供は確認できず (2026年5月時点)。TVシリーズと旧劇場版のみ配信中。

関連作品 — 4部作の完結と旧シリーズの結節点

本作は 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012) の直接の続編であり、新劇場版4部作 『序』(2007) → 『破』(2009) → 『Q』(2012) → 『シン・エヴァ』(2021) の完結編 (Thrice Upon a Time)。TVシリーズ (1995-96) および 『シト新生』(1997)『THE END OF EVANGELION』(1997) の旧シリーズは別世界線として並走するが、本作ラストで「ネオン・ジェネシス」が発動することで旧シリーズも本作を経由した別の選択肢として位置づけ直されると解釈される。観る順番の整理は エヴァンゲリオン観る順番ハブ を参照。

本ページの主な参考資料

本ページに記載した事実は、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を WebSearch / WebFetch で参照して記述している。記述の現状は2026年5月時点。

追加参照: ja.wikipedia「シン・エヴァンゲリオン劇場版」/ ja.wikipedia「第45回日本アカデミー賞」/ 『シン・エヴァ』公式 evangelion.jp/final.html / eiga.com 映画情報「シン・エヴァンゲリオン劇場版」/ natalie.mu / oricon / cinematoday / ITmedia「映画『シン・エヴァ』21年の興行収入1位に」(2021-12-31) / Amazon Prime Video / U-NEXT / 配給3社共同体制 (animationbusiness.info 2018-07-20)。