『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、2009年6月27日に公開された新劇場版4部作の第2作である。総監督・原作・脚本に庵野秀明、監督に摩砂雪・鶴巻和哉、メカニックデザインに山下いくと、音楽に鷺巣詩郎、主題歌に宇多田ヒカル「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」(2007年「Beautiful World」のリミックス版)。前作『序』(2007) で再構築された TV版冒頭6話を継承しつつ、本作からはオリジナル要素の比重が一気に高まる。真希波・マリ・イラストリアス (CV: 坂本真綾) がシリーズ初登場し、アスカも「惣流・アスカ・ラングレー」から「式波・アスカ・ラングレー」に改名されるなど、TVシリーズ・旧劇場版とは異なる別世界線である Rebuild の独自性が決定的になる。興行収入40億円・全世界興行4,386万ドルを記録、第33回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞、第9回東京アニメアワード 音楽賞を受賞。終盤、シンジが第10の使徒に取り込まれたレイを救うために初号機を覚醒させ、半ば意図的にサードインパクトを引き起こすクライマックスは「ニア・サードインパクト」と呼ばれ、続編『Q』(2012) と『シン・エヴァ』(2021) の物語前提となる極めて重要な分岐点となった。

あらすじ — 第3・第7・第8・第9・第10の使徒

冒頭は旧北極のNERV基地「ベタニアベース」。エヴァ仮設5号機に乗る真希波・マリ・イラストリアスが、捕獲・凍結保存されていた第3の使徒の活動再開と暴走を阻止する戦闘で本編が始まる。仮設5号機は大破しつつも第3の使徒撃破に成功。場面は第3新東京市に戻り、新2号機 (エヴァ2号機改) と式波・アスカ・ラングレーが転入。アスカ・シンジ・レイの三角関係を縦糸に、シンジたちは第7の使徒、第8の使徒との戦闘 (TV版「使徒、侵入」相当の3機による迎撃作戦) を続けていく。物語中盤、ゼーレと NERV、そしてゲンドウの思惑が交錯しはじめ、第9の使徒は捕食した3号機を媒体に登場、これに乗っていたアスカが代償を背負う。物語クライマックスは第10の使徒戦。先に2号機と零号機が出撃するも返り討ちにあい、レイの零号機は使徒に取り込まれてしまう。レイを救うために初号機に乗ったシンジの想いに初号機が応えて覚醒、第10の使徒は撃破されるがそれと引き替えにサードインパクトの発動 (ニアサードインパクト) が始まる。直後、月から飛来したエヴァンゲリオン Mark.06 に乗った渚カヲルがカシウスの槍を投擲し、初号機を貫いて強制中断 — シンジは「やった」と呟き、画面が暗転して『Q』へと接続する。

TV版からの分岐 — マリ初登場と「式波」化

本作で TV シリーズ・旧劇場版との分岐が決定的になる。最大の差分は2点ある。第一に、真希波・マリ・イラストリアス (CV: 坂本真綾) という TV版・旧劇場版に存在しなかった新キャラクターがシリーズ初登場し、冒頭の旧北極ベタニアベース戦・終盤の3号機テスト等で重要な役割を果たす。マリの設定・背景・組織所属は本作では意図的に明かされず、続編『Q』『シン・エヴァ』にかけて段階的に開示される構造になっている。第二に、アスカが「惣流・アスカ・ラングレー」から「式波・アスカ・ラングレー」へと改名されている。設定上の出自・身分・年齢上のニュアンスも僅かに差異があり、「式波」のアスカは旧劇場版のアスカと同一人物ではないことが明確に示される。これに加えて、レイの感情表現がよりはっきりと描かれ、シンジが「父さんに褒められたから」と素直に答えるなど、TV版・旧劇とは異なる方向にキャラクターの内面が再造形されている。

ニア・サードインパクト — クライマックスの選択

本作最大のドラマチック・ポイントは終盤の第10の使徒戦である。第10の使徒に取り込まれたレイを救うべく、シンジは戦闘継続を選び、初号機は搭乗者の意思に共鳴して「疑似シン化第二形態」と呼ばれる強制覚醒状態に突入。第10の使徒は殲滅されるが、その代償として地球規模のサードインパクトが発動しかかる。これが新劇場版独自の概念「ニア・サードインパクト」である。発動はその直後に月から飛来したエヴァンゲリオン Mark.06 に乗る渚カヲルが、初号機にカシウスの槍を突き立てて停止させることで強制中断される。シンジが (旧劇の自己犠牲とは異なり) ヒロインを救うために自ら世界を壊しかける選択をとり、それを救出するのが「敵の少年」であるカヲル — という構図の反転は、新劇場版が旧シリーズの単なる再演ではないことを最も鮮烈に示すシーンであり、続編『Q』『シン・エヴァ』のすべての物語前提となる。

制作背景 — オリジナル要素の比重と作画

本作は前作『序』で確立した株式会社カラーのフルデジタル制作体制を引き継ぎつつ、シナリオ面でのオリジナル要素の比重を大幅に拡大した作品である。前作 (98分) より上映時間を10分以上長く取り、TV版「アスカ来日」「3号機テスト」「使徒、侵入」のモチーフを再構成しながら、マリ初登場と新2号機の存在、ベタニアベース、月面 Mark.06、ニアサーといった完全新規要素を物語の中心に据える。作画監督には鈴木俊二・本田雄・松原秀典・奥田淳という新劇場版の核となる主要アニメーターが揃い、3機による第8の使徒迎撃や第10の使徒戦の覚醒シーンは、CG と手描き作画の高水準なハイブリッドとして、日本アニメ映画の一つの到達点として評価された。

本作はまず劇場公開版 ver.2.0 (108分) として2009年6月27日に公開され、続いて新作カット追加・台詞修正を加えた ver.2.22 (111分49秒) が2010年5月26日に DVD・Blu-ray 化された。以後の配信版・地上波放送版でも基本的に ver.2.22 が採用されている。

主題歌・音楽 — 「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」

主題歌は宇多田ヒカル「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」。前作『序』の主題歌「Beautiful World」(2007) を、よりアコースティック志向のミックスへとリアレンジしたバージョンで、本作 (2009) のエンドロールを担う。劇中音楽は引き続き鷺巣詩郎が担当し、第8の使徒迎撃シーンの「The Final Decision We All Must Take」、第10の使徒覚醒シーンの「Sin from Genesis」など、本作で初めて披露され後年のシリーズや二次創作で頻繁に引用される代表曲が複数生まれた。本作は第9回東京アニメアワードで音楽賞を受賞しており、鷺巣詩郎の劇伴は新劇場版2作目以降のシリーズ・アイデンティティの一つになっている。

興行成績と評価 — 興行40億・前作の倍増

2009年6月27日の公開後、本作は国内興行収入40億円を記録。前作『序』(20.0億円) のほぼ倍増となり、新劇場版がシリーズとして観客動員的にも順調に拡大していることを示した。全世界興行は4,386万ドルに達し、海外配給作としても日本アニメ映画の代表的成功例の一つに数えられる。第33回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞、第9回東京アニメアワード 音楽賞ほか、複数のアニメ・映画賞を受賞している。観客評価の面でも本作はシリーズ随一の支持を得ており、Filmarks や映画.com 等の評価集計では新劇場版4作の中で特に高得点を維持し続けている。マリの導入、アスカの新たな描き方、初号機覚醒シーンの作画力 — 本作はその後の Rebuild 計画への期待を最大化することに成功した。

主要登場人物 — マリ初登場と式波アスカ

本作の声優陣は前作からの継続布陣に加え、新キャラクターとして真希波・マリ・イラストリアス (CV: 坂本真綾) が初登場する。マリは旧北極ベタニアベース冒頭戦闘でシリーズに合流し、3号機テスト前後の場面ではマリの所属組織や目的について物語中で意図的に伏せたまま提示される。式波・アスカ・ラングレー (CV: 宮村優子) は本作から「惣流」ではなく「式波」を名乗り、第9の使徒戦で重大な代償を背負う。碇シンジ (CV: 緒方恵美) は本作終盤、レイを救うために世界を壊しかける選択をとる主人公として再造形される。綾波レイ (CV: 林原めぐみ)、葛城ミサト (CV: 三石琴乃)、碇ゲンドウ (CV: 立木文彦)、赤木リツコ (CV: 山口由里子)、渚カヲル (CV: 石田彰)、冬月コウゾウ (CV: 清川元夢) は引き続き同役で出演する。各キャラクターの詳細は エヴァンゲリオン登場人物 から順次掘り下げていく。

配信状況 (2026年5月時点)

2026年5月時点で確認できる主な配信状況は以下の通り (配信権は随時変動するため、視聴前に公式情報の再確認を推奨)。

  • Amazon Prime Video — 新劇場版4部作 (『序』『破』『Q』『シン・エヴァ』) を見放題で提供。Prime 会員は追加料金なしで通し視聴が可能。
  • U-NEXT — 単体作品としての都度課金 (税込509円前後) で配信。31日間無料トライアル中のポイント利用も可能。
  • dアニメストア / Hulu / FOD / DMM TV / バンダイチャンネル / Lemino / TELASA — 見放題または都度課金で配信。
  • Netflix — 新劇場版4部作の見放題提供は確認できず (2026年5月時点)。TVシリーズと旧劇場版のみ配信中。

関連作品 — 序 → 破 → Q → シン・エヴァ

本作は 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007) の直接の続編であり、ニア・サードインパクトとカヲルによる強制中断という形で次作 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012) に接続する。その後の完結編が 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)。新劇場版4部作と旧シリーズ (TVシリーズ / 『シト新生』 / 『THE END OF EVANGELION』) は別世界線として並走する。観る順番の整理は エヴァンゲリオン観る順番ハブ を参照。

本ページの主な参考資料

本ページに記載した事実は、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を WebSearch / WebFetch で参照して記述している。記述の現状は2026年5月時点。

追加参照: ja.wikipedia「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」/ ja.wikipedia「第33回日本アカデミー賞」/ 『破』公式 evangelion.jp/2_0/ / eiga.com 映画情報「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」/ Fandom 新世紀エヴァンゲリオン Wiki / Filmarks / Amazon Prime Video / U-NEXT。