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人物・家系

レギュラス・ブラック

死喰い人から離反し、ヴォルデモートの分霊箱を奪ったシリウスの弟。誰にも知られない洞窟で残したR.A.B.の手紙が、後の探索を動かす。

死喰い人から分霊箱を奪ったブラック家の弟

レギュラス・アークタラス・ブラックは、シリウス・ブラックの弟であり、純血主義を重んじるブラック家に育った魔法使いである。

ホグワーツではスリザリンに入り、若い頃にはヴォルデモートの思想へ惹かれて死喰い人になった。

しかし彼は、ヴォルデモートが部下の命をどう扱うかを知った後、その支配から離れる。

最終的にレギュラスは、ヴォルデモートの分霊箱の一つであるスリザリンのロケットを持ち出し、偽物とすり替えた。

ハリーたちが分霊箱の正体に近づくより何年も前に、彼は主君の不死の仕組みを壊そうとしていたことになる。

レギュラスの名は長く、死喰い人だったブラック家の若者としてしか知られていない。

残された頭文字「R.A.B.」と、空になった偽のロケットが、死後になって彼の選択を伝える。

そのため彼の物語は、離反の理由、実際に成し遂げたこと、そして破壊できなかった分霊箱を分けて追う必要がある。

ブラック家と兄シリウスとの違い

ブラック家は、純血の家系であることを誇り、マグル出身者や純血主義に従わない親族を退けてきた。

シリウスはその価値観を公然と拒み、家を出てグリモールド・プレイス十二番地から離れた。

一方のレギュラスは、家の期待に沿う優等生として見える位置に残った。

兄弟を単純に正反対の人物とみなすだけでは、レギュラスの離反は説明できない。

シリウスは純血主義そのものに背を向けたのに対し、レギュラスは一度、ヴォルデモートの運動へ加わった。

彼が後に見限ったのは、思想への疑問だけでなく、ヴォルデモートが忠誠を命や人格の保証としては扱わない現実だった。

家の名を守るために選んだ側で、家の者をも消耗品にする支配者を見たことが転機になる。

シリウスとレギュラスは、同じ家から別々の道へ出た。

ただし二人の抵抗の形は違う。

シリウスは家の外からヴォルデモートと戦い、レギュラスは死喰い人の内側にいたからこそ知り得た秘密を盗み出した。

クリーキーが連れて行かれた洞窟

レギュラスの決断に直接関わったのが、ブラック家の屋敷しもべ妖精であるクリーキーだった。

ヴォルデモートは分霊箱を隠す洞窟の防御を確かめるため、クリーキーを連れ出し、湖の底の器から苦痛を伴う薬を飲ませた。

薬を飲んだ者が喉の渇きに耐えかねて水を求めれば、湖の亡者が襲う。

ヴォルデモートはクリーキーがそこで死ぬと考えていた。

ところがクリーキーは主人から帰還を命じられており、屋敷しもべ妖精の魔法でブラック家へ戻る。

彼は洞窟、薬、ロケット、ヴォルデモートに置き去りにされたことをレギュラスへ語った。

この証言は、ヴォルデモートが自分の不死を守るためなら、忠実な奉仕者でさえ捨てることを示している。

レギュラスはクリーキーを家の所有物としてではなく、危険に遭わせた存在として受け止め、同じ洞窟へ向かう決意を固める。

ロケットのすり替え

レギュラスはクリーキーを伴って洞窟に入り、ヴォルデモートが残した薬を自ら飲んだ。

クリーキーには本物のロケットを持ち帰り、できるなら破壊するよう命じる。

そして器には、外見が同じ偽のロケットを残した。

偽物の中には、R.A.B.がヴォルデモートへ宛てた短い手紙が入れられていた。

この計画は、分霊箱を奪うことには成功したが、レギュラス自身を救わない。

薬で弱った彼は湖の水を求め、亡者に引きずられて戻らなかった。

クリーキーだけが帰還し、主人の命令どおりロケットを隠した。

レギュラスは分霊箱の破壊方法を残せず、ロケットは長いあいだ屋敷に留まり続ける。

ここで彼が成功したことと失敗したことは分けられる。

ヴォルデモートの秘密を見抜き、防御の洞窟から分霊箱を動かした点では成功している。

しかし魂の器を壊す術を持たず、後にロケットは別の人物の手へ渡る。

レギュラス一人では戦いを終わらせられなかったが、ヴォルデモートの計画が完全ではないことを最初に示した人物の一人になった。

「R.A.B.」を追うハリーたち

ハリー・ポッターと謎のプリンス』で、ハリーとダンブルドアは洞窟からロケットを持ち出す。

だがそれは本物ではなく、R.A.B.の手紙が入った偽物だった。

ハリーはその正体をすぐに解けず、ダンブルドアの死後、ハーマイオニー、ロンとともに残る分霊箱を探す中でブラック家へ目を向ける。

グリモールド・プレイスでクリーキーの話を聞いたことで、R.A.B.がレギュラス・アークタラス・ブラックを指すと分かる。

本物のロケットは、屋敷から盗品を持ち出したマンダンガス・フレッチャーを経て、最終的に魔法省のドローレス・アンブリッジの手に渡っていた。

この迂回があるため、レギュラスの犠牲はすぐには成果にならない。

それでもロケットが洞窟ではなく魔法省にあると判明したことで、ハリーたちは奪還の行動を選べるようになる。

のちにロケットは、ロンがグリフィンドールの剣で破壊する。

レギュラスが果たせなかった最後の段階を、弟の友人だったロンが完了したことは、ブラック家の外へ延びた協力の連鎖でもある。

レギュラスの手紙は勝利の宣言ではなく、失敗するかもしれない行為を引き受けた痕跡として、後の三人を動かす。

屋敷に残されたロケットとクリーキー

レギュラスが死んだ後、クリーキーは命令を守って本物のロケットをブラック家の屋敷へ持ち帰った。

彼はロケットを壊そうと試みたが、分霊箱の防御を破れなかった。

この失敗はクリーキーの忠誠が足りなかったからではない。

分霊箱は普通の魔法道具ではなく、破壊するにはバジリスクの毒やグリフィンドールの剣のように、魂の器を損なえる手段が必要だった。

屋敷が不在になった間、マンダンガス・フレッチャーは価値がありそうな品を持ち出し、ロケットも盗品に混ぜた。

レギュラスが命を懸けて洞窟から出した物は、魔法省へ通じる市井の取引の中で所在を失う。

この遠回りは、秘密を守るための隠し場所が、所有者の死後には手がかりを絶つ場所にもなることを示す。

クリーキーだけはロケットの意味を知っていたが、彼の話を聞く者が長く現れなかった。

ハリーがクリーキーを命令だけで動かす対象ではなく、事情を持つ存在として扱い始めた時、レギュラスの物語は初めて言葉になる。

兄シリウスが家を憎み、クリーキーを遠ざけた記憶と、レギュラスが最後にクリーキーを信頼した記憶は、その屋敷の中でぶつかる。

ハリーたちはロケットの所在だけでなく、レギュラスが何を命じ、クリーキーが何を果たせなかったかを理解してから、次の行動へ進む。

遅れて届いた離反の意味

レギュラスはヴォルデモートを倒す戦いに加わる前に死んだため、周囲からは死喰い人だった少年として記憶されやすい。

実際、彼はその組織へ入り、ヴォルデモートの力に近づこうとした時期がある。

だから彼を最初から正義の側にいた人物として語ることはできない。

それでも、主君の不死の秘密を知った後に、逃げるだけでなく分霊箱を奪う方法を選んだことは、彼自身の過去を打ち消さないまま重い意味を持つ。

彼の死は誰にも祝われず、ロケットの破壊も別の世代が終える。

しかしヴォルデモートが絶対の忠誠を求めながら、部下のクリーキーを捨てた瞬間、レギュラスはその支配の弱点を見た。

ロケットのすり替えは、恐怖で結ばれた組織の内側から行われた裏切りであり、後の戦いに残った小さな足場だった。

原作と映画での位置づけ

原作ではクリーキーの回想、偽ロケットの手紙、ブラック家の家系図が重なり、レギュラスの選択が段階的に明らかになる。

彼は登場して会話する人物ではなく、遺品と証言を通じて読者が判断する人物である。

だからこそ、死喰い人だった事実を消さずに、離反の代価も追える。

映画版では分霊箱探索の進行が優先され、レギュラスの背景は原作ほど細かく説明されない。

一方でスリザリンのロケットとR.A.B.の謎は、ヴォルデモートの不死が外側から少しずつ崩れる過程を示す。

レギュラスは兄のように英雄として知られなかった。

それでも、誰にも見届けられない洞窟で主君の秘密を奪った行為が、後の分霊箱破壊へ確かにつながっている。

彼の名を知ったハリーは、過去に死んだ人物の失敗を裁くだけでなく、その人物が残した未完の行動を引き受けることになる。

レギュラスのロケットは、分霊箱を探す旅が生者だけの戦いではなく、死者が残した意志をつなぐ戦いでもあることを思い出させる。