08ストーリー解説
佐倉杏子は前話で打ち明けた過去を踏まえ、美樹さやかと和解させようと鹿目まどかを連れてさやかのもとを訪れる。杏子はテリトリーを共有して共闘しようと持ちかけるが、その条件は「使い魔は泣く泣く見逃して魔女に育て、効率よくグリーフシードを稼ぐ」という現実的な狩り方だった。罪のない人間が使い魔に殺されるのを許せないさやかは、この提案を正義に反すると断固拒否する。
ソウルジェムの正体を知って以来、さやかの心と戦い方は荒んでいた。肉体はもはや魂を抜かれた「死体」であり、痛みも感じない。彼女はそれを逆手にとるように、身を守ることもせず魔女へ無謀に突っ込み、満身創痍になりながら戦う。自暴自棄な戦闘に、見ているまどかも杏子も言葉を失っていく。

暁美ほむらはさやかに接触し、「魔法少女をやめるなら自分が代わりに街を守る」と異例の譲歩を申し出る。ほむらは未来を知る者として、これ以上さやかが追い詰められることを止めようとしていた。しかしさやかはほむらを信用せず、「あんたなんかに頼らない」と冷たく突き放し、忠告は届かない。
一方、志筑仁美はまどかに自分の想いを告白する。病から復帰した上条恭介に恋をしてしまったというのだ。仁美は自分の友情ゆえに、さやかに告白のチャンスを与えるべく「明日の朝までに上条君へ気持ちを伝えて。それまでに動かなければ、私が告白する」という一日の猶予を突きつける。

さやかは病室の上条恭介を遠くから見つめる。彼のために魔法少女になり願いを叶えたのに、今の自分の体は腐った死体同然。好きな人のそばに普通の女の子として立つことすらできない現実を噛みしめ、「あたしって、ほんとバカ」と自嘲する。彼女は恭介を仁美に譲ることを決め、想いを諦める。
絶望を抱えたさやかは夜の電車に揺られる。同じ車両でサラリーマンの男二人が、彼女を都合よく扱い見下し、浮気を自慢げに語り合っているのを耳にする。「自分はこんな下劣な連中の世界を、命を削って守っているのか」——さやかの心は急速に冷え、人間そのものへの信頼と、戦う意味が音を立てて崩れていく。

物陰でその様子を見ていた杏子は、さやかの異変に気づく。さやかのソウルジェムは、もはや澄んだ青さを失い、淀んだ黒に染まりかけていた。杏子はまどかに事態の深刻さを伝えようとするが、すでにさやかの絶望は引き返せないところまで来ていた。
無人の電車内、ひとり座り込んださやかのソウルジェムはついに完全に黒く濁りきる。ジェムから漆黒のグリーフシードが溢れ出し、さやかの体は人魚の騎士を思わせる魔女オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフへと変貌を遂げる。コンサートホールのような結界が広がり、駆けつけた杏子はその変身を目の当たりにして立ち尽くす。

同じ頃、キュゥべえはまどかとほむらの前で衝撃の真実を明かす。「魔法少女は、いずれ魔女になる」。ソウルジェムが絶望で濁りきればグリーフシードと化し、魔法少女自身が魔女として生まれ変わる——これこそ世界のエネルギー収支を保つ仕組みだったのだ。希望と絶望が相殺し合うこの残酷な構造を、キュゥべえは淡々と語る。
魔法少女と魔女が表裏一体であり、自分たちが倒してきた魔女もかつては誰かの願いを背負った少女だった——その事実に、まどかは打ちのめされる。友であるさやかが魔女に堕ちたという現実と、自分が魔法少女になることの本当の意味を突きつけられ、まどかの絶望と物語の核心が一気に露わになる。


