09ストーリー解説
第8話のラストで美樹さやかのソウルジェムが濁りきって魔女「オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ」へと変貌した直後から物語は続く。呆然とする鹿目まどかの前で、キュゥべえは淡々と真実を告げる。魔法少女はやがて魔女になる——ソウルジェムが絶望で濁りきるとグリーフシードと化し、そこから魔女が生まれるのだと。希望と絶望が表裏一体であり、魔女の正体はかつての魔法少女のなれの果てだという衝撃の事実が明かされる。
そこへ暁美ほむらが現れ、無言でキュゥべえを撃ち殺す。だが直後、まったく同じ姿の新たなキュゥべえが現れ、自分の死体を平然と食べてみせる。彼らに個体としての「死」はなく、無数の替えの体を持つ群体的存在——インキュベーターであることが暴かれる。「君たちを騙したつもりはない、聞かれなかっただけだ」と悪びれない態度が、人間との価値観の断絶を際立たせる。

キュゥべえはさらに宇宙的な真相を語る。自分たちは宇宙のエネルギー枯渇(エントロピー)に抗うため、感情のエネルギーを回収している異星の知的種族であり、少女が希望から絶望へ転じる瞬間に生じる膨大なエネルギーこそが目的だと説明する。クレオパトラやジャンヌ・ダルクら歴史上の女性も魔法少女であり、人類文明の発展は彼らの犠牲の上に成り立ってきたと、まどかに告げる。
一方、佐倉杏子はさやかが魔女化した事実を受け止めきれずにいた。まどかから事情を聞いた杏子は、さやかの肉体がまだ保たれていることに一縷の望みを託す。魔女になった少女を人間に戻した前例はないとキュゥべえは断言するが、杏子は「呼びかければ戻るかもしれない」と諦めず、まどかと共にさやかを救い出そうと決意を固める。

教会で杏子は、信仰に生きた父が一家心中を起こし、自分だけが魔法少女として生き残った過去をまどかに語る。巴マミを失い、さやかとも対立したまま天涯孤独となった杏子にとって、ようやく心を許せる相手だったさやかを見捨てることはできない。「あいつを一人にはできない」という思いが、彼女を行動へと突き動かしていく。
杏子とまどかはオクタヴィアの結界へと足を踏み入れる。そこではすでにほむらがオクタヴィアと激しく交戦していた。圧倒的な力を持つ魔女を前にほむらは苦戦しており、勝てる見込みは薄い。杏子はほむらに「あたしに一度だけやらせてくれ」と頼み込み、まどかを巻き込むのを避けるべく、自らがさやかへの呼びかけに挑もうとする。

杏子は槍を地面に突き立て、光の幻影を生み出しながらオクタヴィアの中に残るさやかへ必死に語りかける。「さやか、あんたまだそこにいるんだろ」と何度も呼びかけるが、変わり果てた魔女は反応せず、ただ刃を振るって杏子を攻撃する。さやかの心はもはやどこにも残っていない——救済が不可能であるという残酷な現実を、杏子は思い知らされる。
それでも杏子は引かなかった。ほむらに「まどかを連れて逃げろ」と告げ、自分はさやかと運命を共にする道を選ぶ。一人で逝かせるのはあまりに寂しい、それは「あたしが許さない」——タイトルに重なる思いを胸に、孤独だった少女は最後に大切な誰かのそばにいることを望む。「バカなあたしにも、最後にいい事させてくれよ」と微笑む。

杏子は自らのソウルジェムを砕き、その身を爆発させる魔力で巨大なオクタヴィアごと結界を吹き飛ばす。さやかと杏子、二人の魔法少女の命が同時に失われ、結界は崩壊して消えていく。さやかを救えなかったどころか、もう一人の仲間まで失う——まどかの目の前で、あまりにも痛ましい結末が現実のものとなる。
ほむらは間一髪でまどかを抱きかかえ、爆発から守り抜く。すべてが終わった後、常に冷徹で感情を見せなかったほむらが、まどかの前で初めて涙を流して崩れ落ちる。誰も救えなかった無力さに打ちひしがれながら、彼女は「魔法少女になってはいけない」とまどかに強く訴える。その涙の意味——ほむらが背負ってきた秘密が、次話で明かされる伏線として刻まれる。


