10ストーリー解説
物語は暁美ほむらの入院シーンから始まる。三つ編みに眼鏡、内気で気弱な少女として描かれるほむらは、心臓の病が癒えて見滝原中学へ転入する。教室で自己紹介に失敗し、保健委員の鹿目まどかに校舎を案内してもらう。屋上で「魔法少女」の話を聞かされ、まどかと巴マミがすでに契約した先輩として戦っていることを知る、最初の時間軸が示される。
この第一の時間軸では、まどかとマミがコンビでウィッチと戦い、ほむらはただ守られる非力な一般人にすぎない。やがて街には最強の魔女「ワルプルギスの夜」が接近し、見滝原は嵐と崩壊に呑まれていく。マミは奮戦むなしく命を落とし、戦力はまどか一人だけが残される絶望的な状況へと追い込まれていく。

暴風雨の中、まどかは満身創痍でワルプルギスの夜に立ち向かい、最後の力を振り絞って巨大な魔女を打ち倒す。しかし致命傷を負い、瓦礫の上で力尽きていく。「弱虫で泣き虫だった自分を変えたい」と泣くほむらに、まどかは穏やかに微笑みながら息を引き取る。守られるだけだった少女は、最愛の友を喪う。
そこへキュゥべえが現れ、ほむらに契約を持ちかける。彼女の願いは「鹿目さんとの出会いをやり直したい。今度は私が彼女を守れるように」というものだった。願いが叶い、ほむらのソウルジェムと砂時計を象った盾が生まれ、彼女は「時間を巻き戻す」能力を得る。こうして二度目のループが幕を開ける。

病室で目覚めたほむらは、再び転入初日からやり直す。未来を知る彼女は気弱なまま必死に皆へ警告し、まどかと友情を育みながら共闘していく。だがこの軸で、ほむらはついに魔法少女の最大の秘密——ソウルジェムが濁りきると魔法少女自身が魔女へと変貌するという、キュゥべえが隠していた真実を知ってしまう。
ループの中で、まどかのソウルジェムは絶望に呑まれ、史上最強の魔女「クリームヒルト・グレートヒェン」へと変わりかける。十日で世界を滅ぼすほどの存在になる前に、変わり果てていくまどかはほむらへ懇願する。「ほむらちゃん、私を……殺して。ひどい魔女になる前に」。ほむらは涙ながらに銃口を向け、親友を自らの手で撃つ。

それでも救えず、ほむらは何度も時間を巻き戻し続ける。ループを重ねるごとに三つ編みは解かれ、眼鏡は外され、気弱だった少女は冷徹で寡黙な戦士へと変貌していく。武器を盗み、戦術を磨き、表情を消していく姿が、まどかが幾度も死にゆく走馬灯のような失敗の連続とともに描かれていく。
だが残酷な真実が明かされる。ほむらが時を巻き戻すたび、まどかに絡みつく因果の糸が膨れ上がり、彼女の魔法少女としての潜在能力は際限なく増大していたのだ。キュゥべえが「まどかの素質は桁外れ」と言った理由は、ほむら自身の繰り返しにあった。守ろうとした行為こそが、まどかを宇宙最大の業を背負う存在に仕立て上げていた。

この皮肉な構造を悟ったほむらは、もう誰にも頼らないと決意する。仲間と手を取り合う温かなやり方では、まどかは必ず契約させられ、魔女になり、命を落とす。ならば自分一人で、まどかを魔法少女にさせずに守り抜くしかない——本編で彼女が見せる孤高で冷淡な態度の、すべての理由がここで明かされる。
こうして物語は現在の時間軸へと接続される。「もう誰にも頼らない。自分一人でも、絶対に」。何度世界を繰り返しても変わらぬ想いを胸に、ほむらは再び戦いの渦中へ戻っていく。第10話は、シリーズ最大の謎だったほむらの正体と動機を一気に明かし、彼女の冷酷さの裏に隠された途方もない献身と孤独を浮かび上がらせる、物語の転回点となる。


