クローン・ウォーズ(2008年劇場版)は、2008年に公開されたスター・ウォーズのCGアニメ映画である。クローン戦争のさなか、ジャバ・ザ・ハットの息子が誘拐される事件を、アナキン・スカイウォーカーと新たな弟子アソーカ・タノが解決に挑む物語が描かれる。
テレビアニメ『クローン・ウォーズ』の幕を開けるパイロット作品であり、アソーカ・タノが初登場する点でシリーズ上重要な位置を占める。
00概要
『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(Star Wars: The Clone Wars)は、デイヴ・フィローニが監督を務め、2008年8月15日に米国公開された劇場アニメ映画である。同年から放送が始まる長期TVアニメシリーズ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』の先行公開(パイロット)を兼ねて制作された。
舞台は、映画『クローンの攻撃』と『シスの復讐』のあいだに繰り広げられる銀河規模の戦争、クローン大戦のさなかである。ジェダイのアナキン・スカイウォーカーと、彼の新たな弟子(パダワン)として本作で初登場するアソーカ・タノが、誘拐された犯罪王ジャバ・ザ・ハットの息子ロッタの救出に奔走する。重要なハイパースペース航路の確保をめぐり、共和国とハットの同盟を成立させようと駆け回る姿が描かれる。
劇場映画としての批評評価は割れた。だが、本作を起点とするTVシリーズはその後長く高い評価を集め、シリーズ屈指の名作とまで称されるにいたる。その意味で、本作はフランチャイズの歴史において重要な位置を占めるパイロット作品といえる。
本記事は結末を含む全編の内容に踏み込んでいる。物語の重大な驚きを保ちたい向きは、まず本編を鑑賞したうえで読み進めることを勧めたい。
主要データ
- 原題
- Star Wars: The Clone Wars
- 監督
- デイヴ・フィローニ
- 製作総指揮
- ジョージ・ルーカス
- 音楽
- ケヴィン・カイナー
- 米国公開
- 2008年8月15日
- 上映時間
- 98分
- ジャンル
- スペースオペラ、SF、戦争、アニメ
オープニング演出について
本作はアニメーション映画でありながら、サーガ本編でおなじみの黄色いオープニング・クロールを採用していない。代わりに用意されたのは、戦時下のニュース映画(ニュースリール)を思わせるナレーションで戦況を一気に語る、独自の導入だ。この語り口は、続くTVシリーズへと地続きにつながっていく宣言でもある。
02あらすじ
以下は結末までを含む全編のあらすじである。物語は、ロッタの誘拐に始まり、テスの戦い、そしてコルサントで陰謀が露見するまでを追っていく。
ロッタ誘拐と新弟子アソーカ
クローン大戦のさなか、犯罪王ジャバ・ザ・ハットの幼い息子ロッタが何者かに誘拐された。銀河の重要な航路を支配するハット一族の協力を取りつけたい共和国は、ジェダイにロッタ奪還を託す。最前線で戦うアナキン・スカイウォーカーのもとへ、ジェダイ評議会が新たな弟子(パダワン)として送り込んだのは、若きトグルータの少女アソーカ・タノだった。
規律よりも直感を重んじるアナキンと、生意気ながらも腕の立つアソーカ。衝突を繰り返しながら、二人は次第に師弟としての呼吸を掴んでいく。やがてアナキンとアソーカ、そしてレックス大尉らクローン部隊は、誘拐犯の痕跡を追って岩山に修道院がそびえる惑星テスへと向かう。
テスの戦いと救出
テスでは、シスのドゥークー伯爵が、暗殺者アサージ・ヴェントレスを使って誘拐事件を仕組み、ジェダイとハットの間に亀裂を生もうと画策していた。アナキンとアソーカは絶壁にそびえる修道院を強襲し、囚われたロッタを救い出す。だが、ロッタは病に冒されており、一刻も早くタトゥイーンのジャバのもとへ送り届けねばならない。
ドゥークーは、ジェダイがロッタを誘拐し殺害しようとしていると見せかける偽情報をジャバに流す。一方のアナキンとアソーカは、ヴェントレスの追撃や分離主義勢力のドロイド軍をかわしながら、病んだロッタを守り抜いてタトゥイーンを目指す。激しい戦いのなかで、師弟の信頼はやがて本物へと変わっていく。
ジロの陰謀とハットの同盟
タトゥイーンに降り立ったアナキンとアソーカは、ジャバから「誘拐の犯人はジェダイだ」という偽りの証言を信じ込まされ、苦境に追い込まれる。一方コルサントでは、元老院議員パドメ・アミダラが独自に調査を進めていた。やがて彼女は、誘拐の黒幕がジャバの叔父である犯罪者ジロ・ザ・ハットであり、その背後にドゥークーが控えていることを突き止める。
ジロの陰謀を裏づける証拠を手にしたパドメは、ジャバに真相を伝える。アナキンとアソーカもヴェントレスを退け、無事にロッタを送り届ける。真実を知ったジャバは怒りの矛先を甥のジロへ向け、共和国との同盟に応じる——重要なハイパースペース航路の通行を許可するのだ。
戦争を有利に運ぶ航路を確保した共和国。だがその裏で、ドゥークーとシスの陰謀は途切れることがない。アナキンとアソーカは正式な師弟として、次なる戦いへと向かう。この幕切れこそ、長期TVシリーズ『クローン・ウォーズ』の物語が始まる出発点となるのだ。
見どころと物語の位置づけ
本作最大の見どころは、後にシリーズ屈指の重要人物となるアソーカ・タノの初登場、そして規律を重んじるアナキンと直情型のアソーカが衝突を繰り返しながら師弟の絆を築いていく過程である。公開当時、このキャラクターは決して歓迎されなかった。だがTVシリーズを重ねるうちに評価は逆転し、ついには実写ドラマ『アソーカ』の主役にまで上り詰める。その出発点を担った点にこそ、本作の歴史的な価値がある。
活劇としての見どころは、絶壁にそびえる修道院を擁する惑星テスへの強襲、病んだロッタを守りながらの逃避行、そしてアサージ・ヴェントレスとの剣戟だ。彫刻を思わせるセルルック風の3DCGと、ケヴィン・カイナーが打楽器や民族楽器を活かして紡いだ音楽は、本作以降のアニメ系列——『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』『バッド・バッチ』——の視覚と聴覚のアイデンティティを決定づけた。
物語の位置づけを整理すると、本作は『クローンの攻撃』と『シスの復讐』の間を埋めるTVシリーズ『クローン・ウォーズ』のパイロットにあたる。子ども(ロッタ)の救出という個人的な物語が、ハイパースペース航路と同盟をめぐる戦略へと直結し、やがてシスの陰謀(ドゥークーとジロ)に利用されていく。この構図は、英雄譚の裏で謀略が蠢くというプリクエル全体の主題を凝縮したものだ。
劇場映画一本としての批評評価は厳しかった。しかし本作が立ち上げた巨大なアニメ物語の網は、プリクエルと旧三部作の間を豊かに埋め、フランチャイズ史において決定的な意義を持つに至る。劇場作品としてよりも、その壮大なシリーズの起点として評価されるべき作品である。
もう一つの見どころは、戦時下のアナキン像だ。プリクエル映画では描かれなかった「戦争を率いる英雄」「弟子を持つ師」としての姿が、本作とTVシリーズで肉付けされていく。観客は彼の転落——ダース・ベイダーへの変貌——をすでに知っている。それゆえ有能で人望ある指揮官として描かれるほど、後の悲劇の影は色濃くなる。弟子アソーカの存在は、『シスの復讐』では語られなかった「アナキンが失うもう一つの絆」を補い、サーガ全体の悲劇に新たな層を加えた。
演出面では、戦時ニュース映画を思わせるナレーションの導入、彫刻的な3DCGによるキャラクター造形、絶壁の修道院や逃避行のスピード感あふれる活劇が特徴だ。これらはTVシリーズで洗練され、やがて『反乱者たち』『バッド・バッチ』『アソーカ』へと連なるデイヴ・フィローニ系列の作家性の出発点となった。
総じて本作は、「一本の作品としての出来」と「シリーズの起点としての価値」を分けて評価すべき作品である。後者の観点から見れば、現代スター・ウォーズのアニメ展開を切り開いた、きわめて重要なパイロットにほかならない。
登場要素
本作に登場し、また言及される主な要素を種類ごとに整理して紹介する。並ぶ固有名詞はシリーズ世界を読み解く手がかりだが、初めて触れる人がすべてを覚え込む必要はない。
- アナキン・スカイウォーカー
- アソーカ・タノ
- オビ=ワン・ケノービ
- ヨーダ
- メイス・ウィンドゥ
- パドメ・アミダラ
- レックス大尉
- C-3PO
- R2-D2
- ドゥークー伯爵
- アサージ・ヴェントレス
- ジロ・ザ・ハット
- 分離主義評議会
- TXシリーズ戦術ドロイド
- ジャバ・ザ・ハット
- ロッタ・ザ・ハット(スティンキー)
- ジロ・ザ・ハット
- R2-D2
- C-3PO
- バトル・ドロイド
- スーパー・バトル・ドロイド
- ドロイデカ
- テス
- タトゥイーン(ジャバの宮殿)
- コルサント
- クリストフシス(前哨戦)
- 分離主義の拠点
- 銀河共和国
- ジェダイ・オーダー
- シス
- 分離主義勢力
- クローン軍
- ハットの犯罪一族
- ハイパースペース航路
- ジェダイ・スターファイター
- リパブリック・ガンシップ
- AT-TE
- ツイライト号
- 分離主義フリゲート
- ライトセーバー
- フォース
- ジェダイの師弟(アナキンとアソーカ)
- クローン大戦
- シスの陰謀
- ダークサイド
08主要登場人物
本作の最大の意義は、シリーズを代表する人物アソーカ・タノを世に送り出し、アナキンとの師弟関係を築き上げた点にある。
アソーカ・タノ
本作で初登場するアナキンの新たなパダワン。生意気で直情的だが芯は強く、師アナキンと衝突を繰り返しながら成長していく。登場当初こそファンに歓迎されなかったが、TVシリーズを重ねるうちにフランチャイズ屈指の人気と重要性を誇るキャラクターへと成長し、後には実写ドラマ『アソーカ』で主役の座にまで上りつめる。その出発点となるのが本作である。
アナキン・スカイウォーカー
プリクエル三部作の間、戦時下を生きるアナキンの姿を描く。規律よりも直感を重んじる彼は、弟子アソーカを得たことで初めて「師」としての一面を見せる。映画では語られなかった戦争中の人間味が、本作とTVシリーズを通じて丁寧に描き込まれ、やがて訪れる転落の悲劇にいっそうの厚みを与えていく。
関連リンク
ドゥークーとアサージ・ヴェントレス
ドゥークー伯爵は、ジェダイとハットの離間を狙う陰謀の黒幕。その手駒である暗殺者アサージ・ヴェントレスは本作で本格登場し、TVシリーズで深く掘り下げられる人気の女性ダークサイド使いとなる。ジロ・ザ・ハットは、甥ジャバの座を狙う犯罪者として陰謀の実行役を担う。
舞台と用語
物語の舞台は、絶壁にそびえる修道院を擁する惑星テス、犯罪がはびこる都タトゥイーン、そして政治の中枢コルサントへと移り変わっていく。戦場、裏社会、政治。この三つの空間が、クローン大戦という戦いの多面性を浮かび上がらせる。
用語の面では、クローン大戦、ハイパースペース航路、ジェダイの師弟関係(パダワンは弟子を指す)、そしてシスの陰謀が鍵を握る。本作はTVシリーズへの導入篇であり、こうした用語は事前に暗記するよりも、続くシリーズのなかで自然に理解を深めていくのがよいだろう。
13制作
本作は、ルーカスフィルム・アニメーションが手がける旗艦企画であり、TVシリーズの先行公開を兼ねている。以下、主要な経緯を整理しておきたい。
企画と制作陣
ジョージ・ルーカスが製作総指揮を執り、デイヴ・フィローニが監督を務めた。当初はTVシリーズの一編として制作された映像を、ルーカスの判断で再編集し、新たな場面を加えて劇場版へと格上げした経緯がある。彫刻のように造形された人物像が目を引く独特のセルルック風3DCGは、当時のスター・ウォーズ・アニメの新たな意匠として打ち出された。
音楽と映像
音楽はケヴィン・カイナーが担当した。ジョン・ウィリアムズの主題を尊重しながらも、民族楽器や打楽器を前面に出し、本作ならではのスコアを書き上げている。この音楽路線はその後の『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』『バッド・バッチ』へと受け継がれ、アニメ系列の音楽的アイデンティティとなった。
16公開と評価
本作は2008年8月15日に劇場公開された。劇場映画単体としての批評の評価は厳しく、テレビシリーズのパイロット版を劇場で上映したことへの違和感も指摘された。
だが、本作を起点に始まったテレビシリーズ『クローン・ウォーズ』は、シーズンを重ねるごとに評価を高め、やがてフランチャイズ屈指の傑作と称されるまでになった。本作の歴史的価値は、一本の劇場映画としてよりも、あの壮大なシリーズの出発点にこそ見いだされるべきだろう。
17評価・影響
本作が残した最大の財産は、アソーカ・タノというキャラクター、そしてデイヴ・フィローニが主導するアニメ系列の確立である。ここを起点に『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』『バッド・バッチ』『アソーカ』へと壮大な物語の網が広がり、プリクエルと旧三部作のあいだを豊かに埋めていった。
当初は不評だったキャラクターが、やがて最重要キャラクターへと成長を遂げた一例として、フランチャイズの長期運営を語るうえでたびたび引き合いに出される。
18テーマと解釈
物語の核にあるのは、師弟関係の始まりだ。規律を重んじるアナキンと、直感で動くアソーカ。衝突を繰り返しながら、二人はやがて信頼を育んでいく。だが、後にアナキンが暗黒面へと堕ち、アソーカがジェダイ・オーダーを去ることを知る観客にとって、この出会いは二重の意味を帯びて映る。
もう一つの軸は、戦争が政治と犯罪に絡め取られていく構図である。子ども(ハットの赤子ロッタ)の救出という個人的な物語が、銀河の航路と同盟という戦略に直結し、シスの陰謀に利用されていく。英雄譚の裏でうごめく謀略——プリクエル三部作の主題を凝縮したパイロット作品といえる。
19見る順番
本作は『クローンの攻撃』と『シスの復讐』の間に位置する物語であり、TVシリーズ『クローン・ウォーズ』への導入を担う一作だ。プリクエル映画を観たうえで本作からTVシリーズへと進めば、アナキンと、彼の弟子アソーカの物語がより深く心に響いてくる。
アニメ系列(『クローン・ウォーズ』→『反乱者たち』→『バッド・バッチ』→『アソーカ』)の出発点となる作品である。
20よくある質問
「あらすじだけ知りたい」なら、ロッタ誘拐、テスでの救出、ジロの陰謀露見とハット同盟、この流れさえ押さえれば十分だ。「結末・ネタバレを知りたい」なら、黒幕がドゥークーとジロであること、ハット同盟の成立、そしてアナキンとアソーカが正式な師弟となるまで、ここが核心となる。
「評価を知りたい」なら、劇場映画単体としてではなく、TVシリーズの起点としての価値で観るのがよい。観る順番は、プリクエル映画の後、TVシリーズの前が理想だ。
公開・興行・スタッフ補足
本作は2008年8月15日に北米で劇場公開され、日本でも同年8月23日に封切られた。上映時間は約98分。配給はワーナー・ブラザース、製作はルーカスフィルムとルーカスフィルム・アニメーションが手がけた。
監督を務めたのはデイヴ・フィローニで、長編劇場アニメの監督はこれが初となる。脚本にはヘンリー・ギルロイ、スティーヴン・メリッシュ、スコット・マーフィの三名がクレジットされ、企画を主導したのは製作総指揮のジョージ・ルーカスだ。音楽はケヴィン・カイナーが担当し、ジョン・ウィリアムズのテーマを再構築しながら新たな旋律を紡いでいる。
劇場公開時の全世界興行収入は約6,800万ドル。興行成績こそ控えめに終わったが、本作は同年秋に始まったテレビシリーズ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』の幕開けと位置付けられ、シリーズへの導入役を担った。アソーカ・タノやアサージ・ヴェントレスといった、のちにシリーズの鍵を握る人物が初めて映像作品に姿を見せたのも本作である。
22参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。配信状況や外部評価は変動しうるため、視聴前に公式サイトや各データベースの最新情報を確認されたい。なお本記事の本文は、各種公開情報をもとにAnna Movies用の独自の日本語記事として構成したものである。