01来歴

追放処分と生命の負債
ジャー・ジャー・ビンクスは、ジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス(Star Wars: Episode I – The Phantom Menace)』1999年7月10日日本公開(米国1999年5月19日公開)で初登場するオトラ・ガンガン種族(Otolla Gungan)の男性ガンガン族である。惑星ナブー(Naboo)の水中都市オトー・ガンガ(Otoh Gunga)から不器用さを理由に追放処分を受けた下層出身者で、地上の森林を放浪する最中に、通商連合(Trade Federation)のMTT(Multi-Troop Transport/装甲輸送車)から逃げてきたジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジン(Qui-Gon Jinn/演リーアム・ニーソン)に偶然命を救われる。 ガンガン族の慣習である生命の負債(Life Debt)に基づき同行を申し出、クワイ=ガン・ジンとパダワンのオビ=ワン・ケノービ(Obi-Wan Kenobi/演ユアン・マクレガー)をオトー・ガンガの議場へ案内する役回りを担う。
ボス・ナス引見と救出行同行
『ファントム・メナス』中盤、ジャー・ジャー・ビンクスはオトー・ガンガ議場でガンガン高等評議会代表ボス・ナス(Boss Nass/声ブライアン・ブレッスド)の前に引き出され、本来は追放処分違反として処罰される立場に置かれる。クワイ=ガン・ジンのフォース技法を用いた説得で処罰を免れ、潜水艇ボンゴ(Bongo)の提供を引き出して一行をナブー首都シード(Theed)方面へ案内する。 続いて通商連合のドロイド軍に占拠されたシードからナブー女王パドメ・アミダラ(Padmé Amidala/演ナタリー・ポートマン)を救出する作戦に道案内として同行し、惑星タトゥイーン(Tatooine)を経て銀河共和国首都コルサント(Coruscant)の元老院議場まで随行する。
ブラッシュ・ジェネラルとナブーの戦い
『ファントム・メナス』終盤、パドメ・アミダラがガンガン族の前にひざまずいて援軍を懇願する場面で、ジャー・ジャー・ビンクスはボス・ナスから直接ガンガン大軍(Gungan Grand Army)内の階級ブラッシュ・ジェネラル(Bombad General/ガンガン語でおおよそ「途方もない将軍」の意)を与えられ、ナブー草原地帯(Naboo Plains)の地上決戦ナブーの戦い(Battle of Naboo)に指揮側として加わる。 本人の意図とは無関係な偶然の連続で通商連合のドロイデカ(Droideka)や戦闘ドロイド(B1 Battle Droid)部隊を多数破壊する場面が描かれ、戦勝後はシード王宮前広場の戦勝パレードにパドメ・アミダラやボス・ナスらと共に登場し、物語を締めくくる。
元老院上級代表と非常大権動議
ジャー・ジャー・ビンクスは、ジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ/エピソード2 クローンの攻撃(Star Wars: Episode II – Attack of the Clones)』2002年7月13日日本公開(米国2002年5月16日公開)では、銀河共和国元老院(Galactic Senate)に派遣された惑星ナブー上級代表(Senior Representative)として登場する。ナブー代表団は、暗殺未遂事件の捜査と並行して一時離席するパドメ・アミダラに代わり、ジャー・ジャー・ビンクスへ動議提出権を含む議場代理権限を委ねる。 物語終盤、分離主義勢力(Confederacy of Independent Systems)の脅威に直面した議場で、ジャー・ジャー・ビンクスは最高議長パルパティーン(Sheev Palpatine/演イアン・マクダーミド)への非常大権(Emergency Powers)付与動議を提出し、これが銀河共和国軍(Grand Army of the Republic/クローン・トルーパー軍)の創設を可決させる決定的場面となる。後年シスの計画として明らかになるパルパティーンの権力集中を、本人の善意のまま無自覚に進めてしまう構造的役回りを担う。
クローン・ウォーズでの再登場
ジャー・ジャー・ビンクスは、ジョージ・ルーカス/デイヴ・フィローニ製作総指揮のアニメシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ(Star Wars: The Clone Wars)』2008年10月3日Cartoon Network放送開始(米国)でも重要な脇役として再登場する。シーズン1第8話『ブラッシュ・ジェダイ/Bombad Jedi』2008年11月7日Cartoon Network放送では、サテン・ニコ女王(Queen Neeyutnee)の使節としてロディア星系(Rodia)に派遣されたパドメ・アミダラに同行し、貿易連盟提督ヌート・ガンレイ(Nute Gunray/演シルヴェスター・グロート)の影に阻まれた現地の混乱で道化役と救助役を兼ねる。 続く第12話『ガンガン将軍/The Gungan General』2009年1月9日Cartoon Network放送ではドゥークー伯爵(Count Dooku/演クリストファー・リー)誘拐事件にオビ=ワン・ケノービやアナキン・スカイウォーカー(Anakin Skywalker/演ヘイデン・クリステンセン)と関与し、ガンガン族の戦力支援を担う。シリーズを通じて惑星ナブー代表団側のコメディ・リリーフと外交補佐を兼ねる脇役として継続登場する。
国葬パレードへの無台詞再登場
ジャー・ジャー・ビンクスは、ジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ/エピソード3 シスの復讐(Star Wars: Episode III – Revenge of the Sith)』2005年7月9日日本公開(米国2005年5月19日公開)のラスト近く、ナブー首都シードで執り行われるパドメ・アミダラの国葬パレード場面に、無台詞の短いカットで再登場する。ボス・ナスとガンガン族代表団の隣で隊列に並ぶ姿が確認でき、プリクエル三部作における最終登場場面となる。 パルパティーンへの非常大権付与動議を善意のまま提出した結果として、銀河共和国が銀河帝国に転換する経緯を最も近い場所で目撃する立場に位置付けられ、台詞を失った姿は三部作の結末を象徴する造形として批評的に語られる。
失われたエピソードの中心アーク
『クローン・ウォーズ』シーズン6『失われたエピソード(The Lost Missions)』全13話 2014年3月7日Netflix配信は、Cartoon Networkでの放送が2013年3月に終了したのち、ルーカスフィルムがNetflixと提携して完成済み・未放映のエピソードを一括公開した特別シーズンである。 その第10話『The Disappeared, Part I』/第11話『The Disappeared, Part II』の連続2話アークでは、ジャー・ジャー・ビンクス中心の物語が描かれる。惑星バルドッタ(Bardotta)の女王ジュリア(Queen Julia/ジャー・ジャー・ビンクスの旧知の人物)が消息を絶ったとの一報を受け、銀河共和国元老院から派遣されたジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥ(Mace Windu/演・声サミュエル・L・ジャクソン)と組んでバルドッタへ赴き、古い精神主義教団フロングウェイ・ドサ(Frangawl Cult)による誘拐事件の真相を解明する。メイス・ウィンドゥの厳粛な造形と対比させながら本キャラクターを物語の中心に据えた、数少ない長編アークとして位置付けられる。
02能力・特徴

- ガンガン族の身体能力:両生類的特徴を持つオトラ・ガンガン種族の男性として、長い舌を伸ばして捕食する動作、水中・湿地での高い機動性、地上での跳躍力を備える。ガンガン大軍の伝統装備カータパルト・ブースマ(プラズマ球弾)の使用にも参加する。
- 外交・議場代理権限:銀河共和国元老院に派遣された惑星ナブー上級代表として、動議提出権を含む議場代理権限を持つ。最高議長パルパティーンへの非常大権付与動議はこの権限を経由して可決され、銀河帝国成立の伏線として機能する。
- 幸運に依存した戦闘術:ナブーの戦いでは、本人の意図とは無関係な偶然の連続で通商連合のドロイデカや戦闘ドロイド部隊を多数破壊する。戦果は古典的なスラップスティック・コメディに沿った偶然に頼った成功として演出され、道化役の構造的役割を担う。
03関連人物

04登場・関連作品
05名場面

クワイ=ガン・ジンによる初救助(ファントム・メナス前半):ナブーの森林でMTTから逃げてきたクワイ=ガン・ジンが伏せたジャー・ジャー・ビンクスを偶然救い、生命の負債で一行に同行させる発端の場面。
ボス・ナス引見(ファントム・メナス前半):オトー・ガンガ議場で処罰寸前のジャー・ジャー・ビンクスがフォース説得術で救われ、潜水艇ボンゴを引き出して一行をシード方面へ案内する転換点。
ブラッシュ・ジェネラル任命(ファントム・メナス終盤):援軍を懇願する場面のあと、ボス・ナスがジャー・ジャー・ビンクスにガンガン大軍の階級を授ける。追放者が指揮側へ登用される構造的逆転の場面。
非常大権動議提出(クローンの攻撃終盤):元老院議場でジャー・ジャー・ビンクスがパルパティーンへの非常大権付与動議を提出し、銀河共和国軍創設を可決させる。善意のまま独裁を進める皮肉な場面。
ナブー国葬パレード(シスの復讐ラスト近く):パドメ・アミダラの国葬でガンガン族代表団の隣に並ぶ無台詞の短いカット。台詞を失った姿が銀河帝国転換の目撃者としての立場を象徴する場面。
06制作背景

ジャー・ジャー・ビンクスの声・モーションキャプチャは、米国出身の俳優アーメッド・ベスト(Ahmed Best/1973年8月19日米国ニューヨーク州ブロンクス出身)が担当した。ブロードウェイ/全米ツアー版の打楽器系パフォーマンス・ミュージカル『STOMP(ストンプ)』のキャスト出演中に身体表現力をルーカスフィルム制作陣に評価されて起用され、撮影現場ではモーションキャプチャ・スーツを着用しながらリーアム・ニーソン/ユアン・マクレガー/ナタリー・ポートマンら他キャストと直接対面した状態で演じた。これは実写スター・ウォーズ作品で初めて成立した、主要キャラクターを丸ごとパフォーマンス・キャプチャで演じる方式の出発点となった。
アーメッド・ベストは、道化役としての過剰なキャラクター設計と公開当時の一部の強い批判を本人個人への攻撃として受け止め、長らく公の場での発言を控える時期を経たことを後年のインタビューで明かしている。後年はDisney/Lucasfilm 公式 YouTube 配信のスター・ウォーズ・キッズ向け番組『Jedi Temple Challenge(ジェダイ・テンプル・チャレンジ)』2020年5月配信のホスト『ケレラン・ベック(Kelleran Beq)』役で実写復帰し、ジョン・ファヴロー製作総指揮のDisney+配信ドラマ『マンダロリアン(The Mandalorian)』シーズン3第4話『The Foundling』2023年3月29日Disney+配信で同役を本編内で再演した。これにより、ジャー・ジャー・ビンクスとケレラン・ベックという異なる2キャラクターを実写スター・ウォーズ作品で演じた俳優となった。
ガンガン高等評議会代表ボス・ナス(Boss Nass)の声はブライアン・ブレッスドが、メイス・ウィンドゥの声はサミュエル・L・ジャクソン(Samuel L. Jackson/1948年12月21日米国ワシントンD.C.出身)が担当した。ジャー・ジャー・ビンクスが用いるピジン英語的な言い回し(俗称ガングニーズ/Gunganese)は脚本段階から設計された言語体系で、『meesa』(私)『yousa』(あなた)『bombad』(途方もない/すごい)などの語彙が規則性を持って導入されている。
07評価・考察

ジャー・ジャー・ビンクスは、主に低年齢層の観客を取り込むためのコメディ・リリーフとして導入されたキャラクターで、シリーズの中でも道化役を主要キャラクターに据える数少ない造形として位置付けられる。長く垂れ下がる耳冠や長い舌などの両生類的造形と、ガングニーズ的な独特の言い回しが一体となり、明快な道化役としての存在感を確立している。
一方で『クローンの攻撃』の非常大権付与動議の場面は、本人の善意のまま銀河共和国軍創設=後の銀河帝国化を進めてしまう構造的役回りであり、プリクエル三部作全体でも最も皮肉な政治的場面として批評的に語られる。後年の研究では、ジャー・ジャー・ビンクスを単なる道化役ではなく、無自覚に独裁を成立させてしまう善意の市民のアレゴリーとして読み直す論考も多い。
こうした読解は、ジョージ・ルーカスがプロダクション段階から繰り返し言及していた、ジャー・ジャー・ビンクスを通じて民主主義の脆さを描くというテーマ設計と整合する。『シスの復讐』で台詞を失った姿が銀河帝国成立を最も近い場所で目撃する立場を象徴する造形として語られる点も、この再評価を後押ししている。
08トリビア
- アーメッド・ベストは撮影現場でモーションキャプチャ・スーツを着用しながら他俳優と共演する方式を採り、クワイ=ガン・ジンやパドメ・アミダラとの全シーンを相手役と直接対面した状態で演じた。
- ジャー・ジャー・ビンクスの細く短い耳冠と、ボス・ナスの太く長い耳冠は身分階層を視覚的に示すデザイン要素で、種族内の上下構造をワンカットで成立させる美術設計が用いられている。
- ガングニーズには『meesa』(私)『yousa』(あなた)『bombad』(途方もない)などの規則的な語彙があり、終盤の階級名ブラッシュ・ジェネラルにも『bombad』が用いられ言語設計と設定が直結する。
- アーメッド・ベストは、ジャー・ジャー・ビンクスとケレラン・ベックという異なる2キャラクターを実写スター・ウォーズ作品で演じた俳優となった。
- ジャー・ジャー・ビンクス中心の2話アーク『The Disappeared』は、Cartoon Network放送終了後にルーカスフィルムがNetflixと提携して未放映エピソードを一括公開した特別シーズンで初公開された。
09よくある質問
実写映画ではプリクエル三部作に登場する。『ファントム・メナス』に主要キャラクターとして全幕で、『クローンの攻撃』に元老院ナブー上級代表として登場し、『シスの復讐』ラスト近くの国葬パレードに無台詞で再登場する。アニメ『クローン・ウォーズ』にも脇役として複数エピソードに登場する。
米国出身の俳優アーメッド・ベストが担当した。撮影現場でモーションキャプチャ・スーツを着用しながら他俳優と直接対面して演じる方式で、実写スター・ウォーズ初の主要パフォーマンス・キャプチャ・キャラクターとなった。後年は『マンダロリアン』などでケレラン・ベック役として実写復帰している。
オトラ・ガンガン種族の男性である。両生類的特徴を持ち、垂れ下がる耳冠・突き出た目柄・長い舌を備えるガンガン族で、惑星ナブーの水中都市オトー・ガンガを拠点とする。細く短い耳冠は下層出身者であることを視覚的に示す。
『クローンの攻撃』終盤、分離主義勢力の脅威に直面した元老院で、ジャー・ジャー・ビンクスがパルパティーンへ非常大権を付与する動議を提出する。可決により最高議長は銀河共和国軍の創設権限を得た。善意のまま独裁を後押しする、三部作屈指の皮肉な場面とされる。
『ファントム・メナス』終盤にボス・ナスからジャー・ジャー・ビンクスへ与えられるガンガン大軍の階級である。『bombad』はガングニーズで『途方もない/すごい』を意味する。追放処分を受けた下層出身者が指揮側に登用される構造的逆転を示す称号である。