11ストーリー解説
物語はネルフ本部で進行する大規模な設備換装作業の最中に始まる。新システムへの切り替えが進む途中、本部のみならず第3新東京市全体を巻き込む完全停電が突如発生する。非常用のバックアップ電源すら立ち上がらず、地下のジオフロントは文字どおり「静止した闇」に沈む。指揮系統は一瞬で麻痺し、何が起きたのか誰も把握できないまま事態が動き出す。
司令室では葛城ミサト、赤木リツコ、伊吹マヤ、青葉シゲル、日向マコトらが暗闇の中で状況確認に追われる。予備電源まで落ちている異常事態に、リツコは原因を外部変電施設での爆発と突き止める。単なる事故なのか意図的な破壊工作なのかで見方が割れ、内部犯やテロの可能性も疑われるが、確証は得られないまま時間だけが過ぎていく。

その頃、碇ゲンドウと冬月コウゾウは外部からの帰路、超音速輸送機の機上にあって本部と連絡が取れずにいた。眼下に広がる光景を眺めながら二人は静かに言葉を交わし、現場の指揮を葛城ミサトに委ねるほかない状況を受け入れる。司令官不在のまま、危機対応はミサトたち現場スタッフの双肩へとのしかかっていく。
一方、碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの三人は本部内で行動していた折に停電に遭い、真っ暗な施設内に閉じ込められてしまう。明かりのない通路や梯子を手探りで進みながら、アスカは不満を口にし、シンジは戸惑い、レイは淡々と歩を進める。性格のまるで違う三人が暗闇の中で行動を共にし、少しずつ距離を縮めていく。

調査が続く中、レーダーが本部上空へ接近する物体を捉える。第9の使徒マトリエルである。蜘蛛のように細長い四本脚と巨大な単眼を持つこの使徒は、体から強酸性の溶解液を滴り落とし、ジオフロントを守る何層もの装甲を上から少しずつ溶かして内部への侵入を図ろうとしていた。停電のさなかを突いた、最悪のタイミングの襲来だった。
電力喪失で迎撃機構が死んでいるため、手の打ちようがない。溶解液は分厚い装甲板を一枚また一枚と貫いていき、マヤらは中央ドグマ到達までの残り時間を必死に計算する。電力がなければエヴァンゲリオンも発進できず、ミサトたちは「動かせない」という絶望的な制約のもとで打開策を迫られることになる。

熟慮の末、ミサトは三機すべてのエヴァを手動で発進させる決断を下す。カタパルトが使えないため、エヴァ自身が発進路をよじ登って地上を目指すという力技が選ばれた。残されたわずかな電力をかき集め、零号機・初号機・弐号機の三機が、暗いシャフトの壁面を自力で這い上がっていく緊迫の場面が展開する。
地上へ到達した三機は、頭上から滴り落ちる溶解液を遮蔽しながらマトリエルへと肉薄する。シンジ、アスカ、レイの呼吸を合わせた連携で、三方向から同時に使徒の単眼=コアを攻撃し、これを貫いて撃破する。電力なき絶望的状況を、パイロットと現場スタッフの結束だけで乗り切った瞬間だった。

使徒の消滅から間もなく電力も復旧し、司令室には大きな安堵が広がる。深刻な戦闘というより、「停電」という日常的トラブルと現場の奮闘を、ブリッジクルーや子どもたちの視点から描いた本話は、緊迫の中にユーモアと人間味が色濃く漂う。暗闇を共にくぐり抜けた三人のパイロットの間にも、確かな連帯感が芽生えていた。


