22ストーリー解説
冒頭、ドイツでの過去が描かれる。アスカの母・惣流・キョウコ・ツェッペリン博士はエヴァンゲリオン弐号機の起動実験(接触実験)に臨むが、その事故で心の一部を機体に取り込まれ、精神を病んでしまう。以後キョウコは入院生活を送り、現実の娘アスカを認識できなくなっていく。物語はこの母娘の悲劇を、本編で起きる出来事の伏線として静かに提示する。
幼いアスカはエヴァのパイロット「セカンドチルドレン」に選ばれ、誇らしさで胸をいっぱいにして母の病室へ駆け込む。しかしキョウコは一体の人形を「アスカ」と呼んで抱きしめ、本物の娘には目もくれない。やがて母は人形に「一緒に死にましょう」と語りかけるまでになり、アスカは自分が母の中で人形にすり替えられた事実を突きつけられる。

ある日、アスカは病室で首を吊って自殺した母の姿を発見する。母は例の人形と共に死を選んでいた。葬儀の場で雨に打たれながらも、アスカは「もう泣かない」「一人で生きていける、大人になる」と心に誓う。誰にも頼らず、強く在ろうとする彼女の頑なな自尊心が、この喪失から生まれたものであることが明かされる。
現在、アスカはエヴァ弐号機との シンクロ率の低下に苦しんでいる。かつてのトップパイロットとしての自負を支えに生きてきた彼女にとって、操縦できなくなることは存在価値そのものの崩壊を意味する。焦りと苛立ちを募らせるアスカは、シンジやレイへの当たりも強くなり、追い詰められた精神状態のまま次の戦いへ向かうことになる。

第15使徒アラエルが、はるか上空・成層圏外の高軌道に出現する。鳥のような光の翼を広げたその使徒は、物理的に手の届かない高度に静止しており、ネルフの通常兵装やエヴァの射撃ではまったく届かない。作戦会議が紛糾するなか、低下するシンクロ率を払拭し自分の価値を証明しようと、アスカは強引に出撃を志願する。
弐号機で出撃したアスカは、パレットライフルなどで応戦するも弾はアラエルに遠く及ばない。その瞬間、アラエルははるか上空から一条の光の柱をアスカへ照射する。それは肉体ではなく精神を侵す攻撃だった。光はアスカの心の奥底へと侵入し、彼女が最も触れられたくない記憶と感情を無理やり暴き始める。

アラエルの光はアスカの精神を直接「尋問」する。「なぜエヴァに乗るのか」と問い、彼女が操縦を唯一の存在証明・他者から認められる手段にしてきた事実を白日の下に晒す。封印してきた母キョウコの狂気と自殺、見捨てられた孤独、加持への思慕や満たされぬ承認欲求まで、心の最も柔らかい部分が次々と引きずり出されていく。
記憶を蹂躙されたアスカは絶叫する。「違う!」「やめて!」「犯さないで!」と叫びながら、母に振り向いてほしかった幼い自分の声と、強く在ろうとする現在の自分が引き裂かれていく。プラグ内で身をよじり泣き叫ぶアスカのシンクロ値と精神汚染を、ミサトたち司令部はなすすべもなく見守るしかなく、彼女の心は急速に壊れていく。

高軌道のアラエルに届く手段として、ネルフ本部最深部に保管されていたロンギヌスの槍が投入される。綾波レイがエヴァ零号機でこれを携え、渾身の力で槍を成層圏外へと投擲する。ロンギヌスの槍は大気圏を貫いて宇宙空間へ飛翔し、アラエルを正確に射抜いて使徒を完全に消滅させる。槍はそのまま地球を離れていく。
使徒は倒されたものの、アスカの心は致命的に破壊されていた。精神を隅々まで暴かれ蹂躙された彼女は、自尊心という最後の拠りどころを失い、ほとんど抜け殻のような虚脱状態で回収される。「せめて、人間らしく」生きたいと願いながら、戦いに勝っても何ひとつ救われなかったアスカの完全な崩壊が、ここから始まっていく。


