プリベット通り4番地で、ハリーは叔母マージを風船のように膨らませて家を飛び出す。深夜のロンドンを暴走する三階建てのナイト・バス、漏れ鍋に集まる魔法省、そして十二年前に十三人を殺害した罪でアズカバンに収監されていた囚人シリウス・ブラックの脱獄——魔法学校3年目のハリーを待つのは、両親が遺した最後の物語と、彼自身がついに父と同じ姿を取り戻す『守護霊(パトローナス)』である。
前2作のクリス・コロンバスから、メキシコ出身の名匠アルフォンソ・キュアロンに監督が交代した本編シリーズ第3作。脚本はスティーヴ・クローヴスが続投、製作はデヴィッド・ヘイマン、撮影はマイケル・セレシン、編集はスティーヴン・ヴァイスバーグ、衣装はジャニー・テミーム。ワーナー・ブラザース/ヘイデイ・フィルムズ/1492ピクチャーズ製作、上映時間142分。
1993年夏のプリベット通りから始まり、1994年初夏までの一年間を描く。本作はシリーズで初めてヴォルデモートが画面に登場しない一作であり、その代わりに『十二年前にヴォルデモートの命令で十三人を殺害したとされる男シリウス・ブラックの脱獄』を縦糸に、ハリーの両親の世代の物語が初めて開示される転換点となる。
公開時の批評家支持率はシリーズ全作中でも上位に位置づけられ、後年の再評価でもファン投票で最高の一本に選ばれることが多い。第77回アカデミー賞では作曲賞(ジョン・ウィリアムズ)と視覚効果賞にノミネート、第31回サターン賞ファンタジー映画賞などを受賞。全世界興行収入は約7億9600万ドル、日本国内では約135億円を記録した。
マージの膨張、ナイト・バス、ホグワーツ特急の吸魂鬼、ルーピンの闇の魔術防衛術、バックビークの授業と裁判、忍びの地図、叫びの屋敷の真相、ピーター・ペティグリュー=スキャバーズの正体、ルーピンの人狼化、タイムターナーによるバックビーク救出とシリウスの逃亡、そしてハリーが牡鹿の守護霊を放つ瞬間まで、結末を前提に踏み込む。
目次 42項目 開く
概要
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban)は、アルフォンソ・キュアロンが監督し、2004年5月31日に英国、6月4日に米国、同年6月26日に日本で公開されたファンタジー映画である。J.K.ローリングのベストセラー小説『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(1999)を原作とし、前2作『賢者の石』『秘密の部屋』に続く本編シリーズ第3作にあたる。脚本はシリーズの大半を担当するスティーヴ・クローヴスが続投し、製作はデヴィッド・ヘイマン、配給はワーナー・ブラザースが担った。
本作の最大の特徴は、前2作のクリス・コロンバス監督による『暖かく賑やかな童話としてのホグワーツ』から、メキシコ出身のアルフォンソ・キュアロン監督による『湿った霧と高地の風が吹き抜けるリアリズムのホグワーツ』へと、シリーズの映像言語が大きく転換した点にある。キュアロンは『天国の口、終りの楽園。』『リトル・プリンセス』を経て、後に『ゼロ・グラビティ』『ROMA/ローマ』でアカデミー賞監督賞を二度受賞することになる名匠である。スコットランド高地の本物の山岳地帯がホグワーツの背景として大々的に取り入れられ、湖、橋、暴れ柳の周囲の風景は、本作以降のシリーズ全体に継承される地理的アイデンティティの基礎となった。
物語は、夏休みのプリベット通りで叔母マージを風船のように膨らませてしまったハリーが、深夜の家出の途中で三階建ての魔法バス『ナイト・バス』に拾われ、ロンドンの漏れ鍋でコーネリウス・ファッジ魔法大臣と再会するところから動き出す。彼を待ち受けるのは、十二年前にヴォルデモートに仕え、その失脚の夜にロンドンの大通りで一度に十三人を殺害したとされる男——アズカバンから史上初めて脱獄した囚人、シリウス・ブラックの影である。学校を守るために配置された吸魂鬼(ディメンター)、新任教師リーマス・ルーピン、忍びの地図、ヒッポグリフのバックビーク、そして終盤の叫びの屋敷で開示される『真の犯人』の正体が、本作の縦糸を編み上げる。
本記事は結末を含む全編の内容に踏み込む。叫びの屋敷で明かされるシリウスとピーター・ペティグリューの真相、ルーピンが人狼であった事実、ハリーがタイムターナーでバックビークとシリウスを救う構造、そして彼が初めて完全な守護霊を放つ瞬間まで、すべて記述する。物語の重大な驚きを保ちたい場合は、先に本編を鑑賞してから読み進めることを勧める。
- 原題
- Harry Potter and the Prisoner of Azkaban
- 原作
- J.K.ローリング(1999年・ブルームズベリー)
- 監督
- アルフォンソ・キュアロン
- 脚本
- スティーヴ・クローヴス
- 音楽
- ジョン・ウィリアムズ
- 撮影
- マイケル・セレシン
- 美術
- スチュアート・クレイグ
- 編集
- スティーヴン・ヴァイスバーグ
- 公開
- 2004年5月31日(英国)/6月4日(米国)/6月26日(日本)
- 上映時間
- 142分
- ジャンル
- ファンタジー、ミステリー、青春劇、タイムトラベル要素
- 舞台
- 1993-1994年の英国(プリベット通り/漏れ鍋/ホグワーツ城/ホグズミード村/叫びの屋敷)
あらすじ
以下は結末までを含む全編のあらすじである。プリベット通りでマージを膨らませて家出するところから、ナイト・バスとロンドンの漏れ鍋、ホグワーツ特急の吸魂鬼、ルーピンとリディクラス、バックビークの初授業、忍びの地図、ホグズミードでのフィルチへの隠密、トレローニーの占い学、バックビークの裁判、暴れ柳と叫びの屋敷、シリウスとピーター・ペティグリューの真相、ルーピンの人狼変身、湖畔の吸魂鬼と牡鹿の守護霊、タイムターナーでの遡行とバックビーク/シリウスの脱出までを順に追う。
プリベット通りとマージおばさんの膨張
1993年夏、十三歳になったハリー・ポッターは、相変わらずサリー州のプリベット通り4番地、叔父バーノンと叔母ペチュニアのダーズリー家で居心地の悪い夏休みを過ごしている。深夜の自室で毛布の下に潜り込み、こっそりと魔法を使わずに杖の先を光らせて教科書を読み進める少年の姿が、本作の冒頭である。前作までと比べて、彼を撮るカメラの位置、寝室のなかの光の温度、ベッドの下から這い出すような構図——そのすべてが、明らかに前2作のコロンバス調から離れ、キュアロンの新しい映像感覚へと観客を導いていく。
翌日、叔父バーノンの妹マージ・ダーズリーが愛犬リッパーを連れて長期滞在に訪れる。マージはバーノンを溺愛し、ハリーの両親——とりわけ亡き母リリー——を口汚く罵ることに躊躇のない女性である。夕食の席で彼女は赤ワインを浴びるように飲みながら、『血統が悪い犬は、雌が悪いから生まれてくるんだ。お前の母さんも欠陥があった』とハリーに向けて吐き捨てる。卓上のグラスがハリーの怒りに呼応してひびを入れ、皿が震え、シャンデリアが揺れる。マージ自身は気づかないまま、両親の話を続けるその口の端から、彼女の体は徐々に風船のように膨らんでいく。
杖を持っていないにもかかわらず、ハリーの怒りがマージを巨大な人型風船に変えてしまったのである。ベルトを破り、ドレスを引き裂き、リッパーが吠えながら追いかけるあいだ、マージは天井に頭をぶつけながら煙突から夜空へと浮き上がっていく。激昂したバーノンに『どんな手段を使ってでも元に戻せ』と杖を突き付けられたハリーは、トランクを引きずってヘドウィグの鳥籠を抱え、夜のプリベット通りを家出する。
暗い住宅街の生垣のあいだに、彼を見つめる一対の黄色い目が一瞬光る。大きな黒い犬の影が、街灯の向こうに静かに立っている。ハリーは思わず杖を構え、自分でもそうとは知らずに、その瞬間、未来の自分の運命のもう一方の主——名付け親シリウス・ブラックのアニメーガス姿——と最初の対面を果たしている。だが彼は犬の正体を知らないまま、後ずさった拍子に道路の縁に倒れ込み、その直後、夜の通りを切り裂くようにして、紫色の派手な装飾を施した三階建ての二階建てバスが轟音を立てて急停車する。
ナイト・バスと漏れ鍋、ファッジとの会見
車掌スタン・シャンパイクと運転手アーニー・プラングが切り盛りする魔法の緊急交通機関『ナイト・バス』が、ロンドンとイギリス全土を、信号も渋滞も無視して時速二〇〇マイルで疾走する。三階建てのバスの内部にはベッドが並び、振動のたびにシャンデリアと衣装ダンスが床を滑る。ハリーは『ニール・トーマス』と偽名を告げてバスに乗り込み、ロンドン中心部の魔法使い専用旅館『漏れ鍋』へと運ばれる。バスの天井近くに吊るされた『不気味な男の絵』が、生放送のニュースのように『シリウス・ブラックは脱獄した』と告げる映像が、観客にとって本作の悪役の名前と顔の初提示となる。
漏れ鍋でハリーを出迎えるのは、思いがけずコーネリウス・ファッジ魔法大臣本人である。ファッジは、十三歳の少年が魔法省の追跡を逃れて深夜のロンドンに到着したことに対し、本来であれば未成年の魔法使用禁止違反として厳しい処分を下す立場にある。しかし彼はハリーをほぼ叱責せず、温かい紅茶を出し、宿の上等な部屋を確保し、ホグワーツ特急の発車までこの宿で待つようにとだけ告げる。マージの記憶は魔法省の不適切魔法使用班が事後修正し、何事もなかったことにされる。
ファッジが普段の規則違反者への厳格さを脇に置いてまでハリーを優遇する理由は、本作の序盤では明示されない。だが終盤になって観客に明かされるのは——『シリウス・ブラックという脱獄囚は、ハリー・ポッターを殺すために脱獄した。だから、決してハリーに一人で街を出歩かせるわけにはいかなかった』という、魔法省側の極めて重い情勢判断である。ファッジは温和な紳士の仮面の下で、自分の任期中に『生き残った男の子』を殺させる結末への恐怖と政治的計算を抱えているのである。
ダイアゴン横丁で休暇を待つあいだ、ハリーは新型箒『ファイアボルト』のショーウィンドウの前で時を忘れる。やがて再会したハーマイオニーとロンも漏れ鍋に合流する。ロンの父アーサー・ウィーズリーは、人混みのなかでハリーをそっと脇に引き寄せ、彼に対して『シリウス・ブラックが脱獄した。そして彼は、君を狙っている。城を出るな、絶対に城を出るな』と、声をひそめて警告する。ハリーは、自分が誰かの命を狙われているという情報を、ここで初めて手にする。
ホグワーツ特急の吸魂鬼とリーマス・ルーピン
九月一日、ハリー、ロン、ハーマイオニーはキングス・クロス駅の9と3/4番線からホグワーツ特急に乗り込む。同じコンパートメントには、すりきれたローブを着てトランクを枕に眠りこける一人の若い男が座っていた。トランクには擦り消えかかった字で『R・J・ルーピン教授』と書かれている。新任の闇の魔術防衛術教師である。今年もこの席は呪われ続け、新しい人物がそこに座っているのである。
列車がスコットランド高地のどこかで急停車する。窓は外側から霜で覆われ、車両のなかの灯りが一斉に消える。誰かが乗り込んだ気配が、廊下の床板を一歩ずつ軋ませながら、ハリーたちのコンパートメントへ近づいてくる。引き戸がゆっくりと開き、扉枠を覆って、ぼろぼろの黒い衣をまとった背丈三メートル近い影が、骨ばった指で空気をかきながら立っている——アズカバンの看守、吸魂鬼(ディメンター)である。
吸魂鬼はハリーを認めると、骨と灰の臭いを放ちながら少年の上に身を屈め、口元から白い吐息のような魂を吸い出し始める。ハリーの耳の奥には、聞いたこともない女性の悲鳴——『ハリー、ハリーをよこさないで、私を殺して、息子だけは——』——が遠く反響している。それが何の声であるかを、彼自身もこの時点ではまだ知らない。気を失いかけたハリーの前で、目を覚ましたルーピンが杖を構え、白く銀色に輝く光を放つ。『エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)』——吸魂鬼は退き、列車のなかに灯りが戻る。
ルーピンは溶かしたチョコレートをハリーに渡し、『食べなさい。気分が良くなる』とだけ告げる。彼はその場でハリーの過去——一歳のときに母リリーが自分を守って死んだ、その記憶——を察したと思われるが、ハリーには何も問わない。彼は彼に教師としての最初の手当てを与え、深く眠るために再び目を閉じる。本作で最も重要な大人の一人であり、シリーズ全体で最後まで観客の信頼を裏切らない人物の最初の登場である。
ホグワーツの新学期と新任教師たち
ホグワーツの大広間。組み分け帽の歌が終わったあと、ダンブルドアが新学期の演説を行う。本年度、城の外周には魔法省の命令でアズカバンの看守——吸魂鬼——が配置される。『シリウス・ブラックを城内に入れないため』である。校長はその場の生徒たちに対し、吸魂鬼は変装を見抜けず、トリックや透明マントを通さず、無慈悲な存在であることを強い言葉で告げる——『彼らに、人の最も暗い記憶を糧にすることを忘れてはならない』。
新任教師は二人。闇の魔術防衛術にリーマス・ルーピン、そして魔法生物飼育学に、長年補助役を務めてきたハグリッド本人が、生徒に教える側として正式に着任する。豪快な歓声のなかで、ハグリッドは恥ずかしげに長靴の踵をすり合わせ、深い緋色の上着の襟を整える。前作までは森番として影に立っていた巨人の血を引く男が、初めて教師の肩書きを得る瞬間である。
ダンブルドアは、もう一つの新任を告げる。占い学のシビル・トレローニー教授——彼女が物語の中盤に重大な『第二の予言』を口にすることになるとは、この場では誰も知らない。教師席の端に座る黒い髪のセブルス・スネイプは、ルーピンに向ける視線を一度も外さない。スネイプとルーピンには、観客がまだ知らない学生時代の長い歴史があり、本作はその歴史を四半周だけ開示する物語でもある。
ヒッポグリフのバックビークと初授業
ハグリッドの最初の魔法生物飼育学の授業は、禁じられた森の縁にある彼の小屋の脇の広い草地で行われる。生徒たちが教科書『怪物的な怪物の本』を開こうとすると、本そのものが牙を剥いて噛み付こうとする——ハグリッドが熱意のあまり選んだ『生きている教科書』である。背の表紙をなでてあやさないとページが開かないというこの教科書のジョークは、本作の数少ない笑いの源として、観客の印象に長く残る。
ハグリッドが連れてきたのは、馬の胴と鷲の翼と頭、そして鋭い爪を持つ巨大な魔法生物——ヒッポグリフのバックビークである。ハグリッドは生徒たちに『ヒッポグリフは誇り高い生き物だ。決して馬鹿にしてはならない。挨拶は深いお辞儀から、ヒッポグリフがお辞儀を返してくれて初めて触ることが許される』と教える。最初に手を挙げたハリーが、深く一度お辞儀をし、バックビークが翼を広げて頭を下げ返す瞬間、本作で最も穏やかに美しい数十秒が画面に置かれる。ハリーはバックビークの羽を撫で、続いてその背に乗せられ、ホグワーツの上空を旋回する。湖の真上を低く飛び、両翼で水面を撫でていく場面は、本作の予告編にも多用されたシリーズ屈指の名場面である。
だが、その直後、ドラコ・マルフォイがハリーを真似てバックビークに近づき、お辞儀を省略したまま『こんな鶏みたいな獣を恐れろっていうのか』と侮蔑する。誇りを傷つけられたバックビークは鋭い爪を一閃させ、ドラコの右腕を切り裂く。本作の縦糸を支配することになるもう一つの裁判——『ヒッポグリフ処分裁判』——が、ここで密かに始まる。マルフォイ家の当主ルシウスが、息子の負傷を口実に、ホグワーツ理事会と魔法生物危険分類委員会を動かして、バックビークを処刑させようと画策していく。
リディクラスと『闇の魔術防衛術』、まね妖怪の授業
ルーピンの最初の本格的な授業は、教員談話室の古い衣装ダンスの前で行われる。中に潜んでいるのは、まね妖怪『ボガート』——見る者がもっとも恐れる姿に瞬時に変身する低位の闇の魔法生物である。ルーピンは生徒たちに対し、ボガートに対処する唯一の方法は『恐怖を笑いに変えること』であり、その呪文は『リディクラス(馬鹿馬鹿しくしろ)』であると教える。
ネビル・ロングボトムが最初に呼ばれる。彼の最大の恐怖はセブルス・スネイプである。衣装ダンスから現れたボガートは、即座にスネイプの姿を取って迫る。ルーピンはネビルに『君の祖母を思い浮かべろ。スネイプを彼女の服装で覆ってしまえ』と耳打ちする。ネビルが杖を振って『リディクラス』と叫ぶと、ボガート=スネイプは、突然、赤いショールに緑のドレス、頭頂に巨大なハゲワシ剥製の帽子を載せた格好に変じ、教室は爆笑に包まれる。続けて生徒が一人ずつ前に出て、それぞれの恐怖を笑いに変換していく——ロンの巨大蜘蛛にはローラースケートを履かせて床を滑らせる、というように。
ハリーの番が来る寸前、ルーピンは彼を止めて自分の前にボガートを引き寄せる。ハリーのボガートが何になるかを確かめる前に、講師が自ら締めることを選んだのである。ルーピン自身の前に現れたボガートは、白く丸い天体——『満月』——の姿を取り、観客の目には小さな違和感として残る。授業の終わりに、ハリーはルーピンに『あなたは僕を信用していないんですか?』と詰め寄る。ルーピンは穏やかに答える——『そうじゃない、ハリー。私が恐れたのは、君のボガートが何の姿を取るかではなく、君が何を恐れているかを、教室の全員に晒したくなかっただけだ』。本作の物語が後に明かす『ハリーの最大の恐怖は、ヴォルデモートではなく、吸魂鬼そのものである』という事実を、ルーピンはこの時点ですでに察している。
クィディッチと吸魂鬼、雷雨の試合
ハッフルパフ戦のクィディッチが、シリーズ屈指の暴風雨のなかで開催される。空は黒い雲に覆われ、雷鳴と豪雨でゴーグルの内側まで水が入り込み、選手たちは互いの位置を確認することもできない。ハリーは雷を分かちながら金のスニッチを追って高空へ昇るが、その瞬間、上空に集まっていた数十体の吸魂鬼が、彼の周囲を黒い渦のように取り囲む。
彼の耳には、列車のなかで聞いたあの女性の悲鳴が、今度は前よりはっきりと再現される。それは、彼の母リリー・ポッターの最後の声である。一歳のハリーをゆりかごのなかで抱きしめ、ヴォルデモートに『ハリーを殺さないで、代わりに私を殺して』と懇願する母の声だった。ハリーは意識を失い、ニンバス2000から数百フィート下のクィディッチ・ピッチへ落下する。
ダンブルドアが間一髪、落下中のハリーの真下に魔法のクッションを置いて命を救う。だが、ハリーの愛用箒ニンバス2000は、競技場の脇の暴れ柳に流されて吹き飛び、枝にずたずたに引き裂かれて、ばらばらの破片となって落ちる。試合自体はハッフルパフのキャプテン、セドリック・ディゴリーの誠実な判定(彼は試合終了後、『これは公平な勝利ではない、再戦したい』と申し出るが、グリフィンドール側が辞退する)によって決着する。本作で初登場する好青年セドリック・ディゴリーの像が、ここで観客の記憶に残る。後の第4作『炎のゴブレット』で彼を待つ運命を考えると、この場面の彼の優しさは、シリーズ全体のなかで二度と取り戻せない優しさである。
ホグズミード村と忍びの地図
ホグワーツ三年生から、生徒たちは保護者のサインを携えて週末ごとにホグズミード村への外出が許可される。藁葺き屋根が連なる魔法使い専用の村、白い湯気が立ち上る三本の箒亭、ペスト撲滅期の薬草書を扱う書店、悪戯専門店ゾンコ、お菓子屋ハニーデュークス、そして村外れに荒れ果てたまま放置された『叫びの屋敷』——イングランドで最も激しく霊が出るとされる屋敷の輪郭が、雪に覆われた峠の向こうに立っている。
ハリーだけは、唯一の保護者であるバーノンがサインを拒否したため、許可証を持っていない。彼はホグワーツに居残ることが決まり、雪の校庭をうらやましげに眺める。そんなハリーに、フレッドとジョージのウィーズリー双子が校内のひと気のない廊下に彼を引っ張り込み、フィルチの倉庫から十数年前に拝借したという『古い羊皮紙』を手渡す。何の変哲もない真っ白な羊皮紙だが、杖でその上を叩いて『我、ここに誓う、よからぬ事をたくらむ者なり』と唱えると、墨の線が放射状に広がり、ホグワーツ城のすべての通路、隠し部屋、階段、人物の位置を点と名前で示す『忍びの地図』が現れる。
地図の作者として下部に書き出されている四つの綽名——『ムーニー(月)/ワームテール(虫尾)/パッドフット(足長)/プロングス(枝角)』——が、本作の最終的な伏線となる。観客はまだその意味を知らない。地図には、城の外と城内のすべての人物の位置がリアルタイムで示されており、ハリーは『一本目の通路(ハニーデュークスの地下倉庫直通の秘密通路)』を使い、誰にも見られずホグズミード村に出る。
村の三本の箒亭の暖炉前で、ハリーは透明マントの下から、コーネリウス・ファッジとマクゴナガル教授、フリットウィック教授、ハグリッドが声を潜めて語り合う場面に居合わせる。そこで初めて、観客にも明示的に告げられる真相がある——『シリウス・ブラックはハリーの両親と親友だった。ジェイムズ・ポッターと兄弟のように育った男だった。それなのに、ブラックは自分が秘密の番人を引き受けたあと、十二年前のあの夜、ポッター家の住所をヴォルデモートに売った。彼こそが、リリーとジェイムズの死の直接の原因なのだ』。テーブルの下で透明マントに覆われたまま、ハリーは涙が頬を伝うのを止められない。彼にとって、シリウス・ブラックという男が単なる脱獄囚から、両親を売った許せない裏切り者に変わる瞬間である。
占い学とトレローニーの予言
北塔の天井裏にしつらえられた、巨大な天文台のような円形の塔の最上階で、占い学の教室は開かれる。教壇に立つのは、薄手のショールを何重にも巻き、底の厚い眼鏡で目を奇妙に拡大して見せる、不思議な雰囲気の女性——シビル・トレローニー教授である。エマ・トンプソンが演じるトレローニーは、お茶の葉占い、水晶玉、手相を素材に、生徒一人ひとりの未来を読み取ろうとする。
彼女は授業の冒頭でハリーに視線を留め、『あなたは犬を見たわね、最近、見たことのない大きな黒い犬を』と問いかける。ハリーは思い出す——プリベット通りで生垣の向こうに見た、あの黒い犬の影を。トレローニーは深刻な顔で告げる——『それは死神犬(グリム)。教会の庭に住む巨大な犬の形を取って、人に死を予言する不吉な霊獣よ』。ロンとハーマイオニーは顔を見合わせる。ハリーの背筋に冷たいものが走る。
ハーマイオニーは早々に『占い学は曖昧で、推論ではなく印象を弄ぶだけの学問だ』と判断し、終盤、教室を派手に飛び出してこの授業を放棄する。だが、本作の終盤近く、年度最後の試験のために残ったハリーがトレローニー教授の前に座ったその瞬間、彼女の声が突然、低い別人のような響きに変わり、目の焦点が宙に固定される。彼女自身がそうとは知らぬまま、彼女は『真の予言』を口にする——『今夜、闇の帝の従僕は、十二年の鎖を断ち、主のもとへ帰る。従僕の助けを得て、闇の帝は再び立ち上がるだろう……前より強く、より恐ろしい姿で』。我に返ったトレローニーは何も覚えていない。彼女が予言を発した直後の本人だけは、毎回その記憶を失う——それが真の予知の代償である。
バックビーク裁判とハーマイオニーの苦悩
雪が解け始める頃、魔法生物危険分類委員会はバックビーク処刑の正式決定を下す。ルシウス・マルフォイ家の圧力と、息子ドラコの傷を口実に、ヒッポグリフは『生徒を襲った危険生物』として処分される運命にあった。執行はその年の六月、満月の翌日。執行人マクネアが、城の上方からハグリッドの小屋の脇まで斧を担いで降りてくる場面が、後の物語の重要な節目を形成する。
ハーマイオニーは秘密裏に法律書を読み漁り、ハグリッドの控訴文を仕上げる。彼女は本作で、占い学を放棄する一方、古代ルーン文字、数占い、マグル学、変身術、闇の魔術防衛術、薬草学、魔法薬学、魔法生物飼育学のすべてを並行履修するという、物理的に不可能な過密スケジュールを抱えている。同じ授業時間に二つの教室で目撃された、廊下で消えたり再び現れたりする、というハリーとロンの目撃証言が、地味ながらも作中の重要な伏線として観客に示されていく。
終盤に明かされる答えは——マクゴナガル教授がハーマイオニーに対し、彼女の真剣な学業のために魔法省から特別貸与された『タイムターナー(逆転時計)』を、彼女は首から下げて使用していた——というものである。一日に複数回、過去の数時間に戻って同じ時間帯に別の教室に出席するという、極めて高い倫理的負荷を持つ道具を、本作のハーマイオニーは黙って一人で背負っていた。
また、ハーマイオニーは魔法生物店で出会った、毛むくじゃらで顔のつぶれた獰猛なオレンジ色の猫『クルックシャンクス』を本作で迎え入れる。彼女の新しい飼い猫は、ロンのペットの茶色いネズミ『スキャバーズ』に執拗に襲いかかり、ロンを激怒させる。だが、クルックシャンクスのこの執着もまた、本作の最大の伏線である——彼は半分ニーズル(賢猫)の血を引いており、スキャバーズが本当はネズミではないことを、本作で最初から見抜いている唯一の存在なのである。
ハリーの守護霊訓練
クリスマスの夜明けに、ハリーの寝台の足元に、差出人不詳の長い包みが置かれる。中身は世界最速の競技用箒『ファイアボルト』だった。マクゴナガル教授は危険を察し、シリウス・ブラックからの可能性があるとして箒を一時没収するが、後にこれは——観客には伏線として示される通り——シリウス本人がハリーの十三歳の誕生日と名付け親としての義務を果たすために、ロンドンの箒店からふくろう便で送ったものだった。
クィディッチでの落下以後、ハリーは吸魂鬼に対する自衛の必要を切実に感じている。彼はルーピンに『あの呪文を、僕に教えてほしい』と頼み込む。ルーピンは引き受ける。空き教室にしつらえられたトランクのなかにボガートを閉じ込め、ハリーの最大の恐怖である『吸魂鬼そのもの』を擬似的に出現させて練習相手とする方法が選ばれる。
守護霊呪文『エクスペクト・パトローナム』は、人生でもっとも幸福で力強い記憶を一つだけ思い浮かべ、その記憶の輝きを杖の先から放つ、極めて高度な魔法である。ハリーは何度も失敗する。最初に思い浮かべた『プラットフォーム9と3/4で初めてホグワーツ特急を見たときの感激』では、銀色の薄い霧が一瞬出るだけで、ボガート吸魂鬼を退けられない。ルーピンは静かに教える——『もっと深い、誰にも譲れない幸福の記憶を選びなさい』。
ハリーがついに見つける記憶は、両親が生きていた一歳の頃の、写真の中だけにあるあの夜の光景——ジェイムズが赤ん坊だった自分を抱き上げ、リリーが微笑む、ホームムービーのようなほんの数秒——だった。その記憶を握りしめた彼の杖の先から、銀の光が霧から像へと形を結び始める。本作のラストでその像がついに完成するという、もう一つの伏線が、ここで張られる。
忍びの地図の警告とスキャバーズの逃走
ある夜、ハリーは忍びの地図を眺めながら、ホグワーツ城の人物分布を観察している。突然、彼の目に信じがたい一行が映る——『ピーター・ペティグリュー』。地図上のグリフィンドール塔の寝室、ロンのベッドの位置に、ハリーが聞いたこともない名前の点が、確かに動いている。だが、その時間に同じ場所にいるはずなのは、ロンと彼のペットのネズミ、スキャバーズだけである。
ハリーはスネイプに地図を取り上げられかけるが、地図は持ち主以外には侮辱の言葉を吐く呪いが仕込まれており、スネイプを激怒させながら自分の身を守る。地図はやがてハリーの手に戻る。
数日後、グリフィンドール寮の談話室で、クルックシャンクスがスキャバーズを追い詰める。ロンは怒り狂ってネズミを抱え、ハリーとともに禁じられた森の縁まで散歩に出る。その時、暗い空からピーター・ペティグリュー——観客にとってまだ名前だけの男——の正体が、最後の伏線として静かに動き始めている。
暴れ柳と叫びの屋敷への降下
バックビーク処刑当日の夕暮れ、ハリー、ロン、ハーマイオニーはハグリッドの小屋を訪ね、最後の慰めの茶を飲み交わす。茶の最中、ハーマイオニーの茶わんのなかにロンがしばらく前に紛失していたはずのオモチャ——スキャバーズの片足についていた、抜けた草の刃——が混ざっている。やがてマクネアと魔法生物危険分類委員会の一行が、ダンブルドアを伴って小屋へ降りてくるのが見え、三人は裏口から退散する。
城へ戻る途中、暴れ柳のすぐ近くで、ハーマイオニーの腕から逃げ出したスキャバーズが彼女の手をすり抜け、暴れ柳の根元へ全速力で駆けていく。ロンが追いかける。直後、巨大な黒い犬が——プリベット通りの夜にハリーが見たあの犬が——茂みから飛び出し、ロンの足首に噛みついて、暴れ柳の根元の隠し入口へ引きずり込む。柳は枝で空をかきまわし、誰も近づけない状態に戻る。
ハリーとハーマイオニーは、クルックシャンクスが暴れ柳の根元の節を前足で押し下げ、柳を一瞬だけ静止させてくれたおかげで、暴れ柳の幹の根元の闇のなかへ降り、地下を一直線にホグズミード村外れの『叫びの屋敷』まで続く秘密の通路を、息を切らせて走る。
屋敷は雪のあいだに半ば崩れかけた廃屋である。床板は腐り、壁紙は剥がれ落ち、調度品は古い時代のままで止まっている。二階の寝室の戸が半開きになっており、ハリーとハーマイオニーが踏み込むと、暗がりのなかに痩せた中年の男が立っている。長い髪を肩まで伸ばし、囚人服の擦り切れた跡を背負い、頬は窪み、目は深く落ちくぼんでいるが、その目だけは異様に鋭い——シリウス・ブラックである。
叫びの屋敷とピーター・ペティグリューの真実
シリウスはロンを床に倒し、その足首の傷を見つめながら、ハリーに向かって低く語りかける。『久しぶりだ、ハリー。最後に会ったのは、お前が一歳の時だった』。激昂したハリーは父の名を口にし、両親を売った男としてシリウスに杖を突きつける。シリウスは無抵抗である。彼はただ静かに告げる——『あの夜、私はもう一度ピーターを殺すべきだった。あの夜、私が彼を選んだことが、すべての始まりだった』。
そこへ、暴れ柳の根元の通路を経由してリーマス・ルーピン教授が現れる。ルーピンはシリウスを抱擁する。教師と脱獄囚は旧友であり、ホグワーツの同級生だったのである。三人——『ムーニー(ルーピン)/パッドフット(シリウス)/プロングス(ジェイムズ・ポッター)』、そしてもう一人『ワームテール(ピーター・ペティグリュー)』——は、学生時代の四人組『マローダーズ(悪戯仕掛人)』であり、ハリーが手にしている忍びの地図の作者そのものだった。
ルーピンは、ハーマイオニーが察していた通り、人狼である。月の障害を抱えていた彼のために、ジェイムズ、シリウス、ピーターの三人は非公認の動物アニメーガスとなり、満月の夜のルーピンに付き添う方法を見つけ出した——ジェイムズは牡鹿(プロングス)、シリウスは大型の黒犬(パッドフット)、ピーターはネズミ(ワームテール)に変身する力を、学生時代に違法に身につけていた。本作のさまざまな伏線が、ここで一斉に意味を取り戻す。
そしてもう一つ、最大の真実が開示される。十二年前のあの夜、ヴォルデモートにポッター家の隠れ場所を売り、リリーとジェイムズを死に追いやったのは、シリウス・ブラックではなかった。本当の裏切り者は——ジェイムズが死の直前、最後の信頼として『秘密の番人』を切り替えて任せた男——ピーター・ペティグリューだった。
ペティグリューはヴォルデモートに住所を売った後、現場に駆けつけたシリウスから逃げるため、ロンドンの大通りで指一本だけを切り落として爆発魔法で十三人のマグルを殺し、ネズミに変身して下水道へ消えた。罪をシリウスに着せて、彼自身は十二年間、ロン・ウィーズリーのペット『スキャバーズ』として、ウィーズリー家の屋根の下に隠れ続けていたのである。
暴れ柳の根元でロンの足首に噛みついたのは、シリウスが——アズカバンの新聞でロンの肩の上のスキャバーズの写真を見て、その指の一本欠けた前足を見抜き——アニメーガスの大型黒犬の姿で、ペティグリュー一人を引きずり下ろすために計画した待ち伏せだった。シリウスとルーピンは、震えるロンの懐から逃げようとするネズミを取り押さえ、二人の杖の同時のひと振りで、スキャバーズを丸い銀色の閃光のなかから——皺だらけの小柄な中年の男、ピーター・ペティグリューの姿へ戻させる。
縮こまった『ワームテール』は床を這い、ハリーの脚に縋り付き、『ジェイムズの息子よ、命だけは助けてくれ』と懇願する。シリウスは『お前は十二年前に、ジェイムズとリリーを死なせ、私からハリーを奪った。お前を殺さない理由が一つもない』と杖を構える。ハリーは——シリーズの観客にとって決定的に重要な選択をする。『殺さないで。父さんとシリウスを殺人者にしたくない。アズカバンへ連れていけばいい。でも今ここで殺すのはやめてくれ』。
湖畔の吸魂鬼と牡鹿の守護霊
叫びの屋敷の地下通路を、五人は暴れ柳のほうへ抜けていく。シリウスがハリーの肩に手を回し、ハリーはこの十二年間、自分が知ることのなかった『父の親友であり、自分の名付け親であり、自分を引き取る権利を持つ大人』の存在に、ようやくたどり着く。シリウスは『ダーズリー家を出て、これからは僕と一緒に暮らさないか』と提案する。涙ぐむハリーが頷きかける——
その瞬間、雲が割れ、満月が暴れ柳の上に顔を出す。ルーピンの体が痙攣を始める。彼は薬を飲み忘れていた——本来であれば毎月、満月の前夜にスネイプが調合する『脱狼薬(ウルフズベイン・ポーション)』を飲んでいれば、人狼に変身しても理性を保てる。だが、この夜、シリウスとペティグリューを追って急いだ彼は、薬を飲む暇がなかった。
ルーピンの背骨が伸び、肩甲骨が突き出し、髪が灰色の毛皮になり、口元が獣のように長く突き出す。シリウスは即座に黒い大型犬の姿に変身し、ハリーとハーマイオニーから人狼ルーピンを引き離すために、後者と暗い丘陵地帯を駆け回って格闘する。混乱のなかで、鎖につながれていたペティグリューは脱皮するようにネズミの姿に戻り、闇のなかへ逃げ込んでいく——本作で最も悔やまれる『一瞬の取り逃がし』である。観客と物語の側は、ここでヴォルデモート復活の道筋が確定的に開かれてしまったことを知る。
ハリーは、ペティグリューを追って黒い犬姿のシリウスがどこかへ駆けていった先を捜して、湖畔へ走る。霧の覆う湖の上空に、百体を超える吸魂鬼の群れが集結し、湖の浅瀬に倒れているシリウスとハリーに向かって、一斉に黒い衣を翻して降りてくる。ハリーは絶望の底にあるシリウスを抱き起こすが、自分自身もすでに意識が遠のいている。吸魂鬼の最年長と思しき一体が、ハリーの口元に手をかけ、その魂を吸い出そうとする——。
意識を失う寸前のハリーの目に、湖の対岸に立つ小さな光が映る。誰かが、銀色に輝く守護霊を放っている。その光は四つ足の大きな動物の形をしており、霧を散らして湖の上を疾走し、吸魂鬼の群れを一掃する。ハリーは光を放った者を見つめようとするが、それが誰なのかを見定める前に、闇に呑まれて意識を失う。
タイムターナーによる遡行とバックビーク/シリウスの救出
病室で目を覚ましたハリーは、ハーマイオニーから報告を受ける——シリウスは捕らえられ、城の最上階の独房に移送された。魔法省はすでに『吸魂鬼の口づけ』、すなわち口を通して魂そのものを吸い出して人格を抹殺する刑罰の執行をマクネアと吸魂鬼に命じている。バックビークは執行人の斧の下で処刑された、はずである。
ダンブルドアが病室を訪れ、ハーマイオニーとハリーに、規則を破る権利を一度だけ与える。『時間が足りない者は、時間を作ることもできる。生徒一人が、もう一人の生徒も連れて行くことは、規則の範疇である』と、彼は彼女のタイムターナーに目をやって告げる。『三回まわせ』。
ハーマイオニーは首から下げた金色の砂時計を取り出し、ハリーの首にも鎖を回し、回転環を三回まわす。病室の時計は逆回りに進み、二人は数時間前の自分たちの背中を見送るところから、もう一度同じ夜を歩き直す。
ハーマイオニーとハリーは、まずハグリッドの小屋の脇に潜伏し、執行人マクネアと委員会の一行が小屋に入ったその瞬間に、外に繋がれたバックビークの綱を解いて、誰にも見られずに森のなかへ逃がす。委員会が小屋から出てきたとき、空のロープと地面に残る斧の振り下ろした痕(実際は近くの南瓜畑の柵に打ち下ろされたものだった)が、観客の最初の遡行の答え合わせとなる。シリーズ全体でもっとも美しく機能する『時間旅行ミステリー』の一手である。
次に、二人は湖畔まで戻る。だが、過去の自分たちが吸魂鬼に襲われている現場まで、もうひとつ重大な答え合わせがある——湖の対岸で銀の光を放った『誰か』とは、いったい誰だったのか。ハリーは茂みの陰から、自分たちが今夜の暴れ柳の根元からどう走ってきたかを観察する。やがて『遠くで誰かが助けに来てくれるはずだ』と待ち続ける自分の姿に痺れを切らし、自ら湖畔に飛び出して、絶え果てそうな過去の自分とシリウスを救うために、思い切って杖を構える。
あの『ホームムービーの中の両親の笑顔』を握りしめながら、彼が放つ『エクスペクト・パトローナム』——その杖の先から、銀色の輝きが霧を貫き、巨大な牡鹿(プロングス)の像を結ぶ。父ジェイムズと同じ守護霊。湖の上を疾走した牡鹿は、百体の吸魂鬼を一頭で蹴散らし、湖の中央に立ち上がって、対岸のハリー本人に向かって角を一度だけ垂れる。本作のクライマックスであり、シリーズ全体のなかでもっとも何度も引用される、ハリーが自分自身の父の影に最も近づいた瞬間である。
その後、二人はホグワーツ城の最上階の独房から、バックビークとともにシリウスを脱出させる。シリウスは『私はもう何年も自由に飛んでいない』と苦笑いし、バックビークの背に跨って、夜空に舞い上がる。眼下にホグワーツの灯が小さくなる。ハリーが叫ぶ——『また会おう、シリウス』。シリウスは振り返らない代わりに、片手を高く上げて、無言で月明かりへ消えていく。
登場要素
本作で初めて画面に登場する固有名詞は、シリーズ全体の伏線を担うものが極めて多い。シリウス・ブラックという名付け親、リーマス・ルーピンという人狼の教師、ピーター・ペティグリューという裏切り者、忍びの地図、マローダーズの四人、タイムターナー、守護霊呪文、ヒッポグリフ、吸魂鬼の名と性質、ホグズミード村、叫びの屋敷——これら全てが本作で初めて画面に置かれ、シリーズ後半で再三参照される。
人物
- ハリー・ポッター
- ロン・ウィーズリー
- ハーマイオニー・グレンジャー
- シリウス・ブラック
- リーマス・ルーピン
- ピーター・ペティグリュー(ワームテール/スキャバーズ)
- アルバス・ダンブルドア
- ミネルバ・マクゴナガル
- セブルス・スネイプ
- ルビウス・ハグリッド
- シビル・トレローニー
- コーネリウス・ファッジ
- スタン・シャンパイク(ナイト・バス車掌)
- アーニー・プラング(ナイト・バス運転手)
- マダム・ロスメルタ(三本の箒亭店主)
- アーガス・フィルチ
- セドリック・ディゴリー
- オリバー・ウッド
- ドラコ・マルフォイ
- クラッブとゴイル
- パーシー/フレッド/ジョージ・ウィーズリー
- アーサー/モリー・ウィーズリー
- マージ・ダーズリー
- ダーズリー家(バーノン、ペチュニア、ダドリー)
- 肖像画『太った貴婦人』
- 肖像画『サー・カドガン』
- 校長室の肖像画群
魔法生物・種族
- 吸魂鬼(ディメンター)
- ヒッポグリフ(バックビーク)
- 人狼(リーマス・ルーピン)
- アニメーガス(シリウス=大型黒犬、ペティグリュー=ネズミ、ジェイムズ=牡鹿)
- ボガート(まね妖怪)
- クルックシャンクス(半ニーズルの猫)
- スキャバーズ(実態はアニメーガスのペティグリュー)
- ヘドウィグ(ふくろう)
- 怪物的な怪物の本(生きている教科書)
- ハグリッドの飼っていた巨大爪のヒッポグリフ群
- 凍りつく池の鯉(ホグワーツの湖)
呪文・魔法
- エクスペクト・パトローナム(守護霊呪文)
- リディクラス(ボガート対処呪文)
- ルーモス/ノックス(杖の光)
- アロホモラ(解錠呪文)
- ウィングアーディウム・レビオサ
- アクシオ
- 脱狼薬(ウルフズベイン・ポーション)
- 忍びの地図の起動/消去呪文
- 未成年の魔法行使禁止条項(マージの件で適用見送り)
- アニメーガス変身
- アニメーガス登録規則
- 魔法省『不適切な魔法使用班』
- 吸魂鬼の口づけ(魂吸引刑)
- 三本の箒亭のバタービール
魔法道具・装備
- 忍びの地図
- タイムターナー(逆転時計)
- 透明マント(ジェイムズの形見)
- ファイアボルト(シリウスからの贈与)
- ニンバス2000(暴れ柳との衝突で破壊)
- ナイト・バスの三階建て車体
- ハニーデュークスの秘密通路への入口
- ハニーデュークス菓子(蛙チョコ、舌焼けキャンディ)
- ゾンコの悪戯グッズ
- 占い学のお茶の葉と水晶玉
- 怪物的な怪物の本(噛みつく教科書)
- 三本の箒亭のジョッキ
場所
- プリベット通り4番地
- ナイト・バス(夜のロンドンを縦断)
- 漏れ鍋(ロンドン中心部)
- ダイアゴン横丁
- キングス・クロス駅 9と3/4番線
- ホグワーツ城本館(暴れ柳/クィディッチ場/グレートホール/占い学北塔/時計塔/木の橋)
- ハグリッドの小屋
- 禁じられた森(バックビーク逃亡先)
- ホグズミード村(三本の箒亭、ハニーデュークス、ゾンコ、書店)
- 叫びの屋敷
- 暴れ柳の根元の地下通路(叫びの屋敷へ繋がる秘密の道)
- 校長室
- ホグワーツ最上階の独房
組織・概念
- ホグワーツ魔法魔術学校
- ホグワーツ四寮(グリフィンドール/スリザリン/ハッフルパフ/レイブンクロー)
- マローダーズ(ムーニー/ワームテール/パッドフット/プロングス)
- 魔法省(不適切な魔法使用班、魔法生物危険分類委員会、執行人マクネア)
- アズカバン監獄と看守としての吸魂鬼
- 魔法生物危険分類
- 未成年の魔法行使禁止
- 占い学(パターンと記号の学)
- 『秘密の番人』の概念(フィデリウス呪文)
- アニメーガス未登録罪
- ホグワーツ理事会(ルシウス・マルフォイ家の圧力)
主要登場人物
本作の人物造形は、前2作までの『学校に通い始めた子どもたち』だった三人組を、思春期に差しかかったばかりの十三歳の少年少女として撮り直す。同時に本作は、ハリーの生身の父母の世代——シリウス、ルーピン、ペティグリュー、そして写真の中だけにいるジェイムズとリリー——を画面に呼び戻し、ハリーが『過去から自分の名を呼ぶ大人たち』を初めて持つ作品でもある。
ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)
ハリーは本作で十三歳になる。本作で起こることは、前作までと様相が大きく違う——彼の敵は、ヴォルデモートでもバジリスクでもなく、彼自身の心の奥にある『母の最後の声』であり、それを糧にしようとする吸魂鬼たちである。ハリーが本作で克服しなければならないのは、自分の最も深い喪失の記憶そのものなのである。
終盤、湖の対岸で過去の自分を見つめながら、彼は自分の知っているもっとも深い幸福の記憶を握りしめて、父と同じ姿の守護霊を放つ。父ジェイムズの遺した形見(透明マント、忍びの地図)を本作で受け継ぎ、父のアニメーガスと同じ守護霊の姿を本作で召喚した彼は、シリーズで初めて『自分が父の息子として何かを取り戻した』少年として、エンドクレジットへ歩いていく。
ダニエル・ラドクリフは本作で14歳。声変わりが始まり、身長も急速に伸びていく年齢である。本作の彼は前作までより明らかに表情を一段落とし、特に三本の箒亭の床下で透明マントの下に潜みながらシリウスの真実を聞く場面と、湖畔で意識を失いかけながら『誰かが助けに来る』と確信する場面の二箇所で、シリーズ全体のなかでも屈指の繊細な演技を残している。
ロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャー(ルパート・グリント/エマ・ワトソン)
ロンは本作で、自分の十二年来の家族同然のペット『スキャバーズ』が、実は十二年間家族のなかに潜んでいた殺人共犯者だったことを知る——シリーズ全体のなかで、彼が個人的に経験する最大の裏切りの一つである。叫びの屋敷の場面で、シリウスに足首を噛まれ、痛みのあまり半泣きの状態のまま、それでもハリーをかばってシリウスに『ハリーを殺すならまず僕からだ』と立ち向かう彼の姿は、ロンというキャラクターの誠実さの核を示す名場面である。
ハーマイオニーは本作で、本シリーズ史上もっとも多くの『規則破り』を、すべて正しい理由のために重ねる。占い学を派手に飛び出し、ヒッポグリフ処刑反対の陳情書を一人で書き、ドラコの頬を平手打ちし、タイムターナーで一日を何度も生き直し、最終的にハリーとともにバックビークとシリウスを救う。エマ・ワトソンは本作で14歳。彼女がドラコを殴る一瞬の表情と、その後すぐに杖をしまい『暴力は私らしくなかった』と呟くまでの数秒の演技が、ハーマイオニーの自意識を最も短い時間で示す名カットとなっている。
シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)
本作の表題人物。十二年間のアズカバン収監で痩せ細り、長く伸びた黒髪、囚人服の袖から覗く瀟洒な細い指先、目尻の深い皺。ゲイリー・オールドマンは、シェイクスピア劇出身の英国俳優としての存在感をそのまま叫びの屋敷の床に置き、十二年間奪われた『無実の自分』を取り戻すために、最後の機会を賭けた中年の男を圧倒的な内圧で演じる。
シリウスはハリーの父ジェイムズの親友であり、ハリーの法的な名付け親である。本作で初めて画面に呼び寄せられる『ハリーを引き取る権利のある大人』であり、エンディングでハリーが『これからは僕と一緒に暮らさないか』という提案に頷きかける場面は、シリーズ全体のなかでハリーがもっとも『家族』に近づいた数秒として、長く観客に記憶される。
ゲイリー・オールドマンは本作を機にシリーズの主要常連となり、続く第4作『炎のゴブレット』、第5作『不死鳥の騎士団』に出演する。本作のラスト、バックビークに跨って空へ消えていく彼の姿は、シリーズの暗い後半に向かう物語の門を、もっとも美しく開けた数秒でもある。
リーマス・ルーピン(デヴィッド・シューリス)
リーマス・ルーピンは本作の新任『闇の魔術防衛術』教師であり、シリーズで二人目の人狼として登場する重要人物である。デヴィッド・シューリス(『裸のランチ』『ニューウェイブ』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』)が演じるルーピンは、すりきれたローブ、煮詰めたチョコレートを生徒に手渡す静かな手つき、声を絶対に荒げない口調、しかし戦闘時には誰よりも早く杖を構える俊敏さ、という幾重もの矛盾を、たった140分間の出演時間のなかで完璧に並べて見せる。
彼が人狼であるという秘密は本作で開示され、その秘密を知ったうえで彼が辞任を決断する終盤の校長室の場面——『私はもう、生徒を危険に晒したと噂される教師として、ここに居続けるべきではない』——は、本作で彼の人格をシリーズ全体に焼き付ける。彼はシリーズの後半、最終巻で再びハリーの父代わりとなり、第7作で命を落とすまで、観客にとって絶対的に信頼できる大人の側として位置付け続けられる。
本作の脱狼薬の調合者はセブルス・スネイプ。学生時代の同級生でありながら、互いに憎み合い続けた二人が、それでもプロフェッショナルとして手を組まなければならない関係も、本作の人物造形の重要な側面である。
アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン)
本作の校長アルバス・ダンブルドアは、リチャード・ハリスの逝去を受けて、本作からアイルランド出身の名優マイケル・ガンボン(『料理人、泥棒、その妻と愛人』『シンギング・ディテクティブ』)が引き継ぐ。ガンボンは原作者J.K.ローリングの推薦と、監督アルフォンソ・キュアロンの判断によって配役された。
ガンボンのダンブルドアは、ハリスの『静謐で詩的な校長』とは違い、底の見えないユーモアと、瞬時に切り替わる鋭利な怒り、そして年長者でありながらも生徒の同等の友人として隣に座る軽みを兼ね備えている。本作のラスト、病室での『時間が足りない者は、時間を作ることもできる。三回まわせ』という台詞の発し方は、ガンボン版ダンブルドアの代名詞となるテンポと音色を、初登板の本作ですでに確立している。
ガンボンは続く第4作『炎のゴブレット』から最終作『死の秘宝 PART2』まで、シリーズの残り6本すべてで校長を演じ続ける。
シビル・トレローニーとピーター・ペティグリュー
シビル・トレローニー教授を演じるエマ・トンプソン(『ハワーズ・エンド』でアカデミー賞主演女優賞)の本作出演は、自身がローリング作品の大ファンであることを公言した上での参加だった。底の厚い眼鏡、薄い色のショールを何重にも巻く服装、揺れる肩と低い声色——本作のトレローニーは、滑稽でありながら、終盤『闇の帝の従僕は十二年の鎖を断つ』と本物の予言を口走るたった数秒間、まったく別人のように深い、低い喉声に切り替わる。トンプソンはこの切り替えを、声のピッチと目の焦点だけで完璧に演じ分けている。
ピーター・ペティグリュー=ワームテール役のティモシー・スポール(『マイク・リー作品』『ターナー、光に愛を求めて』)は、終盤の叫びの屋敷からエンディングまで、長い演劇キャリアのなかでも特に身体性に頼った演技で『縮こまったまま生き延びた小人物』の典型を画面に置く。床を這い、ハリーの脚に縋り付き、命を懇願する彼の表情は、ヴォルデモート復活の道を、観客にとって最も生々しい形で予感させる。
舞台と用語
舞台は、夏のサリー州プリベット通り、深夜のロンドン中心部(ナイト・バスの走行と漏れ鍋とダイアゴン横丁)、初秋から初夏までのスコットランド高地のホグワーツ城、そして近郊の魔法使い専用の村ホグズミードである。本作で初めて画面に立体感を持って登場する場所として、漏れ鍋の客室、ホグワーツの『木の橋』『時計塔』、暴れ柳の根元の地下通路、ホグズミード村全景、そして叫びの屋敷の二階の崩れかけた寝室がある。とりわけ叫びの屋敷の内装——床板の隙間から這い上がる蜘蛛の巣、剥がれかけた壁紙、煤けた窓——は、本作のクライマックスを支える美術設計上の重要な達成として記録される。
用語面では、本作で初めて画面に登場する重要な概念が多い。『吸魂鬼(ディメンター)』は魔法省管轄下でアズカバンの監獄看守を務める恐怖の使い魔であり、人の幸福な記憶を吸い出し、最も暗い記憶だけを残す存在である。『口づけ(キス)』と呼ばれる魂吸引刑は、死刑よりも重く、犠牲者の人格を恒久的に抹消する。『守護霊(パトローナス)』は、自分の幸福な記憶を糧に銀色の半透明の動物の姿を呼び出す高位の対吸魂鬼魔法であり、本作以降のシリーズ全体の精神的核となる呪文として扱われる。
また『アニメーガス』は、特定の動物に変身する能力を訓練によって獲得した魔法使いの称号であり、本作のジェイムズ(牡鹿)、シリウス(黒犬)、ペティグリュー(ネズミ)、マクゴナガル(猫)の四人が画面に存在する。本来は魔法省への登録が義務付けられているが、ジェイムズ・シリウス・ペティグリューの三人は学生時代に違法に習得し、無登録のままだった。『タイムターナー』は、魔法省が極めて稀な事例で発行する時間遡行の道具で、本作ではハーマイオニーが学業の都合で貸与され、終盤、規則の解釈の限界まで使用される。
そして『マローダーズ/忍びの地図』は、本作で初めて開示されるホグワーツ世代の文化的記憶である。学生時代のジェイムズ、シリウス、ルーピン、ペティグリューの四人が制作した城内全体の動的地図と、その四人組の自称『悪戯仕掛人』としての履歴は、シリーズ後半でハリーが自分の親世代と向き合うときの基礎史料として、何度も再参照される。
制作
前2作の興行的成功を受けて、製作陣はあえて『同じ手触り』を反復することを避け、シリーズの映像言語そのものを再設計する道を選んだ。以下、企画から特撮までの主要な経緯を整理する。
監督交代とアルフォンソ・キュアロンの起用
本作の最大の制作上の転換は、前2作で第1作の暖かなトーンを定着させた監督クリス・コロンバスからの交代である。コロンバスは『秘密の部屋』の完成後、二人の幼い子どもとの時間を最優先したいという理由で長期契約からの撤退を申し出、シリーズの製作総指揮側へ回った。配給ワーナー・ブラザースとプロデューサーのデヴィッド・ヘイマンは、すでにスタジオ寄りの作家ではなく『原作の暗さに向き合える本物の作家』を必要としていた。
デヴィッド・ヘイマンが推薦した監督候補のなかには、ギレルモ・デル・トロ、ケネス・ブラナー、マーク・フォースターらの名前があった。最終的に選ばれたのは、メキシコ出身のアルフォンソ・キュアロンだった。当時のキュアロンは『天国の口、終りの楽園。』『リトル・プリンセス』『大いなる遺産(1998)』などで国際的な評価を確立しており、子どもの世界を大人の感覚で撮ることに長けていることを買われた。原作者J.K.ローリングはキュアロンの過去作を視聴したうえで起用に賛成し、撮影前にホテルでキュアロンと長時間の打ち合わせを行ったと伝えられる。
キュアロンは原作の暗いトーンを支える映像言語を持ち込む一方、撮影に入る前に主演三人(ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン)に対し、自分の演じるキャラクターの一人称で『キャラクター・エッセイ』を書くよう課題を出した。ラドクリフは数ページ、ワトソンは指示の倍以上の長文、グリントは『そういうことはやらない。ロンならやらない』と提出を拒否した——というエピソードが、シリーズの代表的な舞台裏として広く知られる。提出物の傾向そのものが、三人の本作以降のキャラクター造形に密かに反映されている。
脚本とローリングとの協議
脚本は、シリーズの大半を担当するスティーヴ・クローヴスが続投した。クローヴスは原作の核となる場面——叫びの屋敷でシリウス、ルーピン、ペティグリューが旧友の真実を語り合う長い対話——を映画でも保持することを最優先し、その他の挿話を整理した。
本作の脚色で長く議論の対象となるのは、原作で詳しく語られる『マローダーズ』の四人の関係——なぜジェイムズ、シリウス、ルーピン、ペティグリューが互いの綽名(プロングス=牡鹿、パッドフット=大型犬、ムーニー=月、ワームテール=虫尾)を持ち、なぜジェイムズとシリウスとペティグリューがアニメーガスになったか——を、画面で明示的に語らないという判断である。クローヴスはローリングと協議のうえ、その背景を匂わせる小道具と短い台詞だけを残し、観客が画面の手がかりから推測する余地を残す方針を選んだ。これは原作ファンから批判を受けた一方、映画として独立した推理ミステリーの密度を高めたという肯定的な評価も生んだ。
もう一つの大きな脚色は、ハリーが自分の父ジェイムズの不在を、画面に映る『写真と忍びの地図と守護霊の姿』だけで反復的に体感していく構造である。原作小説では家族の記憶は主に文章で語られるが、映画版は『過去そのものが今でも画面の脇に残っている』という映像表現で、ハリーの喪失と回復を観客に体験させる仕掛けに作り替えられている。
キャスティング
主要キャストとしてダニエル・ラドクリフ(ハリー)、ルパート・グリント(ロン)、エマ・ワトソン(ハーマイオニー)が続投。三人とも本作で14歳になり、子役から思春期の俳優への過渡期に差しかかっていた。
本作最大のキャスティング上の変更は、校長アルバス・ダンブルドアの代替わりである。前2作で校長を演じたリチャード・ハリスは2002年10月に逝去し、本作のためにマイケル・ガンボン(『料理人、泥棒、その妻と愛人』『シンギング・ディテクティブ』)が後任に選ばれた。ガンボンは制作陣からの最初の打診を一度断ったが、ローリングとキュアロンの双方の説得を受けて引き受けたと伝えられる。
新たな主要キャストとして、シリウス・ブラック役にゲイリー・オールドマン、リーマス・ルーピン役にデヴィッド・シューリス、シビル・トレローニー役にエマ・トンプソン、ピーター・ペティグリュー役にティモシー・スポール、コーネリウス・ファッジ役にロバート・ハーディ、マージ・ダーズリー役にパム・フェリスが加わった。これらの英国実力派の集中投入が、本作の演技密度を前2作から決定的に押し上げる原動力となった。
またハッフルパフのクィディッチ・キャプテン、セドリック・ディゴリーの初登場として、当時無名だったロバート・パティンソンの先輩格にあたるセドリック役には、後に多くの若手俳優のオーディションを経てロバート・パティンソンが選ばれることになる(実際の本格登場は次作『炎のゴブレット』)。本作のセドリックは別俳優によるごく短いクィディッチ場面の出演に留まる。
撮影とロケ地
本作の撮影は2003年2月から同年11月にかけて、英国のリーヴスデン・スタジオを本拠地として行われた。前2作ではホグワーツ周辺の風景は主にスタジオセットとイングランド・ノーザンバーランドのアニック城周辺で組まれていたが、本作からは——監督キュアロンの強い意向で——スコットランド高地の本物の山岳地帯が、ホグワーツの新たな外景として大々的に導入された。
代表的なロケ地は、グレン・コー(湖と荒涼とした谷の景観)、ロッホ・シール(ホグワーツ湖の対岸とハグリッドの小屋の周辺)、グレンフィナン高架橋(ホグワーツ特急が霧の中を走る象徴的な場面)である。これらの場所は、本作以降のシリーズ全作にわたってホグワーツの外景の基礎となり、観客にとってホグワーツの『地理』として記憶される。
撮影監督マイケル・セレシン(『エンジェル・ハート』『真夜中の青い鳥』『ミッドナイト・エクスプレス』)の起用も大きな転換である。セレシンの提案で、本作以降の画面のコントラストは大幅に深まり、緑がかった青と暖色のオレンジの対比、霧の中での逆光の使い方、暗い屋内での被写体の縁取りなど、シリーズ全体の照明設計が刷新された。
視覚効果とクリーチャー造形
視覚効果は、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)、フレームストア、ダブル・ネガティブほか複数のスタジオが分担した。本作の最大の達成は、ヒッポグリフ『バックビーク』の創造である。地上で生徒に向かって誇り高くお辞儀を返す場面ではジム・ヘンソンのクリーチャー・ショップによるアニマトロニクスを、空中飛行や湖面での羽の水切り場面ではILMによるフルCGモデルを使用し、両者をシームレスに繋ぐ手法が採られた。観客の目には全編を通じて『生きた一頭の生物』として認識されるその仕上がりは、当時としては最高水準のクリーチャー演出と評された。
また本作で大きく強化されたのは、吸魂鬼(ディメンター)の表現である。ぼろぼろの黒い衣を風になびかせ、骨ばった指先と口元だけが見える姿は、CGの布シミュレーションと水中撮影で衣をスローモーションで撮影した実写素材を合成して作り上げられた。当初はマペット案も検討されたが、最終的に『水中で衣を撮影し、半透明の幽霊のような動きを得る』という決定が下された。
暴れ柳は本作で初めて、季節の移ろい——夏の濃緑、秋の紅葉、冬の枝、春先の芽吹き——を一つの長いトラッキング・ショットで提示する『時間経過モンタージュ』の主役となる。ハグリッドの小屋の前を一頭の鴉が飛び、暴れ柳の枝に止まろうとして弾き飛ばされ、季節が一回り変わる、というキュアロンらしい長回しは、本作の象徴的な視覚的署名となっている。
音楽と音響
音楽はジョン・ウィリアムズが続投し、本作がシリーズへの彼の最終登板となった。前2作の主題(『ヘドウィグのテーマ』など)を引き続き要所で使用しつつ、本作のために新たに作曲された主題群はシリーズで最も多彩で、最も評価が高い一群である。
新主題の代表は、シェイクスピアの『マクベス』第4幕の魔女の合唱『Double, double toil and trouble(二重、二重、苦労に厄災)』を歌詞に転用した中世音楽風の合唱曲『Double Trouble』、ハグリッドの小屋とバックビークの初飛行を支えるアイリッシュ調の弦楽『Buckbeak's Flight』、本作の中心情緒を象徴する切ない『A Window to the Past』である。『A Window to the Past』は、ハリーが自分の知らない父母の世界に窓越しに触れるテーマとして本作全編を貫き、ジョン・ウィリアムズ自身も後年『自分のキャリアで最も誇りに思う旋律のひとつ』として何度も言及している。
本作のスコアは第77回アカデミー賞作曲賞にノミネートされた。ウィリアムズは本作後、撮影スケジュールの都合で第4作『炎のゴブレット』の音楽担当を辞退し、以後はパトリック・ドイル、ニコラス・フーパー、アレクサンドル・デスプラへとシリーズの作曲家が引き継がれていく。
美術・衣装と編集
美術監督スチュアート・クレイグは続投し、ホグワーツ城の設計を本作で大幅に拡張した。特に新規追加された『時計塔』『木の橋』『校長室への動く螺旋階段』『暴れ柳の根元から叫びの屋敷へ続く地下通路』は、いずれも本作以降のシリーズで何度も使用される主要セットとなる。漏れ鍋の内装、ナイト・バスの三階建ての車内、叫びの屋敷の崩れかけた寝室なども、本作のためにゼロから設計された。
衣装は、本作からジャニー・テミーム(『パパは、出張中!』『フォン・ライアン特急』)が着任する。テミームは、ホグワーツの制服の襟、ネクタイ、セーターの編み方を全面的に再設計し、生徒たちが授業外では現代的なマグル衣装(ジーンズ、パーカー、革のジャケット)を着る方針を導入した。これは原作のリアリズム重視とも合致し、登場人物の年齢とともに衣装の手触りを変えていくシリーズ全体の方針の出発点となる。
編集はスティーヴン・ヴァイスバーグが担当。タイムターナーで遡行する終盤の二重時系列は、観客が混乱しないよう、第一周目の場面と二周目の場面を細部の手がかり(ハグリッドの小屋から響く陶器の割れる音、ホグズミード方向から飛んでくる石、湖畔の対岸で銀色に光る『誰か』の影)で正確に対応付けて編集されており、本作の構造的な達成として高い評価を得ている。
公開と興行
2004年5月31日に英国で先行公開された本作は、6月4日に米国、6月26日に日本で公開された。世界興行収入は約7億9600万ドルを記録し、商業的には前2作(賢者の石 約9.7億ドル、秘密の部屋 約8.7億ドル)からは若干の減少となったが、当時の年間興行ランキングでも上位に位置する大ヒットとなった。日本国内の興行収入は約135億円で、2004年の年間外国映画第1位を記録した。
批評家からの評価は、シリーズ8作のなかで一貫して最上位に挙げられる。北米批評集計サイトの集計では肯定率約9割を維持し続け、多くの映画批評誌が『ハリー・ポッター映画シリーズが本物の映画作品として完成した瞬間』として本作を挙げている。第77回アカデミー賞(2005年)では作曲賞(ジョン・ウィリアムズ)と視覚効果賞の2部門にノミネートされた。第31回サターン賞では『ファンタジー映画賞』を、英国アカデミー賞(BAFTA)では『英国映画助演男優賞』(リーマス・ルーピン役のデヴィッド・シューリス)など複数のノミネートを受けた。
批評・評価・文化的影響
本作は、ハリー・ポッター映画シリーズが『児童向けのスタジオ・フランチャイズ』から『現代英国映画の本流』へ昇格した決定的な転換点として、批評史のなかに位置付けられている。アルフォンソ・キュアロンによる映像言語の刷新は、後の『不死鳥の騎士団』のデヴィッド・イェーツ路線、『死の秘宝』二部作の暗いトーン、そしてその後のフランチャイズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』シリーズの全方位的に大人びた手触りまで、すべてに影響を及ぼした。
また本作は、現代ハリウッドにおける『児童文学シリーズ映画は必ずしも同じ監督に貫かれる必要はない』という前例を確立した作品でもある。後の『ナルニア国物語』『ハンガー・ゲーム』『メイズ・ランナー』など多くのヤング・アダルト原作シリーズが、巻ごとの監督交代と作風の意図的な変化を方法論として採用したのは、本作の批評的成功が背中を押した結果である。
ファンによる評価では、本作のラスト——ハリーが牡鹿の守護霊を放ち、湖の対岸で過去の自分を救う数秒間——が、シリーズ全体を通じて『最も多く再視聴される場面』として繰り返し挙げられる。父ジェイムズの形見を継承する物語としての密度の高さ、ハーマイオニーがドラコを殴る一瞬の解放感、シリウスの『ハリー、一緒に暮らさないか』という提案の暖かさ、そしてその直後の人狼変身で家族の可能性が瞬時に奪われる悲劇性——本作の終盤に詰まったこれらの情感は、シリーズ全体のなかでも特別な位置を占め続けている。
舞台裏とトリビア
キュアロン監督は主演三人にキャラクター・エッセイの宿題を出した。ラドクリフは数ページの真面目なエッセイを、ワトソンは指示の倍以上の長文(『ハーマイオニーが書きそうな量で』)を、グリントは『そういうことをロンはやらない』と提出を拒否した——このエピソードは、本作の制作姿勢を象徴する逸話として、本作のDVD特典、Blu-rayの監督音声解説、後年の20周年記念番組『ハリー・ポッター20周年:ホグワーツへの帰還』(2022)など、繰り返し言及される。
本作の前にダンブルドア役を演じたリチャード・ハリスは『私が引退するか死ぬまで、この役は誰にも譲らない』と公言していた。彼は2002年10月に逝去し、本作からマイケル・ガンボンが引き継いだ。ガンボン版ダンブルドアの『底の見えないユーモア』と『年長者でありながら隣に座る軽み』は、ハリス版の『静謐な詩人としての校長』とは別の人物像であり、その違いは原作の後半(『謎のプリンス』『死の秘宝』)でのダンブルドアの複雑な内面を演じるうえで結果的に適合的だった、と多くの批評で指摘されている。
本作はジョン・ウィリアムズがハリー・ポッター映画シリーズで音楽を担当した最終作である。ウィリアムズ自身は『A Window to the Past』を自身のキャリアの代表作の一つとして繰り返し言及している。シェイクスピア『マクベス』の魔女の合唱を歌詞に転用した『Double Trouble』は、本作の冒頭に近い大広間の場面で、グリフィンドール/ハッフルパフ/レイブンクロー/スリザリンの生徒の合唱として披露される。
本作の予告編やポスターで使われる代表ヴィジュアル『湖の上を疾走するハリーと黒い影』は、実際には湖畔の場面ではなく、宣伝用に新たに撮影された写真である。本作ではほかにも、Blu-ray特典の未使用シーンとして、ペティグリューが叫びの屋敷から逃げる直前の追加の独白、ルーピンが校長室を辞すとき、ダンブルドアと交わす『私たちが交わした最後の握手』の長い会話などが収録されている。
本作の脚本では、原作小説で詳しく述べられる『マローダーズの四人の綽名の由来』が画面では明示されない。これは原作ファンからの一貫した批判点であり、原作者ローリング自身も『あの説明は映画にも入ってほしかった』と後年複数のインタビューで述べている。
テーマと解釈
中心にあるのは『過去との和解』である。ハリーは本作で、両親を喪失した子どもとしての自分から、亡き父の世代の物語を引き受ける成人への第一歩を踏み出す。父ジェイムズの形見である透明マントと忍びの地図を継承し、父と同じアニメーガスである牡鹿の守護霊を召喚し、父の最愛の親友であるシリウスを救出する——本作のハリーの物語は、すべて『過去の父の影に自分を重ねる』という構造で組み立てられている。
もう一つの軸は『時間と選択』である。タイムターナーで遡行する終盤の二重時系列は、ハリーとハーマイオニーが『同じ夜』を二回生きることを意味する。一周目に絶望と無力さを経験し、二周目に自分自身の助け手として現れるという構造は、観客に対して『絶望の瞬間に届く救いは、しばしば未来の自分自身が用意した救いである』という強い寓意を残す。これはシリーズ全体の倫理——ハリーが繰り返し『今この瞬間に正しいことを選ぶ』ことで未来の自分の救いを編んでいく構造——の精神的な核として、シリーズの最終局面まで反復されるモチーフとなる。
そして本作のもう一つのテーマは『信用と裏切り』である。十二年間、家族同然のペットだったスキャバーズがピーター・ペティグリューであり、ヴォルデモートに両親を売った真犯人だった——という反転は、ロンにとっての個人的な裏切りであると同時に、観客に対する『見えている世界を信用してはならない』という警告でもある。並行して、シリウスは『十二年間、無実の罪で監獄に閉じ込められた男』として描かれ、表向きの『悪』が実は最も裏切られた側であり、表向きの『か弱い者』が真の裏切り者であるという構造が、本作を貫く。
湿った霧と高地の風、暴れ柳の暗い枝のあいだに浮かぶ満月、湖の対岸の銀の光——本作の映像のすべてが、この三つの主題(過去との和解/時間と選択/信用と裏切り)に奉仕している。本作が長く愛されるのは、爽快な英雄譚としてではなく、十三歳の少年が自分の最も深い喪失と向き合い、自分の手で自分の父の姿を取り戻す静かな儀式として完成しているからである。
見る順番(補助)
初見であれば、前2作『賢者の石』『秘密の部屋』を視聴したうえで本作に進むのが最も自然な流れである。本作の最大の衝撃は『シリウス・ブラックが両親を売った』と信じ込んでいたハリー(と観客)に対する反転であり、その前提となる『両親が殺された夜』『シリウスという名前の初登場』は前2作とりわけ第2作で軽く言及される。
本作のあと、次作『炎のゴブレット』ではセドリック・ディゴリーが主要人物として再登場し、本作のクィディッチ場面での彼の誠実さが伏線として機能する。シリウスは続く『炎のゴブレット』『不死鳥の騎士団』で重要な父代わりとして再登場するため、本作のラストでバックビークに跨って空へ消えていく彼の姿は、シリーズの後半に向かう精神的な入口でもある。
また、関連作品『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』シリーズ(2016〜2022)は、本作のおよそ六十年前の魔法界を舞台にしており、本作で描かれる魔法省の組織や吸魂鬼の運用、アニメーガス制度などの世界観の前史にあたる。
- 前作『秘密の部屋』でハリーがバジリスクを倒し、ジニーを救う
- 本作ハリーが両親の世代の物語に初めて触れ、父と同じ守護霊を放つ
- 次作『炎のゴブレット』で三大魔法学校対抗試合と、ヴォルデモートの本格復活へ
よくある質問(補助)
『あらすじだけ知りたい』場合は、シリウス・ブラックがアズカバンから脱獄したという出発点と、ホグワーツに吸魂鬼が配備されるという状況、ルーピンの新任、終盤の叫びの屋敷で『真の裏切り者はペティグリュー』と明かされる反転、そしてタイムターナーで遡行してバックビークとシリウスを救うクライマックスを押さえれば十分である。
『結末・ネタバレを知りたい』場合は——シリウスは無実、真犯人はネズミに変身していたピーター・ペティグリュー、ルーピンは人狼、ハリーは父ジェイムズと同じ牡鹿の守護霊を放つ、シリウスは脱出し逃亡を続ける、ペティグリューは逃亡しヴォルデモート復活への伏線が確定する——という流れが核である。
『シリーズの中での位置』を知りたい場合は、本作はヴォルデモートが画面に登場しない唯一の本編作であり、その代わりに『両親の世代の物語』と『信用してきた身近な存在の正体』という二重のテーマを描く転換点として位置付けるとよい。
『監督の評価』については、アルフォンソ・キュアロンが後年『ゼロ・グラビティ』『ROMA/ローマ』でアカデミー賞監督賞を二度受賞している点を踏まえ、本作はその彼が手がけた『商業大作の代表作』として、シリーズの枠を越えて評価され続けている。
参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・制作・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。
参照・確認先
公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。