JOJOジョジョの奇妙な冒険 百科事典
Part 8 / 人物

東方定助(ジョジョリオン)

ひがしかたじょうすけ

第二世界線main_manga

ネタバレ範囲: Part 8全編

# 東方定助(ジョジョリオン)東方定助は、第8部『ジョジョリオン』の主人公である。2011年の大地震後、杜王町に出現した隆起地「壁の目」の土中から、広瀬康穂によって発見された。発見時の定助には身元を示す記憶がなく、船乗りを思わせる帽子と服装、肩の星形の痣、歯形のような傷、そして常人とは異なる身体的特徴だけが残されていた。

東方憲助が引き取った際、「東方定助」という名前を与えられる。同じ読みを持つ第4部の東方仗助とは別人であり、物語の世界線、家族関係、能力、出生の事情はいずれも一致しない。定助の物語は、失われた過去を取り戻して以前の自分へ戻る話に見えて、やがて「自分は誰として生きるのか」を選ぶ話へ変わっていく。

壁の目で発見された記憶喪失の青年

『ジョジョリオン』の杜王町には、地震後に地面からせり上がった壁状の隆起が存在する。壁の目の周辺では物と物の性質を交換する現象が起こり、果実や人間の肉体にも作用する。康穂が土中から見つけた青年も、この場所で起きた等価交換の結果だった。目覚めた定助は自分の名前も住所も分からず、康穂の助けを借りて手掛かりを追う。

当初、所持品や身体的特徴から「吉良吉影」という人物との関連が浮かぶ。しかし、調査が進むほど、定助を一人の過去へ戻すだけでは説明できない事実が現れる。吉良吉影はすでに死亡しており、もう一人の青年、空条仗世文の存在が事件に結びついていた。定助は、二人のどちらかが記憶を失った姿ではない。

ロカカカの実と壁の目の作用によって、吉良と仗世文の肉体が等価交換を起こし、そこから生じた新しい人間である。この事実は、記憶が戻れば問題が解決するという初期の見通しを壊す。定助には回収すべき一つの本名や、帰るべき一つの人生が最初から存在しない。だからこそ彼は、与えられた「東方定助」という名のもとで、発見後に築いた関係を自分の人生として引き受ける。

吉良吉影と空条仗世文から生まれた存在

第8部の吉良吉影は、吉良・ホリー・ジョースターの息子であり、船医として働いていた。第4部の殺人鬼と同名だが、こちらも別世界線の別人である。母ホリーが原因不明の症状に侵されるなか、吉良は治療の可能性を持つロカカカの枝を追っていた。空条仗世文は、幼少期に吉良とホリーに救われた経験を持ち、吉良の計画へ協力する。

二人は岩人間との争いで致命的な状態に陥り、仗世文は新ロカカカを使って吉良を救おうとした。その直後に地震と壁の目の隆起が重なり、等価交換は二人を一つの肉体へ変えた。定助の身体には吉良と仗世文の要素が残り、スタンドにも両者の性質が反映される。だが、二人分の記憶を自由に読み出せるわけではない。

過去の証拠を調べる行為は、失われた自分の記憶を再生する作業ではなく、自分を生んだ二人の選択を外側から知る作業になる。この距離が定助を独特な主人公にしている。ジョナサンから徐倫までの主人公は、程度の差はあっても自分の家族と経歴を知った状態で戦いへ入る。ジョニィも失ったものと過去の挫折を自覚している。

定助だけは、出自を追うほど「元の自分へ戻れない」という結論へ近づく。その結論は空虚さでは終わらない。吉良と仗世文が命を賭けたホリーの救済を、定助は自分の意志で継承する。血や記憶を完全に受け継いだからではなく、二人の行動を知り、その願いを今の自分の目的にすると決めたためである。

広瀬康穂との関係

康穂は定助を発見した人物であり、身元探しの最初の協力者である。二人の関係は、主人公を案内する地元住民という範囲に収まらない。定助にとって康穂は、記憶のない自分を「発見後の人間」として最初に見た相手である。康穂もまた、定助の正体が不明な段階から彼を見捨てず、東方家や杜王町に隠された問題へ踏み込む。

定助は康穂への好意を隠さず、彼女が危険にさらされると強い反応を示す。一方で、保護されるだけの人物として康穂を扱わない。彼女のスタンド「ペイズリー・パーク」は、通信機器、地図、情報経路を介して必要な選択肢へ導く。終盤の透龍とワンダー・オブ・Uをめぐる戦いでは、定助の攻撃が敵へ届くために康穂の判断と能力が欠かせない。

ソフト&ウェットの新しい泡を定助一人の隠し技として説明すると、この共闘の構造が消えてしまう。攻撃の性質を理解する定助と、距離を越えて標的へ経路をつなぐ康穂の行動が組み合わさり、追跡すれば災厄を受けるという敵の論理へ穴を開ける。

東方家で得た名前と居場所

定助は東方憲助の判断で東方家へ迎えられる。そこで使われる「定助」という名は、東方家の祖先に由来する。ただし、家へ入った瞬間から無条件に家族として受け入れられるわけではない。東方家には長男に発症する石化の病、家業のフルーツ事業、常敏が進める独自の計画、鳩や大弥らの事情があり、家族同士でも情報と利害が一致しない。

定助自身も当初は身元不明の侵入者に近く、監視や疑いを向けられる。それでも共同生活と事件を通じ、彼は東方家の問題へ深く関わっていく。東方家に属することは、失った戸籍を埋める便宜ではない。憲助がつけた名を使い、自分を受け入れた家の危機に対して行動することが、定助の現在の身分を実体のあるものへ変える。

同時に、家族のためという言葉で常敏の行為まで肯定するわけではない。定助は目的が重なる相手とは協力するが、情報を隠して他者を犠牲にする選択には対立する。

ソフト&ウェット

定助のスタンドは「ソフト&ウェット」である。人型のスタンドと、星や泡を思わせる意匠を持つ。初期の泡は、接触した対象から性質を一時的に奪う。壁や床から摩擦を奪えば立っていられなくなり、物音を奪えば周囲へ聞こえなくなる。

物体を泡に包んで運ぶ、視界を妨げる、接触した相手へ破裂の衝撃を与えるといった使い方も見せる。能力の説明は物語の進行とともに変化するため、すべての泡が同じ条件で「何でも奪える」と決めつけるのは正確ではない。ソフト&ウェットには、空条仗世文のスタンドを基礎としながら、吉良吉影のキラークイーンに由来する爆発的な性質も混ざっている。定助の肉体と同じく、能力も二人の要素から生まれた一つの存在である。

近距離での打撃力も高く、定助は泡だけに頼らず本体とスタンドの肉弾戦を使う。ただし、無条件に敵を圧倒する万能型ではない。岩人間やロカカカをめぐる敵は、接触条件、遠隔操作、自動追跡、周囲の環境を利用し、正面の殴り合いを成立させない。定助は泡の性質、相手の行動規則、地形、味方から届く情報を組み合わせて突破口を作る。

「越えて行く」泡と厄災

物語終盤、ソフト&ウェットの泡は、極端に細い線が高速で回転することで球のように見えるものだと示される。なかでも定助の肩付近から生じる泡は、通常の世界の論理から外れた性質を持つ。作中では「この世に存在しない」ものとして扱われ、のちに「ソフト&ウェット・ゴー・ビヨンド」と呼ばれる。透龍のスタンド「ワンダー・オブ・U」は、追跡しようとする意思や接近に反応し、出来事を災厄として標的へ集中させる。

通常の攻撃は、敵へ届く前に災厄の流れへ捕まる。存在の論理から外れた泡は、その法則の対象にならず、透龍へ攻撃を届かせる可能性を持つ。これは定助が突然、あらゆる能力を無効化できるようになったという意味ではない。泡は狙いを定めにくく、発見直後の定助が完全に制御できる技でもない。

康穂のペイズリー・パークによる経路の補助があって初めて、離れた場所の標的へ決定的な一撃を送れる。回転という原理は第7部の技術を連想させるが、タスクACT4と同じ能力ではない。使い手、発現の経緯、攻撃の挙動、物語で破る法則が異なる。

ホリーを救う目的

定助が過去を調べる過程で、中心に浮かぶのが吉良・ホリー・ジョースターである。ホリーの脳や身体には異常が起き、病院に入院している。吉良と仗世文は彼女を救う手段としてロカカカへ近づいた。定助は二人の融合によって生まれた後、その目的を受け継ぐ。

ただし、終盤の勝利がホリーの治癒まで自動的に解決したわけではない。ロカカカの争奪、東方家の呪い、岩人間との戦いには決着がついても、ホリーを救うという課題は残る。定助が「自分は吉良でも仗世文でもない」と理解することと、彼らが守ろうとした人物を見捨てないことは両立する。受け継ぐとは、以前の人格へ戻ることではなく、知った願いを現在の自分が選び直すことである。

人物像

定助は礼儀正しく見える一方、必要な場面では強引で、敵へ激しい怒りを向ける。記憶喪失だから性格まで白紙というわけではない。自分の身体や能力を冷静に観察し、相手の嘘や行動の矛盾を確かめようとする。好奇心には独特の偏りがあり、物の長さや距離を目測する癖、食べ物の好み、思ったことを率直に口にする場面が、深刻な出自の謎とは別の生活感を与える。

敵に対しては、危険を理解したうえで踏み込む覚悟が強い。とくに康穂、ホリー、東方家の人々が傷つけられる局面では、自分の正体を知る目的よりも目の前の救出を優先する。定助の成長は、失われた人格を取り戻して完成する形を取らない。過去のない青年が、康穂と出会い、東方家で名を得て、二人の青年が残した願いを知り、自分の責任として未来を選ぶ。

その過程自体が、東方定助という一人の人物を作っている。

同名人物との区別

検索や索引では、第4部の「東方仗助」と第8部の「東方定助」を分ける必要がある。日本語では読みが同じ「ひがしかたじょうすけ」だが、漢字が異なる。第4部の仗助はジョセフ・ジョースター東方朋子の息子で、スタンドはクレイジー・ダイヤモンドである。第8部の定助は第二世界線の杜王町で、吉良吉影と空条仗世文の等価交換から生まれ、ソフト&ウェットを使う。

両者を対応人物として比較することはできても、同一人物の別時期として統合することはできない。英語圏の資料でも両者はJosuke Higashikataと表記されるため、Part 4とPart 8、または「JoJolion」を添えて区別する。