ネタバレ注意 関連するコミックと映像作品の展開を含みます。
イリヤナ・ラスプーチンは、空間と時間を越えるステッピング・ディスクを開き、異次元リンボの魔術を使うミュータントです。コロッサスの幼い妹として登場した直後、ベラスコに誘拐され、地球では数秒の間にリンボで七年を生きました。自分の魂から作ったソウルソードと悪魔的なダークチャイルド形態は、闇へ堕ちた印ではなく、支配されながらも自分を失い切らなかった痕跡です。被害者、支配者、ニュー・ミュータンツの仲間、若者を教える魔術師という複数の役割を、一つの成長として整理します。
- 本名
- イリヤナ・ニコリエヴナ・ラスプーチン
- コードネーム
- マジック
- 能力
- リンボ経由のテレポート、時間移動、魔術、ソウルソード
- 主な称号
- リンボのソーサレス・スプリーム、クラコア大隊長
- 家族
- 兄コロッサス、兄ミハイル・ラスプーチン
- コミック初登場
- Giant-Size X-Men #1(1975年、イリヤナとして)
01ステッピング・ディスクはリンボを経由する
イリヤナのミュータント能力は、光の円盤状に見えるステッピング・ディスクを開き、人や物を別の場所へ運ぶことです。瞬間移動は直線的に空間を折るのではなく、異次元リンボへ一度入り、別の出口から現実へ戻ります。地球上の距離だけでなく、惑星間や異なる時代へ到達する場合もあり、移動範囲は非常に大きい一方、リンボを通ること自体が危険を伴います。
ディスクの位置、人数、到着時刻を誤れば、仲間を悪魔の領域へ置き去りにしたり、意図しない時代へ送ったりします。イリヤナは戦闘中に敵の足元へ出口を開き、攻撃を別方向へ流し、味方を瞬時に退避させます。単なる輸送係ではなく、戦場の地形と順序を組み替える能力です。強さは移動距離より、誰をどの順番で通すかを判断する精度にあります。

テレポートは生得的なミュータント能力ですが、魔術はリンボで学んだ別系統の技能です。呪文、結界、占術、アストラルな存在への対処を行い、リンボでは特に大きな力を持ちます。二つを同一の能力として扱うと、X遺伝子が使えない状況でも魔術を学び直せる点や、地球とリンボで出力が違う理由を説明できません。マジックはミュータントであり、訓練された魔術師でもあります。
02ベラスコが七年の幼少期をリンボで奪う
イリヤナはロシアの農場で育ち、兄ピョートルがコロッサスとしてX-MENへ加わった後、家族との再会や事件を通じてチームに近づきます。悪魔的な魔術師ベラスコは彼女をリンボへ誘拐し、地球側では救出まで数秒しか経っていないのに、戻ったイリヤナは十代へ成長していました。家族には一瞬でも、本人は七年分の恐怖と選択を生きています。
リンボでベラスコは、イリヤナの魂を堕落させてブラッドストーンを作り、古き神々を解放しようとします。別世界のストームは白魔術を教え、別世界のキティ・プライドは戦闘と生存を助けましたが、二人とも完全には守れません。イリヤナは善と悪の教師から技を得ながら、どちらの計画にも完全には従わず、自分の魂の残りを守る方法を探します。

彼女は自分の生命力と魂からソウルソードを作り、ベラスコを倒してリンボの支配者となります。勝利しても、奪われた幼少期は戻りません。悪魔の角、蹄、装甲が現れるダークチャイルド形態は、ベラスコに植え付けられた腐敗と本人の力が混ざった姿です。外見を理由に悪へ分類すれば、支配者へ抵抗するため敵の技を使わざるを得なかった状況を見失います。
03ニュー・ミュータンツが地球での同世代になる
地球へ戻ったイリヤナは、年齢が近くなったニュー・ミュータンツへ加わります。キヤノンボール、ミラージュ、ウルフスベーン、サンスポット、サイファーらとの学校生活は、リンボで得られなかった同世代の時間です。しかし彼女は授業の外で異界を統治し、悪魔の反乱を処理します。生徒とソーサレス・スプリームを同時に務める負担を、仲間へすべて説明できません。
ソウルソードは魔法的な存在や呪文を切り、握った者へ神秘的な装甲を出現させることがあります。通常の人間を斬る金属剣とは働きが異なり、魔術の解除や支配からの解放に向きます。ただし魂の一部から作られた武器であるため、奪われればイリヤナの自己そのものが脅かされます。仲間へ貸せる道具であっても、所有権と心理的な重さは普通の剣と同じではありません。

ニュー・ミュータンツでのイリヤナは辛辣な冗談を使い、恐怖を見せないよう振る舞います。リンボの秘密を伏せるほど仲間は守れると考えますが、隠した問題が拡大すると彼らも巻き込まれます。最も深い友情は、彼女の闇を消そうとする相手ではなく、危険を知ったうえで決定へ参加する仲間と築かれました。ダニ・ムーンスターらは、マジックを救助対象だけにせず責任を分け合います。
04Infernoで支配を拒み、幼い姿へ戻る
リンボの悪魔ナスティアとシムは、イリヤナの不安定さを利用し、マンハッタンとリンボを重ねるInfernoを引き起こします。悪魔や無生物が街を襲い、マデリーン・プライヤーの物語とも合流する大事件です。イリヤナはダークチャイルドとして完全な支配者になるか、自分の存在の一部を手放して侵攻を止めるかを迫られます。
彼女はソウルソードを通じて悪魔的な自己を退け、幼い姿へ戻ります。七年間の経験をなかったことにする幸福な巻き戻しではありません。成長したマジックとしての記憶と関係が周囲へ残る一方、幼いイリヤナ本人はその人生を同じ形で保持しません。救済の代価として、本人が築いた人格と同世代の時間が再び断ち切られました。

幼いイリヤナは後にレガシー・ウイルスへ感染し、コロッサスやX-MENに看取られて死亡します。ピョートルは妹を守れなかった悲しみからザビエルの理想へ失望し、マグニートー側へ移る時期もありました。イリヤナの死を兄の転機だけに使うと、リンボで何度も自分を取り戻した本人の人生が薄れます。彼女は後に復活しますが、死と喪失が無効になったわけではありません。
05復活後はドクター・ストレンジから魔術を学び直す
ベラスコはリンボの支配を取り戻せず、イリヤナの魂の残滓から彼女を復活させようとします。戻ったマジックは当初、完全な魂と過去の感情を欠き、目的のため仲間を操作しました。ニュー・ミュータンツを危険へ導き、ソウルソードとブラッドストーンを集めます。復活した姿が同じでも、失った部分を取り戻すまで以前のイリヤナと連続しているかが問題になります。
最終的に彼女は魂と記憶を回復し、X-MENやニュー・ミュータンツへ戻ります。それでもリンボの力へ依存し、危機を一人で管理する癖は残りました。Dormammuの侵攻を辛うじて止めた後、イリヤナは過去のドクター・ストレンジを訪ね、魔術を基礎から学び直します。ベラスコから強制的に得た知識だけでなく、倫理と技術を選べる師から訓練を受ける試みです。

ストレンジとの修行でEye of Agamottoを扱うなど、マジックはMarvelの魔術師たちと並ぶ力量を示します。強くなった理由は闇を受け入れたからだけではなく、制御できていると思い込んだ方法を捨て、他者へ教えを求めたからです。後に若いミュータントや魔術師を指導する時も、自分が生徒へ戻れた経験が生きます。全知の支配者より、学び直せる教師のほうが安全です。
06クラコアの大隊長からリンボの王座を手放す
クラコア建国後、マジックは大隊長の一人として国家防衛を担い、若いミュータントを訓練します。テレポートで部隊を移動させるだけでなく、異界からの侵攻や魔術的脅威を判断できるため、通常の軍事指揮官では代替できません。かつてニュー・ミュータンツで秘密を抱えた生徒が、危険の説明と撤退判断を仲間へ渡す立場になります。
一方、リンボの支配を続けることは、ベラスコに奪われた人生へ永遠に縛られることでもありました。イリヤナは王座をマデリーン・プライヤーへ譲り、リンボを自分だけの責任から切り離します。マデリーンが安全な後継者かという懸念はありますが、支配者であり続けなければ世界が壊れるという発想も危険です。権力を持つ能力と、手放す時期を決める能力は別に試されます。

王座を離れても、ソウルソード、魔術、リンボとの接続が消えるわけではありません。マジックはX-MENとニュー・ミュータンツの任務を続け、自分の技能を故郷ではなく選んだ共同体へ使います。ダークチャイルドを完全に切除して清い人物になるのではなく、怒りと破壊性がある状態で、誰に相談し何を守るかを選べるようになることが彼女の回復です。
07映画とゲームは魔術剣士の像を異なる比重で描く
実写映画THE NEW MUTANTSではアニャ・テイラー=ジョイがイリヤナを演じ、ステッピング・ディスク、ソウルソード、装甲、リンボに関わる力を使います。幼少期の恐怖は示されますが、ベラスコ、七年間の統治、Inferno、死と復活の全経歴をコミックと同じ順序では描きません。映画版の攻撃的な態度だけをEarth-616の人格へ戻すと、長い支配と回復の文脈が欠けます。
ゲームMidnight SunsやMarvel Rivalsなどでは、テレポートと大剣を組み合わせる高速の魔法戦士として表現されます。プレイ上はポータルで敵を移動させ、ソウルソードで大きなダメージを与える機能へ整理されます。ゲームの技は能力の視覚的理解に役立ちますが、リンボ経由の時間差や魂の武器としての代価まで毎回再現するわけではありません。

どの版でも、マジックは悪魔のような姿と英雄の選択を同時に持ちます。二つを矛盾として片方へ決める必要はありません。本人の意思に反して闇を植え付けられたこと、そこで得た力を使わなければ脱出できなかったこと、後に支配の方法を学び直したことは連続しています。イリヤナの英雄性は汚染されなかった純粋さではなく、奪われた経験を他者の自由を守る技術へ変えた点にあります。