『ONE PIECE』114巻〝ゴッドバレー事件〟は、尾田栄一郎による原作漫画の第1156話から第1166話までを収録したジャンプコミックスである。紙版は2026年3月4日に集英社から発売され、全224ページ、ISBNは978-4-08-885019-1。デジタル版は同年4月3日に発売された。
前巻で始まったロックス・D・ジーベックとエルバフ王ハラルドの過去を引き継ぎ、38年前のゴッドバレー事件を発生前から終結まで描く。長く「ロジャーとガープが手を組み、ロックス海賊団を破った事件」として断片だけが語られてきた歴史を、島の住民、奴隷、海賊、海兵、神の騎士団、世界政府の視点へ広げた巻である。
書誌情報
- 書名:ONE PIECE 114巻〝ゴッドバレー事件〟
- 著者:尾田栄一郎
- 発売元:集英社
- 紙版発売日:2026年3月4日
- デジタル版発売日:2026年4月3日
- 判型・ページ数:新書判・224ページ
- 紙版価格:572円(税込、発売時)
- ISBN:978-4-08-885019-1
- 収録範囲:第1156話〜第1166話
- 物語区分:エルバフ編
- 前巻:ONE PIECE 113巻〝ロキ誕生〟
- 次巻:ONE PIECE 115巻〝せかいで1ばんつよいもの〟
集英社の紹介文は、歴史の闇に消されてきたゴッドバレー事件、最恐と呼ばれたロックス海賊団、若き日のモンキー・D・ガープとゴール・D・ロジャーを本巻の焦点に挙げる。麦わらの一味が現在のエルバフで直面する危機はいったん背景へ退き、過去が現在をどう作ったかを示す長い回想が一冊を貫く。
収録話
| 話数 | 題名 | 主な焦点 | |---|---|---| | 第1156話 | 〝アイドル〟 | 九蛇海賊団とシャクヤク、若いロジャーとガープ、ロックス海賊団の拡大 | | 第1157話 | 〝伝説のBAR〟 | シャクヤクのハチノス移住、ハラルドへ示された世界政府の条件 | | 第1158話 | 〝ロックスvs.ハラルド〟 | 二人の決裂、ゴッドバレーの選定、シャンクスとシャムロックの誕生 | | 第1159話 | 〝運命の島〟 | シャクヤク誘拐、天竜人の人間狩り、ロックスの血筋と家族 | | 第1160話 | 〝ゴッドバレー事件〟 | 人間狩り開始、海賊団の上陸、ドラゴンによる双子救出 | | 第1161話 | 〝矢の雨をしのいで結ぶ恋の詩〟 | レイリーによるシャクヤク救出、ドラゴンとシャンクス、神の騎士団 | | 第1162話 | 〝G・V・B・R〟 | 悪魔の実争奪、くまの救助、ロックスと家族、イムの介入 | | 第1163話 | 〝約束〟 | 海賊・ガープとイムの衝突、ロックスの悪魔化 | | 第1164話 | 〝デービーの血〟 | デービー家の秘密、ロックスの抵抗、家族の脱出 | | 第1165話 | 〝残響〟 | ロジャーとガープ対ロックス、事件記録の抹消 | | 第1166話 | 〝新しい物語〟 | ロックスの最期、ゴッドバレー沈没、シャンクス発見と事件後 |
第1162話の略記は「God Valley Battle Royale」を各頭文字へ置き換えた表記である。各話の題名は事件の段階を示し、中央の第1160話が巻名と同じ〝ゴッドバレー事件〟、後半は〝約束〟〝デービーの血〟〝残響〟〝新しい物語〟と、消された歴史が次代へ残すものへ焦点を移す。
前半――事件へ集まる人物
第1156話から第1158話までは、事件そのものよりも、後にゴッドバレーへ集まる人物たちの関係を組み立てる。九蛇海賊団のグロリオーサとシャクヤク、若いロジャー海賊団、ガープの対立は、シャクヤクが海賊たちの注目を集める存在だったことを示す。彼女はやがて九蛇海賊団を離れ、ハチノスで酒場を開く。
同じ時期、ロックスはハチノスを拠点とし、後に世界を揺らす海賊たちを集めていた。彼はハラルドを仲間へ誘い、エルバフの力を世界政府打倒へ使おうとする。しかしハラルドは、巨人族の国を世界へ開き、過去の暴力的な評判を変えるため、世界政府との交渉を続ける。第1158話の戦いは単純な善悪の対決ではなく、友人だった二人が「支配を壊す力」と「制度の中で国を変える道」を選び分ける場面である。
ゴッドバレーは偶然の戦場ではなかった。フィガーランド・ガーリングが島の資源と住民を見つけ、天竜人の人間狩りの会場として進言する。島では後のシャンクスとシャムロックとなる双子が生まれ、別の場所ではロックスが家族を持ったことが示される。事件前の私的な結び付きが、世界政府の催しによって一つの島へ強制的に集約されていく。
人間狩りとゴッドバレーへの上陸
第1159話と第1160話では、事件の起点が「海賊同士の覇権争い」だけではなかったことが明らかになる。天竜人はゴッドバレーの住民と連行した奴隷を標的に人間狩りを始め、シャクヤクや悪魔の実を賞品として置く。ロックス海賊団とロジャー海賊団はシャクヤクと財宝を求めて上陸し、ガープは部下とロジャーを追って現地へ向かう。
若いモンキー・D・ドラゴンは海兵として作戦に参加している。彼は命令と目の前の虐殺が両立しないことに気付き、住民を救う側へ踏み出す。双子の母から託されたシャンクスとシャムロックを運び出そうとするが、神の騎士団の攻撃により二人は離される。この失敗と抵抗は、後にドラゴンが海軍を離れ、世界政府へ対抗する道へ進む背景になる。
第1161話では、複数の救出が並行する。レイリーは神の騎士団に狙われたシャクヤクを救い、ドラゴンは残されたシャンクスを運び続ける。ロックス海賊団の強者、ロジャー海賊団、ガープ、騎士団、脱出を試みる住民が同じ島内で交差するため、この巻の戦闘は一対一の勝敗だけでは整理できない。誰が誰を追い、何を守り、何を奪おうとしたかが場面ごとに変わる。
悪魔の実と救出の連鎖
天竜人が賞品にした悪魔の実は、後世の人物へ直結する。バーソロミュー・くまはニキュニキュの実を口にし、島から人々を逃がす力として使う。カイドウはシャーロット・リンリンが確保したウオウオの実 幻獣種 モデル“青龍”を奪って食べる。後に四皇となる者たちの能力が、殺戮の賞品として置かれながら、脱出と生存へ転用される構図である。
バーソロミュー・くまの行動は事件の中心にある。彼は自分だけが逃げるのではなく、可能な限り多くの住民と奴隷を島外へ送る。悪魔化されたロックスが妻エリスと幼いマーシャル・D・ティーチへ迫った際にも、くまの能力が二人の脱出を成立させる。後世の「暴君」という政府側の呼称だけでは捉えられない人物像が、過去編の救助行動によって補強される。
ロックス、イム、デービーの血
本巻が従来の事件像を大きく変えるのは、ロックスを単なる世界制覇を狙う凶悪な船長ではなく、友人と家族を持つ人物として描く点である。彼は自らをデービー・D・ジーベックと明かし、政府が消そうとする血筋、デービー・D・ジョーンズ、過去の「約束」へ言及する。
イムは五老星サターンを介して戦場へ干渉し、海兵と海賊の区別なく攻撃する。ロックス、ロジャー、ガープ、ニューゲート、カイドウ、リンリンの攻撃を受けても再生し、ロックスを「黒転支配」によって悪魔化する。ロックスは自分の意思に反して家族を殺すよう命じられ、抵抗しながらも味方へ攻撃を向ける。
ここでロジャーとガープが協力する理由が具体化する。二人は世界政府の命令を共有したのではなく、意思を奪われたロックスの声を聞き、これ以上の殺戮を止めるために向き合う。武装色と覇王色の衝突、ロックス自身の抵抗、二人の限界を超えた攻撃が重なり、後世に伝わる「共闘」は、政府が語る英雄譚より複雑な救済と殺害の選択になる。
事件の終結と隠蔽
第1165話でロジャーとガープは悪魔化されたロックスを倒し、その変化を解く。しかし消耗して動けないロックスへガーリングが止めを刺す。第1166話ではゴッドバレーが海へ沈み、世界政府が場所、参加者、犠牲者、人間狩りに関する記録を消す。公表された物語ではガープがロックス海賊団を破った英雄となり、天竜人の行為やロジャーとの協力は伏せられる。
脱出したロジャー海賊団は、持ち帰った宝箱の一つから赤子のシャンクスを発見する。ドラゴンは海軍を辞める意思を固め、ロキは憧れたロックスの死に打ちのめされ、ハラルドは友を見捨てた罪悪感から自分の角を折る。事件が終わっても、その選択は海賊、革命軍、海軍、エルバフ、赤髪海賊団へ別々の形で残る。
巻末の〝新しい物語〟という題は、単に回想が終わることを意味しない。歴史から抹消された事件が、シャンクス、ティーチ、ドラゴン、くま、ロキ、ハラルドらの人生を通じて現在へ戻ってくることを示す。ゴッドバレーは地図から消えても、そこで生き残った者が後の世界を作る。
表紙の人物配置
表紙は暗い灰色を背景に、紫色の道を歩くロックス海賊団を描く。中心付近にはロックス・D・ジーベックが立ち、グロリオーサ、シュトロイゼン、シキ、ジョン、王直、カイドウ、エドワード・ニューゲート、シャーロット・リンリンら、互いに独立心の強い船員が複数の列を作る。
集合絵でありながら、仲間同士が肩を組む親密な海賊団には見えない。各自が別の野望と将来を持ち、事件後には四皇、伝説の海賊、別組織の創設者へ分岐する集団だからである。ルフィや現在の麦わらの一味を置かず、過去のロックス海賊団そのものを主役にした表紙は、本巻の視点を正確に表す。
画像を掲載する際は、書影だけを三つに複製しない。公式書影、公式の発売告知ビジュアル、事件開始、ロックスとロジャー・ガープ、宝箱から見つかるシャンクスなど、本文で論じる局面が異なる画像を選ぶ必要がある。
114巻の位置付け
113巻はロキ誕生、ハラルドの改革、ロックス海賊団の形成を描き、114巻へ至る原因を並べる。114巻はそれらをゴッドバレーで衝突させ、事件を終結まで運ぶ。115巻は過去から現在のエルバフへ戻り、ハラルドとロキの記憶が現在の戦いにどのような意味を持つかを引き継ぐ。
また114巻の発売日に、集英社は『ONE PIECE』コミックスの全世界累計発行部数が6億部を突破したと発表した。これは114巻単独の部数ではなくシリーズ全体の累計であり、本巻の販売部数と混同してはならない。長期連載の節目と、長く伏せられてきた歴史の開示が同日に重なった出来事として記録できる。
114巻は「ゴッドバレーで誰が勝ったか」を答えるだけの巻ではない。勝者を作るために何が隠され、救助した者と殺した者がどう入れ替えられ、消された人々の意思が誰へ残ったかを描く。過去編でありながら、最終章の勢力図、Dの名、世界政府の支配、エルバフの現在を同時に読み直させる巻である。
関連項目
- ゴッドバレー事件
- ゴッドバレー
- ロックス・D・ジーベック
- ロックス海賊団
- ゴール・D・ロジャー
- モンキー・D・ガープ
- モンキー・D・ドラゴン
- シャンクス
- マーシャル・D・ティーチ
- エルバフ編


