01来歴

ISBブリーフィングでの初登場
ロニ・ユングは、Disney+配信ドラマ『スター・ウォーズ/アンドー』シーズン1(2022年9月21日配信開始、全12話)中盤のISB週次ブリーフィング場面で初登場する帝国保安局コルサント本部の男性監督官である。本部ビル最上階の会議室で、パートガス少佐が議長を務めるブリーフィングに、デドラ・ミーロやブロンディ・ヘイバート(Blevin)と並ぶ若手キャリア官吏として登壇する。前半では発言を抑えた目立たない官吏として描かれ、視聴者にはISB本部の通常運営の風景の一部として提示される。
モールとしての露見
シーズン1第10話『One Way Out』(2022年11月9日配信)前後のコルサント地下駐車場の密会場面で、ロニは反帝国網の総帥ルーセン・レイルに長期協力する二重スパイ(モール)であることが明示される。車のヘッドライト越しの暗がりで、ロニは機密を渡し続けてきた年月の疲弊を訴え、妻と幼い娘を盾に脱出と引退を懇願する。ルーセンは、渡された情報が帝国側にもたらした死を冷徹に列挙し、「お前はもう市民ではない。お前はモールだ」と断罪する。この対話はシリーズ屈指のシークエンスとして批評で繰り返し言及される。
省内政治抗争の傍観
シーズン1中盤、ロニはデドラ・ミーロとブロンディ・ヘイバートの省内政治抗争の傍観者として継続的に登場する。デドラが横断照合権限の例外承認をパートガス少佐から獲得し、ブロンディ・ヘイバートが抗争に敗れて左遷的に退場する一連の場面で、ロニは目立たない若手官吏のラインに留まる戦略的姿勢を貫く。この抑制が、後に明かされるモールとしての立場を静かに準備する構造として描かれる。
ISB情報リークの継続
シーズン1終盤、ロニはナルキナ5の帝国強制労働所からのキャシアン・アンドーらの脱獄事件や、フェリックスでのマーヴァ・アンドーの葬儀を機とするリックス・ロード暴動の事後対応をめぐるISBの内部情報を、地下駐車場の密会を通じてルーセン側に流し続ける。表向きはパートガス少佐の信頼を得た若手官吏として振る舞いながら、裏では反帝国網の中枢に最も近い情報経路を維持する立場を担う。
ゴーマン情勢の伝達
シーズン2(2025年4月22日〜5月13日配信、全12話)の前半から中盤では、惑星ゴーマンの市民虐殺事件ゴーマン・マッサカーに至る事前計画段階が縦糸となる。ロニは、ISBが用意する宣伝工作と現場警備の指揮系統に関する機密を、コルサントの密会を通じてルーセン側に伝達する役回りを担い続ける。見えない情報経路の積み重ねが見える反乱の決定的場面を成立させるという主題を、中心的に体現する立場に置かれる。
ルーセンによる口封じ
シーズン2終盤の最終3話(2025年5月13日配信)で、ロニは最後にもたらしたデス・スター関連の決定的情報の引き渡しと引き換えに、ルーセン自身の手で口封じされる。妻と娘を盾に最後まで生存を交渉するロニに対し、ルーセンはシーズン1の断罪の言葉を実行に移す立場として静かに引き金を引く。この退場は、ルーセン自身がシリーズ終盤に辿る決算の前段に位置し、シリーズが接続する『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年12月16日日本公開)の帝国側情報統制機構の最終形へと直結する。
02能力・特徴

- 情報官僚としての分析力:担当地区の情報網から上がる報告を整理し、ISB週次ブリーフィングで簡潔に提示する若手監督官としての分析力を持つ。目立たない官吏の位置に留まることで、二重スパイとしての立場を秘匿し続ける。
- 長期にわたる二重スパイの遂行力:ルーセン・レイルに対し、ブリーフィングで議論される機密を長年リークし続ける。夜間に地下駐車場や暗がりの公共空間で密会し、平凡な市民生活を装いながら情報を渡す長期遂行能力を持つ。
- 精神的葛藤の体現:二重スパイとしての疲弊と、妻と幼い娘への愛情の葛藤を抱える。地下駐車場の密会で脱出と引退を懇願する長台詞は、激情ではなく静かな疲弊と恐怖の混合として滲む人物像が最大の特徴である。
- 省内政治の距離計算:デドラ・ミーロとブロンディ・ヘイバートの政治抗争の中心から意図的に距離を置く。発言量やタイミングを細密に調整し、目立たない官吏としての評価枠を保ちつつリーク経路の継続性を確保する。
- 家庭生活と二重生活の両立:コルサントの中層階級居住区で妻と幼い娘と暮らす家庭を保ちながら、夜間の密会で機密を渡す二重生活を長期にわたり遂行する。両立に伴う精神的負荷が蓄積していく人物として描かれる。
03関連人物

04登場・関連作品
05名場面

地下駐車場の密会:第10話前後、コルサントの地下駐車場でルーセンと密会し、疲弊と妻子を盾に脱出を懇願する長台詞を体現するシリーズ屈指のシークエンス。
「お前はモールだ」断罪:密会のクライマックスで、ルーセンが帝国側の死を列挙し「お前はもう市民ではない。お前はモールだ」と静かに断罪する最も静謐かつ残酷な対話場面。
ナルキナ5脱獄との並行モンタージュ:キャシアンの脱獄と地下駐車場の密会が交互に描かれ、見えない情報経路が見える反乱を成立させる主題を体現する編集場面。
ISB週次ブリーフィング:本部会議室でパートガス少佐が議長を務めるブリーフィングに常連登壇し、表の平凡な官吏と裏の二重スパイの負荷の対比を所作だけで示す反復場面。
ゴーマン・マッサカー情報の伝達:シーズン2前半〜中盤、ゴーマンの虐殺計画をめぐるISBの宣伝工作と警備指揮系統の機密をルーセン側に伝える一連の場面。
06制作背景

ロニ・ユングを演じるのは、英国出身の俳優ロベール・エムス(Robert Emms)である。1986年5月23日、英国ノーザンプトンシャー州ラグビー生まれで、英国王立演劇学校(RADA)出身の演技派として知られる。スティーヴン・スピルバーグ監督『戦火の馬』(2011年米国公開)のデヴィッド・ライアンズ役で世界的に注目され、『チェルノブイリ』(2019年、HBO/Sky)のボリス・シェルビナ秘書官役、『ザ・クラウン』『ブロードチャーチ』などにも出演している。本作は本人にとって本格的なスター・ウォーズ初参加にあたる。
エムスの抑制的な演技は、ISB側の脇役に英国出身の舞台俳優を起用して官僚機構の機微を細密に体現させるという本作の配役方針の代表例とされる。第10話前後の地下駐車場の密会場面で、脱出を懇願する長台詞を激情ではなく静かな疲弊と恐怖として演じた点は、シリーズ屈指の演技として批評的に高く評価される。この長尺の二人芝居は、ルーセン・レイルを演じるステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)との抑制的な応酬として成立している。
シリーズ製作総指揮と主席脚本を務めるのは、米国の脚本家・監督トニー・ギルロイである。『ボーン』シリーズの脚本や、自身が監督した『フィクサー』(2007年米国公開)で知られる政治スリラーの書き手で、実弟ダン・ギルロイやボー・ウィリモン、スティーヴン・シフらと脚本ラインを構成した。ギルロイは地下駐車場の場面を「シリーズの中で最も書き直しに時間をかけた場面のひとつ」と繰り返し語っており、この第10話はトビー・ヘインズの演出ブロックにあたる。
劇伴は、『ムーンライト』『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー賞作曲賞候補となった米国の作曲家ニコラス・ブリテルが全24話を一貫して担当し、抑制的な弦と打楽器で密会場面の二人芝居を支える。本作はルーカスフィルム製作、ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のDisney+独占配信ドラマとして全配信地域で同一日付に配信された。シーズン1はトビー・ヘインズら、シーズン2はアリエル・クライマンら三監督ラインが三話単位のブロックを分担し、キャスリーン・ケネディらが製作総指揮に名を連ねる。
07評価・考察

ロニ・ユングは、シリーズの縦糸である「反乱は誰の手によって、誰のいのちと引き換えに成立するのか」という主題を最も冷厳に体現する人物である。第10話前後の「お前はもう市民ではない。お前はモールだ」という断罪は、反乱の倫理的代償を最も直接的に言語化する場面であり、『新たなる希望』以来の「反乱軍/帝国」の二元論を、現実の情報機関と諜報史の文脈へ引き寄せて描き直す本作の方針と整合する。
本人物の造形は、英国MI6の「ケンブリッジ・ファイブ」や米国のオルドリッチ・エイムズ、ロバート・ハンセンといった現実の二重スパイ(モール)の系譜を、トニー・ギルロイの政治スリラーの作家性を経由して銀河帝国の官僚機構の内部へ置き直したものである。書類仕事として運営される帝国の暴力を、内部から最も精緻に裏返す存在として位置付けられる。
シーズン2終盤にルーセン自身の手で口封じされる退場は、ルーセンがシリーズ終盤に辿る決算の前段にあたり、最も近い同志同士の関係においても主題が貫徹される構造を示す。この退場は、本作が接続する『ローグ・ワン』の帝国側情報統制機構の最終形へと直結し、シリーズ最終局面の要となる人物配置である。
08トリビア
- ロニ・ユングは『アンドー』本編のみに登場する人物で、他のスター・ウォーズ映画・実写ドラマ群や『ローグ・ワン』本編には登場しない、アンドー限定のキャラクターである。
- 演者ロベール・エムスは英国王立演劇学校(RADA)出身で、『戦火の馬』のデヴィッド・ライアンズ役で注目された。本作はISB側に英国の舞台俳優を起用する配役方針の代表例のひとつである。
- 姓「Jung」は劇中で呼ばれる場面が少なく、視聴者には「ロニ」の名で認知されやすい。ルーセンとの密会では一貫して「お前」と呼ばれ、二重スパイの立場が呼称の配分に象徴される。
- 第10話はナルキナ5脱獄と地下駐車場の密会を交互に描く並行モンタージュ構造で知られ、シリーズ屈指の高評価エピソードとして批評で繰り返し言及される。
- シーズン1からシーズン2までは約2年半(約30か月)の間隔があり、ギルロイはこの間、他作品から距離を置いて本作に集中する方針を取ったと語っている。
09よくある質問
ドラマ『スター・ウォーズ/アンドー』のシーズン1〜2、計24話のみに登場する。帝国保安局コルサント本部の監督官でありながら、反帝国網の総帥ルーセン・レイルに通じる二重スパイである。
英国出身の俳優ロベール・エムスが演じる。RADA出身の演技派で、『戦火の馬』や『チェルノブイリ』で知られる。
シーズン1第10話前後の地下駐車場の密会場面で明示される。ロニが脱出を懇願し、ルーセンが「お前はモールだ」と断罪する場面である。
ゴーマン・マッサカーをめぐるISBの機密をルーセン側に流し続ける。終盤、デス・スター関連情報を渡した末に、ルーセン自身の手で口封じされる。
登場しない。ただし退場は『ローグ・ワン』本編冒頭のキャシアン側の情報源網へ接続する位置に置かれている。
10出典
- StarWars.com 公式: Andor シリーズ紹介
- Wookieepedia: Lonni Jung
- Wookieepedia: Luthen Rael
- StarWars.com 公式: Cassian Andor キャラクター紹介
- StarWars.com 公式: Mon Mothma キャラクター紹介
- StarWars.com 公式: Imperial Security Bureau (ISB) 設定紹介
- Wookieepedia: Cassian Andor
- Wookieepedia: Dedra Meero
- Wookieepedia: Major Partagaz
- Wookieepedia: Imperial Security Bureau
- Wookieepedia: Ghorman Massacre
- Wookieepedia: One Way Out (episode)
- IMDb: Andor (TV Series 2022– )
- IMDb: Robert Emms
- IMDb: Stellan Skarsgård
- IMDb: Tony Gilroy
- IMDb: Nicholas Britell