舞台は北海道函館。鈴木次郎吉の人脈で集められた新選組副長・土方歳三ゆかりの『四振りの刀』を巡り、怪盗キッドの予告状と刀職人連続殺人事件が同時に動き出す。剣道大会で函館入りした服部平次と遠山和葉、大岡紅葉、コナンと毛利探偵事務所、五稜郭・函館山・青函連絡船記念館摩周丸を縦に貫く宝探し——劇場版『名探偵コナン』第27作、興行収入約158億円超を記録したシリーズ歴代興行最高峰の祝祭。
原作青山剛昌、脚本大倉崇裕、音楽菅野祐悟、配給東宝、アニメーション制作トムス・エンタテインメント。上映時間110分。劇場版『名探偵コナン』シリーズ第27作。永岡智佳が劇場版『緋色の弾丸』に続く二度目の監督を務め、大倉崇裕は『ゼロの執行人』『紺青の拳』『緋色の弾丸』『黒鉄の魚影』に続く脚本起用となった。
前作『黒鉄の魚影』(劇場版第26作・2023)が黒の組織と灰原哀を軸にした濃密なサスペンスだったのに対し、本作はキャストの軸を完全に切り替え、北海道函館の街並みを舞台に、怪盗キッド/黒羽快斗、服部平次・遠山和葉、大岡紅葉という人気キャラの『顔合わせ』で物語を組み立てる。新選組副長・土方歳三ゆかりの四振りの刀を巡る連続殺人と、その背後に眠るとされる幕末の財宝『100万ドル』の所在を、コナンとキッドが別々の動機で追っていく構図である。
2024年4月12日に日本で全国公開され、最終的に約158.7億円の興行収入を記録した。観客動員は約1098万人で、劇場版『名探偵コナン』シリーズ歴代最高記録を大きく塗り替えただけでなく、日本の邦画歴代興行収入ランキングでもTOP10入りを果たした節目の一本となった。主題歌のaiko『相思相愛』もまた、劇場版主題歌史を代表する楽曲のひとつとして長く語り継がれている。
鈴木次郎吉のもとへ集められた四振りの刀のお披露目、怪盗キッドからの予告状、函館の古美術関係者の連続殺害、剣道大会で函館入りした平次と和葉、大岡紅葉の合流、コナン一行の函館入り、四振りの刀に刻まれた『100万ドル』の在処を示す暗号、五稜郭・函館山・青函連絡船記念館摩周丸を巡る追跡劇、ゲスト声優・大泉洋が演じる函館の名士の正体と動機、函館山ロープウェイ山頂展望台での平次の告白未遂、怪盗キッドの最後の一手までを、結末を含めて順に追う。本作の最重要のネタバレ(黒幕の正体・動機・財宝の正体・告白の行方)を前提に構成している。
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概要
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』は、青山剛昌の漫画『名探偵コナン』を原作とした日本のアニメ映画で、2024年4月12日に東宝の配給で日本公開された。劇場版シリーズ第27作にあたり、監督を永岡智佳、脚本を大倉崇裕、音楽を菅野祐悟が担当している。アニメーション制作はトムス・エンタテインメント。上映時間は110分である。タイトルの『五稜星』はサブタイトルでは『みちしるべ』と読ませる仕掛けで、北海道函館の象徴である五稜郭の星型の輪郭そのものと、本作で四振りの刀に隠された『100万ドル』の財宝の在処を指し示す道標としての意味を同時に背負っている。
舞台のひとつとなるのは、北海道函館である。明治維新の最後の戦場となった五稜郭、函館山ロープウェイから見下ろされる夜景、湾岸に係留された青函連絡船記念館摩周丸、坂と教会が並ぶ元町、赤レンガ倉庫群、そして高校生剣道大会の会場——本作はこれらの実在の街並みをほぼ全編にわたって舞台として組み込み、シリーズの中でも特に観光ガイド色の強い一本に仕上がっている。函館の街そのものが本作のもう一人の主役と呼んでよい厚みで描かれている。
中心人物は江戸川コナン/工藤新一であり、彼を取り巻く形で、怪盗キッド/黒羽快斗、服部平次、遠山和葉、大岡紅葉という人気キャラクターが揃い踏みする。本作は劇場版『名探偵コナン』のなかでも珍しく、コナンよりも前に怪盗キッドの予告状が物語を動かし、彼を追って函館入りする鈴木次郎吉の側から事件が立ち上がる構成を採る。一方、剣道大会の遠征のため函館へやって来た服部平次と遠山和葉、大岡紅葉が、刀職人連続殺人事件のもう一つの動線として街の別の場所で動き出す。
並走する第三の物語が、新選組副長・土方歳三ゆかりとされる四振りの刀をめぐる連続殺害事件である。函館の古美術コレクターたちのもとに分散して伝わってきた四振りの刀は、それぞれの刃や柄に幕末当時の暗号が刻まれており、四振りを揃えると旧幕府軍が敗走の直前に隠したとされる金塊——『100万ドル』に相当するとされる財宝——の在処を示すという伝承を持つ。怪盗キッドが狙うのもこの四振りの刀であり、刀職人や所有者を狙う殺人犯のもう一つの動機もまた、四振りの刀である。
公開後の興行は最終的に約158.7億円、観客動員約1098万人を記録した。前作『黒鉄の魚影』が記録した約138億円をさらに大きく塗り替え、劇場版『名探偵コナン』シリーズの歴代興行最高を更新しただけでなく、日本の邦画歴代興行収入ランキングでもTOP10入りを果たした節目の一本となった。主題歌はaikoの『相思相愛』。本記事は、結末、真犯人の正体、財宝の正体、函館山ロープウェイ山頂での平次の告白未遂と怪盗キッドの介入まで含む全編の内容に踏み込む。物語の重大な驚きを保ちたい場合は、まず本編を鑑賞してから読み進めることを勧める。
- 原題
- 名探偵コナン 100万ドルの五稜星
- シリーズ
- 劇場版『名探偵コナン』第27作
- 監督
- 永岡智佳
- 脚本
- 大倉崇裕
- 音楽
- 菅野祐悟
- 主題歌
- aiko「相思相愛」
- 日本公開
- 2024年4月12日
- 上映時間
- 110分
- ジャンル
- ミステリー、サスペンス、怪盗もの、宝探し、青春・恋愛、ご当地観光ものの混成
あらすじ
以下は結末までを含む全編のあらすじである。物語は、北海道函館に届く怪盗キッドからの予告状をきっかけに動き始め、四振りの刀を集めようとする鈴木次郎吉、それを狙うキッド、刀職人連続殺人事件の発生、剣道大会のため函館入りした服部平次・遠山和葉・大岡紅葉の合流、コナンと毛利探偵事務所の函館上陸、五稜郭・函館山・青函連絡船記念館摩周丸を縦に繋ぐ追跡、ゲスト声優・大泉洋が演じる函館の名士の正体と動機の判明、函館山ロープウェイ山頂展望台での平次の告白未遂と怪盗キッドの介入、そして『100万ドル』の財宝の本当の正体までの展開を含む、すべての主要シークエンスを順に追う。
予告状——函館に集められた四振りの刀
物語は、鈴木次郎吉のもとへ届く一通の予告状から動き出す。差出人は怪盗キッド。文面には、函館に分散して伝わってきた新選組副長・土方歳三ゆかりとされる四振りの刀をすべて頂戴する、という趣旨が、シルクハットとモノクルの絵柄とともに記されている。鈴木次郎吉はかねてからこの四振りの刀の存在に注目しており、自身の人脈で函館の古美術コレクターたちと交渉のうえ、四振りすべてを一時的に函館の安全な保管場所へ集めて鑑定にかけようとしていた最中の出来事だった。
予告状の文面は、ただの宝石泥棒の挑戦状ではない。四振りの刀には、それぞれの刃や柄に旧幕府軍時代の暗号が刻まれており、四振りを揃えて読み解くと、戊辰戦争末期に旧幕府軍が敗走の直前に北海道のどこかに隠したとされる、金塊——通称『100万ドル』——の在処が浮かび上がるという伝承が、函館の古美術関係者のあいだでまことしやかに語り継がれてきた。キッドはこの伝承そのものに惹かれて行動を起こしたのか、それとも別の理由で刀そのものを狙っているのか、観客の側からも序盤の時点では断定できない。
鈴木次郎吉は、過去の劇場版で何度もキッドと一対一の知恵比べを演じてきた立場として、本作でも予告状を逆手に取り、自らの人脈で集めた四振りの刀を、キッド誘い込みの罠として使おうとする。函館の保管場所の警備には、現地の北海道警の刑事陣に加え、目暮十三警部・白鳥任三郎警部・佐藤美和子刑事・高木渉刑事・千葉刑事が応援として駆けつける。鈴木園子は次郎吉の隣に立ち、阿笠博士と少年探偵団もまた、ひと足早く函館へ向かう次郎吉一行に合流していく。
函館上陸——剣道大会、毛利探偵事務所、紅葉
予告状の報せが流れる前から、すでに函館にはもう一つの動線が動いていた。全国高校生剣道大会の遠征のため、服部平次が和葉とともに函館入りし、京都・大岡道場の跡取り娘である大岡紅葉もまた、剣道大会の見届け人かつ参加者の一人として現地に到着している。平次の頭の中にあるのは、剣道大会の本気の試合と、ひと夜の函館で和葉に伝えそびれてきた『あの言葉』をどう切り出すかという、二つの別問題が同居している状態である。
毛利探偵事務所の側もまた、鈴木次郎吉の招きで函館入りする。コナン、毛利蘭、毛利小五郎、鈴木園子は新千歳から函館へ向かい、空港から市内へ続く道すがら、ロープウェイ山頂展望台や赤レンガ倉庫群、五稜郭タワーなどの観光名所が画面の中で次々に紹介されていく。シリーズの中でも特に観光地としての函館の絵柄が手厚く描かれた本作の序盤は、ご当地映画としての楽しさを早い段階で観客の側へ手渡してみせる。
両者の動線は、剣道大会の会場を兼ねた市内の体育館の周辺で交差する。平次・和葉・紅葉とコナン・蘭・小五郎・園子が顔を合わせ、紅葉が和葉に対していつもの調子で『先輩を奪うんやさかい』と微笑みかける場面は、本作の和葉と紅葉のシーソーゲームの開幕を告げる軽快な見せ場である。観客は平次の鈍さと、紅葉の余裕と、和葉の動揺と、その三者の重なりを早い段階で頭に入れたうえで、四振りの刀の物語と並走させて見ていくことになる。
刀職人連続殺害——四振りの刀の最初の血
物語の温度が一段下がるのは、函館で活動していた高名な刀職人——四振りの刀の研ぎと修復を任されていた人物——が、自宅工房で殺害された状態で発見される場面である。発見されるのは鈴木次郎吉の使いと、応援に駆けつけた北海道警の刑事陣によってで、現場には四振りの刀のうちの一振りが持ち去られた痕跡と、犯人が落としていったとみられる小さな手がかりが残されている。
毛利小五郎は鈴木次郎吉の旧知の名探偵として、ただちに現場の検分に呼ばれる。コナンはいつものように、小五郎の影で現場を読み直し、刀職人の身体の倒れ方、工房の戸の閉まり方、棚の上のわずかな埃の崩れから、犯人が四振りの刀そのものを狙って計画的に動いた人物であること、そして犯人が単独の犯行ではなく、複数人の協力者か、少なくとも事前に函館の古美術関係者の動きを克明に把握していた人物であることを、序盤の早い段階で見抜く。
さらに数十時間以内に、四振りの刀のうちの一振りを所蔵していた函館の古美術コレクターのもう一人が、別の場所で何者かに襲撃され重傷を負う事件が連続する。北海道警と警視庁の応援部隊は本格的な捜査本部を設置し、捜査線上には函館の古美術関係者・幕末研究者・新選組ゆかりの末裔たちの名前が次々に浮かんでくる。鈴木次郎吉は手元に集まった残る刀の警備を最大限に固めるが、犯人側はその警備の隙間をかなり詳細に読み込んだうえで、次の手を打ってくる。
古美術の名士——大泉洋が演じる函館の鑑定家
本作のためのゲスト声優二枚看板の中心に据えられたのが、北海道出身の俳優・大泉洋が演じる函館の古美術鑑定家である。彼は函館の旧家の末裔として地元の名士として知られ、刀剣と幕末資料の鑑定では国内でも屈指の権威とされる人物である。鈴木次郎吉とは旧知の間柄で、四振りの刀を函館で集めて鑑定する今回のプロジェクト全体の音頭を取ってきた立場にもある。
彼は事件発生直後から、鈴木次郎吉と毛利小五郎、コナン、北海道警の捜査陣のあいだを行き来し、四振りの刀の歴史的な背景、土方歳三ゆかりとされる根拠、暗号の存在についての伝承などを、穏やかな口調で順に解説していく。大泉洋の声の柔らかさと、北海道のイントネーションがほのかに混じる発音は、本作の函館の街の空気と非常に相性がよく、観客は早い段階から彼に好意を抱く設計になっている。
ところが——本作の中盤以降、観客と捜査陣の側に少しずつ違和感が積み重ねられていく。彼が四振りの刀のすべての場所を把握できる立場にあったこと、警備の動きや古美術関係者の予定を細部まで知りうる位置にあったこと、そして彼が口にする幕末の暗号についての解釈が、本来の伝承よりも一歩踏み込みすぎていること——これらの細部が後半のコナンの推理の中で結びつき、彼こそが本作の連続事件の中心にいた人物であったことが浮かび上がっていく。
怪盗キッドの本当の標的
怪盗キッドは予告状通り、函館の保管場所に現れる。シルクハットとモノクル、白いマント、小型のハンググライダー、白い羽根——彼の道具立てはシリーズの中でも最も派手な部類で、函館の夜景と五稜郭の星型の輪郭を背景に、彼の細い影が滑空する画作りは、本作のもっとも有名なキービジュアルのひとつとなった。鈴木次郎吉の集めた四振りの刀のうちの何振りかが、彼の手によって一時的に持ち去られる夜は、本作の中盤の見せ場のひとつである。
ただし、本作のキッドは単に宝物を盗む怪盗としては動いていない。彼が四振りの刀に強い関心を寄せているのは、自身の父・黒羽盗一の代から引き継がれた『あるもの』の手がかりが、四振りの刀の暗号の中に紛れているのではないか、という個人的な事情からである。父・黒羽盗一の生前の調査ノートに残されていた断片的なメモが、本作の四振りの刀のいずれかと結びつくのではないか——その確証を取るために、キッドは函館の街に降り立っている。
コナンは早い段階で、キッドの動機が単純な盗みではないことを察する。彼は『新一』の姿で函館の現場を歩きまわるキッドとすれ違うたびに短い目配せだけを交わし、二人は表向きには敵対しつつも、本作の真の敵——四振りの刀の所有者を次々に殺害していく犯人——に対しては、即席の協力者として無言で動くことを互いに了解していく。怪盗と名探偵の関係を、敵でもなく完全な味方でもない『同じ謎の前で背中合わせに立つ二人』として描いた本作のキッド造形は、シリーズの中でも特に粋に仕上がっている。
平次と和葉——函館の夜と告白の予感
並走する第二の物語は、服部平次と遠山和葉の関係である。剣道大会のため函館入りした平次は、本作の冒頭から『今度こそ和葉に言う』という決意を内に抱えており、その様子を察した大岡紅葉が、平次の決意の機会を奪うべく和葉に対して何度も挑発めいた発言を繰り返す。京都・大阪の三角関係が、函館の風景の中でひと夜だけ持ち越されてきたかのような構図である。
本作の平次と和葉は、剣道大会の試合と、宿の同室の気まずさと、函館の夜景を歩く道すがらの会話と、四振りの刀をめぐる事件の現場検分と、複数の場面のいずれにおいても、互いの距離をほんの少しずつしか縮められない。平次の鈍さと、和葉のぐっと飲み込む癖と、紅葉の遠慮のなさが、シリーズの恋愛要素の中でも特にじりじりとした空気を本作の中盤に焼き付けていく。
コナンと蘭、園子もまた、平次と和葉の様子を遠目に見ながら、それぞれ別の場所で別の感情線を走らせている。コナンは新一として蘭の隣に立てない自分自身を抱えたまま、平次の鈍さに対する苛立ちと、自分自身の言葉のなさへの自嘲を、同じ表情の中で交互に見せる。本作の平次の告白未遂は、コナンと蘭の関係の踏み台でもあるという二重構造を、本作はかなり丁寧に組んでいる。
四振りの刀の暗号——五稜星の道標
中盤の山場のひとつは、四振りの刀の暗号を解読していくシークエンスである。それぞれの刀の刃文・銘・柄の意匠に刻まれた幾何学的な紋様を、コナンが阿笠博士のタブレットと、阿笠博士・少年探偵団の協力を借りながら一枚の図に重ねていくと、北海道函館の地図上にゆっくりと五つの頂点を持つ星——五稜星——の輪郭が浮かび上がる。
その五つの頂点は、五稜郭、函館山ロープウェイ山頂展望台、青函連絡船記念館摩周丸、元町の旧領事館跡、そして赤レンガ倉庫群の一角——本作で繰り返し映し出されてきた函館の主要な観光名所のいくつかと、ほぼ重なる。それぞれの頂点に隠された手がかりを順に拾っていくと、最後に星の中心——本作の『100万ドル』の財宝の本当の隠し場所——が浮かび上がる、という仕掛けである。
コナンと少年探偵団は、平次と和葉、紅葉、毛利小五郎、鈴木園子と分担しながら、星の頂点を順に巡っていく。途中、何人かの犯人側の協力者と思しき人物に追跡され、五稜郭の堀のほとりや、摩周丸の機関室、函館山ロープウェイのゴンドラ内など、シリーズの中でも特に観光地そのものを舞台にしたアクション場面が連続して用意されている。観光地の映像と推理の進行を交互に重ねていく本作の構成は、シリーズの中でも特に観光ガイド映画としての完成度が高い。
黒幕——函館の名士の動機
終盤、コナンは函館の連続事件の中心にいた人物が、本作の前半から鈴木次郎吉と並んで動き続けていた古美術鑑定家——大泉洋が声を担当する函館の名士——その人であることに辿り着く。彼は表向き、四振りの刀を函館で集めるプロジェクトの取りまとめ役として善意の協力者を装いながら、その裏で刀職人と古美術コレクターを順に襲い、四振りの刀の暗号を自分自身の手だけで読み解いて、財宝の在処を独占しようとしていた。
彼の動機は、単なる金銭欲ではない。函館の旧家の末裔として代々受け継がれてきた家業——古美術鑑定と幕末研究——が、現代の経済の中で経営的に行き詰まり、家の歴史そのものが途絶える瀬戸際にあるという事情を、彼は誰にも打ち明けないまま長年抱え込んできた。家の財政を一気に立て直し、自らが愛してきた函館の幕末資料を守るための原資として、伝説の『100万ドル』を自分自身の手で掘り当ててみせる——それが、彼が選んだ最後の手段だった。
コナンは彼に対し、過去の名探偵としての推理だけでなく、函館の街と幕末資料を心から愛してきた研究者としての彼自身の半生を踏まえたうえで、それでも他者の命を奪った行為そのものは正当化できないと、子どもの口調を抑えた静かな声で告げる。大泉洋の声が、ここまで穏やかに観客の側に積み重ねてきた『好ましい函館の名士』としての記憶を、終盤の数分間で『罪を抱えた人間』としての顔へと一気に塗り替えていく数十秒は、本作の演技面の最大の山場のひとつである。
クライマックス——五稜郭の決着と函館山の告白
クライマックスは、五稜郭の堀のほとりで起きる。黒幕は四振りの刀の暗号の最後の一片を握ったまま、五稜郭の星型の中心へ続く隠し通路の入口を強引にこじ開けようとし、コナン、平次、和葉、紅葉、毛利小五郎、鈴木次郎吉、北海道警と警視庁の捜査陣、そして空からハンググライダーで滑空してくる怪盗キッドが、ほぼ同時刻に同じ場所へ収束する。シリーズの祝祭感を象徴する顔ぶれが五稜郭の星型の輪郭の上で並ぶ画作りは、本作のキービジュアルの完成形と呼んでよい。
黒幕は最後の手として、五稜郭の一角に仕掛けた小型の爆発物を起動させようとするが、コナンの腕時計型麻酔銃と、平次の脇差を抜くより先に投げ放たれた小石の合わせ技で動きを止められ、そのまま北海道警の手で身柄を確保される。財宝の在処——本作の『100万ドル』の正体——は、コナンの推理によって、最終的に函館の街そのものに埋め込まれた幕末の資料群の集合体であり、現代の貨幣価値で換算すれば100万ドルに相当するであろう歴史的価値の集積であったことが明かされる。金塊そのものが眠っていたわけではない、というこの結末は、本作のタイトル『五稜星(みちしるべ)』の二重の意味を最後の数分で観客に手渡してみせる。
事件の決着を待たずに、もう一つのクライマックスが函館山ロープウェイ山頂展望台で進行している。平次は和葉を山頂の夜景の前に呼び出し、長年抱え込んできた『あの言葉』を、ようやく口にしようとする。和葉の表情が固まり、紅葉が遠くから息を呑む——その決定的な数秒間に、頭上の夜風を切り裂いて怪盗キッドのハンググライダーが滑空してくる。キッドは、爆発物の対応に追われていた函館山ロープウェイの設備の安全を、空中から短く確保したのち、平次の告白の核心部分の一言を、たまたま——あるいは意図的に——自身の風切り音と無線交信の混線で覆い隠してしまう。
結果として、平次の告白は和葉の耳には届かない。彼自身は最後の一言を確かに口にしたつもりでいるが、和葉の側には何も聞こえなかった、という非常に意地悪な決着が、本作のラブコメ線にもう一段の続きを残す。観客の側だけが、平次が確かに『あの言葉』を口にしたという事実を共有する形で、本作の恋愛パートは『未遂の告白』として閉じられる。シリーズの中でも特に観客に対していたずらな終わり方を選んだ一本として、本作のラストは長く語り継がれていくことになった。
夜明けの函館——キッドの白い羽根とエンディング
事件が落ち着いた直後、五稜郭の堀のほとりに静かに立つコナンのもとへ、新一の姿のままのキッドが背後からゆっくりと近づく。彼は本来の口調を一段抑え、本作の事件を結果として共に終わらせたコナンに対して、四振りの刀の暗号の最後の一片を、自分自身の調査で確かに父・黒羽盗一の生前のメモと結びつけて確認できたことを、短く告げる。彼が函館までやって来た本当の理由——父の死の真相に繋がるかもしれない手がかり——は、本作の中では完全には明かされず、続く劇場版や原作『まじっく快斗』側の物語へ静かに引き継がれていく。
夜明けの函館湾を見下ろす函館山の中腹に、誰かが置いていったような白い羽根が一枚舞い落ちる。鈴木次郎吉は四振りの刀を、本来の所有者のもとへ順に戻していくことを約束し、コナンの隣でひと夜の旅程を終える。平次は和葉に届かなかった告白の言葉を内に抱えたまま、紅葉に背中を小突かれながら剣道大会の決勝戦の朝へと向かう。
エンディングでaikoの『相思相愛』がイントロから流れ始めるとき、本作の登場人物たちがひと夜のうちにくぐり抜けた函館の街並み——五稜郭、函館山、摩周丸、元町、赤レンガ倉庫群——のひとつひとつの絵柄が、観客の側にもう一度立ち上がる。本作の幕は、夜明けの函館湾の空と、まだ煙の残る五稜郭の星型の輪郭の絵で静かに閉じる。
登場要素
本作に登場・言及される主な要素を、劇場版『名探偵コナン』の標準的な分類に沿って整理する。固有名詞は鑑賞の手がかりであり、初見ですべてを暗記する必要はない。
レギュラー陣
- 江戸川コナン/工藤新一
- 毛利蘭
- 毛利小五郎
- 鈴木園子
- 阿笠博士
- 吉田歩美
- 小嶋元太
- 円谷光彦
- 灰原哀(出番は限定的)
警視庁・北海道警・組織
- 目暮十三警部
- 白鳥任三郎警部
- 佐藤美和子刑事
- 高木渉刑事
- 千葉刑事
- 北海道警の刑事陣(函館の現場担当)
- 鈴木財閥(鈴木次郎吉が指揮する企業群)
- 函館の古美術コレクター集団
- 全国高校生剣道大会の運営
事件関係者・ゲスト
- 服部平次(剣道大会のため函館入り/西の高校生探偵)
- 遠山和葉(平次の幼馴染/剣道部の主将)
- 大岡紅葉(京都・大岡道場の跡取り娘/声:折笠富美子)
- 怪盗キッド/黒羽快斗(本作では大半を新一に近い姿で行動/声:山口勝平)
- 鈴木次郎吉(鈴木財閥総帥/本作の四振りの刀収集の発案者/声:永井一郎)
- 函館の古美術鑑定家(本作のためのゲスト主役格/声:大泉洋)
- 函館の刀職人(連続事件の最初の被害者)
- 函館の古美術コレクター複数名(負傷・襲撃の被害者)
犯人と動機(重大ネタバレ)
- 本作の連続事件の真犯人は、函館の旧家の末裔として地元の名士として知られる古美術鑑定家である(声:大泉洋)
- 彼は鈴木次郎吉と並ぶ形で四振りの刀収集プロジェクトの取りまとめ役を務めながら、その裏で刀職人と古美術コレクターを順に襲い、四振りの刀の暗号を独占して『100万ドル』の財宝の在処を自分自身の手だけで掘り当てようとしていた
- 動機の核は、函館の旧家として代々受け継がれてきた古美術鑑定と幕末研究の家業が現代の経済の中で経営的に行き詰まり、家の歴史そのものが途絶える瀬戸際にあるという事情と、自らが愛してきた函館の幕末資料を守るための原資を確保したいという執着である
- 本作の『100万ドル』の本当の正体は、金塊そのものではなく、函館の街そのものに埋め込まれた幕末資料群の集合体であり、現代の貨幣価値で換算すれば100万ドルに相当するであろう歴史的価値の集積である
- 怪盗キッド/黒羽快斗の本作での動機は、父・黒羽盗一の生前の調査メモの一片が、四振りの刀の暗号の中に紛れているのではないかという個人的な事情である
- ラストで平次が和葉に告げようとした告白の核心の一言は、頭上を滑空してきた怪盗キッドのハンググライダーの風切り音と無線の混線で覆い隠され、和葉の耳には届かない『未遂の告白』として閉じられる
舞台
- 北海道函館(市街地全域)
- 五稜郭・五稜郭タワー
- 函館山・函館山ロープウェイ山頂展望台
- 青函連絡船記念館摩周丸
- 元町(旧領事館跡・教会群・坂道)
- 赤レンガ倉庫群(金森赤レンガ倉庫を含む)
- 全国高校生剣道大会の会場となる市内体育館
- 鈴木次郎吉が用意した函館の四振りの刀の保管場所
- 函館空港・新千歳空港(劇場版でのご当地表現として登場)
トリック・小道具
- 怪盗キッドの予告状とシルエットの署名
- 怪盗キッドのシルクハット・モノクル・白いマント・小型ハンググライダー
- 新選組副長・土方歳三ゆかりとされる四振りの刀(刃文・銘・柄に幕末の暗号)
- 暗号を地図上に重ねると浮かび上がる五稜星の輪郭
- コナンの腕時計型麻酔銃と蝶ネクタイ型変声機
- 阿笠博士特製のキック力増強シューズと探偵バッジ型トランシーバー
- 服部平次の竹刀・剣道大会の出場用具・函館の宿の電球の調光(告白の灯りとして使われる)
- 黒幕が用意した五稜郭の一角の小型爆発物
- 黒羽盗一の生前の調査ノート(本作のキッドの動機の核)
主題歌・主要声優
- 主題歌:aiko「相思相愛」(作詞・作曲:aiko)
- コナン:高山みなみ
- 工藤新一:山口勝平
- 毛利蘭:山崎和佳奈
- 毛利小五郎:小山力也
- 鈴木園子:松井菜桜子
- 阿笠博士:緒方賢一
- 灰原哀:林原めぐみ
- 吉田歩美:岩居由希子
- 小嶋元太:高木渉
- 円谷光彦:大谷育江
- 目暮十三:茶風林
- 白鳥任三郎:井上和彦
- 佐藤美和子:湯屋敦子
- 高木渉:高木渉
- 千葉刑事:千葉一伸
- 服部平次:堀川りょう
- 遠山和葉:宮村優子
- 大岡紅葉:折笠富美子
- 怪盗キッド/黒羽快斗:山口勝平
- 鈴木次郎吉:永井一郎
- 函館の古美術鑑定家(ゲスト主役格):大泉洋
主要登場人物
本作の人物配置は、レギュラー陣(コナン、蘭、小五郎、園子、阿笠博士、少年探偵団、灰原哀、目暮警部・白鳥警部・佐藤刑事・高木刑事・千葉刑事)に、人気キャラの服部平次・遠山和葉・大岡紅葉・怪盗キッド/黒羽快斗・鈴木次郎吉を重ね、そこへ本作のためのゲスト主役格である函館の古美術鑑定家(大泉洋)を加えた、シリーズの中でも特に層の厚い顔ぶれで構成されている。前者は『函館の街を一夜で巡る祝祭の側』であり、ゲストの古美術鑑定家は『函館の街と幕末資料を一人で背負ってきた者』として、本作の対照軸を形作っている。
江戸川コナン/工藤新一(高山みなみ/山口勝平)
本作のコナンは、表で動く怪盗キッドの予告状騒ぎ、刀職人連続殺害事件、平次と和葉の告白未遂、四振りの刀の暗号、そしてゲスト古美術鑑定家の動機の判明という、性格の異なる複数の事件と感情線を同時に背負う立場に置かれる。劇場版第27作という時点で、コナンはすでに数多くの劇場版で『複数の事件を同時に背負う名探偵』として描かれてきたが、本作はその中でも特に並走する線の本数が多い一本である。
彼が本作で繰り返し採るのは、四振りの刀の暗号を子どもの体格と少年探偵団の地理感を借りて読み解きつつ、平次と和葉の関係には敢えて直接的に介入しないという、距離の取り方の巧みさである。新一としてキッドと向き合うときの口調、コナンとして少年探偵団に指示を出すときの口調、そして園子と紅葉の前で年相応の子どもを演じるときの口調の使い分けを、高山みなみと山口勝平が交互に引き受けてみせる。
怪盗キッド/黒羽快斗(山口勝平)
本作の怪盗キッドは、シリーズの中でも特に物語の中心軸に深く食い込む位置で動く。予告状を発したのは彼自身であり、四振りの刀そのものに対する個人的な動機——父・黒羽盗一の生前の調査メモの一片を確かめるという、原作『まじっく快斗』側の文脈に繋がる動機——を本作で初めて劇場版の表側に持ち込んだ点でも、本作のキッド造形は重要な意義を持つ。
山口勝平はここで、工藤新一と怪盗キッド/黒羽快斗の声を、本作の中盤以降ほぼ同じ俳優の身体の中で同時に並走させる。新一としての落ち着いた口調と、キッドとしてのいたずら混じりの口調が、同じ場面の中で行き来する数十秒間は、本作の聴覚的な核である。彼が父・黒羽盗一の名を本作で短く口にする数秒間は、シリーズのキッド単独主役級の作品群の中でも、最も静かで重い数秒のひとつとして語り継がれていく。
本作のキッドが他の劇場版のキッドと違うのは、彼がラストで平次の告白の核心部分を、自身の風切り音と無線交信の混線で覆い隠してしまう側にいることである。それが意図的な邪魔だったのか、たまたまだったのかは本作の中では明言されない。怪盗らしい余裕といたずら、そして自分自身の父との結びつきという複数の文脈を、一本の細い影として組み合わせた本作のキッドは、シリーズの中でも特に粋な造形のひとつとして記憶される。
服部平次・遠山和葉・大岡紅葉(堀川りょう/宮村優子/折笠富美子)
服部平次は本作で、剣道大会の遠征と告白の決意という二つの別問題を同居させたまま函館入りする。本作の平次は、過去の劇場版『迷宮の十字路』『から紅の恋歌』『から紅』以降の流れの上で、和葉に対する自身の感情を最も具体的な言葉で口にしようとする立場として描かれており、剣道大会の試合の合間や、宿の同室の気まずさ、函館の夜景を歩く道すがらの会話の中で、繰り返し『あの言葉』のタイミングを計り続けている。
遠山和葉は、平次に対する長年の気持ちと、紅葉という強力なライバルの存在の前で揺れ続ける本作の感情線の中心人物のひとりである。剣道部主将としての凛とした立ち姿と、平次の前で見せる無防備な表情の落差を、宮村優子の声が一枚の身体の中でなめらかに引き受ける。本作の和葉は、紅葉の挑発を真に受けて怒る場面と、紅葉の本心に薄々気付いて苦笑する場面の両方を、観客の側に器用に手渡してみせる。
大岡紅葉は、京都・大岡道場の跡取り娘として、本作でも剣道大会の見届け人かつ参加者の一人として函館入りする。折笠富美子の声で繰り返し放たれる『先輩を奪うんやさかい』の台詞は、本作の和葉の動揺の引き金になると同時に、紅葉自身の本気の半分とおふざけの半分を同じ口調の中で運んでみせる。本作の紅葉は、平次と和葉の告白未遂の場面において、誰よりも先に息を呑んで遠目に見守る側へ静かに回るという、シリーズの中でも特に成熟した位置に立つ。
鈴木次郎吉(永井一郎)
鈴木次郎吉は、本作のもう一人の主役と言ってよい位置に立つ。怪盗キッドからの予告状を逆手に取り、自らの威信を懸けた四振りの刀の収集プロジェクトをキッド誘い込みの罠として使うという豪胆な経済人としての顔と、過去の劇場版『世紀末の魔術師』以来のキッドとの長い因縁を抱えた骨董愛好家としての顔を、永井一郎の重厚な声で同時に引き受ける。
本作の次郎吉は、四振りの刀そのものよりも、キッドとの『一対一の知恵比べ』のほうを楽しみにしているような表情を、函館の保管場所のいくつかの場面で見せる。鈴木園子と並んで立つ家族としての姿、毛利探偵事務所と並んで歩く依頼人としての姿、そして函館の名士たちの輪の中に立つ財閥総帥としての姿——本作の次郎吉は、複数の顔を一枚の身体の中で器用に運び続け、ラストの『四振りの刀を本来の所有者のもとへ順に戻す』という決断にも、本作のシリーズらしさを一段強く印象づける重みを与えてみせる。
函館の古美術鑑定家(大泉洋・重大ネタバレ)
本作の真の敵は、函館の旧家の末裔として地元の名士として知られる古美術鑑定家である。声を担当するのは北海道出身の俳優・大泉洋。本作の前半では穏やかで好ましい函館の案内役として観客の側に好意を積み重ね、後半でその記憶を一気に塗り替えてみせるという、ゲスト声優の起用としても作劇としても極めて挑戦的な役どころを引き受けている。
彼の動機は、函館の旧家として代々受け継がれてきた古美術鑑定と幕末研究の家業が、現代の経済の中で経営的に行き詰まり、家の歴史そのものが途絶える瀬戸際にあるという、誰にも打ち明けないまま長年抱え込んできた事情である。彼は『100万ドル』の財宝を自分自身の手で掘り当てることで、家の財政を立て直し、自らが愛してきた函館の幕末資料を守ろうとした。彼にとって、本作の事件は単なる金銭欲ではなく、自身の半生を懸けた最後の選択だった。
終盤、コナンが彼に対して告げる『それでも他者の命を奪った行為そのものは正当化できない』という静かな台詞と、それを受け止めたあとに彼が口にする短い独白——『この街と、この資料を、誰かが守らんといかんかったんです』という趣旨の台詞——は、本作のゲスト悪役像の核を形作る。大泉洋の声の温度の振り幅は、シリーズのゲスト声優起用史の中でも特筆に値する仕事のひとつとして、長く語り継がれていくことになった。
舞台と用語
舞台は、北海道函館の市街地全域である。明治維新の最後の戦場となった五稜郭、函館山ロープウェイから見下ろされる夜景、湾岸に係留された青函連絡船記念館摩周丸、坂と教会が並ぶ元町、赤レンガ倉庫群、そして高校生剣道大会の会場となる市内体育館——本作はこれらの実在の街並みを、ほぼ全編にわたって舞台として組み込み、シリーズの中でも特に観光ガイド色の強い一本として仕上げている。函館の街そのものが、本作のもう一人の主役と呼んでよい厚みで描かれている。
用語面では、『怪盗キッド/黒羽快斗』『鈴木財閥/鈴木次郎吉』『新選組副長・土方歳三』『四振りの刀』『五稜星(みちしるべ)』『100万ドル』『大岡紅葉』『黒羽盗一』が物語の鍵となる。前者三つは劇場版『名探偵コナン』のシリーズで繰り返し参照される固有名詞のセットであり、後者五つは本作のための独自の設定として用意された要素である。とりわけ『五稜星(みちしるべ)』というタイトルの読み替えは、本作の財宝の正体——金塊そのものではなく、函館の街に埋め込まれた幕末資料の集積——を、ラストで観客の側に手渡すための装置として機能している。
制作
劇場版『名探偵コナン』シリーズは、1997年の第1作『時計じかけの摩天楼』から数えて本作で27作目を迎えた。前作『黒鉄の魚影』が黒の組織と灰原哀を軸にした濃密なサスペンスで興行収入約138億円という当時のシリーズ最高を記録した直後の登板であり、本作はその記録をさらに塗り替え、シリーズの興行を完全に新しいステージへ押し上げた節目の一本となった。
企画と脚本
脚本は大倉崇裕。劇場版『名探偵コナン』では『ゼロの執行人』『紺青の拳』『緋色の弾丸』『黒鉄の魚影』に続く本作で五度目の登板となり、シリーズの近年の脚本を実質的に支えてきた人物である。本作の脚本は、怪盗キッドの予告状、刀職人連続殺害事件、平次と和葉の告白未遂、四振りの刀の暗号、函館のご当地観光要素、ゲスト古美術鑑定家の動機の判明という複数の線を、上映時間110分という限られた尺の中に過不足なく束ねきった構成力で、シリーズの脚本史の中でも特に高い評価を受けている。
本作で大きな選択となったのは、コナンよりも先に怪盗キッドの予告状から物語を動かし始め、服部平次と遠山和葉、大岡紅葉の三角関係を本作のクライマックスの一翼にまで押し上げたことである。原作者の青山剛昌は本作でも企画段階から監修として深く関わり、原作以来のキッドの人物像、平次・和葉の関係の温度、紅葉の本気と遠慮の配分、そして黒羽盗一の名前の本作での扱いについて、細部の調整を行っている。
監督と演出
監督は永岡智佳。劇場版『緋色の弾丸』に続く二度目の劇場版監督登板であり、テレビアニメ『名探偵コナン』では長く演出・絵コンテを担当してきたシリーズの中核演出家のひとりである。本作の永岡が採る画面構成は、函館の実在の街並みを、観光ガイドの絵としてではなく、登場人物の感情線の通り道として丁寧に組み直していくところに重心がある。
とりわけ函館山ロープウェイ山頂展望台での平次の告白未遂の数十秒間は、本作のもっとも有名なシークエンスのひとつであり、夜景・風切り音・無線の混線・滑空してくるキッドのハンググライダー・遠目に息を呑む紅葉の表情が、長尺の連続カットで丁寧に組まれている。クライマックスの五稜郭での捕物もまた、星型の輪郭をそのまま画面の中に立ち上げる、シリーズの中でも特筆すべきロケーション演出として記憶に残る。
アニメーション制作
アニメーション制作はトムス・エンタテインメント。シリーズで長くタッグを組んできたスタジオが、本作でも背景美術・作画・3Dの三本柱を支えた。函館の実在の街並み——五稜郭、函館山、摩周丸、元町、赤レンガ倉庫群——を、現地ロケハンに基づいた緻密な背景美術で立ち上げる仕事は、本作の制作陣がもっとも時間を割いた領域のひとつとされる。観光地そのものを舞台にする際、写真の上に人物を貼り付けたような違和感を与えないために、街並みを丁寧に作画化したうえで動かしていく一連の手間が、本作の絵柄の説得力を支えている。
クライマックスの五稜郭での捕物と、函館山ロープウェイ山頂展望台での告白未遂のシーケンスは、本作の動画・美術・撮影の見せ場である。星型の輪郭の上を複数の人物が同時に動く五稜郭の俯瞰、夜景の中にキッドのハンググライダーの細い影が滑空する函館山——それぞれが緻密に組み合わされ、本作のクライマックスの数分間を、シリーズの祝祭感の頂点として観客に届ける。
音楽と主題歌
音楽は菅野祐悟。劇場版『名探偵コナン』では大野克夫が長くメインテーマを担当してきたが、近年の劇場版では菅野祐悟が劇伴の中心を務めている。本作の劇伴でも、函館上陸の祝祭感、刀職人殺害現場の緊張、四振りの刀の暗号解読の高揚、五稜郭の捕物のクライマックス、函館山の告白未遂の余韻までを、シリーズの大野克夫的な格調を残したうえで、菅野祐悟自身の現代的な弦楽の書法で繋いでみせる。
主題歌はaikoの『相思相愛』(作詞・作曲:aiko)。aikoは劇場版『名探偵コナン』の主題歌としては初の起用であり、本作のために書き下ろされた『相思相愛』は、平次と和葉のすれ違いと、コナン・蘭・キッドの距離感を同時に背負うラブソングとして、本作のラストの余韻を観客の側に長く残す。エンディングでこの楽曲が静かに流れ始めるとき、本作の登場人物たちがひと夜のうちに歩いた函館の街並みが、観客の側にもう一度立ち上がる。
キャストと声の演出
高山みなみのコナン、山口勝平の新一、山崎和佳奈の蘭、小山力也の小五郎、松井菜桜子の園子、緒方賢一の阿笠博士、林原めぐみの灰原哀、岩居由希子・大谷育江・高木渉の少年探偵団、茶風林の目暮十三、井上和彦の白鳥任三郎、湯屋敦子の佐藤美和子、高木渉の高木刑事、千葉一伸の千葉刑事——シリーズのレギュラー陣が安定した演技を聞かせる。山口勝平が新一と怪盗キッドの両方を同じ場面の中で並走させる仕事は、本作でも前作までと変わらぬ高水準で続けられている。
本作の人気キャラ側では、堀川りょうの服部平次、宮村優子の遠山和葉、折笠富美子の大岡紅葉が、平次・和葉・紅葉の三角関係の温度を一枚の声の中で器用に運んでみせる。とりわけ折笠富美子の紅葉は、本作のラブコメ線の調節弁として機能しており、彼女の『先輩を奪うんやさかい』の口調の表情の振り幅が、本作の和葉の動揺の振り幅を直接的に左右する設計になっている。
ゲスト声優の起用では、函館の古美術鑑定家を演じる大泉洋が、本作の品格を支える一枚看板として起用された。北海道出身の俳優として函館の発音に親和性が高く、前半の好ましい案内役から後半の罪を抱えた人間への声色の振り幅を、本作の上映時間110分の中で破綻なく運んでみせた仕事は、シリーズのゲスト声優起用史の中でも特筆に値する。鈴木次郎吉を演じた永井一郎の重厚な声は、本作の四振りの刀のお披露目の口上からラストの『刀を本来の所有者のもとへ戻す』決断までを、一本の太い線で繋いでいる。
アクションとサスペンス演出
本作のアクション設計は、函館の実在の街並みをそのまま追跡劇の舞台として組み込む、シリーズの中でも特に観光地密着型の作りを採る。五稜郭の堀のほとり、摩周丸の機関室、函館山ロープウェイのゴンドラ内、元町の坂道、赤レンガ倉庫群の路地——それぞれの実在の場所を、追跡・潜入・救助・捕物の場面として丁寧に立ち上げていく演出は、シリーズのご当地アクションのひとつの到達点である。
クライマックスの五稜郭の捕物と、函館山ロープウェイ山頂展望台での告白未遂は、本作のサスペンス演出の見せ場である。星型の輪郭の上を複数の人物が同時に動く五稜郭の俯瞰、爆発物の動きを読みながら回り込むコナンの足捌き、夜景の中にハンググライダーの細い影が滑空する函館山——それぞれが緻密に組み合わされ、本作のクライマックスの数分間を、息を継がせない長い緊張として観客に届ける。
公開と興行
本作は2024年4月12日に日本で全国公開され、最終的に約158.7億円の興行収入を記録した。観客動員数は約1098万人とされる。前作『黒鉄の魚影』が記録した約138億円をさらに大きく塗り替え、劇場版『名探偵コナン』シリーズの歴代興行最高を更新しただけでなく、日本の邦画歴代興行収入ランキングでもTOP10入りを果たした節目の一本となった。怪盗キッドと服部平次・遠山和葉・大岡紅葉という人気キャラの揃い踏み、北海道函館という強い観光地、ゲスト声優・大泉洋の起用、そしてaiko『相思相愛』の主題歌起用が、本作の幅広い観客動員を支えた要因として、しばしば挙げられている。
公開直後から本作は、シリーズの中でも『怪盗キッドと平次・和葉・紅葉が同時に並ぶ祝祭の一本』『平次が和葉に告白を試み、しかし最後の一言が届かなかった作品』『大泉洋が函館の古美術鑑定家として声優デビュー級の存在感を放った作品』として、ファンの会話の中で繰り返し参照される一本となった。テレビ放送は公開翌年以降、日本テレビ系『金曜ロードショー』の枠で繰り返し放送され、その後も劇場版『名探偵コナン』の毎年春の公開時期に合わせて、過去のキッド作品・平次回の代表例として再放送される機会の多い作品となっている。
後年には小説版や関連書籍も刊行され、劇場版を文章で追い直したい読者にも門戸が開かれた。配信面でも、ディズニープラスをはじめとする複数の動画配信サービスで本作が視聴可能な状態にある時期が長く、シリーズの怪盗キッド作品・平次回を一気見したいファンにとっての必修の一本として、いまも参照され続けている。
批評・評価・文化的影響
本作の評価軸は大きく三つに分かれる。第一に、劇場版『名探偵コナン』に怪盗キッド/黒羽快斗を再投入したうえで、服部平次・遠山和葉・大岡紅葉の三角関係を本作のクライマックスの一翼にまで押し上げたことで、シリーズの人気キャラ揃い踏みの祝祭としての完成度を頂点にまで引き上げた構造的な意義である。本作の興行収入約158.7億円という記録は、その祝祭感が幅広い観客層に支持された結果として、シリーズの興行を完全に新しいステージへ押し上げた節目として記憶されることになった。
第二に、ゲスト声優・大泉洋の存在感である。北海道出身の俳優として函館の発音に親和性が高く、前半の好ましい案内役から後半の罪を抱えた人間への声色の振り幅を本作の上映時間110分の中で破綻なく運んでみせた仕事は、シリーズのゲスト声優起用史の中でも特筆に値するものとして、後年の劇場版のゲスト起用の路線にも大きな影響を残した。
第三に、ラストの平次の告白未遂と、aiko『相思相愛』のメロディが組み合わさったエンディングの文化的な広がりである。本作のラストの数分間は、公開当時から現在に至るまで、コナン劇場版の恋愛要素を語るうえで必ず話題に上がる代表的なシーンの一つであり、シリーズの恋愛要素の歴史を語る際にも繰り返し言及される。aiko『相思相愛』のメロディと組み合わさったこのラストは、本作の題名そのものを聞いただけで函館山の夜景と『届かなかった告白』の絵が同時に立ち上がるという形で、楽曲と映像が一体化した記憶を観客の側に残している。
舞台裏とトリビア
本作のロケハンは、北海道函館を中心に、五稜郭・五稜郭タワー・函館山・函館山ロープウェイ山頂展望台・青函連絡船記念館摩周丸・元町・赤レンガ倉庫群・市内の体育館など、ほぼ全編の舞台を網羅する規模で複数回にわたって行われたと伝えられている。函館市は本作の公開前後に観光誘致のためのキャンペーンを展開し、現地の観光協会・市役所側も劇場版『名探偵コナン』の公開と連動したスタンプラリー・パネル展示・聖地マップの配布などを長期にわたって実施した。
もう一つの大きなトリビアは、ゲスト声優・大泉洋の起用そのものである。北海道出身の俳優として、函館を舞台にした本作のゲスト主役格として起用されたという背景はもとより、彼が前半の好ましい案内役と後半の罪を抱えた人間の両方を、同じ声色の振り幅の中で運んでみせる仕事を引き受けたことは、公開前の話題としても公開後の評価としても、本作のもっとも大きな話題のひとつとなった。
本作の主題歌『相思相愛』を歌うaikoは、劇場版『名探偵コナン』の主題歌としては初の起用であり、本作のために書き下ろされた『相思相愛』は、平次と和葉のすれ違いと、コナン・蘭・キッドの距離感を同時に背負うラブソングとして、シリーズの主題歌史の中でも特に強い印象を残している。aikoの声と本作の函館の夜景の組み合わせは、後年の劇場版主題歌起用の指針のひとつとしても繰り返し参照されることになった。
本作のキッドが本作で短く口にする『黒羽盗一』の名前は、原作『まじっく快斗』側で繰り返し参照されてきたキッドの父の名であり、劇場版『名探偵コナン』の表側でこの名前が口にされる場面は本作以前にはほとんど存在しなかった。本作はキッドの個人的な動機を劇場版『コナン』の表側に持ち込んだ、シリーズの中でも特に意欲的な一本としても記憶される。
テーマと解釈
本作の中心テーマは『道標』である。タイトルの『五稜星』に振られた『みちしるべ』というルビは、本作の四振りの刀の暗号が指し示す財宝の在処そのものでもあり、同時に、函館の街そのものが幕末から現代へと残してきた歴史の道標でもある。本作の『100万ドル』が金塊そのものではなく、函館の街に埋め込まれた幕末資料の集積であったという結末は、まさにタイトルの二重の意味を最後の数分で観客の側に手渡してみせる。
もうひとつのテーマは『一族の家業と現代の経済の摩擦』である。ゲスト古美術鑑定家が本作で動いている動機の核は、函館の旧家として代々受け継がれてきた家業が、現代の経済の中で経営的に行き詰まり、家の歴史そのものが途絶える瀬戸際にあるという、誰にも打ち明けないまま長年抱え込んできた事情である。本作はその構造を子ども向け推理アニメの劇場版のなかで誠実に扱ってみせた。地方の旧家と現代の経済の摩擦という、現実のニュースの中でも繰り返し議題に上がる題材を、観光ガイド映画の祝祭感の裏側に静かに敷いてみせる脚本の手つきは、本作の作劇の中でも特に高い評価を受けている。
そして三つ目のテーマは『届かない告白と、届けようとし続けること』である。平次の告白の核心の一言が、頭上を滑空してきた怪盗キッドの風切り音と無線の混線で覆い隠され、和葉の耳には届かない『未遂の告白』として閉じられる本作のラストは、シリーズの恋愛要素の中でもとりわけ意地悪な決着であり、同時に、シリーズの恋愛要素の歴史の中でも特に切ない一枚として記憶されることになった。届かなかったからこそ、平次は次の機会のためにもう一度言葉を整えるしかなく、観客の側もまた、シリーズの次の一本でその続きを見届けたくなる——本作のラブコメ線は、未遂で閉じることで、シリーズの未来を一段強く牽引する装置として機能している。
本作のラストカットで夜明けの函館湾の空と、まだ煙の残る五稜郭の星型の輪郭を映し出すとき、エンディングで静かに流れ始めるaiko『相思相愛』のイントロは、本作の登場人物たちがひと夜のうちにくぐり抜けた函館の街並みと、それでも空のうえに残された美しさを、観客の側にもう一段深く立ち上げる。本作が長く愛されてきた理由は、シリーズ歴代興行最高というスケールの大きさだけではなく、函館の街と人物の感情を、110分の中で過不足なく束ねきった脚本の誠実さにある。
見る順番(補助)
劇場版『名探偵コナン』は基本的に一作完結であり、本作も初見の観客にとって特別な前提知識を必要としないサスペンス/怪盗ものとして組まれている。原作の『名探偵コナン』のごく基本的な人物関係——コナンが工藤新一の縮んだ姿であること、毛利蘭が新一の幼馴染であること、毛利小五郎が蘭の父で探偵を営んでいること、鈴木園子が蘭の親友で鈴木財閥の令嬢であること、少年探偵団と灰原哀の存在、目暮警部以下警視庁の刑事陣、そして服部平次・遠山和葉が大阪の高校生探偵と幼馴染であること——だけを押さえておけば、十分に楽しめる構成である。
本作で特に楽しまれる要素のひとつは、怪盗キッドの劇場版での再登場と、平次・和葉・紅葉の三角関係である。本作の流れでさらにキッドを観たい場合は、第3作『世紀末の魔術師』、第8作『銀翼の奇術師』、第14作『天空の難破船』、第19作『業火の向日葵』、第23作『紺青の拳』を遡って観ておくのが分かりやすい。平次・和葉・紅葉の三角関係を一気に追いたい場合は、第7作『迷宮の十字路』、第21作『から紅の恋歌』、第31作『隻眼の残像』方面へ進む流れが自然である。
シリーズの公開順の流れの中で本作を観るなら、前作にあたる劇場版第26作『黒鉄の魚影』を観たうえで本作の祝祭感に立ち会い、次作の劇場版第28作『隻眼の残像』へと進む流れが最も分かりやすい。前作・本作・次作の三作は、それぞれ劇場版『名探偵コナン』の現行期の代表作として並んでおり、シリーズ現行期の空気を一気に体感する三本立てとしてもおすすめできる組み合わせである。
- 前作『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』(劇場版第26作・2023)で黒の組織と灰原哀の関係を中心に、八丈島沖の海中施設での攻防を描いた
- 本作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』で北海道函館を舞台に、怪盗キッドの予告状と四振りの刀をめぐる連続事件、平次の告白未遂までを並走させる劇場版第27作
- 次作『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』(劇場版第28作・2025)で長野県を舞台にした連続事件と少年時代の蘭との縁を中心に描く方向へ続く
よくある質問(補助)
「あらすじだけ知りたい」場合は、怪盗キッドの予告状とともに北海道函館で四振りの刀を集めようとした鈴木次郎吉のもとに刀職人連続殺害事件が発生し、剣道大会のため函館入りした服部平次・遠山和葉・大岡紅葉と、毛利探偵事務所・コナン一行が合流し、四振りの刀の暗号が指し示す『100万ドル』の財宝の在処を巡って、函館の街を縦に巡る追跡劇が展開する、という大枠を押さえれば十分である。クライマックスでは五稜郭で犯人が確保され、函館山ロープウェイ山頂展望台で平次が和葉に告白を試みるが、その核心の一言は怪盗キッドの介入で和葉の耳には届かない。
「結末・ネタバレを知りたい」場合は、本作の真犯人が函館の旧家の末裔として地元の名士として知られる古美術鑑定家(声:大泉洋)であり、動機が一族の家業の経営的な行き詰まりと、自らが愛してきた函館の幕末資料を守るための原資の確保であったこと、本作の『100万ドル』の本当の正体が金塊そのものではなく函館の街に埋め込まれた幕末資料の集積であったこと、平次の告白の核心の一言が怪盗キッドの介入で和葉の耳には届かなかったこと、怪盗キッドの本作での動機が父・黒羽盗一の生前の調査メモの一片の確認であったこと、登場人物に死者は出ず四振りの刀は本来の所有者のもとへ順に戻されることが核となる。
「犯人は誰か」という問いには、本作の真犯人は函館の古美術鑑定家として序盤から鈴木次郎吉と並んで動いていた函館の名士(声:大泉洋)であり、家業の経営的な行き詰まりと函館の幕末資料への執着を動機としていた、と答えることになる。「動機」については、一族の家業の存続と、自らが愛してきた函館の幕末資料を守るための原資の確保が核であり、単純な金銭欲ではない、という整理になる。
「初見でも見られるか」という問いには、本作は単体で完結しているため初見でも問題なく楽しめる、と答えられる。前作『黒鉄の魚影』の事件と本作の事件は基本的に独立しているため、両作の順番を入れ替えて観ても本作の理解には支障がない。怪盗キッドの劇場版での造形を一気に追いたい場合は、本作の前に『世紀末の魔術師』『銀翼の奇術師』『天空の難破船』『業火の向日葵』『紺青の拳』を、平次・和葉の関係を一気に追いたい場合は『迷宮の十字路』『から紅の恋歌』を遡って観てから本作に進むのが最もまとまった見方となる。「主題歌は誰の曲か」という問いには、aikoの『相思相愛』(作詞・作曲:aiko)が劇場版の主題歌として全面起用された、と答えられる。
「ゲスト声優は誰か」という問いには、函館の古美術鑑定家役の大泉洋が、本作のゲスト主役格として起用された、と答えられる。「興行はどうだったか」という問いには、興行収入約158.7億円・観客動員約1098万人を記録し、劇場版『名探偵コナン』シリーズの歴代興行最高を大きく塗り替え、邦画歴代興行収入ランキングでもTOP10入りを果たした、というのが基本となる答えである。
参考資料・脚注
作品名、画像、キャラクター名、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。
参照・確認先
公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。