エヴァンゲリオン百科事典

漫画の章

STAGE.1「使徒、襲来」

綾波レイの初号機戦と、碇シンジが第3新東京市へ入るまでを描く漫画版第1話

STAGE.1「使徒、襲来」は、貞本義行漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』の第1話です。西暦2015年、15年ぶりに現れた使徒が第3新東京市へ迫るなか、碇シンジは父ゲンドウの呼び出しを受け、葛城ミサトとの待ち合わせ場所へ向かいます。国連軍の攻撃に巻き込まれた彼は葛城ミサトに救出され、その先で綾波レイが操るエヴァンゲリオン初号機と使徒の戦闘を目撃します。同名のTV版第壱話と題名を共有しますが、漫画版はレイを先に実戦へ出し、シンジがNERV本部へ到着するまでを一話として切り出しました。連載開始時期、場面順、シンジの視点、TV版との違いを整理します。

ネタバレ:貞本義行漫画版第1巻のSTAGE.1からSTAGE.3、およびTV版第壱話の序盤展開に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

貞本義行漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』第1巻の公式表紙
1995年8月29日発売の第1巻。テレビ放送開始前から刊行された漫画版の出発点を示す公式書影です。

主人公が戦う前に、すでに別のパイロットが敗れている

漫画版の第1話は、シンジが初号機へ乗る場面から始まりません。15年ぶりに出現した使徒へ国連軍が攻撃を加え、その戦場へエヴァンゲリオンも投入されています。操縦しているのはレイです。シンジが何も知らずに待ち合わせ場所へ立つ一方、彼の代わりとなり得る少女はすでに戦闘で傷ついています。

この配置により、NERVがシンジを呼んだ理由は父子の再会より先に戦力不足として見えてきます。ゲンドウが息子を必要としたから愛情が戻ったのではなく、現場の危機が迫っている。第1話はその冷たい状況を示しながら、シンジ自身には目的を十分に知らせず、第3新東京市の内側へ運びます。

TV放送より前に始まった漫画版の最初の一章

STAGE.1は『月刊少年エース』1995年2月号に掲載され、雑誌の発売日は1994年12月26日です。TVシリーズの放送開始は1995年10月なので、読者が商業作品として触れた物語の入口は漫画の方が先でした。通常版第1巻は1995年8月29日に発売され、こちらもTV放送開始前です。

ただし、漫画版がTV版の原作という意味ではありません。映像企画と制作準備を共有しながら、貞本義行が漫画という形式で人物の心理と場面順を組み直した作品です。第1話を読む際は、先行掲載という刊行順と、物語の原作関係を混同しない必要があります。

第1巻では使徒戦を六つのSTAGEへ分けて描く

通常版第1巻はB6変形判168頁、ISBN 978-4-04-713115-6で、STAGE.1からSTAGE.6までを収録します。第1話が扱うのはシンジとミサトの合流、レイの戦闘、ジオフロントへの到着までです。父との対面はSTAGE.2、搭乗決断はSTAGE.3、初号機の戦闘と暴走はさらに後へ続きます。

TV版第壱話の印象から、漫画のSTAGE.1にもシンジの搭乗まで含まれると思われがちです。しかし漫画は一つの危機を複数章へ分け、各章でシンジが受け取る情報を限定します。最初の一章で彼はまだパイロットではなく、戦場へ呼ばれた理由を探る観察者です。

STAGE.1シンジとミサトの合流、レイの初号機戦、NERVへ移動
STAGE.2ゲンドウとの再会、初号機への搭乗命令
STAGE.3レイの負傷を前にしたシンジの決断、初号機出撃
STAGE.4以降初号機と使徒の戦闘、暴走、戦後のシンジ

2015年の戦場を、説明より先に軍の敗北で見せる

物語の時代は西暦2015年です。使徒は15年ぶりに姿を現し、国連軍は通常兵器で迎撃します。戦車、航空戦力、爆発が画面を埋めますが、使徒の進行を止められません。読者はセカンドインパクトや使徒の正体をまだ知らないまま、人類側の軍事力が通用しないという結果を先に見ます。

この導入は、設定用語を順に教えるのではなく、何が無力だったかで新しい兵器の必要性を作ります。国連軍が弱いのではなく、相手が既存の尺度から外れている。エヴァの登場は格好よい新兵器のお披露目であると同時に、それでもレイが押し返されることで、最後の手段まで十分ではないと示します。

シンジは父の目的を知らないまま、第3新東京市の近くまで来る

14歳のシンジは、長く離れて暮らしてきた父ゲンドウから突然呼び出されます。待ち合わせ相手はミサトですが、使徒襲来によって交通と連絡は混乱しています。シンジは避難する住民とは反対に、攻撃対象へ近い場所で一人取り残されます。

彼がすぐ安全な場所へ戻らないのは、父へ会いたいからだけではありません。呼び出された理由を知らされないまま帰れば、捨てられた過去に再び支配されたことになります。反発と期待が同時にあるため、危険を認識してもその場を離れ切れません。漫画版はシンジを完全に従順な少年として置かず、父への怒りを行動の内側に持たせます。

ミサトとの出会いは、保護と任務が同時に始まる救出である

ミサトは待ち合わせに遅れながらも、国連軍の攻撃圏にいるシンジを見つけ、車へ乗せます。二人の初対面には私生活の軽さが見えますが、直後から彼女はNERVの作戦担当者として使徒とエヴァの状況を判断します。親しみやすい成人女性と軍事組織の幹部という二つの顔が、一つの救出場面で示されます。

シンジにとってミサトは、父の組織から来た最初の案内人です。彼女は危険から守りますが、NERVへ連れて行く役割も負っています。善意で助けることと、少年を戦闘へ近づけることが分離していません。この矛盾は、後に同居人と上官を兼ねる関係の出発点です。

レイを負傷者ではなく、先に戦っていたパイロットとして登場させる

漫画版で大きく変わったのが、レイの初登場です。彼女はベッドで運ばれてくるだけではなく、初号機で使徒へ挑みます。戦闘は成功せず、機体は退き、レイは傷を負います。それでも読者は、彼女がシンジより前からNERVの命令を引き受けていた人物だと知ります。

この改変は、後の搭乗命令にも影響します。ゲンドウが負傷したレイを再び呼ぶ場面は、可能性の低い脅しではありません。彼女がすでに無理な出撃を行い、なお代替要員として扱われることが第1話で準備されています。シンジの決断は可哀想な少女を初めて見る衝撃だけでなく、自分より先に消耗させられた同年代への反応になります。

シンジは格納庫ではなく、戦場で初号機の存在を知る

シンジはミサトに救われた先で、使徒と交戦する巨大な人型兵器を目撃します。この時点では、機体が自分のために用意され、母ユイと深く結びついていることを知りません。彼に見えているのは、軍の兵器とは異なる巨大な身体と、それでも使徒に抗し切れない状況です。

TV版では初号機の全身を格納庫で見上げる場面が、シンジと読者にとって大きな初対面になります。漫画版はその驚きを屋外へ移し、先に戦闘能力と損傷を見せます。兵器の神秘性より、誰かが内部で苦痛を負っている現実が早く届く構成です。

ミサトはレイの限界を見抜き、シンジの召集理由へ近づく

初号機の苦戦を見たミサトは、レイへ負担をかけすぎていると判断します。彼女はレイの体調と戦闘能力を、使えるか使えないかだけで見ていません。この視点があるため、後にシンジへ搭乗を求める際も、ゲンドウと同じ冷酷さだけでは行動できなくなります。

一方で、現場には使徒を止める別の方法がありません。レイを休ませるにはシンジが必要で、シンジを守ればレイが再び出ることになる。第1話はまだ誰にも選択させませんが、次章以降の倫理的な圧力を準備します。ミサトの判断は、少年少女を守りたい気持ちと都市を防衛する職務が衝突する最初の地点です。

N²兵器の爆発は、人類の最大火力でも使徒を止められないと示す

移動中、国連軍は大規模なN²兵器を使用します。巨大な爆発は周辺を揺らし、一時的に使徒の姿を覆います。しかしこれは決着ではなく、通常戦力の限界をさらに大きな規模で確認する攻撃です。シンジは父の目的を聞く前に、外の世界で人類側の切り札が通用しないことを体験します。

爆発は会話を中断し、少年が状況を理解する時間を奪います。使徒が迫るたびに、説明より先に次の危機が来る。NERVが十分な同意を得ないまま搭乗を迫る背景には、この切迫があります。ただし時間がないことは、子どもへ責任を押しつける行為を自動的に正当化しません。漫画版は両方を同時に見せます。

シンジが受け取る情報は、移動の段階ごとに制限される

ミサトは使徒やNERVについて説明しますが、シンジが初号機へ乗るために呼ばれた核心は、移動中にすべて明かされません。少年は父との再会を考えながら、知らない組織の地下施設へ入ります。読者もシンジとほぼ同じ順番で情報を受け取り、父の計画を外から見通せません。

この限定視点は漫画版の基本姿勢になります。TV版が司令室、軍、ゼーレなど複数の視点を短時間で切り替えるのに対し、漫画はシンジが知ったことと感じたことを軸に世界を広げます。第1話では専門用語の完全な理解より、なぜ自分が呼ばれたのか分からない不安の方が優先されます。

地下へ入る移動が、日常からNERVの世界への境界になる

ミサトの車は地上の戦場を離れ、ジオフロントへ向かいます。地上では軍と使徒の力が可視化されていましたが、地下には初号機、NERV本部、ゲンドウの命令系統が隠されています。シンジは安全な避難所へ入ったのではなく、戦いを動かす中心へ降りていきます。

移動中のシンジは、父がなぜ自分を呼び戻したのかを考えます。答えは次のSTAGEで、搭乗命令という最も直接的な形で示されます。第1話を地下への到着で区切ることで、父子再会の感情と兵器の説明を急いで消費せず、少年が逃げ道の少ない場所へ入った重さを残します。

漫画版シンジの反発は、父への期待を隠す防御でもある

漫画版のシンジは、状況へ不満を持ちながらも黙って従うだけではありません。父に捨てられた記憶へ怒りを持ち、突然の呼び出しを素直な再会として受け取れません。第1話ではゲンドウ本人とまだ会わないため、その反発は会話ではなく、帰らずに目的を確かめようとする行動へ現れます。

父へ期待していないなら、危険な街まで来る必要はありません。期待だけなら、呼び出しを喜べたはずです。怒りと期待が同居するため、シンジは自分でも行動の理由を整理できません。漫画版はこのねじれを早い段階から強くし、後の搭乗を単なる弱気な少年の自己犠牲ではなく、父へ反抗しながら自分の価値を確かめる選択へつなげます。

レイとシンジを、同じ命令に別の位置から置く

第1話の段階で、レイとシンジは会話しません。それでも二人は、ゲンドウの計画に必要とされる同年代のパイロットとして対照になります。レイはすでに命令へ従い、傷を負っています。シンジはまだ何も知らず、選択の手前にいます。

この時間差が、二人の関係の土台です。後にシンジがレイの生き方へ疑問を持つのは、自分も同じように使われ得るからです。反対にレイがシンジへ関心を持つのは、命令へ反発しながらも他者を見捨てない行動が、自分と違う可能性を示すからです。第1話は出会いを描かず、出会う前から二人を同じ構造へ入れます。

TV版第壱話と同じ題名でも、一話の終点が異なる

TV版第壱話「使徒、襲来」は、シンジとミサトの合流、NERVへの移動、ゲンドウとの再会、負傷したレイ、初号機への搭乗決断までを約一話の中で進めます。使徒戦の最中にレイが初号機へ乗る場面はなく、初号機の実戦投入はシンジの出撃まで待たれます。

漫画のSTAGE.1は、TV版の前半を広げながら、レイの戦闘を追加し、父子対面の直前で区切ります。題名が同じだから同じ出来事を同じ順序で漫画化したのではありません。比較するときは、一話単位を揃えるより、漫画のSTAGE.1からSTAGE.3とTV版第壱話を一つの導入ブロックとして見る方が正確です。

レイ漫画では初号機で先行出撃し負傷。TV版では負傷後に格納庫へ運ばれる
初号機の初見漫画では戦場、TV版ではNERVの格納庫
STAGE.1の終点漫画はNERVへの到着と父の目的への疑問
TV版第壱話の終点シンジが搭乗を受け入れ、初号機が出撃へ向かう

題名の読点が、日常への侵入を二段階で示す

「使徒、襲来」という題名は、未知の存在の名称と、その存在がこちらへ来た事実を短く切り分けます。シンジにとって使徒は事前に学んだ敵ではなく、父に会いに来た日に突然視界へ入る災害です。読者もまず名称を与えられ、その意味を後から知ります。

同時に、シンジ自身もNERV側から見れば呼び寄せられた存在です。使徒が都市へ入り、シンジが地下組織へ入る二つの移動が並びます。一方は破壊するため、一方は戦わせるために到着しますが、どちらも日常の外から来て既存の均衡を変えます。題名は敵の登場だけでなく、主人公が物語へ入る瞬間にも重なります。

大きな戦闘と小さな表情を同じ頁の速度でつなぐ

漫画では音や動きが自動的に流れないため、爆発の大きなコマと、シンジの視線や沈黙の小さなコマを頁の中で切り替えます。使徒と初号機の規模は見開きで示し、その直後に少年が状況を理解できない間を置きます。戦闘の迫力が人物の感情を押し流さない構成です。

第1巻の表紙はシンジ、レイ、初号機を一つの図へ置きますが、第1話の中で三者はまだ同じ目的を共有していません。表紙がシリーズの中心関係を先に示し、本編は関係が成立するまでの距離を描く。愛蔵版や公式ガイドブックの書影と比べると、後年の読者が知る人物配置が、最初の一章ではまだ分断されていることが分かります。

この第1話では、搭乗命令も初号機暴走もまだ起きない

STAGE.1のあらすじを短くまとめる際、ゲンドウがシンジへ搭乗を命じ、シンジがレイを見て決断し、初号機が暴走するところまで一続きに書かれることがあります。しかし、それらは第2話以降の出来事です。本章の時点でシンジは父と再会しておらず、自分がパイロット候補だとも明確には知らされていません。

話数境界を守ると、漫画がシンジへ与える猶予が見えます。危険を目撃し、レイの敗北を見て、ミサトから断片的な説明を受け、地下へ入る。その後で初めて父の命令と向き合います。決断だけを抜き出すより、本人が知らないまま選択肢を狭められていく過程が重要です。

最終話「旅立ち」と対にすると、東京へ向かう意味が反転する

STAGE.1のシンジは父の呼び出しで東京方面へ来て、戦闘に巻き込まれ、知らない組織へ連れて行かれます。自分で選べるように見える場面は少なく、帰ることさえ父の真意を確かめる欲求に妨げられます。移動の主導権は大人と非常事態にあります。

LAST STAGE「旅立ち」では、シンジは高校受験のため自分で東京へ向かいます。戦闘の命令ではなく、自分の未来を探す移動です。第1巻と第14巻の入口と出口を並べると、物語は同じ都市へ向かう二度の旅によって、受け身だった少年が行動の主語を取り戻す過程を閉じています。

第1話で確定することと、後の知識から補うことを分ける

第1話で確認できること2015年、15年ぶりの使徒襲来、レイの初号機戦、シンジとミサトの合流、NERVへの移動
第2話以降で判明することシンジの搭乗目的、ゲンドウの命令、初号機とユイの関係
TV版と異なることレイが初号機で先行出撃し、シンジが戦場で機体を見る
断定しないこと第1話時点でのレイの詳しい感情、ゲンドウが説明していない長期計画の全容

シリーズ全体を知っている読者は、初号機の正体やゲンドウの目的を冒頭から理解できます。しかし第1話のシンジはそれを知りません。人物の判断を評価するときは、その時点で与えられた情報へ戻る必要があります。後の真相をすべて持っていたはずだと考えると、シンジの警戒もレイの従順さも単純化されます。

次に読むべき章と比較記事

物語の続きはSTAGE.2「再会…」、STAGE.3「初号機、出撃(リフト・オフ)」です。個別記事が整備されるまでは、漫画版全体の解説と第1巻の収録順を参照すると、TV版の出来事をどこで分割したか確認できます。人物面では碇シンジ漫画版の綾波レイ葛城ミサトを先に読むと、初対面の時点で三人が持つ情報と責任の差が分かります。

映像版と比較する場合はTV版第壱話を対応範囲として見ながら、TV版・漫画版・新劇場版の違いで系列を分けてください。同名の章でも、レイの出撃、初号機の初見、父子再会の位置が異なります。違いを省略と追加の一覧だけにせず、誰の視点で情報を渡すための変更かを追うと、漫画版独自の導入が見えてきます。

STAGE.1「使徒、襲来」のよくある疑問

Q. 漫画版はTVアニメより先に始まったのですか。A. 雑誌連載と第1巻の刊行はTV放送開始より先ですが、漫画がTV版の原作という意味ではありません。

Q. 第1話で初号機に乗っているのは誰ですか。A. 綾波レイです。シンジが搭乗するのは後のSTAGEです。

Q. STAGE.1の中でシンジは父と再会しますか。A. いいえ。NERV本部へ向かい、父が呼んだ意味を考えるところまでが中心です。

Q. TV版第壱話とまったく同じ内容ですか。A. いいえ。題名と基本状況は共通しますが、レイの先行出撃や章の区切りが異なります。