エヴァンゲリオン
エヴァンゲリオン初号機
碇シンジと碇ユイを内外に抱え、兵器・母・神の境界を越えて物語の選択を担う紫の試験機
エヴァンゲリオン初号機は、紫の拘束装甲と一本角の頭部を持つ試験型エヴァであり、碇シンジの搭乗機です。TV版・旧劇場版では碇ユイの魂を内部に宿し、他のエヴァとは異なる由来を持つ機体として、人類補完計画の中心へ移ります。初戦では操縦不能になった後に自律して第3使徒サキエルを撃破し、第12使徒レリエルの内部から脱出し、第14使徒ゼルエルを捕食してS2機関を獲得します。旧劇場版では補完の依代となり、最後にはユイの意思を残して宇宙へ去ります。新劇場版でもシンジを守り、レイを救おうとする願いに反応して疑似シン化し、ニアサードインパクトを起こします。『:Q』ではAAAヴンダーの主機、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ではシンジが父ゲンドウと対話する最後の機体になります。初号機は万能のロボットではありません。シンジが動かす兵器、ユイが守る身体、NERVが拘束する実験体、世界を作り替え得る存在が同じ器に重なるため、誰の意思で動いているかを場面ごとに確かめる必要があります。
ネタバレ:TVシリーズ全26話、旧劇場版、貞本義行漫画版、新劇場版4部作における初号機の正体、暴走、捕食、補完、疑似シン化、最終状態まで扱います。










概要:主人公の専用機ではなく、主人公より古い意志を持つ器
初号機は碇シンジが最も長く搭乗するエヴァです。多くの戦闘はシンジの判断と操縦で進みますが、彼が命令していない時にも自律し、搭乗者を守り、敵を捕食します。
そのため、初号機をシンジの身体の延長だけとして読むと不十分です。機体内には母・碇ユイの存在があり、NERVの命令、シンジの願い、ユイの選択が一致する時も衝突する時もあります。
物語が進むほど初号機は兵器の枠を離れます。使徒を倒す道具から、魂を保存する箱、補完を始動する核、世界を選び直す舞台へ変わり、最後にはエヴァそのものを終わらせる選択へ関わります。
作品系列の違い:似た紫の機体でも、覚醒と結末は同一ではない
TV版と旧劇場版は一つの連続性として、初号機の暴走、S2機関獲得、補完、宇宙へ残る結末を描きます。貞本義行漫画版は主要設定を共有しながら、人物の決断と最終世界を独自に再構成します。
新劇場版では『:序』の初戦とヤシマ作戦が旧作を想起させますが、『:破』の疑似シン化以降は別の因果へ進みます。第10の使徒からレイを取り戻そうとした行動は、ニアサードインパクトと14年の空白へつながります。
『覚醒』『暴走』『疑似シン化』『補完の依代』を一つの形態名としてまとめてはいけません。発生条件、機体の外見、パイロットの意思、世界へ及ぼす結果を系列ごとに分けます。
外見:一本角、二眼、紫と蛍光緑が作る人型の異物感
初号機の頭部には長い一本角と二つの眼があり、顎の装甲内には歯と口があります。紫を主色に、緑、黒、橙を組み合わせた配色は、画面の暗部でも他機と識別しやすい構成です。
長い胴体と四肢は人間に近い一方、肩部拘束具、細い腰、獣のように開く顎が生物と機械のどちらにも収まらない印象を作ります。直立時と四足に近い暴走時で、同じ輪郭の意味が変わります。
TV版と新劇場版では装甲の分割、胸部、角、色の配置などに差があります。公式立体物を比較資料に使う場合も、商品の可動解釈や付属品をそのまま劇中設定へ置き換えず、どの映像系列を基にした造形かを確認します。
装甲ではなく拘束具:守る外殻が、内側の力を抑える
初号機を覆う紫の外装は、防御装甲であると同時に、本来の身体と力を人類の管理下へ置く拘束具として機能します。エヴァは装甲を着せた巨大ロボットというより、生体を機械的な制御系へ封じた存在です。
暴走時に顎が開き、装甲の下から血や歯が現れると、視聴者が機械だと思っていた輪郭の内側へ生物がいたことが分かります。外装は正体を隠す視覚的な境界でもあります。
ただし、全ての外装部品に防御機能がないという意味ではありません。兵器として損傷を受け止め、機器や接続部を支える役割も持ちます。『装甲か拘束具か』ではなく、両方の機能が重なっていると捉えるのが正確です。
初号機と碇ユイ:母の魂が、息子を守る意思として動く
旧作の初号機には碇ユイの魂が宿っています。接触実験で肉体を失ったユイは、単なる事故の犠牲者として消えたのではなく、人類の存在証明を未来へ残す意思とともに機体内へ留まります。
初号機がシンジを落下物から庇い、活動限界後に再起動し、使徒の内部から脱出する場面は、母が子を守る行動として読めます。NERVの制御技術だけでは説明できない選択性があります。
一方、ユイの保護はシンジを戦場から完全に遠ざけません。彼を生かしながら、初号機と世界の選択へ立ち会わせます。母の愛が安全な家庭へ戻す力ではなく、苦痛を通って選択できるよう残す力として描かれます。
碇シンジとの同期:操縦技術より、母子の接続が成立条件になる
初号機の主要パイロットはシンジです。彼はエントリープラグ内のLCLへ浸かり、神経接続とシンクロを通じて機体を動かします。腕を損傷すれば痛みを感じ、恐怖や拒絶は動作へ直結します。
初搭乗でも起動できたことは、シンジが訓練なしで万能だったからではありません。機体内のユイとの関係が、他者には再現しにくい接続を成立させます。操縦経験が乏しいため、初戦では歩行からつまずき、命令を繰り返して学びます。
綾波レイとの機体交換試験やダミープラグは、搭乗者の代替可能性を探る試みです。しかし、初号機は誰にでも同じように開く空の兵器ではなく、ユイとシンジの関係が運用の中心に残ります。
初戦:サキエルに敗れた後、初号機自身が立ち上がる
第壱話と第弐話『見知らぬ、天井』で、シンジは負傷したレイの代わりに初号機へ乗ります。発進直後は歩くことにも苦戦し、第3使徒サキエルに腕と頭部を破壊されます。
シンジが意識を失った後、初号機は再起動してサキエルへ反撃します。骨折した腕を再生し、A.T.フィールドを破り、獣のような格闘で追い詰めます。これは訓練されたパイロットの勝利ではありません。
戦闘前にも、落下する構造物からシンジを手で庇う自律動作があります。起動前の保護と戦闘中の暴走を連続して見ると、初号機が無差別に狂ったのではなく、搭乗者を守る方向へ選択的に動いたことが分かります。
初期戦闘:外部電源と武器を使い、人間の作戦へ組み込まれる
サキエル戦後の初号機は、シャムシェル戦でパレットライフルとプログレッシブナイフを使い、活動限界まで近接戦を続けます。暴走だけに頼らず、シンジが命令と残り時間の中で戦う機体になります。
ラミエル戦のヤシマ作戦では、超長距離射撃を担う初号機と、盾で守る零号機が役割を分担します。初号機の強さを単独性能ではなく、電力網、狙撃装置、仲間の防御を統合した作戦として示します。
戦闘ごとに携行火器、近接武器、都市設備、他機との協力が変わります。初号機は全ての敵を力押しで倒す機体ではなく、人類側の準備とシンジの学習によって通常兵器として運用される時間を持ちます。
武装:標準装備と作戦専用装備を区別する
初号機の代表的な携行武器はパレットライフルとプログレッシブナイフです。射撃で接近を抑え、A.T.フィールドを中和した後に高振動刃でコアへ迫るなど、エヴァ共通の戦術へ組み込まれます。
ヤシマ作戦の陽電子砲や大型シールド、作戦ごとのガトリング砲などは、初号機の身体に常時内蔵された固有能力ではありません。NERVや外部組織が用意し、特定状況で接続する装備です。
公式商品にはロンギヌスの槍やカシウスの槍を持たせられるものもありますが、付属品は本編の使用履歴と同義ではありません。記事では『装備可能な再現物』と『劇中で初号機が実際に用いた武器』を分けます。
電源と活動限界:無限に動けない制約が、選択の時間を作る
初期の初号機はアンビリカルケーブルから電力供給を受け、切断後は内蔵電源へ移ります。残り時間は戦況に応じて表示され、撤退、救助、最後の一撃を選ばせる制約になります。
電源が切れても自律再起動する場面はありますが、通常運用が最初から無限だったわけではありません。暴走は再現可能な標準モードではなく、NERVが確実に命令できない例外です。
第14使徒ゼルエルを捕食してS2機関を取り込んだ後、旧作の初号機は外部電源依存を越えます。これは最初から隠されていた単純なバッテリー強化ではなく、使徒の生命機関を自らの身体へ得た転換です。
第12使徒レリエル:取り込まれた機体が、内側から使徒を破る
第12使徒レリエル戦では、初号機とシンジが虚数空間とされる内部へ取り込まれます。外部のNERVは救出作戦を準備しますが、シンジは閉じた空間で自分の存在と他者の声へ向き合います。
最終的に初号機は外部から救出される前に自律し、レリエルの身体を内側から裂いて出現します。サキエル戦の暴走よりさらに、機体の血、咆哮、母性的な保護が前面へ出ます。
この事件は、初号機が使徒の内部へ入り、境界を破って帰還する最初の大きな例です。後のゼルエル捕食とシンジの機体内への溶解を先取りし、内と外の区別が反転します。
3号機戦:ダミープラグが、シンジの身体だけを初号機から排除する
使徒に侵食された3号機と対峙すると、シンジは内部に人がいるため攻撃を拒みます。ゲンドウは初号機の操縦系をダミープラグへ切り替え、シンジの意思を作戦から外します。
初号機は3号機を一方的に解体し、エントリープラグまで破壊します。シンジは操作できないまま機内に残され、自分の手足に重なる機体が友人を傷つける過程を体験します。
ここで初号機は母が息子を守る器ではなく、父が息子の拒否を無効化する兵器として使われます。同じ機体が保護と強制の両方を可能にするため、初号機とシンジの関係も安全な避難所ではありません。
ゼルエル戦:活動限界を越え、捕食によってS2機関を得る
第拾九話『男の戰い』で、第14使徒ゼルエルは弐号機と零号機を退け、NERV本部深部へ到達します。いったんNERVを去ったシンジは、自分の意思で戻り、初号機へ再搭乗します。
初号機は使徒を地上へ押し戻しますが、内蔵電源の活動限界に達します。その後、外部操作なしに再起動し、失った腕を使徒の組織から再生して圧倒します。
戦闘後、初号機はゼルエルの身体とS2機関を捕食します。人類が4号機の実験で制御できなかった技術を、初号機は生物として直接取り込みます。勝利は同時に、NERVが制御できない完全な存在の誕生です。
シンジの取り込み:敵を食べた機体が、次に搭乗者を内側へ溶かす
ゼルエル戦後、シンジの身体はエントリープラグ内でLCLへ還元され、初号機内部へ取り込まれます。救出対象は座席に残る肉体ではなく、機体と境界を失った意識です。
第弐拾話『心のかたち 人のかたち』でNERVはサルベージを試みます。かつてユイを失った接触実験と似た問題が再現され、科学者たちは初号機が人を収める器であることへ向き合います。
シンジは母の存在に包まれながら、他者のいる外側へ戻ることを選びます。初号機は彼を閉じ込める牢獄にも、形を失った彼を保つ胎内にもなり、帰還は装置だけでなく本人の意思へ依存します。
渚カヲルを握る手:人類の未来を、シンジの判断へ集中させる
第弐拾四話『最後のシ者』で、初号機は渚カヲルをターミナルドグマまで追います。カヲルは自らの死と人類の生存をシンジへ選ばせ、初号機の掌で待ちます。
初号機の巨大な手は、敵を倒す武器であると同時に、親しい相手の命を直接保持する場所になります。シンジは命令に従うだけでなく、自分が殺す決定を引き受けます。
この選択は補完直前の罪悪感へ残ります。初号機はシンジを守る母の器でありながら、シンジ自身が他者を傷つけた記憶を身体化する器にもなります。
旧劇場版前半:凍結された初号機と、戦場へ戻れないシンジ
『Air/まごころを、君に』で、S2機関を得た初号機はNERVによって厳重に拘束されます。最強の防衛戦力でありながら、組織自身が恐れる存在として封印されます。
戦略自衛隊が侵攻し、アスカと弐号機が量産機と戦っても、シンジは初号機へ到達して発進できません。機体が使えないことと、本人が戦う意味を失っていることが重なります。
弐号機が破壊された後、初号機は自ら拘束を破ってシンジを乗せます。救援には間に合わず、シンジは結果を見た後に世界規模の儀式へ引き上げられます。母の保護は過去を消す力ではありません。
人類補完計画の依代:初号機が生命の樹となり、シンジへ世界を選ばせる
SEELEはS2機関を得た初号機を、リリスの代替となる補完の依代として利用します。量産機と槍、巨大化したレイ/リリスが初号機を中心に儀式を進め、個体の境界を解体します。
初号機の内部にいるシンジは、他者と接すれば傷つく世界を拒み、全てが混ざる補完へ傾きます。しかし、痛みがあっても他者を再び求められる可能性を選び、個体へ戻れる世界を受け入れます。
儀式後、ユイを宿す初号機は槍とともに宇宙へ残ります。人類が消えても存在した証拠となるというユイの意思が実現し、シンジを手元へ閉じ込めず地上へ返します。
貞本義行漫画版:母の意志とシンジの再出発を、別の世界像へ結ぶ
漫画版の初号機も、シンジとユイを結ぶ中心機体です。初戦、暴走、3号機事件、使徒戦、補完へ至る要素はTV版と対応しますが、人物同士の会話、戦闘の順序、死者、最終選択が組み替えられています。
漫画版ではシンジの他者への態度がより直接的に言語化され、ユイの残した意志との対話も独自の形を取ります。初号機は父の計画へ従う機体ではなく、母と息子がそれぞれ世界の残し方を決める場所になります。
結末の世界をTV版最終話や旧劇場版の浜辺と同一視してはいけません。初号機が担う『人類の証』という役割を共有しても、シンジが帰る場所と他者との再会の形は漫画独自です。
『:序』の初号機:旧作をなぞりながら、保護と作戦の輪郭を更新する
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』で、シンジは第4の使徒を前に初号機へ乗ります。起動前にシンジを庇い、初戦で暴走する流れは旧作と対応しますが、映像設計と使徒番号は新劇場版のものです。
第6の使徒に対するヤシマ作戦では、初号機が陽電子砲を撃ち、零号機が盾となります。都市の電力、作戦指揮、レイとの協力を集約し、シンジが一人で勝った戦いにしません。
『:序』の時点では、初号機の正体と世界改変能力は全面には説明されません。旧作の知識から先の展開を固定せず、新劇場版で実際に示される覚醒条件と機体の変化を追う必要があります。
『:破』の3号機戦:ダミーシステムが式波を傷つけ、シンジを離反させる
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』で、使徒に侵食された3号機の中には式波・アスカ・ラングレーがいます。シンジが攻撃を拒むと、ゲンドウは初号機をダミーシステムへ切り替えます。
初号機は四本腕へ変質した3号機を破壊し、エントリープラグへ噛みつきます。旧作のトウジではなく式波が被害を受けるため、事件後の人間関係と14年後へ残る使徒汚染が変わります。
シンジは自分を拘束して初号機を使った父へ反発し、NERVを去ります。ここでも初号機はシンジの専有物ではなく、組織が本人の意思を切り離して運用できる兵器です。
第10の使徒戦と疑似シン化:レイを救う願いが、世界規模の災厄へ変わる
第10の使徒が零号機とレイを取り込みNERV本部へ侵攻すると、シンジは再び初号機へ乗ります。旧作のゼルエル戦と対応しながら、目的は使徒撃破だけでなく、内部のレイを取り戻すことへ移ります。
活動限界後、初号機は赤い眼と光輪を現し、失った腕をエネルギー状に再構成して疑似シン化します。シンジの願いへ応じて使徒のコアからレイを引き出し、機体と周囲を通常の物理法則から離れた状態へ変えます。
救出の瞬間はニアサードインパクトの始動でもあります。個人を救いたい純粋な願いが、世界へ壊滅的な影響を及ぼす規模まで増幅されます。渚カヲルとMark.06がカシウスの槍で初号機を停止させ、出来事は未完のまま14年後へ残ります。
『:Q』の初号機:宇宙から回収され、AAAヴンダーの主機になる
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では、初号機は封印容器に収められ宇宙へ置かれています。WILLEは改2号機と8号機で回収し、その内部からシンジを取り出します。
初号機は通常の搭乗機としてシンジへ返されず、AAAヴンダーを起動する主機として使われます。かつてNERVの中心兵器だった機体が、NERVへ対抗する組織の艦を動かす動力源になります。
シンジにとっては目覚めた直後から、世界を壊した原因として扱われ、母機とも隔離される状況です。初号機の力が大きいほど、本人が何をしたのか理解できない14年の断絶も大きくなります。
『シン・エヴァ』の最終搭乗:父を倒す戦闘から、父と話す対話へ
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、初号機はAAAヴンダーとともに最終作戦へ関わります。ミサトの決断と犠牲を受け、シンジは再び初号機へ乗り、ゲンドウの第13号機と対峙します。
二機の戦闘は特撮セットや過去の風景を横断し、力比べだけでは決着しません。シンジは父の孤独、ユイへの執着、自分から逃げた理由を聞き、ゲンドウも息子の中にユイがいたことへ気づきます。
最後にシンジは、エヴァのいない世界を選びます。ユイとゲンドウが親として息子の代わりに残り、槍によって初号機と第13号機を終わらせます。初号機は世界を守る最後の兵器ではなく、兵器を必要とする循環を閉じる器になります。
綾波レイとの関係:代替パイロット、救出対象、内部へ残る存在
旧作では綾波レイが初号機との互換試験に参加し、ダミープラグの人格パターンにも関わります。しかし初号機はレイを安定した専属パイロットとして受け入れる空の器ではなく、ユイとシンジの関係を中心に動きます。
新劇場版ではシンジが第10の使徒から綾波レイを救おうとし、初号機の疑似シン化を引き起こします。救出は成功と災厄を同時に生み、レイは通常の生活へ戻るのではなく機体内部へ長く残ります。
完結編で長い髪となったレイの姿は、初号機内部に流れた14年を可視化します。初号機は母ユイだけの器でも、シンジだけの機体でもなく、救おうとした他者の時間まで保存します。
碇ゲンドウとの関係:妻へ至る鍵を、息子の機体として運用する矛盾
碇ゲンドウにとって初号機は、使徒迎撃の中核であると同時に、ユイが存在する場所です。息子をパイロットとして必要としながら、父として向き合うことを避けます。
旧作では初号機とレイ、アダム、リリスをめぐってSEELEとは別の補完を進め、新劇場版では第13号機と追加のインパクトを用いてユイへ到達しようとします。どちらでも再会願望が世界規模の計画へ拡大します。
最終的に初号機は、ゲンドウの計画を完成させる従順な器にはなりません。ユイとシンジ、レイの意思がそれぞれ計画から外れ、他者を道具として配置した父の盲点を露出させます。
物語上の意味:鎧の巨人、母の胎内、神の器が一つに重なる
初号機は、都市を守る鎧の巨人として登場します。しかし操縦席は液体で満たされた閉鎖空間であり、母の魂が子を包みます。外側では戦士、内側では胎内という反対の像が重なります。
使徒を捕食し、翼や光輪を現し、補完の中心になると、初号機は神に近い像を帯びます。それでも判断の中心にいるのは傷ついた一人の少年です。巨大な力が人間の迷いを消すのではなく、その迷いを世界へ拡大します。
母が子を永遠に抱える結末ではなく、子を外の世界へ返す点も重要です。保護の完成は閉じ込めることではなく、傷つく可能性のある他者のいる場所へ送り出すこととして描かれます。
よくある誤解:ロボット、暴走、覚醒、S2機関を一語で済ませない
初号機は純粋な機械式ロボットではありません。生体の身体、魂、拘束具、電源・神経接続・兵装が組み合わさった人造人間です。機械部品があることと、生物ではないことは同義ではありません。
暴走時の行動を全てシンジの隠れた操縦能力とするのも不正確です。シンジの願いや危機は引き金になりますが、機体内のユイの意志、自律反応、NERVの制御外という要素を分ける必要があります。
旧作のゼルエル捕食によるS2機関獲得と、新劇場版の第10の使徒戦での疑似シン化も同一現象ではありません。敵の取り込み方、外見、インパクトとの関係、事件後の機体用途が異なります。
よくある質問:正体、魂、電源、最後を整理する
初号機の中には誰がいるのでしょうか。TV版・旧劇場版と漫画版では、碇ユイの魂が宿ります。新劇場版でもユイと初号機の結びつきは最終局面の中心ですが、旧作の説明をそのまま全場面へ移さず、新劇場版内の提示に沿って読みます。
なぜ電池切れでも動くのでしょうか。初期の自律再起動は、通常の電源系だけで制御できない生体とユイの意志による例外です。旧作では後にゼルエルを捕食し、S2機関を得て外部電源依存を越えます。
初号機は使徒なのでしょうか。使徒と共通するA.T.フィールドや生命的性質を持ち、旧作では使徒由来のS2機関を取り込みますが、NERVが建造したエヴァとして分類されます。敵の番号を持つ使徒と同一ではありません。
最後に初号機はどうなりますか。旧劇場版ではユイを宿したまま宇宙へ残り、新劇場版ではユイとゲンドウがシンジを送り出した後、エヴァのない世界を実現する過程で第13号機とともに終わります。
初号機を追う順序:戦績ではなく、誰の意志で動くかを見る
旧作は第壱話・第弐話の保護と暴走、ヤシマ作戦、レリエル戦、3号機戦、第拾九話の捕食、第弐拾話のサルベージ、第弐拾四話のカヲル、旧劇場版の補完を順に追います。
漫画版は対応する戦闘だけを拾わず、シンジとユイ、ゲンドウ、トウジ、レイの会話を前後まで読みます。同じ機体事件が異なる人物関係へ何を残すかが媒体差です。
新劇場版は『:序』『:破』『:Q』『シン・エヴァ』の順で、搭乗機から覚醒体、ヴンダー主機、父子対話の舞台へ変わる用途を確認します。形態名だけを追うより、シンジの選択と世界への影響がつながります。
まとめ:初号機は、巨大な力を誰の願いへ委ねるかを問う機体
エヴァンゲリオン初号機は、紫の試験機であり、シンジの主要搭乗機であり、ユイの魂を宿す身体です。通常兵器として戦う一方、危機には人間の制御を離れて搭乗者を守ります。
旧作では使徒を捕食してS2機関を得て補完の依代となり、新劇場版ではレイ救出の願いから疑似シン化し、ニアサードインパクトと14年後を生みます。力の発現は勝利だけでなく、世界規模の責任を伴います。
最後に重要なのは、最強の機体かどうかではありません。ゲンドウ、SEELE、NERVが初号機を計画へ使おうとしても、ユイとシンジは他者を再び選べる世界へ力の向きを変えます。初号機は所有できない力と、手放すことで成立する親子の象徴です。
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